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女性ポッチさん

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控えめに言って最高。

緒川先生のBLデビュー10周年を記念して刊行されたファンブック。
こういったファンブックってちょっとお高いんですよね。今作品も税込み2750円。だがしかし買う。緒川先生ファンとしては買わずにいられようかっていうね。

A5サイズで一般的なBLコミックよりも大きいサイズに、内容がこれまたてんこ盛り。

まずカラーイラスト。
緒川先生の人気作品の表紙だったり、Twitterで掲載されたイラストだったり、はたまた同人誌の表紙にイベントで利用されたイラストだったり、なかなか貴重なイラストがカラーで収録されています。で、何が素晴らしいって出版社の枠を超えて収録されていること。

今作品はリブレ刊行なので当たり前と言えば当たり前かもしれませんが「カーストヘブン」のイラストが多いかな?が、他出版社で刊行された作品のものもきちんと収録されています。大人の事情でいろいろ大変だったと思いますが、この作品に関わってくださった方に感謝したいです。

お次は緒川先生のインタビュー。
こういったファンブックには先生のインタビューってつきものですが、個人的にこのインタビューが大好きでして。作品の裏側とか、普段知り得ないことがたくさん掲載されていて嬉しい。先生の仕事部屋の写真も掲載されています。
先生の過去も知ることができて、へ―!と驚きと共に拝見しました。いろいろ検索してみたいと思います。

他にはキャララフとかそれぞれのキャラの説明とか、カップリング説明とか。

あと、個人的に一番好きなのがおまけ漫画。
この漫画の分量が凄い。1冊のうちの2/5くらい収録されています。ベースは「カーストヘブン」で、狩野×梓、久世くん×あつむ、けいちゃん×ゆかり、のCPに、あともう一組、本編で登場しないCPも。

「かーちゅとへぶん」というタイトルのそれは、めっちゃコミカル。本編のシリアスさは皆無で、ほのぼのでエロエロなお話でした。

で、これも最高だった、カーストヘブン×誤算シリーズのクロスオーバー漫画。
烏童兄の落とし物を拾った梓が、一生懸命追いかけてお兄ちゃんに渡す、っていうストーリー。

めっちゃ可愛い…。
兄ちゃん、お久しぶりだよ。相変わらずカッコいい。大好きだー!

梓と狩野のほっこりなやり取りも良き、で、もうこの漫画が読めただけでも幸せな短編でした。

あ、あとこれだけ言いたい。
カバーが可愛い。
透明なプラスティックなカバーがかかっているのですが、このカバー自体に絵が描かれているんですね。で、このイラストに描かれているものが…。実は、本に緒川先生からのお手紙(というかメッセージカード)が入っています。先生の想いがつづられたメッセージを読んでからカバーを拝見するとなんかじんわり染み入るものがありました。

カバーを外すと、そこには朝焼けなのか夕焼けなのか。そんな色合いになっていますが、個人的にはこのイラストは夜明なんじゃないかなって思いました。

若者たちの「これから」を描いたような、そんなメッセージを感じましたが、正解はどうなのかな?手に取られた方の、それぞれの感性で読まれればいいと思います。

まあ、控えめに言って最高な1冊でした。

闇の中に見える光に萌える

校内にカースト制度がある。

というぶっ飛んだストーリーのカーストヘブン。前巻の6巻がただただしんどくて、切なくて、どうなっちゃうのかなー、と思いつつ手に取った7巻。

エノという存在が学校の空気を変えていく。
恐怖と暴力で支配する彼に、狩野は引きずり込まれてしまうのか―。

んー。
素晴らしいストーリー展開、としか言いようがない。
これ、過去にトラウマのある方は非常にしんどい作品だと思うので注意が必要だと思うのですが、大人になっていく過程で誰もが感じるであろう閉塞感を見事に描き切ってると思うんですよね。

