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小説
亡くなってしまった大切な人を思い出すのは、すこしばかり不思議な気持ちだと思います。
勿論、まだ生々しい記憶の時は悲しかったり辛かったり、心がグサグサに傷つくだけなのですけれど。
でもある程度時が過ぎて『時間薬』が効いてくると、その悲しみや辛さの中に、ほんの少しばかりの『甘さ』が混じって来る様な気がするんです。一緒に過ごした大切な時間や、もらった嬉しい言葉、与えられた影響などなど、自分の中に『その人によって変えられた部分』を発見する度に、とてもとても悲しいのに胸のどこかが暖かくなるような感じ。現実にはいない人がいつも側にいてくれる様な錯覚。
それは今後を生きていく力を与えてくれる様に思うんですね。
この本はそのことについて書いています。
とても心を揺さぶられました。
前作『月への吠え方教えます』と同じ世界観(犬から人に変身する『クイック』という種族がいる。元々クイックとして生まれる者もいれば、人と精神的な深い関わりを持ったためにクイックになる犬もいる。彼らはカリフォルニアのマッドクリークという田舎町に集まって『人間として』暮らしている)。
この世界観の概要さえ掴めればこのお話だけでも読めないことはないと思いますが、マッドクリークでのクイックの暮らしや、様々な登場人物(これがまたそれなりに数が多いのですよ。で、それぞれ個性が面白い)について分かってから読んだ方が更に面白いと思います。
前作の後半で活躍したローマンという『元ジャーマンシェパード』が主人公。
私、彼がやたら気になっていたんですよね、前作を読んだ時に。
軍用犬で深い絆で結ばれていたハンドラー、ジェイムズ・バトソン軍曹が戦死したため、クイックになった後も深い孤独の中にいる彼。
おまけにクイックになってからまだ年月が浅いため、群れの中に居場所が確立しておらず、正直で『デキる奴』なのに愛想をふりまけない不器用さもあってクイックの中でも孤立しがちなんです。
そんな彼が保安官助手として『群れ』の中に自分の居場所を見つける所で前作は終わっているんですけれども「え?これで終りかい?」って思っちゃったのね。だってあっさりしすぎているんですもの。
多分、作者さまだけでなく、私の様に思った人が多かったんでしょうね。
前作でローマンが助けたマットというSWATがDEA(麻薬取締局)としてマッドクリークに赴任します。
クイックの秘密を守るためにマットが町の人たちと深く関わらない様に、保安官(群れのリーダーですね)のランスはローマンにクリスを監視し、町から遠ざける仕事に連れ出し続けるよう言い渡します。
でもね、ローマンはクリスの中に、心から慕っていたジェイムズによく似た部分を感じているんです。
もう、どんどん惹かれて行くの。
その結果『外部の人に町の秘密を洩らさない』ことと『マットに隠し事をせず、もっと近くに寄りたい』という気持ちの間で、ローマンは大揺れに揺れます。
ストイックな(元)軍人さんの、この『揺れ』が……もう萌え滾りました。
マットの方も父は退役将軍、優秀な兄は戦死という家庭環境の中で、ゲイであることを隠して暮らさなければならないという、ローマンに恋をしつつもなかなかキツイ状況下にあります。
こっちも切ないのよね。
お話は現在のマッドクリークでの違法麻薬栽培事件の間にローマンの過去が挟まれて書かれます。
犬として生きることと人として生きることのお話が交互に出てくるんですよ。
これが非常に良かった。
お話が多重的で面白いだけでなく『人と犬の違い』みたいなものが良く解ったんですよね。
ちなみに、クイックは徐々に人間の反応が出てくるんです。
このお話の始まりには、ローマンは勃起せず、赤くならず、あまり笑わず(上手に笑えない)、そして涙を流しません。
このそれぞれが、いつ、どうしてローマンに訪れたのか?
笑えるもの、キュンと来るもの、様々なエピソードはバラエティにあふれていますが、何と言っても涙のシーンは白眉です。
私も共に涙しましたよ。
失ってしまった大切なものに捕らわれるのではなく、それと共に歩んで行こうとする涙でしたので。
犬と人間両方の姿になれるクイックという種族と彼らの住む町の物語。シリーズ第2弾で前回の攻めで町の保安官の部下が今回の攻めのローマン。2人とも犬の体も持っているクイックですが、なんとローマンは人間の姿になってからわずか2年しか経っていません。
しかしずっと軍用犬だった彼はとても頭が良く真面目で努力家です。犬の時に訓練した人間のパートナーとの別れのシーンは涙無しに読めません。若いけど苦労人です。でもそんな彼に神様は素敵な人との運命の出会いを用意してくれていたのです。
受けのマットはSWAT出身で負傷したため今はDEA麻薬取締局に所属し、ローマン達の町に任務でやってきます。町の人たちはクイックの秘密を守る為にマットによそよそしい態度を取るんですが、マットも仕事を離れれば悩める1人の若いゲイ。元軍人の父親にゲイである事を隠して仕事で男らしさを見せようと必死になる所が切なかったです。
2人は最初から惹かれあっていたのに、色々な誤解やすれ違いがあってやっと本当の気持ちを伝え合えた時は「やったー!」という気分になりました。純粋な攻めの時々大真面目に犬っぽい発言をするのが可愛くてたまりませんでした。
恋愛面はもちろん平和な町で麻薬栽培をしようとする悪者達と対決するまでのストーリーも読み応えのある満足の一冊でした。
人に変身出来る犬「クイック」と、人間が寄り添って暮らす不思議な町・マッドクリーク。
そこで巻き起こる事件やドラマを追った「月吠え」シリーズ第2弾になります。
