タイトルの時点で…といいますか、これは読み進めてすぐにピンときてしまいますね。
テンポ良く進むコミカルなストーリーに身を任せ、主人公であるライハと謎の村人・レオによる奇妙で心地が良い共同生活を楽しむのが1番かなと思います。
次第に甘さがグッと増していく関係性の変化がかわいらしい1冊でした。
体が大きくてぶっきらぼうそうな攻めからのストレートな愛情表現ほどおいしいものはないですよね!
こちらの作品、なんというかすごくわかりやすいのです。
2人の出会いから始まり、共同生活を経て少しずつ惹かれ、力を合わせて問題に立ち向かい、最後はストンと着地をする。
正直なところ、きっとこれはこうなるよねと展開の予想ができてしまったのですが…
逆を言えば、綺麗にまとまっていてわかりやすいからこそ、肩の力を抜いて楽しみやすいお話でもあったかなと。
メイン2人が嫌味のない素直な人柄だったこともあり、村での生活描写も、主人公・ライハの成長も、後半になるにつれどんどん甘くなるレオとの恋愛模様も最後まで微笑ましく追いかけられました。
…と、これはこれでありなのだけれど、ページ数的にも個人的にはもう少しイチャつく2人を読んでいたかったですし、山場である海軍のあれこれに関してはやや駆け足であっさりしていたように感じられました。
個性豊かで好感が持てるキャラクターが多かったがゆえに、もうちょっと読みたい・知りたいも多かったです。
ライトめな読み口で起承転結がカチッとハマった王道作品が読みたい!なんて時にちょうど良いバランスなのかもしれません。
読み終えて気になった点は、状況説明文の途中でライハの心の声が()で入り、そのまま文章が続いて閉じてしまうパターンが多く読みづらかったことでしょうか。
うーん…入れるのであれば段を分けるか、もしくはない方が読みやすかったかな。
受けの痴態や発言を前にして、脳内が「受けかわいい」でいっぱいになる攻めも、世間ではかっこいいと言われている攻めのことを「かわいい」と思ってしまうかわいい受けにも会える!
とっても幸福度と栄養価の高い作品だなあと思います。
めでたしめでたしのその後の2人といえば…
二人三脚で乗り越えなければならない、なにかしらの大きな山が立ちはだかりそうなところ。
ですが、こちらの2人は巻数が増えるごとにどんどん甘さと相思相愛っぷりが増していくのだからたまりませんね!
3冊目となる今作も、お砂糖たっぷりの甘みとフェティシズムをドカドカ刺激されるプレイの数々にすっかりやられてしまいました。
お話としては、事務所公認のパートナー契約や女性スタッフとの一件、翔太の家族との対面など、山場となる読みどころがしっかりとある1冊だったかなと。
ただ、そのエピソードのどれもが安心して読めるものなのです。
蒼くんと翔太の関係性がこれ以上ないほど強固なものなので、作中で2人が感じた少しの嫉妬や不安も、そのすべてがより強い関係になるための肥料になっているというか…
大きな困難を乗り越えるのももちろん読み応えがあって良いのですけれど、こちらの作品は周囲の人々にあたたかく応援されながら愛を育む2人を眺めるのもいいなあなんて思えちゃう。
肩の力を抜いてストレスフリーで楽しく追いかけられるのがうれしいです。
そして、なんだか毎巻蒼くんが見せる甘S時々ピリッとなギャップ大な姿にうぐぐ…となっています。
光音くんの前だとやや子供っぽいところが見え隠れするのもずるいんですよ…
かっこいいとかわいいと甘みのあるSっ気が共存する攻めって、なんでこんなにも底なし沼のような魅力があるんだろう。
それを読み手が見られるのも、蒼くんを前にした翔太が素直でかわいらしいいい子だからなんですよねえ。
お互いがお互いにしか見せない甘々な姿がこれまた最高に良くって!
それをちょっとだけのぞき見させてもらっているようで、終始多幸感でいっぱいになれますね。
まだまだこの2人がイチャつく姿を末長く眺めていたい。
そんな気持ちで読み終えられる素敵なシリーズだと思います。
吾妻先生が描く、登場人物たちのいきいきとした表情が大好きです。
読んでいて目が楽しいとはこのことだよなあなんて思います。
背景もアングルも美しくて目が足りませんね!