自分よりも「下」の存在を作ることで、自分の価値を見出す。

非常に愚かでバカげた行為なのだけれど、そこに溺れるか、はたまたそこから抜け出せるのか。友達がいて、愛する人がいて、大事な人がいて。そういう人は強いな、という。

「カーストヘブン」は、そういった閉塞感だとか痛みを、真っ向から描いている。

とことんまで梓は追い詰められますが、そこから逃げない彼の強さに痺れる。
そして、そんな梓を愛した狩野の強さにも。

狩野に裏切られたと誤解してしまった梓ですが、7巻が彼らの関係のターニングポイントなんだろうな。最後の、狩野が梓を守ろうと必死になる姿に萌え。「周囲から見られる自分」を演出してきた狩野が、その鎧を捨ててでも守りたい存在が梓なわけで。どうなっちゃうのかと心配になりますが、あつむとか、巽とか、そういった人たちもいるから大丈夫なんじゃないかなという希望も見える。

が、今巻から登場する新キャラもなかなか闇を抱えていそう…。

容赦ないレイプシーンとか凌辱シーンとかいじめ(いやもはや犯罪だと思うけど)の描写がてんこ盛りで萎え萎えな気分になることも多いのですが、それをはるかに上回る世界観が、「カーストヘブン」にはある。

どういう結末を迎えるのか、ずっと追いかけたいと思います。

黒岩作品なのに…!

作家買い。
ほぼ表題作ですが、終盤に短めの短編が収録されています。黒岩作品の『東の恋が西に落ち』のスピンオフ、というか『東の恋が~』の受けくんの元同僚が今作品の攻めさんですが、そちらは未読でも問題なく読めます。





表題作『恋をしないと働けない』
主人公は漫画編集者の南雲。
新しく漫画雑誌が刊行されることになり、雑誌の目玉となる作家さんに原稿依頼をしてくるよう上司から指示された。
「気難しい」と言われたその作家・今日明日日先生に原稿依頼をするもののけんもほろろの返信のみ。今日先生に無茶な頼みをされ、意地になってその頼みをすべてこなす南雲だが、そのかいあってやっと今日先生に会うことができることに。

が、会って直接依頼するもののいい返事はもらえない。なぜかと問う南雲に、今日先生の答えが「恋をしていないと原稿が書けない」というものだった。「それなら自分と恋愛してみませんか?」と直球で投げた問いに、今日先生は頷いて―?

というお話。

よくあると言えばよくある、作家と編集者の仕事と恋愛の駆け引きのお話です。今作品のキモは、仕事のためと割り切って恋愛ごっこができるのか否か、という部分でしょうか。

今日先生は(これってペンネームだと思うのだけれど、フルネームは最後まで出てきません。ファーストネームは最後に書かれていますが)すんごいお子さまなんですね。好きなものとか思考が子どもっぽいというか乙女っていうか。

で、今作品はBL作品では少数派の攻め視点なんです。
攻めである南雲視点ではあるのですが、そこからじんわりと染み出てくる今日先生の南雲への想いが可愛いの。これはあくまで仕事、だから本気になったらダメ、という。もうね、お約束ですけれども、その先生の恋心がめっちゃ可愛くって萌える。

南雲の想いと、読者の思いがリンクするっていうのかな。
先生の可愛さに、少しずつほだされていく感じ。

南雲が先生に原稿依頼をするときに「自分と恋愛しましょう」と提案しますが、そこに確かに打算はある。仕事をしてもらわないといけないわけですから。けれど、南雲という男性は腹の中までまっすぐっていうのかな。スパンと竹を割ったような性格なので、駆け引きをするずるい男性、といった風でないのも良かった。

で、ですよ。
黒岩作品と言ったら高い画力に支えられた濃厚な濡れ場が持ち味の作家さま。のイメージが個人的に強いのですが、なんとこの二人、キスまでしかしておらんのですよ…。びっくりした。びっくりして、でも新鮮でしたね。黒岩作品で、エロ度少な目って。いい意味で裏切られた感じ。

終盤にもう一話、短編が収録されています。
『おさわりスイッチ 着たままパンスト編』。
黒岩作品の『カラスと熊、そしてサカナ。』に収録されている「おさわりスイッチ」の続編です。

攻めくんが受けくんの泣き顔を見ないと勃たない、好きで好きで押しまくる、1日一回だけ触らせる、といったストーリーです。
今巻は「ストッキングをはいたまま触らせてほしい」という攻めくんのお話。
ストッキングを破ってみたり、手コキしてみたりと腹黒…、もとい晴彦が好きすぎる雪斗くんの暴走のお話でした。

「おさわりスイッチ」が嫌なわけではないのですが、丸々1冊表題作にしてほしかったなー、とちょびっと思いました。恋人になって、その後の甘々も読みたかった!

