期限切れの初恋(BBN)

kigengire no hatsukoi

期限切れの初恋(BBN)
  • 電子専門
  • 非BL
  • 同人
  • R18
  • 神63
  • 萌×220
  • 萌18
  • 中立6
  • しゅみじゃない12

263

レビュー数
37
得点
455
評価数
119
平均
4 / 5
神率
52.9%
著者
木原音瀬 

作家さんの新作発表
お誕生日を教えてくれます

イラスト
糸井のぞ 
媒体
小説
出版社
リブレ
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
価格
¥850(税抜)  
ISBN
9784799713389

あらすじ

宇野には忘れられない恋があった。
誰からも好かれていた大学時代の同級生・村上に卒業してからもずっと片思いしていた。
友人の結婚式を機に、この思いを終わらせようと決意するが、そこで会えるはずだった村上が、借金を重ねて行方不明になっていたことを知る。
何もかも失った村上はホームレスになっていた。
宇野は自分の恋を終わらせるために彼を拾ってきて、一緒に暮らし始めるが…。
その後の二人の書き下ろし、100P超収録!

表題作期限切れの初恋(BBN)

村上隆人,ホームレスになった大学時代の同級生
宇野裕貴,総合商社の社員

同時収録作品人でなしの恋

村上隆人,大学の同級生で特殊清掃会社勤務
宇野裕貴,総合商社の会社員

その他の収録作品

  • ふたりではんぶんこ by糸井のぞ
  • あとがき

レビュー投稿数37

片思いが精算出来ていない人へ

人の恋する内面について描かれた作品で、これ程面白いとのめり込み「やだやだー!」と駄々こね叫びたくなった作品は映画やドラマも含めて他にありません。恋愛話でここまで展開が怖く心臓バクバクで、先にネタバレを読み漁った作品もありません(笑)

自分とはかけ離れた人を好きになることは現実によくあることと思います。
それを引きずった私もこの主人公の宇野がどう落とし所を見つけるのか知りたくて読みました。

忘れられない人を美化し、変わり果てても好きで、どうすれば嫌いになれるかと考える宇野が恋とは何かを考えます。
そしてどうすれば後悔せず吹っ切れたのか、あの時のチャンスは、あの時言ってれば…とあれこれ考えるのは「わかる」の一言でしかありません。
好かれているが好きではない相手への関心のなさとその自覚のなさが、主人公ふたりと取り囲む友人とで残酷なまでに描かれていて、それでも共感させられます。
一緒に過ごしても上手く掛け合えない人間性と戻らない時間が切ない、ビターな作品(木原さんの作品でその表現は無いかしら)でした。

第1章で信じられないことにハッピーエンド的な終わり方でそれはそれで良かったのですが、その後のずるずるとした二人の気持ちの温度差と戸惑いがどちらも凄く納得すると同時に辛く感じながら読みました。
優しく大切には出来ても心から愛することは出来ない、というのはどうしようもありません。そこに村上が悩むことは彼が底辺から抜け出した恩人に対して報えないこととして描かれていても、宇野と同じような気持ちをかかえる読者としては優しさを村上と木原さんに感じました。

運良く身体は近付いても心と過去は変えられない。
大きな決意をした終わりでもないのですが、宇野がどれだけ必要な存在か、村上が自分の現状の気持ちを自覚してちゃんと宇野の存在を認められて良かったなと思いました。あからさまに両思いでハッピーじゃなく、これからを感じさせて無理がないのが良いです。

宇野のように気持ちの精算が出来ず思い出に出来たかそうでないかの人、ただ興味をもった人も、これからも沢山この作品に出会う人がいることを願います。
私事ですがレビュー100個目なので、これを機に好き過ぎてレビュー書けなかったこの作品に手をつけようと思いました。

0

切ない

BL作品といえど、これは純文学と言えるのではないか。特にラストの方の宇野くんのセリフ。これにこの作品の全てが凝縮されているような気がする。
「好きだって言ってる僕の横で、他の人がいいって泣くのに。僕はどうすればよかったんだよ」

