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エキスパートレビューアー2023 「BLアワード検定」合格証 ソムリエ合格

女性みざきさん

レビュー数569

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今年度4位

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愛嬌があってかわいい王子様

タイトルに1と付いているということは、もしかして続きが読めるのでしょうか?
穏やかかつ微笑ましい交流から始まる恋も、登場人物たちのセリフのチョイスもすごく素敵で、もっと2人の行く末を追いかけたくなる作品でした。
金魚鉢でめ先生の絵柄も、キャラクター達のいきいきとした表情も素敵なんですよねえ。

自動車教習所から始まる出逢いも珍しければ、受けが教官というのも珍しく、あまり見かけないお仕事描写と2人の交流の深め方が面白かったです。
まず、八乙女が自動車免許を取得しようと思った理由が好き。
この時点で彼の人間性に惹かれてしまったのですが、読めば読むほどかわいらしい人な上に、少女漫画のヒーローキャラクターが言いそうな言葉を計算なしで言うギャップも持ち合わせていて、なんとも言えない愛嬌がある魅力的な攻めでした。

こんなに目が離せない人から真っ直ぐに仲良くなりたいと好意を向けられてしまったらそりゃあ気になっちゃうよねと思えるエピソードばかりでとってもかわいいです。
八乙女と千葉のS字クランクを少しずつゆっくりと進むような交流と、緩やかめではあるのだけれど緩急のある展開とちょっぴり初心な大人の恋模様を楽しく追いかけられます。

全体的に癒し度が高く感じたのは、やはり八乙女が完璧すぎなくていまいち決まらないところがある攻めだったからかなあと思います。
気が付けば、教習所懐かしいな…と思いながら、有言実行する八乙女の真っ直ぐさに射抜かれ、千葉の気持ちが徐々に変化していく様を終始微笑ましく見守っている自分がいました。
付き合った後の2人の恋愛面はもちろん、お仕事面ももっと読んでみたくなりますね。続刊が楽しみです。

色気はすごいです

鮭田先生が描く、フェチズムを感じる良い意味で生々しい身体が好きです。

前作でもなかなかの…でしたが、玲の光希への執着っぷりが更にパワーアップしていてわくわくしました。
一見何を考えているのか分からないくらいシュッとした顔をしているというのに、内心では早く同じところまで堕ちて来ないかとあちこちに糸を張っているかのよう。
対受け関係となると途端に心が狭くなり、重ための愛を拗らせてあれこれと画策するタイプの攻めがお好きな方には刺さるものがあるはず。

鮭田先生といえば!な、色っぽいシーンも執着を感じるすごいものがたっぷりで読み応えありです。
ただ、冷静になって話の内容を考えてみると、いわゆる犬も食わないなんとやらだったかなあと思います。
続編らしい言葉足らずのもどかしいすれ違いも描かれているのですけれど、思い返せば終始SEXをしていたような、もしくはしそうになっていたような…な印象でした。
お兄ちゃんたちで中断が多いのもちょっと気になったかな。
癖に刺さる色気のある描写も良かったのですが、もう少しガツンとダイレクトにくる萌え成分だったり、付き合ったその後ならではの深みもほしかったなとこちらの評価になりました。

圧倒的多幸感 なんて良い攻め

なにこれかわいくてすっごく楽しい…!
終始にこにこしながら読み終えました!萌えた〜!!
「口下手は恋に事故る」のスピンオフ作ですが、独立したお話なのでこちらだけでも問題なく読めるかと思います!
ただ、読んでいた方がよりニヤリと出来るかもしれません。

ちょっとズレているのだけれど一生懸命な、恋愛どころか人との交流も初心者の不器用なゆづきがかわいいです。
そんな彼の歩幅に合わせて、少しずつやってみたいことを自然と聞き出していっては、何も否定することなく全てををポジティブに変えてくれる見守り系溺愛攻めの小野先輩の図がたまらなく良かった…!
なんでしょうか…羽毛先生らしさあふれるクスッと笑えるコミカルな楽しさはそのままに、すごくかわいらしくてやさしいお話になっているんです。
自身のコミュニケーション能力に悩むゆづきがよちよち歩きで成長していく様子を見守りながら、その合間合間でピュアな恋愛面が何層も積み重なっていく、とっても甘くておいしい1冊でした。