が、終始ほのぼの、甘々。そして甘酸っぱいストーリー。黒岩作品ならではの濃厚な濡れ場を期待して手に取ると若干肩透かしを食らいそうな作品ではあるのですが、こういったほんわかなお話も良いなー。

非常に可愛らしいお話でした。

恋渡り 小説

栗城偲  yoco 

キャラ良し、ストーリー良し、挿絵良しの神作品。

栗城さん×yocoさん、そしてクロスノベルズ。
もう、面白くないわけない、ということであらすじも拝見せずに早々に予約していました。実際に手にとって表紙の美しさに悶絶。否が応でも期待値が上がる。

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。


本作品には2CPのお話が収録されていますが、世界観というか舞台は同じ。鳥飼いの一族の兄弟のお話です。表題作は鳥飼いの兄・英理のお話。

鳥飼いは代々世襲制。長男が跡を継ぐのがしきたりだ。
が、英理は鳥飼いとしての能力という点において、弟の有理の方が自分より秀でていることを肌で知っている。が、弟に負けまいと奮闘する見目麗しい少年です。

彼は幼少期に一人の男性に出会う。
血だらけになった、美しい男。国を守るために闘う兵士だろうという英理の予想を裏切り、その美しい男・亜蘭は現国王の弟にして鬼神と恐れられる最強の男だった。王の弟という高貴な身分でありながら亜蘭は気さくで優しかった。彼を知るごとに亜蘭に仄かな恋心を抱くようになる英理だったが、違い過ぎる身分と、そしてある出来事が二人を襲って―。

後半は英理の弟の有理のお話。

タイトルは「火水のふたり」。
鳥飼いは戦が免除されていることもあって、戦のあとの宴は雑用を行う。その時に、騒ぎに乗じて侵入してきた賊に有理は襲われてしまう。そのピンチを救ってくれたのが現国王の息子(つまり王子であり、亜蘭の甥っ子)の凰炎。妃が生んだ正当な跡取りでありながら凰炎は時期国王として認められていない。

それは、凰炎が言葉を話せなくなったからで―。

亜蘭×英理。そして凰炎×有理。
どちらも王族×鳥飼いというCPのお話です。

鳥飼い、という職はけして下賤なものではないのですが(むしろ王族に近しい職と言える)、英理は鳥飼いとして弟に劣っていると自覚しているからか何となく切ない空気感が作中を漂っているんですね。そしてそこに華を添えるのがyocoさんの挿絵。

儚く美しいyocoさんの挿絵がそこに加わることで、そこはかとないお耽美な空気に包まれた作品です。

後半の凰炎×有理のお話は、凰炎が言葉を話せなくなった、というバックボーンが効いていて、これまた切ない雰囲気なのです。

が、どちらのCPも、お耽美で、切ない空気感が漂いながら、それにとどまらない。どちらのCPも攻めさんたちがめちゃスパダリだから、なのです。あの手この手で英理、有理の兄弟をありとあらゆるものから守り抜く。この受けくんたちは見目麗しいこともあってか性的な意味でも襲われることが度々ありますが、そこにもれなく現われどんなピンチも救い出すという、お約束のパターンでありながらめっちゃ萌える。

受けちゃん兄弟が、単に守られるだけの存在でないのも良かった。
彼らは彼らのできうることで、自分の愛する人を守り抜こうとする。可愛いのにカッコいい。最高か。

鳥飼いという立場の兄弟たち。
王族と鳥飼い。
そして、スパダリに愛され愛でられる受けちゃんたち。

このバランスが素晴らしいというか、どこを切り取っても過不足なく、上手に絡み合って紡がれていくストーリーに引き込まれてしまいました。

キャラ良し、ストーリー良し、そして挿絵良し。
めっちゃ良い…。
めっちゃ萌える…。

素晴らしき神作品でした。

ほのぼのなオメガバースもの

最近、秀さん作品をよく読んでる気がするなー、と思ったら今年になってすでに3冊目?筆早ッ!と衝撃を覚えつつ。

秀さんはドシリアスな作品も書かれますが、最近はほのぼの系も多い気がしています。今作品も、このタイトルにこの表紙。ほのぼの可愛らしいお話かなー、と思いつつ手に取りました。