私が特に切ないと感じたのは、村上が立ち直り始めた後半のカフェのシーン。
村上、雛乃、未来、加々美と宇野くんが勢ぞろいのカフェで、加々美が悪戯で村上のコーヒーに砂糖を山盛りにする。
それが昔のギャグだとは知らない宇野くんが、村上に替えてあげようかと提案する。
村上はそれを拒絶する。あの頃、宇野はそこにいなかった。という描写からも、この辺から村上が宇野くんを、だんだんと疎ましく思い始めているのが手に取るようにわかる。
更に、雛乃の前で、恋人ぶるな。
無言の圧力を宇野くんにかけて…。

元恋人やかつての友達の前で、恋人として紹介してもらえない。こんな、屈辱…普通、耐えられるか?

そして、だんだんと影の薄くなる宇野くん。村上の語りなので、村上自身がそんなふうに思い始めているからなんだろうけど…。
BL作品で、ここまで受けの影が薄くなる描写があるのは本当に珍しい。BLはファンタジーなんて言われているけど、木原作品に関しては、これがリアルで、心をえぐる。
この場では雛乃が泣いていたが、一番泣きたいのは宇野くんと読者だろうよ…。
好きな人が、自分と同じように自分を好きでいてくれない。自分が蔑ろにされる。
そんなの、リアルだけで充分だ。それでも、この物語に惹きこまれて読んでしまうのは、木原マジックなんだろうな…。

ラストの「斉藤さんが相手だったら、絶対にこんな酷いことしないくせに。言わないくせに。」という宇野くんのセリフも、涙を誘う。

村上は、雛乃の幸せを祈って身を引いた。雛乃のことを無理に、抱こうとはしないだろう。 
でも、宇野くんの幸せを祈って身を引かなかった。宇野くんに関しては、自分の欲望を優先する。
その差が、宇野くん的には辛いんだろうな。



でも、こうも考えられないか?

村上にとって、雛乃はなりふり構わず手に入れたいと思えるような相手じゃなかった、と。

結局、過去を美化しているだけで、無い物ねだりにすぎない。と。

そう考えて、私的にやっとこの作品に萌を感じられた。

余談ではあるが、宇野くんのことを、本当に理解している人物がこの世にいるのか?という疑問に至った。

なんか、読後感がもやもやすっきりしないのは否めない。それが、木原作品を読む上での醍醐味なんだけど…。

あまりにも宇野くんが気の毒すぎる。
女友達、もしくは会社の先輩、なんでもいいから出てきて(オネェでも可。笑)

「そんな男、こっちからフっちゃいなさいよ!あんたにはもったんない!つーか、雛乃って女もなんなの?!今更、でてきて、村上が1番辛い時に支えられなかったくせに!その村上の仲間たちだって、村上が1番ひどい時に救いの手を差し伸べようとすらしなかったくせに、裕貴のこと、ないがしろにして!!でも、1番、腹立つのは村上よ!助けられた恩も忘れて、一体なんなの?!何様?!かわいそう、裕貴!!」

的なことを、捲し立ててくれるキャラが出てきたら、まだ、読者の怒りを代弁してくれるので、読後感が違ったものになるのかも…。

でも、こんな強烈なキャラがでてきて、宇野くんの気持ちを代弁しちゃったら、名作が台無しですね。


今後、村上がなかなか表現できない宇野くんの気持ちをくみとって、理解できるようになれたらいいなあ。

このノベルズのイラストを描いている、糸井のぞさんがコミックの後書きで、「この2人にはイチャイチャより、お互いを理解するためにたくさん、話し合って欲しい。」と書いていた。

私も、そう思う。
イチャイチャも大事だけど、それよりまずは、お互いを理解しあってほしいな。心と心で繋がってほしい。

個人的に、当て馬的にされた、宇野くんの新恋人、加奈ちゃん?