読めば読むほど、攻めの小野先輩が庇護欲をそそられてゆづきをかわいがりたくなってしまう気持ちが分かるというか、ゆづきの反応も不器用さもいちいちかわいいんですよね。
そして、恋愛に初心すぎるゆづきに強引に迫りすぎない小野先輩がどえらい良くて…ツボでした…
ベッドの上に下ごしらえまで自分で済ませた据え膳があれば、思わずぺろっと食べてしまいたくなるところを我慢して、今日抱かれるのとデートをいっぱいした後とどっちがいい?と聞ける男なんですよ…
その後のやりとりといい、萌えに萌えてしまった。
小野先輩がポジティブな言葉をストレートに口に出してゆづきに伝えるからか、つられるようにしてどんどんゆづきの気持ちも表情も前向きで魅力的なものになっていくんです。
この2人の関係性、大好きだなあ…!

受け大好きな攻めの溺愛っぷりが随所に惜しみなく発揮されていて、ただただ多幸感と良質な萌えに包まれながら楽しく読み終えられる素敵な作品でした。
日々の疲れを癒してくれる、あたたかいスープのようなお話に感謝です。

テンポ良しだけれど緩急もほしい

続きものとのことで、設定も展開も盛りだくさん。
あちこちに謎が散りばめられていて、過去に一体何があったのか?これから先どうなっていくのか?
そんな「なぜ・なに」が詰まっている現代ファンタジー作品でした。

ひょんなことから出逢った探偵と死神バディが繰り広げる、日常の中にある非日常が楽しめる1冊です。
個人的な読後の感覚としては、少年漫画系のファンタジー要素にBL要素が加わった感じが近いかなあと。
テンポが良くて読みやすいです。
そして何より、絵がとっても綺麗でした!
適度にごつごつとした手と足のラインが色っぽくて好き。

決して見られてはいけない、魂を刈り取る行為を見られてしまったところから始まった関係かと思いきや…な過去等、飽きさせない展開で読ませてくれます。
夜泉のクソデカ感情拗らせ受けっぷりも、読み始めとの印象がガラッと変わるギャップがあって良かったです。
お互いに心乱されている様も初々しいんですよねえ。

と、キャラクターも設定も面白かったのですが…
今後描きたいものが多いのか、ややこしい展開はなくテンポも良いのだけれど、全体的に断片的なちょっと出しエピソードが詰め込まれすぎていて、読んでいて目が忙しいなと感じることが多々ありました。
BL要素に関しても、キスで癒す設定はすごく良かったのに、それ以上に進むまでが早いな〜!と惜しいです。
テンポの良さが気持ち良いところと、もう少しだけゆっくり進んでくれたらうれしかったなと思うところありな読み心地でした。特にラブ面かな。

しかしながら、気になる謎ばかりで早く先が読みたくなる作品でもあります。
少し評価に悩みつつ、1巻目だけではまだ分からないなと今回は3.5寄りのこちらの評価になりました。
続きが楽しみです。

世にも奇妙な呪い

嘘をつけばつくほど勃起してしまう。
インパクト大な設定にちょっと笑ってしまいそうになりながら、両視点で進む物語を読み進める形のお話になります。

タイトルに悪役令息とありますが、主人公のディルクは言うほど悪でもないんですよね。
若干鼻につくことを言う、肥満体型の公爵家の三男といった感じです。
そんな、学園の嫌なやつだったディルクをひと皮ぺりっと剥いてみると、もしかして無理をして嫌なやつを演じていたのか?と思える、なんとまあかわいらしい子ではありませんか。