オメガバースものは作品によって若干世界観が異なりますが、今作品はオメガは搾取される存在ではなく法によって守られている、という世界観のお話です。





主人公はオメガの凛。
早くに両親を亡くした彼は叔母夫婦に引き取られ、そこで愛情をたくさんもらって生きてきた。が、やはり両親に甘えるようにはいかず、常に「いい子」であろうとしていた。そのことが、現在の彼の性格を形作ったと言っても良い。

人の嫌がることを率先して行う、そんな真面目でいい子の凛だったが、彼は保育士になりたいという夢を持っている。今は国家試験突破を目指しスーパーでバイトしつつ日々奮闘している。

そんな彼はある日公園で一人ぼっちでブランコに乗っている男の子を見かける。気になって声をかけたことで、その男の子・はるみと仲良くなった。そしてそのことがきっかけとなり、はるみの保護者である芹沢にベビーシッター兼ハウスキーパーとしてはるみの世話を頼まれることになり―。

一言で言ってしまうと、すんごく王道のストーリーです。
子育てもので、健気なオメガに、スパダリのアルファ。多くの腐姐さまの萌えツボを押さえましたよー、的な?

その王道のストーリーにスパイスとして加わるのが、凛の前にはるみのベビーシッターとして雇われていた川奈という見目麗しいオメガの青年と、子どもを狙った幼児誘拐未遂事件。

お?もしかしてちょっとミステリーの要素があるのかな?

と、期待したのですよ。
なにしろ秀さん作品なので。

が、うーん。
ああ、そういう…?
という、尻すぼみ感が否めなかった。
川奈という男性の存在はともかく、幼児誘拐未遂事件は必要でしたか?というくらいあっさり感。

肝心の凛と芹沢の恋の行方も。
「運命の番」という言葉で片付いてしまう恋なら、陳腐すぎる感が否めない。オメガバものということもあるのでしょうか、早い段階で二人は身体の関係を持つに至ります。それ故にエロ度はやや高めで、二人の間には何の障害もないため甘々ですし、エロエロです。

甘々、エロエロな作品が読みたいときにはかなりお勧めかと思いますが、二人の恋愛の成就とか、誘拐未遂事件とか、そういったバックボーンに広がりがないために今一つ萌えきれなかったのが残念。

お子のはるみが可愛くって癒されはしましたが、んー、もう一声ほしかったなというのが正直な感想です。

さすが木原先生としか言いようのない神作品。

作家買い。

「パラスティック・ソウル」は2012年に上下巻で刊行され、2018年に新装版として『パラスティック・ソウル(1)(表題作「fake lovers」)』、『パラスティック・ソウル(2)』、『パラスティック・ソウル(3)』、そして完結編である『パラスティック・ソウル endless destiny』の4冊が連続で刊行されました。

『パラスティック・ソウル endless destiny』で一応完結していたので、今作品の発売を知った時、また「パラスティック・ソウル」が読める!と楽しみにしていました。今作品は前作から数十年後という時系列のお話です。

シリーズものではありますが、今作品は独立しているお話であること、序盤に説明が書かれていることから前作未読でも理解できないことはない気もしますが、でも、前作を読まれてからこちらを読まれた方が面白さはアップする気がします。

ということでレビューを。
なるべくネタバレしないように書こうと思いますが、前作含めて若干ネタバレに触れる描写があります。苦手な方はご注意下さい。



かつて人類は厄病に見舞われたが、特効薬が出来たことでその病の根絶に成功する。が、その薬の副作用としてケモ耳や尻尾を持って生まれてくる種が現れた。ケモ耳を持つ彼らはビルア種と呼ばれ、人と共存して生きてきた。

が、ビルア種の中に、子どもの時から優秀な子が生まれるようになる。彼らはその優秀さから「ハイビルア」と呼ばれるが、30歳前後になるとその反動のように知能が後退し、記憶障害を起こし、幼児のように何もできなくなってしまう。

実はハイビルアになってしまう理由があってー。

というのが「パラスティック・ソウル」の世界観です。
前巻までで、ハイビルアになってしなう理由もわかり、その「理由」も根絶され、今ではハイビルアは過去のものになっている。今作品は、再びハイビルアがあらわれる、というお話。