「お前に合ってないよ」と言った村上の言葉は正しいと思う。(笑)なんか、すごいファンキーすぎ。。

心より、宇野くんの幸せをお祈りします…。

3

ひみた

レビュー笑わせていただきました。オネェの代弁者にスッキリしました!(笑)
ファンキーな新恋人にも同感です…

いつかは僕で君が幸せになってほしい

とりあえずやたらと臭いをイメージさせられる作品でしたね。
攻めの村上のホームレス状態だったり職にした汚部屋清掃だったり。
綺麗なものだけでかためられることのない木原さんの作品、確かな描写力が大好きです。

それにしても序盤の攻めはついつい顔をしかめてしまう程の汚すぎる身なりで嫌悪感半端なかったのですが、それでも好きでいることをやめられなかった受けの宇野の想いの強さに驚きました。
年数も経ち美化されたところもあるだろう初恋の相手が変わり果てた姿になったとしてもそばで支えた…。

BLでよく見掛ける容姿に惹かれて…だとか簡単に説明できる理由ではなく大学時代からずっと恋心と共に村上を見てきた宇野の気持ちがとても伝わってきました。
ゲイというわけじゃないんですよね、ただ好きになった人が同性の村上だったんですよね。

誕生日にお互いがお互いを遠ざける発言をしたことは胸が痛いです。
比較的落ち着いてるぞー!と思っても絶対どこかで心をガツンと殴られるんですよね。
そこから継続的なズキズキが続いて…でもそこが魅力的で読み耽ってしまうんですよね。

村上は元カノの雛乃への未練があって、宇野との関係を持ちつつも同じ情熱を向けられないっていうのも生々しくて夢中になりました。
恩返しのような義務的な愛し方をする村上に気付かず健気に触れ合う宇野を見ていると心臓がギューギューしました。

結果的には光の見えるエンドですが互いの気持ちが噛み合っていないというかきちんと絡まっていないように私には感じました。
でもそれがいい。
都合良くくっ付いた物語のカップル感なく、超ハピエンでなくともつらくなった時に一番そばにいてほしいと思いそうしてくれる人がいる…そこに濃厚な愛の結びがなくともそれだけで既に充分幸せ者だよな…と思いました。

完全な恋人同士にならないBL…それでもあたたかい。

1

恋は不思議

表題作の「期限切れの初恋」は、地味で内向的な宇野が、落ちぶれた片思いの相手・村上を偶然見つけて自宅に住まわせる話で、宇野の視点で書かれています。
タイトルが謎かけのように思えました。「初恋」だから、大学時代に宇野が村上に抱いた初恋のことなのでしょうけど、それは社会人になり会わずに何年たっても、全く終わっていないのです。
大学で村上が作ったキャンプサークルに誘われ活動を共にするうち、村上を好きになってしまった宇野。村上は自分と違い、華やかで人気者。同性同士だし、特別に親しくなれる見込みもない。辛い片思いに区切りをつけたくて、卒業式の日に、村上に告白しようとするも結局できず…。宇野の初恋は手放す期限を過ぎてしまった。タイトルの「期限切れ」は、そういう意味なのかもしれないと思いました。

宇野が村上への思いに捕らわれ続ける姿が、あまりに卑屈で痛々しいです。
自分からは思いきれないからと、村上がもっと悪い男になって失望させてくれないだろうか、などと考える。毎日自分の金を盗んでパチンコに興じる村上を最低と心で罵りながら、一緒にいることが嬉しくて、追い出すことができない。
村上が立ち直り始めると、以前のように軽く扱われて傷つくことを恐れ、村上を追い出す。立ち直らず汚いままの村上ならずっとそばにいられたのにと考え、自己嫌悪で涙する。ちっとも前向きじゃない。挙句、怒りにかられた村上に好意に付け込まれるように抱かれてしまう。
どんなに相手がひどくても、見込みがなくても、捨てられない恋とは、いったい何なのだろう。
でも、周りの誰もが納得するような恋ばかりじゃない。こういう恋もあるのかもしれない。恋なんて、病気みたいなものだと思うのです。半端に放置すれば、治らなくなってしまうこともあるでしょう。

