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表題作冥府の王の神隠し

ルイ(大槻類),冥府の王
北浦伊月,考古学者,28歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

古墳の発掘調査中、落盤事故に遭遇!! しかも目覚めた先は、なんと冥府──!? 瀕死だった考古学者の伊月を助けたのは、冥府の王ルイだ。「怪我を治す一か月間だけ滞在を許可する。ただし俺には一切関わるな」尊大で冷たいのに、伊月の危機には駆けつけて悪霊から守ってくれるルイ。実は伊月には、十年前にも三か月間の神隠しにあった過去がある。もしや以前にもここへ来たのではと疑い始めて!?

作品情報

作品名
冥府の王の神隠し
著者
櫛野ゆい 
イラスト
円陣闇丸 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199011016
3.5

(26)

(3)

萌々

(10)

(11)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
9
得点
89
評価数
26
平均
3.5 / 5
神率
11.5%

レビュー投稿数9

ルイの想いに涙

冥府って聞き慣れなくて、その世界観を理解するのに時間がかかりました。
そして冥府の王であるルイが何を考えてるか解らない。伊月と同じように神隠しの謎を追ってましたが、ルイの心情が見えてくると、ルイの想いが切なくて愛しくて。
そんなルイの想いを知り、真実を知った伊月と同じように、どこにお話が向かうのかドキドキでした。
悩んで迷ってたどり着いた2人の恋に感涙でした。
ルイの執着愛と懐深い伊月にきゅんとしました。面白かったです。

1

ストーリーとしては王道だが。

円陣さんホイホイされてお買い上げ。
櫛野さん作品はファンタジー物が多いイメージがありますが、今作品もファンタジー物。タイトルから推測できる通り、冥府の王、のお話です。






主人公は考古学者の伊月。28歳。
彼は10年前に彼の住まう集落が土砂災害に遭い、両親が急逝。
その時に、伊月は3か月間、行方不明になっていた。神隠しともいわれたが、行方不明になっていた時の記憶は一切ない。

ある日、伊月は著名な考古学者である恩師とともにその山に研究のために赴くことに。そしてそこで、伊月は再びがけ崩れに巻き込まれてしまいー?

というお話。

目が覚めた時、伊月をお世話してくれていたのは犬。
話す犬を見て伊月はびっくりするけれど、その3匹の犬たちはケルベロスだという。そして彼らが仕える主は、冥府の王・ルイ。ルイ、そしてケルベロスたちに手厚くサポートしてもらいながら、実体の身体のけがが治るまでという期限付きで冥府に滞在することになるが…。

うん。
ルイと伊月は、何かしらの繋がり、因縁があるんだろうなあ、と。早い段階でそう読めてしまうわけですが、でも、当の伊月にはルイに関する記憶が一切ない。この二人のつながりは一体?と、その謎ときも含んだ展開でした。

ちょっと激しいネタばれになるので、少し下げます。おいやな方はここでストップされてください。




*******************************************

ルイは、伊月の幼馴染の類。
過酷な幼少期を過ごした類にとって、伊月はまさにお日さまのような存在だったんだろうなと。

伊月だけは幸せに生きてほしい。
自分はどうなってもいい。伊月だけは。
そんな伊月への深い愛情が、怒涛の様に流れ込んできて思わず落涙しました。だからこそ、ルイはどんな手を使っても伊月に現世に戻ってほしかった。ぐるぐるしてるっていうのか、めんどくさいというのか、でもそこにルイの伊月への想いがきちんと存在しているのでめっちゃ萌えました。

そこに華を添えるのが円陣さんの挿絵。
ワーッと叫びたくなるほどの美麗イラストです。ヤバいです。カラーの口絵が最高すぎて、じっくりと眺めてしまいました。円陣さんの画集、出してはいただけまいかと切望しています。

登場人物も、そう多くはありません。が、どの人もめっちゃ良いの。ケルちゃんズはもちろん、女性が登場しますが(ネタバレ回避で詳細は書きません、ぜひとも手に取って読んでいただきたいです)彼女もいい。そして、類の養母も。

子を亡くし、夫の愛人の子を引き取らざるを得なかった彼女の苦しみがなんとも切なかった。類に対する言動は許されるものではありませんが、彼女の哀しみに寄り添ってくれる人がいたなら、と思わずにいられませんでした。

本誌はずっとシリアス展開っていうのかな。シリアスすぎはしませんが、コミカルな要素はほぼなし。そんな中、コミコミスタジオさんで購入するといただける特典の小冊子が…!めっちゃよかった。
これから買われる方にはぜひともコミコミさんで買ってほしいなと思わせる素敵な特典でした。

ストーリーとしてはよくあるお話、というか王道の展開です。
が、良い意味で王道のそれをなぞっていて、そこに櫛野先生らしいエッセンスが加わった、そんな1冊。評価で悩みましたが、円陣さんの美麗イラストも拝見できたので、ちょっぴりおまけして萌え×2で。