主人公はケイン。
彼は世界政府の職員で、現在は刑務所の刑務官として働く青年です。イケメンで優秀な彼は非常にモテるが、実は彼は周囲の人たちに秘密にしていることが二つある。

つつがなく、平穏に生活したい。そう願い「普通を擬態して」生きている彼だが、ある日一人の囚人の監視員として配属される。H3と呼ばれるその人物は、かつて滅びたとされていたハイビルアだったー。

さすが木原先生だな、と思うのは、「パラスティック・ソウル」の世界観を損なうことなく、前巻までの流れを変えることなく、新しい「パラスティック・ソウル」を紡いでいること。そこにケインという主人公を据えることで、同じ世界観でありながら既刊とは全く違うストーリーになっています。

ケインがひた隠しにしている二つの秘密。
そしてH3がなぜハイビルアになってしまったのか、そして独房に入れられ監視されているのか。

この全く違う因子が上手に絡まり、さらに二人の恋愛感情を盛り込んでくる。さすがとしか言いようがないです。

監視される対象と、監視する側。
とある事情によりH3にはケインをはじめとする自分を監視している人物たちと全く接点がありません。見張られているのだろうと気づいてはいますが、直接話すことも、ケインがどんな風貌をしているのかも、H3には知ることができない。

が、そんな状況にありながら、二人は心を通わせていく。
それは、共依存と言ってもいいかも。
ケインにしろ、H3にしろ、彼らにはお互いしかいなかった。孤独の中必死で生きてきた二人の男が傷をなめ合うようにして心を通わせていく姿は、木原作品ならではのそこはかとなく漂うほの暗さがある。

が、ベースはかなり甘々です。「パラスティック・ソウル」シリーズは木原さんらしいダークさや痛さを抱える作品ですが、今作品はシリーズ中で一番優しく、温かく、甘々なお話かと。

H3は、というかハイビルアは30歳を目途に精神的に幼児化しますが、それはすなわちケインとH3の別れでもある。その前に、H3の願いを叶えようと奮闘するケインの姿が描かれていて思わず落涙しました。

秘密を抱えるケインにとって、自分の職場である刑務官という立場を失うことはどれほどの痛みを伴うのか。それを捨てても、H3の願いを叶えてあげたい。もう、ケインの深い愛情に萌えが滾って仕方なかった。

H3は囚人ではないのに独房に入れられ、そして24時間体制で監視されています。「自傷させないように」という理由からガラス張りの、何からナニまで(何しろH3の自慰行為まで丸見えだ)丸見えの状況で日々過ごしている。

それは読者も同じで、ケインの秘密にしていること、ハイビルアの謎、二人の築いていく恋心、そういったものがまるでガラス張りのように読者にはまるっと見えています。この二人の行く末はどう見ても明るいものにはなりえず、どういう結末を迎えるのかハラハラしつつ読み進めたのですが。

ヤラレタ…。
そうきたか!

ガラス張りの、丸見えの状態で、読者には手の内をすべてさらけ出したストーリー展開でありながら、そういう結末に持っていく。素晴らしいです。さすがです。完敗です。

この作品は非常に狭い世界です。
基本的には二人が過ごす独房がベース。でありながら非常に奥行きのあるお話です。まるで映画の様、と言えば良いのか。

ケインの友人、恩人、そして職場の面々。
そういったサブキャラも、登場シーンこそ少ないものの味わい深く、すべてが過不足なく描かれています。

これ、まだ同じ世界観で描けそう。
まだまだ読み続けたい、素晴らしい神作品でした。

シリアスなストーリーかと思いきや

山田さんの描かれた表紙につられてお買い上げ。

  


主人公は奏汰。22歳で、憧れだったブランドでアパレル店員として就職が決まったばかりの男の子です。
父亡き後、苦労して自分を育てたくれた母に愛する人ができて再婚。やっと幸せを手に入れた母にはこれから幸せになってほしい。母の再婚相手にも連れ子がいて、その子が年頃の女の子と言うことで余計なトラブルを避けるために奏汰は家を出ようと考えるが、母と貧しい生活を送ってきた彼にはお金がない。