待ちに待った灯台守のかもめの子の続きは恋愛編。
はー、おもしろかったなあ…!
どんどん成長をして新しい感情を知っていく好奇心旺盛なルネと、そんなルネに時に振り回されながらも居心地の良さを感じていそうなエヴァン。
まるで家族や相棒のような2人の灯台での生活を見守り、ちょっぴりコミカルで初々しい恋のエッセンスがぽたっと垂らされた微笑ましい日々を楽しみながら追いかけられました。
少しずつエヴァンが若返っていってしまう謎や、彼が抱えている罪とはなんなのか?
はたしてルネとはいったい何者なのか?
幸せと思春期のようなむずむずでいっぱいの日常の中に、断片的に差し込まれる過去と謎が非常に良いスパイスとなっていて見事でした。
ページが残り少なくなっていくにつれて先が気になって仕方がなくなるんですよね。
毎巻引きが上手いものですから、読み終えたばかりだというのに早く続きが読みたくなってしまう…なんてうれしい悩みなのでしょうか。
そして、2巻で特に印象的だったのは、エヴァンが顔をぐしゃぐしゃにして泣きながらルネに愛していると伝えるシーン。
なんて魅力的な表情を描かれる作家さんなんだろう。
なんだかもう、2巻ではエヴァンに1巻とはまるで別人のような幼さとかわいらしさが漂っていてたまらなかったなあ!
本来の彼はきっとこっちなのかな。
赤面顔も涙目も、ルネに対する何気ない仕草もすごくかわいらしかったです。
カチカチと時計が先に進んだり戻ったりするように、一方は先へと進み成長をし、一方は巻き戻って若返り同い年になった2人。
次巻は真実編とのことで、この先が読めることをうれしく思いつつ…
どんな現象が起きているのかまだまだわからないことだらけではありますが、最後には彼らのもとに幸せが訪れることを願うばかりです。
ショートストーリーを追ってはいたけれど、いざキャラ文庫の刊行予定表に「FLESH&BLOOD(25)」の文字を見つけてからというもの、こんなにもうれしいことがあるだなんて!と、いてもたってもいられない気持ちでいっぱいになりました。
松岡先生、おかえりなさい!
この10年間、何度も読み返しながら我らがキャプテンの帰還をずっとお待ちしておりました。
本編のカイトたちに再び会えるのはもちろん、松岡先生が紡ぐ物語の続きが読めることが1番の喜びです。
あとがきの「セール・ホー!」の一言が本当にうれしくてたまりません。大好きです。
新刊を読むからには全巻読み返してから読むぞ…!と、数日をかけてどっぷりとFLESH&BLOODの世界に浸り、いざ25巻へ。
物語は辛く厳しい戦いの渦中だというのに、見知った面々が登場するたびに懐かしさを覚え、読める幸せを噛み締めてしまった自分がいます。
本編刊行が10年空いていたとは思えないほど自然に、24巻の先を生きる彼らがそこにはいました。
イングランド側、スペイン側ともに緊迫した状況がひしひしと伝わる25巻でした。
アルマダの海戦に入ってからの物語の進み具合は、今までの荒波のような流れと比べればゆっくりめだと思うのです。
ですが、その分キャラクター1人1人の心情が本当に丁寧に描かれていて惹き込まれるんですね。
彼らの苦悩、想い、深い心の繋がり、生きざまをじっくりと追いかけられるかと思います。
ジェフリーと海斗の関係性に関しては言わずもがな。
すっかりグローリア号に馴染んだキットを交え、協力し合いながら最良の方法を考え、実行する仲間たちの姿は読み応えたっぷりです。
そして、作中で特に印象的だったのは、形は違えどお互いに相手のことを想う海斗とビセンテの心情でした。
全てを知っているからこその海斗の苦悩と成長、海斗の生死を未だ知らずにいるビセンテ。
イングランド側はもちろん、スペイン側のことも好きになってしまっているものですから、難しいとはわかっていてもどうにかどちら側も無事でいてほしいと願うばかりです。
魅力的がゆえに、どちらを、誰を応援したらいいのかがわからない。
それがこの作品の1番悩ましいところかもしれませんね。
ジェフリーと海斗の命運を握ると言っても過言ではない、蠍の心臓作戦はどうなるのか?
