運命を狂わせる「オメガ」とは、聖か邪か!?

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表題作稀有なるオメガと石の上の花

セイ、アルファ・護衛
ヨナス・サリ、オメガ・宿屋経営者

あらすじ

『緑土なす』シリーズのみやしろちうこが贈る
純愛オメガバースファンタジー!

「魔の神が生み出した『オメガ』は、人々を籠絡し堕落させる存在だーー」
オメガへの偏見が厳しい辺境の街で正体を隠して暮らすヨナス。
両親が遺した宿屋を経営しながら、発情期特有の体調不良を薬で抑える日々だった。
「死ぬまでに一度は恋をしてみたい」という望みを胸に秘めたヨナスの前に、ある日アルファ然とした威容を誇る護衛・セイとシャーネルが現れる。
異彩を放つ黄金色の瞳のセイに抗いがたく惹かれてしまったヨナスは、意図せず彼をオメガの力で“誘惑”してしまうが、彼はただのアルファではなくーー!?

作品情報

作品名
稀有なるオメガと石の上の花
著者
みやしろちうこ 
イラスト
富田童子 
媒体
小説
出版社
星海社
レーベル
星海社FICTIONS
発売日
ISBN
9784065188286
4.6

(28)

(19)

萌々

(7)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
4
得点
129
評価数
28
平均
4.6 / 5
神率
67.9%

レビュー投稿数4

エロはないけど大満足!

みやしろちうこ先生の最新作オメガバースファンタジー。
事前に先生のTwitterで告知がありましたが、エロはありません。当初はブロマンス?キス止まり?と考えておりましたがヤることはヤってます。よくあるベッドに行ったら翌日、という全年齢向けのお話。

主人公は宿屋を営むヨナスと明らか身分高そうな腕利きの護衛セイ。
ヨナスはオメガを悪と断じる地域で必死にベータと偽り生活するオメガで、セイは探し物を求めてヨナスがいるマンド王国子爵領インリッチへやってきた護衛の一人。
ヨナスが経営する宿にセイと護衛仲間のシャーネルが宿泊していたのが出会い。

ヨナスが暮らすインリッチ周辺では、オメガとは支配するアルファ、支配されるベータを発情という本能で崩すおぞましい存在とされていました。
魔物という人や家畜を襲い、運よく倒せても死体からでた瘴気が大地を汚すという迷惑極まりない存在は瘴気から生まれ、オメガは瘴気で大地を汚す要因とまで言われています。
しかしセイとシャーネルの話だと、魔を封じた王の末裔とその祝福を受けた騎士たちがいる大陸中央の神国ウルクではオメガは救いの存在で稀有なるオメガと呼ばれています。
なぜ認識にこうも違いがあるのかは、作品の中できっちり原因についても説明があり、前半疑問を抱いた部分を後半にしっかり回収してくれているのがとてもよかったです。

エロのない今作ですが、しっかりBがLしておりますのでご安心ください。
まず護衛のセイですが、ヨナスと出会ってからは他が目に入っていないかのような振る舞いが多数あり
頼んでもいないのに朝からヨナスの経営宿巡りについてきたり、宿の経営者として採用面接を行うヨナスに「この男、未婚ですね」と勝手に紹介状の経歴を見て勝手にふたりきりにはできないと警戒し、我が物顔で面接場に居座ります。
最終的にはヨナスを狙う不審者の存在を知った途端護衛の自分を売り込み、「あなたがわたしの最優先」とまでいう始末。
お察しの通りセイはアルファなのですがただのアルファではありません。どれだけ凄いかは是非本編でご覧になってください!