4

時を越えた謎解きラブストーリー

再会・幼なじみ・異世界ものです。

2度の神隠しに遭った伊月と、幼なじみの親友・類(ルイ)が10年の時を経て冥府で再会することから話が始まっていくんですけどね、これがまー最初から謎が多い。
・伊月が昔遊んだゲームの世界観の冥府。
・なぜか冥府内に見覚えのある部屋。
・過去に伊月の身に起きた神隠しと現在の神隠しの謎。
などなど。最初から違和感だらけの幕開けです。

でもこれはまだまだ序の口。伊月がなぜ冥府にやってきたのかとか、過去の神隠しと現在の神隠しの関連性や、伊月の抜け落ちた記憶……バラバラに散りばめられたパズルのピースが1つに合わさっていき、これまで隠されてきた伊月を取り巻く謎が紐解かれていきます。


1つだけ言っておきますと、冥王こそが伊月の親友だった男・ルイです。
彼がなぜ冥王になったのか、親友のときの記憶を失っていたのは何故か。…とかね、10年前の過去から現在までの伊月の知らない隠された真実がすごくドラマチックです。

親友を愛する強い気持ちから、このドラマが始まりました。
冥王ということは人間ではないということ。伊月は人間です。身を置く場所が異なる2人は、本来交わってはいけないルールがあるのですが、これを破ってまで伊月を守りたかった冥王・ルイ。
己の肉体が人間界になくても、伊月の中に自分の記憶がなくても、伊月を常に想い見守り、恋をし続けた優しい男の切なくて熱い一途な姿に、胸がギュッとなるのを抑えられません。

再会した2人の気持ちが通い合ったとしても、この恋情が許されるのは伊月の魂が冥府に存在できる1ヶ月間のみ。今の2人では禁断の恋にしかならないのです。
いつか別れがきてしまう2人の恋愛が辿る道筋は光か闇か、幸せか悲しみか…。互いに想い合う2人の未来は明るいものであって欲しいな、と。

それを受けての物語の結末に私はウルッときてしまいまして……彼らにとって時間という隔たりは何の障害にもならないのだと、改めて絆の強さ・愛の深さを感じました。終章の情景は幻想的でとても煌めいていて素敵でした。

もしかすると落とし所は色々とあったかも知れない。でも私は2人の立場を思えばこれは最善だったかなと思います。


あとがきにて作者さんが、「書くのが大変だった」と仰っていました。
…これはそうだろうなと思います。私もこのストーリー、複雑で繊細なお話だなと読みながら凄く感じていたので、作者さんの言葉にはすごく納得です。

物語の背景…現在・過去軸の出来事もそうだし、世界観もそうだし、そこに絡む2人の秘めた恋心(これも現在・過去の世界線がある)にしてもそうだし、気持ちが通い合ったあともね…これまた色々とあるんです。
作者さんはかなり物語の構築に試行錯誤されたんじゃないでしょうか。それでもこの複雑なストーリーをゴチャつかずまとめているのは凄い。独特の世界観や登場人物(ワンコたち含む)も面白かったです。

深くて一途な恋物語に浸りたい方におススメの作品です^ ^

3

ネタバレなしがオススメです!

表紙がめちゃカッコ良くて手を取ったのですが、
個人的に大好物な設定が詰まっててハマリました!

正直、タイトルだけを見た印象は、、、
 子供の時に行方不明になって記憶がなくて~~~、
 大人になってから再度異世界に迷い込んで~~~、
 実は子供の時に1度来たことある場所で~~~、
 同じ人に2度恋をするーーーみたいな?
 「今度は絶対忘れない(`・ω・´)キリッ」ってやつでしょ?

こういうの神隠しのセオリーだよねぇ。
とか思ってたら全ッッッッ然違ーーーーーーーう!!!
(失礼な思い込みしやがって ( `д´)⊂彡☆))Д´) パーン)

予想してなかった展開に興奮しながら読みました。
個人的にはネタバレなしで読んで欲しいです。
関係性とか知らないまま読む方が絶対面白い。

予想しなかった関係性に涙したんですよーーー!!!
めっちゃ良かった。好き…。

あ、ひとつだけ先ネタバレ。
表紙のめちゃカッコイイ長髪の王はDTという事実。
めっちゃ美味しいな!と思いました←

評価は神寄りです。
ちょっとご都合主義を感じてしまい掟の意味とは…?
となってしまったので1コ下げました。すみません。

でも、セオリー通りだろうと高をくくってたら
大好きな大好きな設定が急にぶち込まれた興奮堪らん。
小説はこういう出会いがけっこうあるから好き…!!


