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切ない

BL作品といえど、これは純文学と言えるのではないか。特にラストの方の宇野くんのセリフ。これにこの作品の全てが凝縮されているような気がする。
「好きだって言ってる僕の横で、他の人がいいって泣くのに。僕はどうすればよかったんだよ」

私が特に切ないと感じたのは、村上が立ち直り始めた後半のカフェのシーン。
村上、雛乃、未来、加々美と宇野くんが勢ぞろいのカフェで、加々美が悪戯で村上のコーヒーに砂糖を山盛りにする。
それが昔のギャグだとは知らない宇野くんが、村上に替えてあげようかと提案する。
村上はそれを拒絶する。あの頃、宇野はそこにいなかった。という描写からも、この辺から村上が宇野くんを、だんだんと疎ましく思い始めているのが手に取るようにわかる。
更に、雛乃の前で、恋人ぶるな。
無言の圧力を宇野くんにかけて…。

元恋人やかつての友達の前で、恋人として紹介してもらえない。こんな、屈辱…普通、耐えられるか?

そして、だんだんと影の薄くなる宇野くん。村上の語りなので、村上自身がそんなふうに思い始めているからなんだろうけど…。
BL作品で、ここまで受けの影が薄くなる描写があるのは本当に珍しい。BLはファンタジーなんて言われているけど、木原作品に関しては、これがリアルで、心をえぐる。
この場では雛乃が泣いていたが、一番泣きたいのは宇野くんと読者だろうよ…。
好きな人が、自分と同じように自分を好きでいてくれない。自分が蔑ろにされる。
そんなの、リアルだけで充分だ。それでも、この物語に惹きこまれて読んでしまうのは、木原マジックなんだろうな…。

ラストの「斉藤さんが相手だったら、絶対にこんな酷いことしないくせに。言わないくせに。」という宇野くんのセリフも、涙を誘う。

村上は、雛乃の幸せを祈って身を引いた。雛乃のことを無理に、抱こうとはしないだろう。 
でも、宇野くんの幸せを祈って身を引かなかった。宇野くんに関しては、自分の欲望を優先する。
その差が、宇野くん的には辛いんだろうな。



でも、こうも考えられないか?

村上にとって、雛乃はなりふり構わず手に入れたいと思えるような相手じゃなかった、と。

結局、過去を美化しているだけで、無い物ねだりにすぎない。と。

そう考えて、私的にやっとこの作品に萌を感じられた。

余談ではあるが、宇野くんのことを、本当に理解している人物がこの世にいるのか?という疑問に至った。

なんか、読後感がもやもやすっきりしないのは否めない。それが、木原作品を読む上での醍醐味なんだけど…。

あまりにも宇野くんが気の毒すぎる。
女友達、もしくは会社の先輩、なんでもいいから出てきて(オネェでも可。笑)

「そんな男、こっちからフっちゃいなさいよ!あんたにはもったんない!つーか、雛乃って女もなんなの?!今更、でてきて、村上が1番辛い時に支えられなかったくせに!その村上の仲間たちだって、村上が1番ひどい時に救いの手を差し伸べようとすらしなかったくせに、裕貴のこと、ないがしろにして!!でも、1番、腹立つのは村上よ!助けられた恩も忘れて、一体なんなの?!何様?!かわいそう、裕貴!!」

的なことを、捲し立ててくれるキャラが出てきたら、まだ、読者の怒りを代弁してくれるので、読後感が違ったものになるのかも…。

でも、こんな強烈なキャラがでてきて、宇野くんの気持ちを代弁しちゃったら、名作が台無しですね。


今後、村上がなかなか表現できない宇野くんの気持ちをくみとって、理解できるようになれたらいいなあ。

このノベルズのイラストを描いている、糸井のぞさんがコミックの後書きで、「この2人にはイチャイチャより、お互いを理解するためにたくさん、話し合って欲しい。」と書いていた。

私も、そう思う。
イチャイチャも大事だけど、それよりまずは、お互いを理解しあってほしいな。心と心で繋がってほしい。

個人的に、当て馬的にされた、宇野くんの新恋人、加奈ちゃん?