ヨナスはヨナスでオメガとしての本能か、多少セイに恐怖心を抱きながらも何かと世話を焼いてくれるセイに心惹かれていきます。
オメガ故の発情期に苦しめられ手広くやりたい経営を諦め続けてきたヨナスは、そんな忌まわしいオメガの性質を利用してでもセイとの一夜を望む場面も。
薄々ただの護衛ではないと察しているヨナスは、セイをいつか居なくなる人だと思いながら一夜を共にする。対してセイは一度の関係を結んだヨナスの存在を国に報せたりと行動が早い。

実際はセイが命じる前にシャーネルが送ったが、このシャーネルがすごくいい。
護衛仲間であるはずのシャーネルはセイを第一とする従者で、(勝手な憶測ですが)主人に注目が集まらないよう明るく振る舞い場を盛り上げ異性同性問わず人を惹きつける。人柄のいい男は、主人であるセイに害をなそうとした不届き物の顎を無言で殴り鳩尾に膝を叩き込みまた顎を殴るという割とやりすぎな男。
ヨナスとセイが関係を持つ前からヨナスの敬称を“殿”から“さま”に変える気が早い男でもある。
寝室のシーツの素材や毛布、部屋に焚く香は自前で洗濯物の仕舞い方とセイの生活空間に異常に気を配るシャーネルは、みやしろ先生の別作品『緑土なす』の灰色狼を彷彿とさせます。
後半にまさにそれらしい人々が出てくるのですが、彼らをもっと掘り下げてほしかった!絶対面白い!

ファンタジー設定がしっかりしていて世界観に入り込んでとても楽しめました。エロはないが主人公たちの関係もきちんと収まるとこに収まっています。
ただヨナスとセイが出会い恋仲になる心理描写を掴みにくいところもあるかもしれません。アルファはオメガにオメガはアルファに惹かれるというオメガバースの本能に重きを置いている印象なので、彼らが結ばれたのは本能。この一言に尽きます。私としてはそれで充分と思える作品です。

魅力的なサブキャラはまだたくさんおります!
乱暴者で口の悪さが目立つ心配性の料理長(あからさまにセイに牽制される不憫)、シャーネルの同僚のサミュール(暴走する狂犬の下っ端)等々。欲を言えば今作も上下巻でじっくり執筆していただきたかったです。

10

すきです!

大好きな緑土なすのみやしろちうこ先生の作品。先生の文章は、ファンタジー向けだなぁと改めて実感。投稿小説から楽しませてもらっていたけど、緑土なすは脇役も受けも攻めもいわゆるお約束的なBLじゃなく、世界観がしっかりしてるからBL枠を超えて楽しめる作品でしたが、今作も世界観があって、直接的なBL表現はないけど、しっかりBLとしてもファンタジーとしても楽しめました!神様が、あまりに軽くて、セイのご先祖は異世界転生した日本人で、神様は腐女子だったのかなと思いました(◍•ᴗ•◍)セイ黒髪だし。。。なんて妄想も楽しめました!緑土なすが圧倒的に世界観も長さもあるので大好きですが、今作もこの短さでしっかり作ってあるなと思います!

9

独自のオメガバース設定と奥深い世界観

『緑土なす』シリーズが面白かったので読みたくなりました。

オメガバースものの中でも独自の設定と奥深い世界観に夢中になりました。

ユニークなのはオメガが忌避されたり嫌悪される原因が魔物の企みということ。

神がつくった人の世の理を壊すためにオメガを魔人の手先と思い込ませて人の手で失わせることでアルファが先細りとなる道筋を作る計略だという点。

BL作品では珍しいレーベルで、そのせいか色々と異質でした。

というかそもそもBLとしてのカテゴリーに含むつもりがないのかもしれません。

ます、エッチシーンも朝チュンでしたし(とはいえ終わったのが夕方なので朝でもチュンでもないのですが)魔物と戦う剣士や騎士の出てくる童話か神話であり、性別が3つある世界のラブストーリーというところかもしれません。

そして、イラストページは少なく木炭画や版画のような絵で独特の雰囲気があり素晴らしいのですが、BL小説として私の好みの萌える絵ではありませんでした。
世界名作全集にありそうな感じです。