以下、ネタバレ含む感想になるのでご注意。
(※極力ボカしてるつもり…)


お話はタイトルにあるように冥府が舞台となります。

落盤事故に巻き込まれて死んだかと思ったら、
目を覚ましたら冥府にいた受け・伊月。

冥府の王・ルイ 曰く、
・落盤事故は悪霊の仕業なので冥府に責任がある
・なので生きて現世に返すことは約束する
・身体の損傷が激しいので治すのに1ヶ月かかる
・生者と深く関わるのはご法度なので王に近寄るな
・でも城内なら好きにすごしてていいよ!
とのこと。

で。伊月には過去に3ヶ月神隠しにあった期間があり、
記憶がポッカリと抜け落ち喪失感を抱いていたんですね。
けれど冥府にいるとその喪失感が取り戻せそうな感じで。

ルイが何か知っていると思った伊月は、
過去の記憶を取り戻すべく行動に出てーーーと展開します。


上に書いた神隠しセオリーは踏襲されてるんですよ。
冥府に記憶の鍵があるのもそうだし、
過去の神隠し期間に伊月が冥府にいたのもそう。

でも過去の神隠し期間中の冥王はルイではなかった。

え?え??どういうこと???
じゃあルイと伊月はどこで出会ったの???
ルイが伊月を助けた理由は悪霊以外ってのはわかる。
じゃあルイと伊月の接点はーー?となるのが面白い。

基本的に伊月視点で物語が進むんですが、
時々走馬灯のような別視点が挟まれるんですね。

これがルイの過去の記憶だとすぐわかるんですが、
もぅもぅ!切なくてキューーーーってなるんです!!
冥王になる前のルイと伊月の関係、
ルイにとって伊月がどれだけ特別か、
ルイにとって伊月をどれほどの存在か、
大きくて重い重い感情が流れててめっちゃ萌えました。

ルイにしろ、伊月にしろ、
相手を想うからこそエゴがぶつかり合ってしまって。
特にルイは自己犠牲が過ぎるので切ないんですよ!!

ルイの弱さ。
伊月の怒り。
どちらにも共感出来て涙腺が緩んでしまう(;////;)

明らかになっていく2人の関係性がド性癖なので、
走馬灯のように流れる記憶はハァハァしてました←
(まさかの萌えの伏兵!ありがたや!)

ルイは死者。
伊月は生者。
この違いもグッと胸を抉ってきますね。
どうやっても一緒には生きられません。

全体的に伊月のほうが強く前向きな印象でしたね。
やっぱり生があるっていうのは満ちてるのかな…。
未来がある現世と見送る日々の冥府では大きな隔たりを感じました。

あ~良かった。
風呂敷畳みがご都合主義なところもあったけれど、
伊月の選択もラストの余韻もすごく良かったです!

3

失った過去に隠された想い

今回は冥府の王と古学者のお話です。

10年前に記憶を失った受様が
攻様と関わった事で過去を知り、未来を選ぶまで。

受様の故郷は10年前に土石流に飲み込まれ、
受様は自宅の2階ごと流されます。
助かった受様は両親を探してあちこち歩き回り
土石流を迂回して山に迷い込んだ・・・

と思っていたら気が付くと神社の境内にいて
土砂災害の日から3ケ月間の記憶を失っていました。

昔から好きだった考古学の道へと進んでからは
神隠しのことはなるべく考えないようにしてきますが
喪失感は拭えません。

今は考古学教授の助手として
全国の遺跡や古墳調査に飛び回る日々ですが
1ケ月前に初めて自分から付き合いと思った女性と
交際を始めた事で前を向くことができつつあります。

大学が夏季休暇に入ったある日、
教授の助手として新たに土器が出た古墳へと向かいますが
そこは受様が行方不明となった山だったのです。

古墳に辿り着いて写真を撮り始めた受様でしたが
昔持っていたキーホルダーのことを思い浮かべた直後、
激しい頭痛に襲われ1人だけ先に下山することになります。

ところが急に雨が降り出し、
見つけた洞窟でやり過ごそうとしたところ
その洞窟が音を立てて崩れ出し

受様はその落盤事故で命を落としかけ
魂だけの存在になってしまうのです!!

そんな受様を助けてくれたのは
人語を語るドーベルマン3匹を引き連れ
冥府の王を名乗る攻様でした。

冥府とは彷徨える魂が審判の時を待つ場所で
大怪我を負った受様の身体を治療を請け負ってくれますが
1ケ月は冥府に留まる必要があるというのです。

果たして受様は無事に現世に戻れるのか!?

かつて神隠しにあった受様が冥府の王の攻様と出会った事で
過去を知っていくファンタジックな物語になります。

意味深なタイトルから攻様が受様との間に
何らかの関りがあるのは必定で10年前の神隠しと
どうかかわるのかとワクワクで読み進めていきましたが

攻様が受様にわざとらしいほど冷たいのに
攻様が隠しているものがなかなか見えてこないため
ドキドキよりもモヤモヤな感じでした。

彼らの関りが少しづつ明らかになる事で
受様が引っかかっていたパーツ(伏線)の意味が見えてきて
思ってもみない真実にやられた!! って感じで

2人が互いを大切な存在だと認め
受様が攻様と共にいる未来を選ぶまで
とても楽しく読ませて頂きました (^-^)/

受様が過去失ったのはなぜなのか、
受様の失った記憶に隠された攻様の想いが切なく
そんな攻様の決意を覆そうとする受様が
とっても男前で良かったです。

2

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