どうしようかと思案していた時に救いの手が。亡き父方の従兄である恵次から海外出張に行っている間、彼のマンションに代わりに住んでほしい、と言う打診だった。実はとある事情により父方の親戚とは関係がよくないこともあって好条件でのその提案に軽く疑問を覚えつつも、これ幸いと恵次のマンションで一人暮らしを始めた奏汰だったが、実は恵次のその提案には裏があってー。

と言うお話。
恵次はヤクザの女に手を出して、それを理由にヤクザに脅され、それから逃げるために奏汰を身代わりにしたのだった。複数の女性に手を出していたため何人ものチンピラから追いかけられていたが、そのうちの一人の門原は家の鍵を持っていたためにうちの中にまで入ってこられてしまう。「自分ではなく、それは恵次のやったこと」と説明するも門原は奏汰を解放せず、挙句の果てに他のチンピラから守ってやると言い、そのまま一緒に住むことになって…。

まあ、お約束、と言っていいでしょう、門原という男性はチンピラではなく、本当に他のチンピラから奏汰を守ってくれるわけですよ。

ぱっと見ヤクザものに見える強面の門原と、可愛いビジュアルを持つ奏汰の恋のお話。

クズでクソな(失礼)従兄の恵次に嵌められ、ヤクザものに売られてしまいそうになる奏汰、という、シリアス一辺倒になり得るバックボーンを持つ今作品ですが中身は意外なほどコミカルで可愛いお話でした。

門原さんが男気あふれるナイスガイなこと。
そして奏汰と言う男の子が、薄幸な立場に甘んじずガッツと努力で前に進もうとする男の子だから、なのです。

この二人が、歳の差とか、出会ったきっかけとか、あるいは男同士だから、といった葛藤を抱えて、そんな感情に振り回され右往左往するシーンが可愛いし、面白い。

二人はとある事情から早い段階で身体の関係をもちますが、これをきっかけに二人の関係が大きく変わっていく。その二人の感情に萌えました。特に門原さん。この二人の年齢差は14歳。奏汰はまだ子どもだぞ、と自身を戒めつつもどうしても奏汰に惹かれてしまう門原さんの葛藤がめっちゃ良い。視点は奏汰ですが、彼の目を通して門倉さんの恋心とか葛藤が透けて見える展開で、そのストーリー展開が秀逸です。

前半は恵次絡みのトラブル、後半は奏汰の職場の先輩絡みのトラブル、と奏汰は常にトラブルに見舞われていますが、奏汰を守りたい門原さんと、自分で解決したい奏汰、のやりとりがなんか凄く良かった。二人のカッコ良さに悶絶必至です。

ただ、強いて言うと展開としてはかなり王道でストーリーに捻りが少なかったなー、という感想も。が、それゆえに痛い展開になることはほぼ無く終始ほのぼのな展開。

甘さも、ちょいシリアス展開も、もちろんBL的な萌も程よくミックスされた可愛らしいお話でした。

バックボーンは良いのだけれど。

初読みの作家さまでしたが、綺麗な表紙とタイトル、あらすじに惹かれて購入。ネタバレ含んでいます、ご注意ください。





主人公は35歳の波留。
彼は元プロサーファーだったが、とある出来事をきっかけにサーファーをやめ、現在はマリンショップで店員として働いている。彼は働いているマリンショップの店長に10年も前から恋心を抱いていたが、ノンケで、可愛い恋人がいる店長との恋は成就しないとあきらめてもいる。

が、そんなある日、店長から長年付き合ってきた恋人とついに結婚すると告げられ失意のどん底に陥るが、そこで彼は一人の青年に声を掛けられ―?

というお話。

人気のプロサーファーだった過去。
ノンケの店長への、一途な想い。
失恋したときに現れた、若い男の子。

それぞれのバックボーンはすごく良いんです。うんうん、それでどうなるの?と引き込む展開っていうのかな。

が、うーん。
バックボーンは沢山、しかもそれぞれ魅力的なのに、うまく嚙み合っていないというのか。どうなるのかハラハラしながらページを捲っていくと、いきなりはしごを外される感じ、っていうのかな。

店長への想いはすでに昇華されていたのか否か。
プロサーファーをやめた理由が、それ…?
そして、過去に一度だけあったことがある、しかも当時子どもだった男の子が波留のことがずっと好きだった…?
 