それにしても、村上が酷い。
自分を見捨てなかった宇野に感謝しつつも、愛情でつながれば二度とマンションを追い出されずに済むだろうという思惑がはたらいていたことが、村上視点の「人でなしの恋」で明かされています。
村上は特殊清掃の仕事に自信を持ち始め、大学時代の友人に借金を返し関係が修復されると、宇野との同居を一方的に解消します。そして、「気に掛けてもらえていると思うだけで落ち着く」とか、「会いたくなれば、自分が動けばいいだけだ」などと、勝手に二人の距離を決めてしまう。きちんと宇野と話し合うこともせずに。結局、村上は昔と変わっていない、自己中心的な人間なのだと思いました。
だから、村上と昔の恋人はやり直してもきっとうまくいかなかったでしょう。失った恋をやり直すのにも期限がある。友人の「もう遅いのよ」という言葉がなければ、諦められなかった村上は本当に弱い男です。

むしろ、一見地味で弱弱しい宇野のほうが実は強いことが、「人でなしの恋」を読んで分かりました。最初から、村上が寂しくて宇野に寄りかかっていたこと、距離を取りたくて宇野の元を離れていったことを知りながら、自分勝手な村上を責めなかったのですから。寂しくて会いに来た村上に、「幸せになってください」と背中を押してやる寛大さ。静かな強さに胸を打たれました。
これで二人が別々に歩んでいけば、少しつまらないけれど、納得のいく終わり方だったかもしれません。

自分が会社を首になるきっかけを作った元上司の自殺現場の清掃に入った村上は、やっと気づきます。自分には宇野がいたから立ち直れたのだと。呆れるほど遅い。でも、村上の宇野への気持ちに変化が起きたとすれば、この瞬間なのだろうと思います。見返りを求めない宇野の愛情に心からひれ伏して、愛しく思えたのは。
宇野を無理やり抱いて、恋人と別れてと言い、「愛せないかも…しれないけれど、傍にいて」という村上は本当にひどいけれど、自分の弱さを自覚して正直なところに好感が持てます。宇野も「人でなし!」と怒ったり泣いたりしたけれど、幸せそうだから、この結末でよかったです。これからは言いたいことを言い合って、意外と上手くいくような気がします。

すっきりと納得はできないけれど、恋って不思議で面白い、と思う作品でした。

3

好きのベクトルが違うふたり

電子書籍で読了。挿絵有り。

『人でなしの恋』の終焉についての感想を書きます。盛大なネタバレになると思いますがご勘弁ください。


実人生の中で「いい人だと思うけれど、この人に恋することはないだろうな」と思ったことが何度かあります。同じように「この人のことがとっても好きだけれど、この人が私と恋に落ちることは絶対ないな」と思ったことも。だから私は村上がクズとは思えなかったです。また、宇野が執着男だとも思えない。お互いにとって「仕方ないよねー」ということでしかない。私がそう思ったように。

一見、ハッピーエンドに見えるこのお話のラストは、私にとってとても不穏なものでした。お互いに「好きだ」と思っていると思います。また、縋り付く気持ち、失いたくない気持ちもとても強いだろうと思います。でも、恋というものは、ある時、いきなり降ってくるものです。村上に訪れないとは言えない。

木原さんのお話の多くは、自分からは遠い登場人物による『怖い話』です。まあ、そのお話が鏡になって、自分が見えちゃうから余計怖いのですが。でも今回のお話は、どこにでもいるような登場人物がくり広げるドラマです。形は違っても、今現在どこかで起きているだろうと思えること。
読後、深い悲しみに襲われました。

1

思ったより痛くない。感動!