「お前に合ってないよ」と言った村上の言葉は正しいと思う。(笑)なんか、すごいファンキーすぎ。。

心より、宇野くんの幸せをお祈りします…。

あっぱれ!さすが木原作品!ひきこまれる

木原さんの作品はもう大好きで、大好きで。
「fragile」でハマり、読み続けています。
上巻は延々と実らない片想いの恋を見せつけられているようでしんどかった。
けれど、これがノンケに恋をしてしまった男の末路なのかなあと、男が男に恋することの残酷な現実を突きつけられているようで、身が引き締まるような思いで読んでしまった。それが余計に、続きが気になって仕方なくなり、夜、遅い時間に読み始めたのがいけないのだが、結局、朝まで読んでしまうほどにはまってしまった。

下巻はキャンプのシーンから始まります。微妙な三角関係、松岡がかわいそうでかわいそうで。心が張り裂けそうなほどせつない。けれど、寛末の気持ちも分からなくはない。同性を恋愛対象として見ることができない、現実はこんなもんだろう。残酷なことだけれど。
それがわかったとはいえ、寛末はずるいと思う。
自分で答えがだせないくせに、その答えを松岡に求めても、彼を追い詰めるだけなのに。何度も、松岡にもう、こんな奴忘れて他の男に目を向けてくれ、幸せになってくれ!と思ったことか。おそらく、他のBL作品だったら、そうなるだろうと思う。一応、当て馬的な立ち位置で葉山と藤本が出てくるが彼女たちは女性だ。女性ではなく、攻めタイプの男性が出てくるような気がする。なんてったって、松岡は外見がとても美しいのだから!ゲイから引く手数多だろうに。それで寛末も松岡の魅力に気づき…と巷に溢れるBL作品のようなご都合主義的ストーリー展開に走らないのは、やはり、さすが木原作品だと思う!

葉山さん、私はこの女性が結構好きだ。姉御肌かと思えば、適度な弱さもあって、可愛らしさもある。仕事もできるし、要領もいい。そして、そんな葉山さんになったような気持ちで読み進めていくと、違った面白さがある。特に、同期の中でも出世頭で性格も外見もイケメン、仕事ができる同僚の松岡に恋愛対象としてではなく、人として惹かれる気持ちもよく分かる。こんなイケメンな同僚がまさか(彼と比べると)地味で気が利かないと思えてしまう自分の彼のことを、好きだなんて微塵も思わないだろうが…私の職場にも、仕事ができる松岡風な同僚がいるがその人が実はゲイで…という展開を期待してしまう。(野次馬的な感じで)

愛しいこと、では、視点が寛末になる。寛末になったおかげで余計に、彼のグジュグジュした情けなさが浮き彫りに…まあ、それがよりリアルで良いのだけれど…
2人が仲良くなって、夕飯を共にしたり、互いの家に行ったりすることは良いことなのだが…寛末はあくまでも友人として付き合っている。松岡は、その先を期待している。この差が、本当にせつない!
特に、それが如実に、分かるのが温泉旅行のエピソードだ。
テンションが上がりまくり、嬉しくてたまらない松岡とそうでもない寛末。この2人のこのテンションの差!!松岡は、温泉よりも寛末と出掛けられることが嬉しいんだろう。寛末はただ、温泉に行きたいだけ…。この差も、現実の恋のようで、ほんとせつない。子どものようにはしゃぐ松岡の態度も、その態度に心が綻ぶ寛末も、なにもかもせつない。寛末視点なので、松岡の気持ちが分からないが、松岡視点のものも書いてくれたら、余計にせつなさが増したろう。

松岡が答えを求めた時の
「どうにもならないと思うんだ。…多分、もうどうにもならない」
寛末のこの台詞を突きつけられた時の松岡の絶望感…想像するだけで、涙が出てしまう。現実は残酷。自分が好きになった人が、自分と同じように自分を好きでいてくれるそれが当たり前ではないことを思い知らされる。

そのあと離れてから、ようやく、松岡の存在の大きさに気づく寛末。ざまあみろ!という思いだ。おそらく多くの読者はそう、思うだろう。
連絡の手段がつかずに、途方にくれる寛末。
ようやく会えたのに塩対応に、涙ぐむ寛末。
もう一度、言ってしまう。ざまあみろ!

塩対応で拒否したのに、放っておけなくて、寛末のホテルに向かい、酒に潰れた寛末を介抱する松岡は本当に健気だし、いじらしい。
「3回も同じやつに、振られるなんて絶対に嫌だ」
この台詞に松岡の今までの苦労が込められている気がして、また涙がとまらない。
タバコのエピソードは寛末の中で完全に松岡が、恋愛対象として、性的対象として、浮かび上がった瞬間だと思う。そこからは熱に浮かされるように、互いを求め合う。
今までのすれ違いがあったからこそ、このラストの数ページが、読者にとっては最高のご褒美である。

木原さんのあとがきに、同棲してラブラブに暮らしていて、犬も食わないバカップルになり果てている、という描写がありました。嬉しいな!ああ、その様子が見たい。永遠に見ていたい。ごちそうさま!