海斗が考えるように歴史の差異があるのだとすれば、今後作中でどう影響を及ぼすのか?
まだまだ気になることだらけな海戦の行方を引き続き追いかけたいです。
大満足の1冊でした!
もう何度目になるでしょうか。
新刊発売を機におさらいをしようと、ここ数日夢中になって読み返していたFLESH&BLOODシリーズも24巻目。
いやはや、なんという読み応えなのか。
臨場感たっぷりに描かれる戦闘描写に手に汗を握ります。
カイトを含め、史実を知る読み手側はこの戦いの結末を知ってしまっているものですから、より気持ちが入るといいますか…
イングランド側が勝利するとわかっていても、それでもスペイン側もどうにかならないのだろうか?と考えてしまうのは、それはやはり松岡なつき先生の筆力が素晴らしいがゆえに他ならないでしょう。
ビセンテにアロンソにレオ。
とても魅力的な彼らをずっと追っていたからこそ、スペイン側が苦しい展開になる度に、なんとか無事に助かってほしいと願ってしまい、非常にハラハラともどかしい気持ちにさせられます。
カイトがビセンテへ残した言葉の謎。
そしてこの世界での歴史の差異がどう影響し、どんな結末を辿るのかが怖くもあり楽しみでもあります。
1冊の中で視点が何度も変わりながら綴られるこちらの作品。
カイトだけではなく、もしかしなくてもこれは全員が主人公なのではないか?と思いながら追いかけています。
胸を締め付けられるような激しく厳しい海戦描写。
より深く強固なものになっているジェフリーとカイトのつながり。
ジェフリーとナイジェルやキット、ビセンテとアロンソのブロマンスのような関係性もFLESH&BLOODの世界に夢中になる理由のひとつなのかもしれません。
いよいよ次巻は待ちに待った25巻!
引き続き楽しみながらじっくりと彼らの生きざまを見届けたいです。
最後の一文から始まる、2度目の結婚生活を描いた今作はというと…?
いわゆるやりなおしものといったところでしょうか。
同題材を扱った小中先生作品を挙げるとすれば、私はやはりRebirthが記憶に強く残っています。
Rebirthがあまりにおもしろかったものですから、題材が似た今作はいったいどんなお話になるのか?と、期待値大の状態で手に取りました。
結果、良かった部分となんだかすっきりしない部分がせめぎ合い…やや中立寄りのこちらの評価に。
中盤からはすごく良かったと思うのです。
何かを失敗してしまった過去を変えられるやりなおしものならではの、そう!やっぱりこれが読みたいよね!という醍醐味が詰まっていましたし、BL的にもとってもおいしい。
自分の気持ちを素直に言葉や態度で相手にしっかりと伝え、ちょっとのボタンのかけ違いをかけなおすだけで人生は変わる。
不器用な2人がなんとまあ微笑ましいやらかわいらしいやらで非常に楽しめました。
この甘さ、たまらないですよね。
ですが、導入から中盤に入るまでの流れが個人的にはあまり心地良くはないものだったのがやや残念です。
この後にきっと盛り上がるなにかが待っているに違いないと思いつつも、走馬灯という名の長く語られるスバルの片想い描写にグッとは惹かれないまま、SF風味の特殊設定の世界観を追いかけることに…
この設定、煮詰めたらおいしくなりそうな具材はたくさんあったのですけれど、どれもあっさりしていたように感じます。
それならば、特殊設定をぎゅっと詰め込むよりも主人公であるスバルの魅力をもっと伝えてほしかった。
サブキャラクターに関しても、キャラクターの立ち具合やエピソードの厚みにムラがあったように思います。
ちょっぴり謎解き要素もある中盤〜終盤はお話に波がありおもしろかったので、序盤からもっとがっちり掴んでくれる話運びだったのならうれしかったなと惜しいです。
みなさん、吹き出しの形で爆笑したことはありますか?
私はこの作品が初めてでした。
なんてご立派な吹き出しなんだ…
人鳥ぺんぎん先生のギャグセンスの高さに終始やられています。
BLの3大要素である「誤解・思い込み・すれ違い」
これらが集まれば胸がぎゅっとなるような切ない流れになりそうなところですが、こんなにも楽しくて笑えてしまうのはなぜなのか…?