ずっと気になっていた木原さんの痛い系。
勇気を出して読んでみました。
まずコミックを、そして本編を。
痛くなかったです。COLDシリーズや、『美しいこと』の方が私には痛かった。
攻め目線の『人でなしの恋』
攻めの村上を人でなしとは思えませんでした。
男女でも、同様の感情はある。ただ、男女には付き合った先に、結婚や子供ができたり、既成事実に流されやすいだけ。
最後まで読めば村上が宇野を愛していると思えるし、ハッピーエンド以外の何ものでもないと思います。
痛いのはちょっと、と躊躇しているなら読んだ方がいい。
正直すぎるふたりの両思い~ラブラブに至る感動作が読めるはず。

3

「サイテーだ!」って叫びたくなる

ホント、サイテーだなと思ってしまう、本作の攻め。
でもそんな彼を憎めないのは、木原先生が描く彼の内面が理解できるし、それに共感を感じてしまうから。
読んでいて、楽しい・嬉しい・癒される恋物語では決してない。
なのにページをめくる手を止められない。
読んでいる間、一種の中毒者のようでした。

愛だとか恋だとか言っても、それとはまた別の問題が現実には多くあって、それらを含めての相対的な価値判断に人間の感情は左右される、そんな現実を見せつけられた気がしました。
生々しい。けれどその生々しさが本作の魅力でもある。

萌え度数は低いです。萌えられない。
けれど一度読んだら一生忘れない、忘れられない作品だと思います。

3

それでいいのか?と思うけど仕方ない

こちらのコミックと小説を一緒に買いました。
二つの違いをまず書きます。
【コミック&小説ともに収録があるもの】
・受け視点の「期限切れの初恋」

【小説にのみ収録されているもの】
・攻め視点の「人でなしの恋」書き下ろし小説
・糸井のぞさんによるコミック「ふたりではんぶんこ」

【コミックにのみ収録されているもの】
・木原音瀬さんによる「番外編ショート小説」
・描き下ろし「phytonicide」

コミック→小説の順で読みました。

村上は大学時代キャンプサークルの主催で男女問わず人気があって、容姿も良く、可愛い彼女に一目惚れしてゾッコンだった人。結婚も考えていた。
宇野は内気で村上に声かけられてサークルに入ったが、ずっと村上の彼女の様子を目で追うだけ。

村上は新卒入社した会社で横領疑惑をかけられ無実なんだけど辞めされられ無職に。追い討ちをかけるかのようにご両親が首吊り自殺してしまい第一発見者になってしまう。何も考えられなくなりパチンコに没頭する日々。あっという間にお金が底をつき大学時代の友人達からお金を借りては踏み倒し、彼女の財布からも金を盗み別れる事なり浮浪者になってしまうんです。
8年くらい経って(確か)浮浪者になって公園で寝転がっているところを宇野が家に連れて帰る。生きる屍(そして猛烈に臭い)となった村上を何も言わず寝泊まりさせてやります。おまけに室内にあるお金を毎日盗むのも黙認。

大学時代とは雲泥の差の村上を見ても嫌いになれないのは病気としか思えませんでした。やがて改心して少しずつ社会復帰し始める姿を見て元どおりになったらまたモテてしまうから浮浪者のなりの時のほうが良かったと考えてしまうくらいで重症です。多分、村上が例えば殺人鬼とかなっても嫌いになれないんだと思う。

人が好きな人を嫌いになるって難しいんだなぁってつくづく感じました。

村上にとって元カノが一生に一度の恋みたいな感じです。相手が結婚していても子供がいても動向が気になる。浮浪者の自分を宇野は何も言わずに黙って支えて立ち直させてくれたから心の底から感謝しているし、居心地はいい。だけどかつての彼女に対して抱いていた感情と、宇野に対して抱く感情は違うとはっきり自覚しています。宇野のことを好きになれたらいいなぁとは思っているけど努力して恋する訳ではないですからね。どうしたものかと思っています。

そういう二人を描いています。だから綺麗事じゃすまされない。

二人はすったもんだの挙句、ようやく着地して希望がある終わり方をしているけど、多分、村上が宇野に抱く恋愛感情はかつての元カノを超える事はないんだと思います。元カノには一目惚れでしたから。理屈抜きで好きだった相手です。どうやっても超えられない。