んー、今一つ納得できないというか、胸に落ちてこないというか。
凄くちぐはぐな感じがするんですよね。
風呂敷を広げすぎて、それを回収できてないっていうのかな。

もう少しバックボーンを絞って、ピンポイントでストーリー展開した方が分かりやすかったというか、萌えどころがはっきりしたんじゃないかなーと。この作品のキモは、鳴海という少年が一途にずっと波留を思い続けてきて、その想いが波留を救済したという部分だと思うのだけれど、鳴海がなぜそこまで波留を想い続けてきたのか。その部分が読んでいてもどうしても理解できず、なのでより一層話にハマり切れなかった感じがしました。

そして表紙はイケオジに見えた波留ですが、中身はかなりくたびれたオッサンです。
いや、「波留」という人物像を考えたときにこぎれいなイケオジでは確かにイメージではないのですが、ごめんなさい、バッサリ言ってしまうとちょっと表紙に騙された感も否めなかった。

健気で薄幸な受けさんが若い一途なイケメンに救われるという展開で、こういうお話がお好きな方も多いと思うのですが、個人的にはツボに刺さらなかったのが残念。

次回作に期待。

Dom/Subユニバースものということで。

初読みの作家さまでしたが、今人気上昇中らしい「Dom/Subユニバース」ものということと、みずかねさんの描かれた美麗表紙に釣られて購入。

Dom/Subユニバースものはまだ2冊目で(1冊目は山田ノノノさんの「跪いて愛を問う」)、今一つ世界観を理解しきれていないような気もしましたが、ストーリー自体非常に面白く一気読みしました。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





主人公は警察官の静。
彼の父親は警官から叩ぎ上げで政治家にまでなった重鎮。が、静の母親は愛人でしかなく、父親からはずっと放置されてきた。けれど本妻さんとの間に子がなせなかったことから父親は静を跡取りと認め、それに伴い静の生活の一切を管理し取り仕切ってきた、という過去がある。

静が刑事になったのも父親の意向でしかなく、さらに父親のおかげもあってか順調に出世を続ける静にやっかみ、辛辣な態度を取る周囲の人たちもいる。それを跳ねのけようと、日々奮闘する健気な男性でもある。

最近とあるセックスドラッグ「アポロ」が蔓延し、そのドラッグを介した事件が多発していた。「アポロ」は摂取することで疑似的にDom/Subを体験できる、というものだが、クスリ欲しさに犯罪に手を染める事件が急増し、アポロを駆使したと思われる犯罪だと推測された。

それに対抗する形で「特殊性向犯罪対策本部」が立ち上げられ、そこに静は捜査員として加わるが、医師免許も持つ異色の官僚・櫛田とペアを組まされることになる。お飾りの上司と組まされたことに辟易としつつ捜査に奔走する静だったが、捜査過程でアポロを浴びてしまい―。

というお話。

Dom/Subユニバース。
んー、オメガバースに近い感じかな?SMとは違う…、んですね?
と今一つ理解しきれていないのですが、

人を支配したい「Dom」と支配されたい「Sub」がいる。
「Sub」には発情期があり、発作的に支配されたいという感情に苦しむことがある。
生まれつき持つ性癖で、とある出来事をきっかけにその性癖を発症することもあれば気づかずに生きていくこともある。
基本的にはパートナーを作るが、パートナーの解消は自由。
セックスの時だけではなく、日常生活の上でも「Dom」は「Sub」から認められたいし、可愛がりたいし、甘やかしたい。反対に「Sub」は「Dom」に構ってほしいし、いじめられたいし、尽くしたい。
この関係が上手くいかないと日常生活に支障をきたすほどの身体的な変調をきたすことがある。
っていう感じでしょうか。

今作品では、静は潜在的に「Sub」の性癖を持ち合わせていたけれど、アポロを浴びてしまったことで顕在化した、ということなんですね。

で、静と仕事上のパートナーである櫛田は「Dom」であり、仕事において、そして私生活において、静と櫛田は仮のパートナーになるけれど。

静はその生育環境により、一人で奮闘する癖がついているっていうのかな。誰に頼ることもできず、周囲からの偏見を跳ね返すためには自分が頑張るしかないと思っている。そんな彼が、自身が「Sub」だと知ってしまった。その時の絶望感が手に取る様にわかる。櫛田を頼りたくない、けれど「Dom」に支配されたい。手嶋さんの文章が非常にお上手で、彼の葛藤や苦しみが読者の胸に迫ってくる感じ。