勘違いに一生気が付かない攻め・舞沢が本当におもしれー男すぎて目が離せません。
こだわりを感じる構図や画力の高さに加えて、これぞラブコメ!なテンポの良さと、個性的なキャラクターたちが繰り広げる愉快な恋模様がなんともクセになるこちらのシリーズも4作目。
舞沢の斜め上の思考力と圧倒的ポジティブさと、宮の一途で健気なかわいらしい面が巻数が増えるごとにどんどんとパワーアップしていって、1冊読み終えた頃には全力で笑えて萌えられる楽しいジェットコースターに乗り込んでいた気分になれるんですよね!
3巻の終わりが終わりでしたから、恋人同士に待ち受ける切ない展開があるのか?と思いきや、やはりそこは信頼と実績の舞沢です。
いつもエロ思考を忘れず、なにかを絶妙に勘違いをしたまま、切ないどころか笑いとともに無意識にどでかい愛をドカドカっと宮へと運んでくるのだからすごい。
結果、どこからどう見ても相思相愛な溺愛CPとしてさらにレベルアップした2人をたっぷりと堪能できるうれしいことになっています。
(もちろん宮のおいしそうな褐色肌も!)
新たな濃ゆいキャラクターも登場し、2人の仲もより深まりを見せた読み応え大な1冊でした!
はー、楽しかった!そしてとんでもなく宮がかわいいんだなあ…
素直になったジェラシーおばあちゃんな宮がかわいくてかわいくて仕方がなかったです。
本音を隠してしまいがちな宮のいじらしくてかわいらしいところが、4巻目にしてやっとひょこっと表に出てきたように思います。
このまま末長く身も心も舞沢に愛されてほしい。
きっとこの流れならば、次巻はもっともっと甘い2人が見られるのかなと今から期待に胸を膨らませて続きをお待ちしています!
気になる相手と出逢い、恋に落ち、気持ちを伝え合って結ばれる。
恋愛もののお話としては、もうここでハッピーエンドと言えるものでしょう。
ですが、その後は?
めでたしめでたしのハッピーエンドのその後には、はたしてどんな未来が待っているのでしょうか?
その先が明るい未来であるに越したことはありませんが、誰も彼もが必ずしも幸せなままだとは限らないと思うのです。
そんな、あまり商業BL小説で多くは見かけないけれど、現実世界でも起こり得るリアルな題材がとても丁寧に描かれている作品でした。
なぜ私はもっと早くこちらの作品を読まなかったのかと後悔したと同時に、新装版をきっかけに読むことができて本当にうれしく思います。
読みたかったものを見つけた。そんな気持ちになったのです。
大学生時代に知り合い、やがて恋人同士となった阿久津と水野。
彼らが歩んだ15年間をじっくり。
もどかしすぎるほどにじっくりと両方の視点から追いかけるかたちで進む濃い1冊です。
一度は綺麗な形にぴったり収まった大好き同士だったはずなのに、少しずつなにかがずれ始め噛み合わなくなっていく。
良かれと思っていたことが良くなかったり、相手に上手く伝わっていなかったり、楽しいあの時のままの気持ちでいられる心の余裕がなくなっていったり…
この、ライフステージが大きく変化する20代から30代にかけてのリアルな心理描写の上手さに唸りました。
すべてを理解できなかったとしても、ああ、これはどちらの気持ちも分かるなと思ってしまうんです。
山も谷もあります。苦しいことも、幸せなこともあります。
でもそれって、性別も年齢も境遇も関係なく人生というのはきっとそんなものなのではないかな。
彼らが歩んだ長い15年間は決して薔薇色とは言えません。
時になにかを掛け違え、間違い、判断に迷いながら、未練たらしいみっともない内面を読み手にさらけ出し続けてくれるのです。
だからこそ没入して読めたというか、夢中になって読みきれたのかもしれませんね。
どこかにいそうな人々が、誰しもが一度は感じたことがある「よくある」を体験して成長をしていく、薔薇色じゃない人間くさくて青くさい彼らの人生がとても魅力的に見える作品でした。
人生山あり谷ありを経て、彼らのハッピーエンドのその後のその後はいったいどんな結末を迎えるのか?
非常に読み応えのある生々しい15年間です。
ぜひ最後まで見届けてみてください。
中原先生作品に登場する、人ならざるものが好きです。
人の形をとることもできるけれど、もちろん中身は人ではありませんから、元々の種族らしさが出ている本能的な行動・言動でほど良く引っ掻きまわしてくれるんですよね。
そんな人間の常識が通じない相手が、人間と共に生活をしてみたらどうなるのか?
