理解者も無く、長年続く身体の痛みを看病してくれる人もいない、ひどく孤独な環境に置かれた受け。自分を魔獣からかばった為に魔術師として覚醒してしまった受けを、長い時間をかけ、執念で王宮騎士となってまで追いかける攻め。展開が早めで山場がすぐ回収されてしまうので、物語の厚みや深みが出にくい構成だなという印象です。BLでありがちだし、みなさま100も承知かと思いますが、寝言はほぼ同意wみたいな展開もそろそろ厳しいように思います。
ディテールの説明がやや不足しており、設定の整合性にモヤモヤが残ります。魔力が大きすぎるせいで、使用後に体調を崩す・古傷が痛むという症状と、最終的に魔力を削ってもらうことで改善する仕組みのつながりが描かれておらず、因果関係が掴みにくいです。
なんだかんだ、全体感としてはライトなエンタメ作品として楽しく読了しましたが、ファンタジーであってもリアリティを気にする人にはやや物足りない作品かなと思います。
本のタイトルが絶妙で読みたくなる。受けが読心の異能を得る下り、ダークな雰囲気でなぜか笑うセールスマンを思い出したw 受けは自己肯定感の低い甘え下手なツンデレ美人。肉球ポーズで力付けてくれるサービス精神満タンの攻めが素敵すぎる。攻めの住居の快適そうなこと。気難しいネコがいつしか居着いてしまうように、手なづけられていく様がよき。後半、地面師を思わせるようなサスペンス展開でぐいぐい引き込まれます。営業センスに恵まれた攻めを見て、自信を無くす受けのしょんぼりとした様子に頑張れと応援したくなる。
気になった点もあり。結局、異能ってなんだったの?というところが回収されないまま終了。完全回収しないまでも余韻を持たせつつクロージングする方向もありだったんじゃなかろうか。詐欺を見抜いた後、会社に報告を入れないのは謎。プロット上の都合なのだとは思うけど、サラリーマン経験者としてはリアリティの面で違和感がある。その他が良かっただけにその2点は少し残念でした。
作品名はほんわかまったりした印象ですが、地方創生の様子がなかなか詳しく描かれていて読みごたえがあります。受けは人助けをしたいけど助けられたくはなくて、やや自分の殻に閉じこもりがち。アナウンサーでコミュ強・ワンコタイプの年下攻めが、心惹かれるままに受けにぐいぐい懐いてくる様子がかわいい。受けが庭のピザ釜に火を入れたり、季節ごとに柿を取ったり梅酒をつける様子など、読んでいるだけで田舎暮らしを体験しているような癒される心地でした。他のレビュアーさんも、本作を通じて町おこしに思いを馳せているようで、固くて地味なテーマを癒しで包み込む本作は、とても意義深い作品だと思いました。シリーズ化してくれたらうれしいです。
小説内BLゲーム「溺愛騎士団と恋の討伐」という名前の脱力加減といい、王国名が「サイタマンダラ」。魔夜先生の系譜ですか?と期待高まる楽しげなオープニング。某レビューサイトを見ていたら表紙に対する物言いが何件かついていましたが、受けがマライヒっぽくてわたしは好きですw 群馬の位置に該当する帝国からのからっ風が吹き下ろす等、時々はさまれるサイタマンダラの世界観の描写が面白い。悪役である受けにとってのバッドエンドルートをつぶすべく、方方に手を回す受け。ノーマルエンドを目指す中で、嫌われていたはずの攻めとの距離がだんだん近づいていく様子が良き。騎士と言ったら一途に決まってるし、攻めは家系からして執着系でしつこいらしく、ラブシーンも情熱的で素敵です。コメディって書くのが難しいと聞くので、こうして楽しい作品を書いてくれる作家さんはありがたい。とても読みやすかったです。
体の自由を失っても、耳だけは聞こえていた攻め。周囲の人々の態度が次第に変わっていく中で、受けだけが彼を人間として、尊厳をもって扱い続ける。
体のコントロールを取り戻した攻めは、受けを見つけられないまま失意のうちに過ごす。再会までに約一年、物語の三分の一をかけて、二人は「会えそうで会えない」状態が続きます。再三ニアミスが続き、読んでいてじれったく、やきもきしつつも楽しい。
なんにでも食べ物に例える受けが可愛い。そして、「本気で喜ばせたいなら、楽をしてはいけない」と考え、また「この感動を保管するにはどうすればいいか」を真剣に悩み、受けと食事を共にするそのひとときの美味しさに心を震わせる攻めが望外に可愛い。
お互いをつい見つめてしまう食事シーンは、ロマンティックで本当に美しい。
攻めが受けへの思いをどう伝えればよいのか思いあぐね、途方に暮れる場面は切なく、電車の中で読みながら目をシパシパさせてしまった。涙がこぼれないように、Xの邪気に満ちたポストを眺めて気を紛らわせてましたw このシーンは、ぜひお部屋で堪能されることをおすすめしたい。
ある日、突然体が動かせない寝たきりの生活になる、というのは、戦争状態に突入するより確率は高いわけで、より身近に、ひやっとする現実的な恐ろしさを感じる題材。母と子の愛と葛藤を描きつつ、BLならではの魂の結びつきへと昇華させた素晴らしい作品でした。
のっけオープニングから、福澤節。追い詰められてパニックになる主人公。転移元でも転移先でも、人から選ばれる為に頑張らなければならない役どころで、息苦しく恐怖指数高め。神子のバトルロワイヤルみたいな雰囲気でお話はスタートします。表紙のキラキラ感との落差よw
福澤先生の物語は、特に出だしは不穏なムードのものが多い。親によるネグレクトだったり、親戚たらいまわし等、不幸な子供が自分の心を見つめながら、人生を構築していくストーリー。本作も心の闇や痛みに対する解像度が高い。切望に似た承認欲求。。。
受けはアイドル/神子なのに、やややさぐれキャラ。仕事に対するプロ根性が尊い。手負いの猫のように警戒心の強い受けだけど、攻めの特殊能力もあって、徐々に心を開いていく。自分にしか懐かないって萌える。。。後半、攻めによる怒涛の推し活がおもろいw
終盤の展開、ライバルの神子が殺された理由がよく分からない。生贄って書かれてはいるけど唐突に感じました。もう少し背景の作り込みをしてもらった方が納得はしやすかったかと思います。