イラストあり・電子限定ショートストーリーつき
小説
Ωはかわいそう、αは恵まれていてかっこいい…という価値観がオメガバース作品の持つ一般的な特徴の一つです。
そんな”不遇な状況”の中で、受けと攻めがあがき、自分たちに降りかかる苦難を跳ねのけて幸せをつかみ取るのが、オメガバース設定の醍醐味だと思っています。
でも、個人的には「Ωばかりかわいそうな状況になりがちなのは不公平だなぁ……」と思っていました。
こちらの作品は、そういったもやもやを綺麗に晴らしてくれる、新しいオメガバース作品だと思います。
はるか昔から伝わる神話によって、Ωは人々から崇められ、
逆に文武両道、才色兼備なはずのαは、Ωを脅かす存在として虐げられる。
そんな世界観の中で、私が正直に思うこの作品の「見ごたえ」は、
①「これ、どう巻き返していくんだ…?」っていうくらい辛い状況に置かれたαの、苦難に耐えた末に訪れる逆転劇
②肘枷と口枷をつけられ、自由を奪われたαの悲しみと怒り
(個人的にはこの戒められたビジュも最高に刺さります)
です。
①不遇のαの逆転劇について
表紙に登場する口枷と肘枷をつけられた攻めが印象的ですが、
αである攻めは、身体だけでなく心の自由さえも奪われるという辛い境遇に置かれています。
そんな状況下でも攻めは、ときに悪ぶって見せながら、そしてときに深く落ち込みながら、受けへの愛をひたすらに貫き通します。
そして最後には、αのポテンシャルの高さを見せつけ、何よりも大切な存在である受けをピンチから救い出します。
「αなんて」、「αの癖に」と、αのことを知りもせず蔑むばかりだったモブたちに、本当の強さと美しさを見せつけるのです。
ここがまさに、逆転オメガバースならではの醍醐味なのかなと感じました。爽快です……!
②自由を奪われたαの悲しみと怒りについて
本作は攻めのグウェン意外にも様々なαが出てきますが、その誰もが苦境に立たされています。
悪役もαが多くいるのですが、こんな差別の世の中じゃなければな…とやるせなくなります。
優遇されているはずのΩも、腐敗した政治に利用されていて健全な状態とは言えません。
この作品一つの中で、世の中すべてがよくなるのは無理がありますが、それでも最後、αの未来が少し明るくなるような展開があったのが救いでした。
この二人が、ちょっとずつでいいから世界を変えていけたらいいなあ、と思います。
αにフォーカスして語ってきましたが、
受けのΩとの思いのすれ違いもまた切なく、作中なんども、じれじれ、もだもださせていただきました。
受けは立場的には優遇されているけれど、自分の努力で攻めを助け出そうとしている芯の強い子です。
攻めのためを思い、時に空回りながらも必死にあちこち駆け回る様子が健気で可愛くてたまりませんでした…。
最後にもう一度、
いつものオメガバースとは違い、徹底して虐げられるαの姿は辛く、でも正直刺さる人にはめっちゃ刺さります。(すべてを諦めたようなグウェンの姿の挿絵がたまりませんでした)
それだけでも大変萌なのですが、最初は自暴自棄だった攻めのグウェンが、アランと心を通わせて自分らしさを取り戻し、最後には強く美しい男になって立ち上がる姿が、見ていてとても気持ちがいいです。
いつものオメガバースから”味変”したくなったら、ぜひ読んでいただきたい作品です。
オメガバースものでは通常卑しめられ虐げられることが多いオメガが尊ばれ、そのオメガの項を噛んで番にすることが可能なアルファは虐げられ、愛し合うことは法律的にも社会的にも許されないという世界線で繰り広げられる幼馴染再会愛です。
オメガのネックガードの代わりに、本作ではアルファに2種類の枷が付けられています。まるで家畜か奴隷であるかのように。どんなに愛し合っていても、身体を繋ぐことはできても、枷のせいで、両腕で相手を抱きしめることも口付けることもできないなんて…。
このもどかしさの描写がとても巧みなので、クライマックスでの解放感や2人の喜びが増しています。
本作は主人公の受けでオメガ・アランの視点で描かれていますが、羽生橋先生の丁寧な筆致で、攻めでアルファ・グウィンへの一途でいとけない恋心、それが引き裂かれたことへの悲しみ、彼を取り戻そうとする決意など、移り変わる心情が巧みに描かれていて胸が痛くなりますし、