主役は新カップルになりますが、前作を読んでいないと分からない部分が多いと思うので、ご注意下さい。
ザックリした内容です。
マッドクリークの正式な保安官助手となったローマン。
そんな中、町にDEAの捜査官が派遣されてきますが、なんと以前に命を救ったSWAT隊員・マットだったんですね。
町の秘密を知られないように、ランスから彼を見張るように指示されるローマン。
共に過ごすうちに、彼に惹かれて行きますがー・・・と言うものです。
まずこちら、軍用犬でジャーマンシェパードのクイック・ローマン×DEA捜査官・マットと言うカップリングになります。
で、このローマン。
前作でもちょこちょこ活躍したのですが、元軍用犬だけあり、とにかく真面目で堅物と言った印象だったんですよね。
人間になってまだ二年なので、人としての常識からもズレてて。
今回、そんな彼が主役となるワケですが、もうとにかく笑わせてくれまして。
こう、彼はマットと出会い恋心を覚えた事で、初めて性欲なんかも感じる。
で、マットの事を考えていたら、股間が反応してしまう・・・。
すると、パニックを起こして慌ててランス(保安官で前主役)に電話し「俺のペニスが腫れ上がって固くなってるんです。医者に行かないと・・・!」みたいな。
いや、次作は彼が主役になると前情報として知っていたんですよ。
その堅物ぶりや生真面目さに、どんな話になるか、とても楽しみにしてたんですよ。
そしたら、想像以上に面白い男だったわー!と。
もうね、そのタフガイそのものと言う見た目で、めちゃくちゃ純情なんですよ。
真っ直ぐで、とにかく可愛いんですよ。
で、そんな彼のお相手となるDEA捜査官のマット。
前作で腕を撃たれてローマンに助け出された彼ですが、そのケガが原因でSWATを辞めています。
そして今回、マッドクリークで起こる麻薬関連の事件を捜査するために派遣されてきて、ローマンと再会した。
こう、しなやかで思いやりがあり、人好きするタイプでしょうか。
と、この二人で、マッドクリークで今回も起こる麻薬犯罪の事件を追う。
並行して、二人の甘酸っぱい恋愛が語られと言った感じになるんですね。
これ、事件自体もとても面白いのですが、更に、町で繰り広げられる住人達のドラマも、前作同様とても面白くて。
いや、人になったばかりの住人がですね、消火栓にオシッコをひっかけたり、挨拶で匂いをかぎあったりと、犬としての習性で行動しちゃうんですよ。
それを見て、「この町は明らかにおかしい!」と、マットが混乱するみたいな描写が笑えて笑えて。
あとですね、二人の恋愛部分。
実は今回、ローマンの過去が語られるんですね。
このシリーズですが、犬と人間の深い絆と言うのがテーマとなるのです。
人から深く愛され、強い絆を持った犬だけがクイックになると言った具合で。
そう、クイックである彼等は、人間を深く愛しているし、心から信頼している。
とても愛された幸せな犬ばかりなんですよ。
で、ローマンも自身のハンドラーであるジェイムズ軍曹と深い絆を結び、クイックとなった。
これ、ジェイムズとの出会いから、共に過ごして絆を育ててゆく様。
そして彼との別れまで、丁寧に綴られています。
ローマンがクイックになれる程の、深い愛情ー。
ジェイムズの最期がですね、泣けるんですよ。
自身を助けようと無理をして、亡くなったジェイムズ。
それが、ローマンの中で、深い傷になってるんですよね。
そんな彼が、再び絆を感じられ、そばに居たいと思える人間・マットと出会えた。
こう、あまり純粋で真っ直ぐな愛に、胸が熱くなるんですよね。
そばに寄り添える事が幸せみたいな、その一途な思いに泣けてきてしまう。
犬好きな姐さん、彼等の心の声を聞いて!
と言いたくなっちゃう作品なのです。
まぁそんな感じの、ちょっと不思議で笑えて、とてもあたたかい物語。
お値段が1100円+税とお高めですが、400P近くあるので読み応えがあると思います。
あと、MMなんですけど、比較的BL寄りで読みやすいと思うんですよね。
MMでは多いリバも無いし。
気になった方は、ぜひチャレンジしていただきたいです。
前作も好きですが、今作の方が断然良かった。
益々このシリーズが好きになりました。
もう、ローマンが愛おしい…。
クスッと笑わせてくれて、ウルっとさせられて、萌えも楽しめる。
そんなクイックの世界が本編391ページの中にバランスよくギッシリと詰まってます。
早く次を読みたいけれど、また一年待たなければならないのか…長いぃぃ…
次は何犬が来るだろうか? すでにわくわく♡
前作よりも面白かったです。
それは、主人公のローマンが後発的なクイックだから。
いい男の無知さって最高ですよね。
いや、ほんとに。
炭酸を「シュワシュワするやつ」っていう成人男性に萌えまくりでした♡
勃起も知らず、性的な事全てが初体験。
性について質問されて恥ずか死にそうなランスに、ニヤニヤが止まりませんでした。
ランスの恥ずかしがり屋も可愛くて死ねる。
素直で、スポンジのように色々な事を吸収していくローマン。
そんな可愛いローマンに惹かれていくマット。
これは必然の恋ですね。好きにならなきゃおかしいってくらい、ローマンが魅力的でした。
「俺とセックスするのを好きになってほしいんだ。だって、きみとのセックスが大好きだから」
……って、健気過ぎてキュンキュンしました♡
マリファナ栽培組織との対決に、住人全員で望むところはワクワクしっぱなし。
ローマンが死にかけた時には涙が出たし、犯人を捕まえた時には胸躍りました!
マットと父親との確執なども見どころの一つで、ゲイとそれを理解できない親という構図が浮き彫りになって、意外と深い話だなと思いました。
まだスピンオフ出ますよね?
もっと人間とクイックの物語を読んでみたいです。