脇の登場人物も魅力的です。
筆頭眷族と下っ端眷族、すぐ手が出る口の悪い料理人とその新しい弟子などいわくありげな背景があったりここに至るまでの物語が面白そうな人たちです。

特典のショートストーリーはどれも必見です。

特にアニメイトリーフレットは朝チュンのカットされた場面だったり、コミコミスタジオは旅に出ることになった説明や意義が語られる重要な内容でこれらはおまけでちょっこっと読んでニンマリする類のものではなくちゃんと本編の中で読みたいと思いました。

そもそもなんで身分を隠して旅に出るのかがわからずモヤっとしたままで、じれったい両片思いみたいなあるいは期間限定の切ない系の展開っぽい流れからの…がどうもしっくりこなくて、コミコミの前日譚を先に読んで本編を読んだらいいのでは?と思ってしまった次第でした。

3

童話としては「神」評価

(α)魔物を倒す護衛セイ(30歳前後) x (Ω)宿屋を営むヨナス(30歳)

初めに:
絡みのシーンは割愛されていて、描写はない。
ベッドに二人で行く場面と次はもう朝という書き方でその一度だけ。

セイは正体を隠して「ある人」を探して、ヨナスの住む国まで旅をして訪れ、
ヨナスの経営する宿に偶然宿泊する。

ヨナスはΩは悪という偏見を持つ世の中で、必死に抑制剤でオメガを隠して生きている。

*****

みやしろちうこ先生は『緑土なす』が有名とは知っていたが、
私は今作が初めて拝読させていただいた。

評価をするのにとても迷った。
というのが、これはBLであってBLではないと思ったから。
少なからず私が求めてるBLではなかった。
萌えが感じられずに、ただ淡々と美しい物語が語られているからだ。
絵柄も萌え要素はなく、童話風を意識しているのが分かるし、
その美しさに「萌」の評価を付けさせていただいた。

この作品は「童話」と言った方がしっくりくる。
なので「童話」としては間違いなく「神」評価だろう。
オメガバースの世界を童話風に美しく、
子供の時に読んだファンタジー童話の懐かしさを思い起こさせる。
だから子供が読んでも問題ない内容だと思う。

作品の具体的な内容についての感想は、
美しい独特な世界観と描写だと感じたが、
ヨナスがなかなかセイ達の正体を聞かない、聞けないので、
早くハッキリして欲しいという悶々さが最後まで続くのが
楽しみでもあり、反対に萎える時もあった。
読者はセイ達が何者なのか、気づきはするが、具体的にハッキリとは
分からないので、世界観もあって、余計に悶々さが強くなってしまう。

また、誰が会話してるのかが、いまいち分かりにくい。
今、セイが話しているのかヨナスなのか、シャーネルなのか、と言った感じで、
読み返すことがあった。

そして、物語の軸となる、
魔物を倒すことが出来る「ウルク神国」の成り立ちが、
ハッキリ分かるのが、第一部、第二部の本編中ではなく、
「その後」という最後の数ページ。
この数ページで初めてこの物語の全体が鮮明になる。
そこで、セイの事、セイに仕えるシャーネルやサミュールのことも成る程とクリアになる。

途中にも近い説明や描写は出てくるのだが、靄がかかったような感じなので、
物語に入り込むことが出来なく、最後までただ淡々と美しいメロディに乗せて
進んでいく形で読了した。

なので、「その後」で語られてる「ウルク神国」の説明を読んでから、
再度読み返すと、より鮮明に物語を楽しめると思う。

私はこの「ウルク神国」の説明を最初に持ってきた方が、
より作品の良さが出たのではと感じた。

最後に、神の口調が茶目っ気がある設定は大変嬉しかった。
私はセイレル様のいう通りだと信じる^^

二人がアルファの子供を沢山作り、末長く幸せになって欲しいと願う。


16

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