だけど、今後、別の女性が登場して例えいい雰囲気になったとしても、宇野と別れてその女性を選ぶかと考えると、選ばないんじゃないかなと思います。あんな究極のどん底状態の自分ですら許容して何も言わず受け入れてくれた人ですからね、宇野は。

普通の感覚を持つ女性なら、いくら好きになった相手とはいえ浮浪者男は受け入れません。好きだったあの頃とは別人なんだと思って拒絶します。

だから新しい女性が登場したとしても村上は頭のどこかで俺が万が一、再び転落したら…と考えて天秤にかけて宇野に戻ると思うんです。

「愛せないかも…しれないけど、傍にいて。」とまぁ狡いけどそんなところも含めて宇野は好きな訳で…。

でも最後の1ページで何だか風向きが変わってきたし、そういう恋もありかなと。村上に対しては、目の前の恋に一生懸命取り組んでもらえればなと思いました。
誰もが大好きな人と思いを遂げられる訳ではないので、そういう妥協点みたいな現実的なところを描いた作品だと思いました。

村上がほぼ陥落しそうなところで終わってまして、宇野、もっとやったれ!もっと優しく絡め取ってズブズブに居心地の良い海に沈めて身動きとれないようにしたれ!と思いながら読み終わりました。
初恋が実った男と実らなかった男って感じです。

答姐の「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」でコミックと合わせて教えていただいたのが、こちらの作品です。
色々考えさせられて面白かったです。小説もいいなぁと思いました。
教えてくださり本当にありがとうございました。

5

いろんな意味で幸せであれ

ページ数が残りわずかになっても村上が元カノを…だったので、これはBLなのかなんなのかわからず終わるパターンかー!と思いました。笑
たぶん他の作家さんだったらラブが足りなーい!てなったかもしれないけど、木原さん作品は作風でそういうのを承知で読んでるので、この作品も心を揺さぶるお話で個人的「神」です。

あとがきで村上は鬼畜とありましたが、最後の宇野を引き留めるやり方以外は恋愛に対しても生き方に対しても真面目で許容範囲でした。
(引き留め方も強引萌えなのでBLとしてはイイ!)
途中まで「自分も宇野と同じ熱さで愛することが出来れば」そう本気で考えてたし、でもそれは出来なかった。
五人で会うシーンで、隣に座る宇野の存在そのものを忘れてたとか、痛い!てなったけど、本人に声に出して言ったわけではないので一応セーフ…。
宇野も一貫して嘘はつかず(つけず)、彼女も作り新しい一歩を踏み出そうとしてる中でも「ずっと君のことは好きだと思う」って言っちゃう所が可愛くて可愛くて、とにかく幸せになってくれと応援したくなる受けだった。
それによって村上が調子に乗るのが目に見えてたけど、そういう所が後々本気で宇野を愛するキッカケになるんじゃないかなと。
あれだけ盲目的に愛されてる自覚があると、万が一宇野に別に好きな人が出来たら執着攻めになる素質充分ですね。笑

村上の境遇が壮絶で…宇野の片思いも痛いし両方に同情しながら人間ドラマとして読んでる意識もあったので、例えくっつかなくても二人がそれぞれ前向きに生きていければそれでいいと、それで許せる「BL小説」はたぶん木原さんだけかな(いい意味で)

6

片思いの初恋が実った m(;∇;)m スゴイコト!

初恋っていいなあ、大好きな響きなんですよね。でも大抵の初恋って実らないもの。青春時代の甘酸っぱくほろ苦い思い出は誰もが持っている感傷ではないでしょうか。それゆえに小説の中だけでも初恋が成就する感激の瞬間を味わってみたい。ということで、本書を手に取りました (*^_^*)

・期限切れの初恋(宇野(受)視点)
・人でなしの恋(村上(攻)視点)
・ふたりではんぶんこ by糸井のぞ(宇野(受)視点 コミカライズ)