アランのみならず、グウィンの心理についても表情や言動(時間につれて変化するところもお上手!)から、読者には「この2人は両片思いなんだな」と解らせてくれるので、気持ちよくジレジレモダモダを楽しむことができました。
また、一般的なオメガバースとは異なる世界線なので、その説明が冒頭にあるのですが、まるで神話みたいで美しく、スーッと染み込んでくるように理解できました。
本作の最大の魅力は、主人公アランの成長とひたむきさだと思います。当初は父親にちょっとした過失を打ち明けることすらできない臆病な少年だったのが、学業に励んで医師となり、万全の体制を整えて10年越しの念願を叶えてグウィンを娼館から請け出すことや、番の証を隠さないところには清々しさを感じました。
脇役も、とっても良い人そうな人が実は…!と、良い意味でギャップを作ってくるのですが、良く読むと伏線として、チラチラと不穏さは見え隠れしています。とは言え、あそこまで豹変するのか!ドラマを盛り上げてくれます。
本作では、アルファとオメガは愛し合うことを禁じられた世界のままです。しかし、グウィンとアランは心を通わせ合い、肌を重ね番の契りを交わします。2人の行く手にどうか幸多かれと祈らずにいられません。
一味違ったオメガバースを読みたいという方にオススメいたします!
オメガが尊ばれ、アルファは虐げられる設定は斬新で、愛し合うことは社会的に許されない世界感で繰り広げられる幼馴染同士のもどかしい恋愛描写は、まさに革新的な作品です。
愛し合っているのに、身体を繋ぐことができず、相手を抱きしめることも、キスもできない設定と描写が秀逸で、最後の2人の喜びが胸熱でした。
焦ったさの後のハッピーエンドが好きな私にはまさに、どストレートでありつつ、カースト逆転オメガバースという初めての設定は新感覚で最近では1番感動した作品です。
カースト逆転オメガバースという新しいジャンルを切り拓いていただき、ありがとうございます!!!
デビュー作にして斬新な設定を攻めるチャレンジ精神とわかりやすい描写テクニック、羽生橋先生の次回作も楽しみに待ちたいと思います!
アルファが虐げられてオメガが優遇される世界観です。主人公のオメガが虐げられる話が多いから斬新だなと思いつつ読み始めました。
仲良かったのに、アルファとオメガとわかった途端に引き離されるのが可哀想で可哀想で……。
やっと再会したのにグウィンは別人みたいになってアランの元から逃げ出しちゃうし、アランは子供の頃やってた勝負にかこつけてグウィンを引き止めて頑張るんだけどうまくいかなくて、ヒート処理はしてもらうんだけど、気持ちは離れていくばかりで……。
最後はもちろんハピエンです。アランの粘り勝ち!?
いいお話だった〜!
一言でいうととっても面白かったです♡ カーストが逆転したオメガバース=スパダリα攻めではないという難しい設定もここまで書き切る先生の筆力に脱帽。
舞台は、Ωが神の化身として崇められ、αはその神を食らう賤しい存在として蔑まれる世界。(能力が高いのに……可哀想)幼少期は聡明なエリートだった攻めに密やかな恋心を抱く受け。なのにある日攻めはαであることが判明し裕福だった家からも転落。男娼の身に落とされます。男娼として何人ものお客をとらされた攻め。きっと受けへの目覚めきってない幼い恋心を胸に多忙ならぬ多棒をさせられていた過去を思うと正直胸が苦しくなります。
男娼をさせられ能力があるのにやさぐれた攻めをなんとか更生させようとする攻め。最初はうまくいかないのですが、そこのすれ違いが切ない……でも仕方がない…でもやっぱり切ない。この苦しい状況も、少しずつ受けの愛で良い方向に向かって行く……。受けちゃんは意地っ張りなところもあるのですが、その愛と努力家なところにこちらまでほだされます。そんな二人がどんなエンドを迎えるのか……ぜひ読んでください!
あとおすすめポイントはやっぱりR18シーンです。とっても描写が丁寧でお上手なので、R18がページ数的にはかなり長いんですが、蜜感たっぷりですぐ読めちゃう……むしろもっとくれえ!中盤の切ないR18もラストのR18もどっちも素敵です。大満足の作品でした!