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愁堂さんらしい、といっていいでしょう。愁堂さんの新刊は刑事もの。連続殺人事件を捜査する刑事が主人公のお話なので、「死」にまつわるエピソードがちょいちょい出てきます。凄惨な描写は書かれていませんが、苦手な方は注意された方が良いかもです。
ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は、念願かない警視庁捜査一課に配属となった雅人。
配属初日に遅刻しそうになりつつ一課に到着した彼は、なぜか血みどろ。そんな雅人は心配した先輩刑事である鵠沼に医務室に連れていかれる。
そこで出会ったのが医務室勤務の医師である姫川。
野性味あふれるビジュアルを持つ姫川だが雅人がけがをした状況を瞬時に判断できる有能な医師。
そして、赴任早々雅人が捜査することになった事件は、数人の美少年が、セーラー服を着させられ、性的暴行を受けたうえで絞殺されるという凄惨な連続殺人事件だった。捜査時に被害者の写真を見た雅人は、かつて自分が受けた犯罪を思い出し、気を失ってしまう―。
というお話。
雅人は、15年前に今回の犯罪の被害者と同じように拉致され、セーラー服を着させられ、そしてレイプされるという犯罪に巻き込まれたことがあった。周囲の人は雅人を気遣うが、雅人自身はその時の記憶が一切ない。そのために彼自身はトラウマを感じることもなく今まで生きてきた。
15年前に雅人を襲った犯人が今回の犯罪を犯している犯人なのか。
そこを軸に展開していくストーリーです。
主要な登場人物は全部で4人。
雅人。
雅人の先輩刑事の鵠沼。
医務室の医師である姫川。
そして雅人の中学からの友人である本条。
ほぼ、この4人がメインになりストーリーは展開していきます。
気の良い先輩である鵠沼と、雅人を気にかけてくれる姫川、そして雅人が15年前に犯罪に巻き込まれたことを気に病み、常にサポートしてくれる本条。事件そのものは凄惨ですが、雅人の本来の明るく人を気遣う性格にプラスして、そういったナイスガイたちに囲まれストーリーが進んでいくのでシリアスさはさほどありません。
雅人は明るく振舞ってはいますが、彼が受けた犯罪被害は彼の心奥に根深く傷をつけている。過去の出来事を、雅人は本当の意味で克服できるのか、という点も大きくクローズアップされている内容で、犯人捜査というだけではなく、恋愛的な要素が大きく含まれている作品でした。
雅人が過去を吹っ切れるか否か。
その点を姫川さんとの関わりによって描いているさまはさすが愁堂さんといった感じ。
姫川さんにも、過去のトラウマがある。
だからこそ雅人の記憶障害にも理解と思慮深さをもって接することができるんですね。
連続殺人事件、そして姫川さん×雅人の恋の行方。
どちらも盛り込まれていて、1冊で2度おいしい作品でしたが、しいて言うとどちらもやや中途半端な感じも。
犯人捜査は、サスペンス物がお好きな方には「それ、やっちゃダメじゃない?」と突っ込まれること必至な展開。さらに犯人逮捕もかなり力技。途中まで推理ものとしてぐいぐい引っ張る展開だっただけに、終盤の失速感がやや残念でした。
姫川さんと雅人の恋の行方も、んー、もう一声ほしかったな、と。
序盤からお互いに好意を抱いていることが分かる展開で、恋人同士になるまでの過程を楽しむというよりは、いつ恋人になるのかな、という展開待ちだった気がします。
反対に言うと、犯罪というシリアスな展開ではありますが、さほど痛い展開にはならないので読み手はあまり選ばない作品かと思います。恋愛的な観点で読んでも、すれ違いとか、ぐるぐるする流れではないので読みやすいかと。
サスペンス物が大好きな私としてはもう少しサスペンスに比重を置いてほしかった気もしますが、BLという枠で描こうとした場合、このくらいの分量が良いのかも。本格的なサスペンス物を期待して手に取るとやや肩透かしを食らう作品ではありますが、サスペンス×恋愛もの、というベクトルで読んだときに非常に万人受けする展開だったと思います。
鵠沼さんと、本条くんがめっちゃナイスガイで、この二人、くっつかないかなと秘かに願ったりしてました。スピンオフとかどうでしょう、愁堂先生。
最近では愁堂れな先生の作品には辛口採点をしがちだったのですが、久しぶりに面白いと思いました。
連続殺人事件の犯人もなかなか分かりにくくて、推理小説としても良かったと思います。
初めはやたらと過保護な親友を疑ってしまったくらいでした。
悲惨な過去を持っているのに、記憶が無いので雅人が終始あっけらかんとしています。それも暗くならずに良かったかもしれません。
ただ神作品とならなかったのは、姫川が雅人を好きになる理由が今ひとつ弱かった点です。姫川のトラウマも弱かった。
恋愛要素もほぼありませんでした。愁堂先生はプロローグとかエピローグとか好きですよね。
ちょっと使い方違うと思います。
蓮川先生スキーで購入。表紙の色合いが暗いので、恐る恐る読んだのですが、今回は受けの陽キャラな部分がとっても良かったです!萌2よりの萌にしました。本編220Pほど+後日談13P+あとがき。後日談が傑作です。
本庁捜査一課配属初日に階段から落っこちて流血沙汰になりながら、部屋に駆け込んだ雅人。とにもかくにも医務室へ行け!と連れていかれた先には「姫」と呼ばれる医者がいて・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
鵠沼(攻めと親しい、麗しいロン毛刑事!)、本条(受けの中学時代からの親友、医者)、松本(受けの中学時代に差し入れをよくしてくれたパティシエ)、その他刑事仲間複数。この鵠沼と本条がこれまた超超超イケメン、眼福でございまして「これだけでご飯3杯いけます、私」という気分です。
***良かったところ
受けさんがすっごく陽性!うっかりするとドロドロずぶずぶ気分なお話になりかねないのに、この受けさんの拘らない、すっきりさっぱりした考え方で、とっても救われてます!ちょっと素直すぎるんですかね、表情がくるくる変わる印象でもあるので、ちょっと刑事に向いてるのか???という気もするのですが。後日談の冒頭も、いくら酔っぱらっているからとはいえ「挿入がないんです」って鵠沼にコクるなよ!!!!と大爆笑しちゃいました。
攻めさんはトラウマ持ちのスパダリ(挿絵に、うっとりシックスパックあり)。受けさんの「トラウマになりかねないものを、全く意に介していない強さ、明るさ」に惹かれていくのは良くわかります。その恋心をもうちょっとわかりやすく出してくれると嬉しかったかな。表情少な目な印象の攻めさんなので、しょうがないか・・イケメン元刑事だしな。
サブキャラである本条(泣き虫?)も鵠沼も面白そうでした。超気になる。続きでないかなあ。
恋話的にはうーんちょっと物足りない(事件話の方が多いように感じる)のですが、とにかく蓮川先生の手になるビジュアルがあまりにツボだったので、無問題!と感じた一冊でした。途中にある13歳ごろの受けの道着姿(ちょっと桃色と思われるものが見えてるよっっ)を本当にカラーで見たかったです!