あらすじ
大学時代、宇野(受)は同級生の人気者・村上(攻)に恋をしていました。村上(攻)には彼女がおり、1日で良いから女になって彼女と入れ替わりたいと願うほど好きでした。卒業後6年経っても宇野(受)の村上(攻)への想いが消えることはなく、友人の結婚式で再会したら「昔、好きだった」と告白し、想いを断ち切ろうと思っていました。ところが村上(攻)が式に現れることはなく、代わりに耳にするのは村上(攻)の悪い噂ばかり。借金、ギャンブル、行方不明…。宇野(受)は今の村上(攻)に会い、皆のように幻滅し、未練なく初恋を終わらせたいと思い探し始めます。が、とんと行方知れず。ある日会社の花見の席で、偶然出会った村上(攻)。髪はボサボサ、無精髭、まるでホームレスのよう…。

面白かったです。というか毎度のことですが泣けました (ノ_-。) 私が小説を読むのは、この「泣き」のためと言っても過言じゃありません。泣くと脳内物質の一つであるエンドルフィンが増加するそうです。このエンドルフィン、ストレス解消やリラックスした状態を得られることで有名な物質。玉葱刻んで泣いても、このエンドルフィンは出ません。あと笑うことが免疫力アップにつながることはよく知られておりますが、感動して泣くことによっても同じ効果が得られるそうです。皆様、木原作品を読んで感動して是非大泣きしようではありませんか (^^)/

まず宇野(受)が素晴らしかったです。ここまで一人の人を想い、ずーっと好きでい続けることが出来るのが凄い。一度でも村上(攻)と交際や体の関係があったなら、良かった時を思い出し忘れられない、ということもあるかと思います。けれども報われることのない片思いをひたすら持ち続け、村上(攻)以上に好きになれる人が現れなかったからと、6年間誰とも交際してこなかったというのが、一途で素敵だと思いました。逆に誰とも交際しなかったことが、より初恋を神聖かつ偉大なものにしていったのかもしれませんね。

片や村上(攻)ですが、学生時代は皆の人気者、ノンケ(あるいはバイ?)なので女子の可愛い恋人もいて、性格も良く、明るく社交的で素晴らしい人柄だったのに、過酷な運命に翻弄されます。でもまさかあんなに光り輝いていた快活な人間がここまで落ちるとは。いったい何があったの?と、すごく興味津々で楽しく拝読致しました。とはいえ、臭いがキツくて参りました。実際には本を読んでいるだけの私が、その悪臭を嗅ぐことは当然ありません。それなのに、ホームレス時と特殊清掃のくだりは臭くて、臭くて、顔をしかめながら読みました。この感覚は、ちょうど「FRAGILE」を読んだ時のそれと似ていて、生々しくリアル。もうちょっとオブラートに包み、サラッと描いて欲しいという本音もありますが、逆にこの写実的な描写があるからこそ作品が生きるのかもしれません。

村上(攻)はパチンコ依存症に陥って身を持ち崩してしまいました。たぶん耐え難いほどの辛酸をなめ、もがき苦しんだため、精神が病んでしまったのでしょう。パチンコは怖い。この小説を読んで改めて思い知りました。大分前に松岡圭祐著の「催眠」を読んだことがあります。そこでもパチンコ依存症について詳しく書かれた記述があり、その時にパチンコは「麻薬」と同じなのだとの認識を得たことがあります。ギャンブルとは無縁の自分であり続けたいものです。

最後になりますが、小説ってやっぱりラストが命。宇野(受)が村上(攻)につぶやいたこんな一言が印象的で忘れられません。

「……今日の君は、まるで恋してるみたいに僕を見る」

めちゃくちゃ心を揺さぶられました。宇野(受)は感受性が鋭い。ゆえにずっと自分は愛されていないと知っていました。ところが、その宇野(受)がそう感じた(作者様がそう言わせた)と言うことは、きっと村上(攻)は「心底、宇野(受)に恋しているのだ」と信じることが出来ました。初恋が実った瞬間。一番好きなシーンです (●´▽`●)

7

この作品が収納されている本棚

レビューランキング

小説



人気シリーズ

  • 買う