バックボーンとしてはシリアス寄りなのですが、ベースとしてはシリアス一辺倒ではありません。その大きな要因の一つが、櫛田の関西弁。仕事の時は標準語で会話しますが、プライベートの時はおっとりした関西弁で話すのです。これがなんともまろやかというのか。そして彼自身、穏やかな人物ということが大きく効いている感じ。

Dom/Subは基本的にDomが支配し、Subは支配される側、という関係なので、どうしてもセックスの時はDomがSubを押さえつける、といった立ち位置がベースなのだと思います。支配する、ということで、櫛田が静を言葉で嬲ったり、軽くお尻を叩いたり、我慢させたり、ということはあるのですが、ハード過ぎず、ぬる過ぎず、櫛田が優しい男性なのでプレイ自体がハードになりすぎない。このジャンルは初心者なのでこの二人の関係が標準的なものなのか否か分かりませんが、少なくとも初心者には非常に手に取りやすい1冊だったと思います。

で、今作品は二人のDom/Subという関係が大きな因子ではありますが、そこにセックスドラッグが絡んだ犯罪が加わることによりミステリーの要素もプラスされて、犯罪解明のストーリーもすごく面白かった。

正直に言ってしまうと犯人は途中で読めてしまう部分もあったりするのですが、そこに絡めてDom/Subの性に生まれついてしまった人の葛藤とか苦しみとか、櫛田の過去とか、あるいは複雑な人間関係もきちんと描かれていて非常に読みごたえがありました。

お互いに深い愛情があるからこそ、Dom/Subユニバースという性が生きてくる、というのが素晴らしい。そしてオメガバものと大きく異なるのは、パートナーという関係を、Subからも解消できる、という部分なのでしょうかね。一度番契約を結んだら最後、オメガにとってはどんな状況でも番解消はできない(アルファは可能なのにね)と違って、本当に対等な立場。

SMものとか、オメガバものとか、近い関係のものは他にあるので、作家さまの書き方によってDom/Subユニバースが生きるか否か変わってきそうなのも面白い。

新たなジャンルとして確立されそうなのもうなづける、非常に魅力的なジャンルだと思います。

初読みの作家さまでしたが、読みやすい文体に素晴らしいバックボーン、魅力的なキャラ、引き込まれるストーリ展開。どれをとっても素晴らしい作品でした。手嶋さんの違う作品も読んでみたいと思います。

あ、みずかねさんの挿絵は今回も素晴らしかったです。
みずかねさんの描かれるスーツは最高だ…。

黒か白か(6) コミック

さちも 

王道の展開ではあるが。

『黒か白か』の6巻目。



恋人としての関係も順調。
お互いに役者としても活躍中。
そんな中、二人で歩いている写真が流出し、けれどその流れで二人が高校時代からの友人だった、とバレてしまいー。

というシーンから6巻はスタートします。
お互いに必死で隠してきた(マネさん含む)二人の接点は、けれど世間ではおおむね好意的に受け入れられていく。特に慎の好感度は世間的にも、スタッフさん内でも爆上がり。

でも、そこはかとなく漂う不穏な空気感は常にあって。

慎のキャラが生きてるっていうのかな。
彼は天然ちゃんなんですよね。人を疑うことも、自分が他人からどう見られているのかもあまり気にしてない。自分に、他人が興味があるだなんて思いつきもしない、っていうか。

そんな慎に振り回される周囲の人たちの苦悩が、良い。
めっちゃ良い。

執着攻めのシゲはもちろんのこと、多々良さんとかね。ほかにもいろいろね…。
慎のシゲへの想いは揺らぐことはなく、ないからこそのこの不安定さというのか。

最後に一波乱あります。
各々の感情とか、立場とか、関係とか。この出来事を介して、彼らがどう動いていくのか楽しみです。

王道の展開と言える流れではありますが、魅力あるキャラでゴリ押ししてる。が、それが決して悪い訳では決してなく、むしろそれ故に今作品の世界観があっていい感じ。

次巻も楽しみです。