これがまあ、なんとも不思議な組み合わせの共同生活が楽しくて仕方がなかったのです。
人ではない彼の自由な振る舞いに振り回される主人公の姿に笑っていたら、なんだか次第に読んでいてむずむずとしてくるうえに、ふと気が付けば胸が苦しくなることも。
いやあ、おもしろかったです。
愛着が湧くキャラクター作りが本当に上手い作家さんだと思います。
何者かに海で殺されそうになっている主人公の速人が絶体絶命状態の中で目にしたのは、竜に似た美しい生きもの。
命を助ける代わりに、目的を果たした後はその命を喰らう。
かつての竜の王・渦目と契約を交わして生き延びた速人と、契約によって速人を助けた渦目。
彼らの奇妙な共同生活とともに、速人を殺そうとしたのはいったい誰なのか?
速人の父と姉は本当に海難事故で亡くなったのか?と、犯人探しをする姿が描かれていきます。
犯人探しに関しては、どう考えても怪しい人物がすぐにわかってしまうので…結末も含めてちょっと物足りなく感じ、ひとつ評価を下げました。
ただ、速人の地元の人々と渦目の交流と、共同生活を送る中で速人と渦目のお互いへの感情が少しずつ変化していく様子が楽しいやら微笑ましいやらですごく良かった。
渦目がとっても愛嬌のある海の王さまで、読んでいるうちにどんどん好きになっていっちゃいますね。
なにかに情熱を注いでいる負けん気が強い受けがお好きな方もぜひ。
1番良かったのはやはり海のシーン。
海洋学者を目指すほど海が好きな速人の心が、海と海の生きものの美しさに浮き立っているのが伝わってきて、こちらまでわくわくしてくるんですよ。素敵でした。
種族は異なっていても、海を愛する心は同じの2人。
自分が宝物のように愛しているものを見てこんなにも瞳を輝かせてくれたのなら、そりゃあ心惹かれてしまうよね…と、渦目視点で見えてくる彼の心情の変化にもグッとくるものが。
クスッと笑えて、ヒリヒリもわくわくもむずむずもじんわりもあります。
最後まで2人の行く末を追いかけてみてほしいです。
フェチ的な面でいうと、スプリットタンがお好きな方や、海好き・海洋生物好きの方にはピンとくるものがあるかもしれません。
どこがどうだったと上手く言葉にできないのだけれど、理屈抜きでぐっと心惹かれたことはありませんか?
私にとってはまさにこちらの作品がそうでした。
すごく素敵でした。好きです。
正直なことを言えば、2人が恋に落ちる描写に強い説得力があるか?と考えると、やや唐突に感じるところもあるのです。
しかしながら、恋に落ちたその後が良くて。
作中の彼らを目で追えば追うほど、すごく真面目で誠実な恋愛をしていくではありませんか。
もっと淡々としているのかと思いきや、実のところ結構な熱量を感じたというか…じわじわきます。
これはぜひ読んで体験してみてほしいです。
分かりやすくこうですと説明をしてくれるタイプの漫画ではなく、美しい陰影、ちょっとした視線、モノローグ、余白で魅せて読み込ませてくれる作品でした。
作画の素晴らしさにも目を奪われます。
学生と社会人。年齢もライフステージも異なる2人のリアルな感情が丁寧に描かれていて、社交ダンスがキーとなっている作品なのですが、ダンスだけでも恋愛だけでもない「この年齢の異性愛者の男性ならでは」がごく自然にあったのがとても印象的で魅力的だったように思います。
気持ちはとっくに熱していても、一度一歩引いて冷静にお互いにとっての最良や未来を見据えてじっくりと悩み考え、それでも手を取った2人。
先のことはまだわからないけれど、きっと彼らが踊るダンスと同じように、迷ってもその都度手を取りリードを代わりながら進んでいくのでしょう。
光のある前向きな結びも、2人の関係性も良かったなあ。
地にしっかりと足がついた恋模様が本当にドラマチックでした。
大人のほうが刺さるシーンがあるかもしれませんね。
年度末に素敵な作品と作家さんに出会えてうれしかったです。