自己肯定感低め・肥満体型・思ってもみない嫌味なことばかり口にしてしまう捻くれ。
ディルクが抱える問題のどれもが、読めば読むほど彼の家庭環境が生んだものとしか思えないのですが…
ひょんなことからかけられてしまった呪いのせいで、生活に支障をきたす勃起現象を回避をするためには素直な性格にならざるを得ない状況になっていくわけです。
ディルクの護衛騎士で攻めのフリッツと二人三脚で、健康的な体を作るスパルタダイエットと共に素直になるための矯正が始まります。

周囲からの愛に飢えていただけで損な性格に育ってしまった不器用すぎるディルクの拗れた部分が少しずつほろほろ解かれて、どんどん素直な愛らしさを見せていく。
この辺りが見どころかなと思います。
0どころかマイナスからのスタートだった、どこか愛嬌があって応援してあげたくなる主人公の評価が次第に良くなっていく姿は読んでいて気持ち良いです。
口が悪いディルクに動じずに、あれこれと軽口を叩くような喋り方のフリッツも良かったなあ。

ただ、2人の恋愛面に関しては薄口に感じられました。
甘くはあるのだけれど、他のエピソードが濃いからかあまり強く印象には残らなかったかな。
話の展開と全体的なトーンもコミカルで入り込みやすいものの、視点の切り替えが急だったり、先述の通り濃いエピソードがぽんぽんと詰め込まれているので、もう少しひとつひとつをゆっくり読みたかったかもしれません。
とはいえ、みにくいアヒルの子のような王道展開はやはり楽しいですし、読み進めるごとに魅力が増していく主人公の図は好みでした。
お兄ちゃんと一緒に居るだけでうれしいディルクがかわいらしかったです。

全方位かわいい

ああどうしよう、とんでもなくかわいい…!
こんなにも疑問符だらけの2人がかわいくて仕方がない漫画はかつてあったでしょうか…?

一風変わったDom×Domものとしても楽しめるのですが、2人の唯一無二の関係性の描き方と話運びが本当に良くて、Dom/Subユニバースではない部分でもきっちり萌えさせてくれます。
この1冊の中にどこを開いても漏れなく萌えがある。
全方向死角なしの萌えの宝庫でした。ヤッター!

お互いにDomなはずなのに、なぜかコマンドが効いてしまった摩訶不思議な状態から始まる物語。
いやはや、すごく面白かったです!
戸惑いながらも手探りでバース性に向き合う2人の姿が描かれていくのだけれど、合間合間に挟まれたエピソードがどれも良いんですね。
どちらもDomなことがはっきりと分かり、Domの中でも力が強すぎるオトの設定が生かされた描写もあり、お仕事描写も、今に至るまでの過去のエピソードも描かれているんです。
痒いところに手が届くと言いますか、何の疑問もなくスッと自然に楽しみながら2人の行方を追うことが出来ました。

読み始めは、普通の仲が良い友人関係の2人なのかなと思っていたら、次第に特別な友人関係だというのがちらほらと見えてくるではないですか。
こんな過去が…?そりゃあ好きだよ…なるほど…と、この2人ならではの信頼と安心感がすごいです。
安心して読めて、なおかつ萌えがぎっしり詰まっています。
「?」と疑問符だらけだった2人を見て、かわいいなー!と追いかけていたら、気が付けばとんでもなくむず痒くてとんでもなく萌える恋が芽生える瞬間に立ち会っていました。
男前受けもおいしく、救済ものとしてもおいしく、信頼関係と愛にあふれていて、1冊でこんなにもおいしいなんてとんでもない作品ですよ。
ゆくえ萌葱先生、天才ですか…?

どこも良かったのですが、個人的に1番刺さったのは、Domであるオトからのマサへのコマンドがどれも命令ではなくて「◯◯して?」とお願い感にあふれていたところ。
最初から最後までかわいいったらなかったです。
関係性も含めてツボにドスドスと刺さる最高の1冊でした!

この受け、城壁級に強い

流され受けとは対極にいる受けの言動ににそりゃあそうだと頷くばかりの1冊でした。
新人作家さんとのことですが、読みやすい文体であっという間に読んでしまいました。

自分の番のことが大嫌いなオメガ。
なかなかにインパクトがある設定です。
愛がないどころか、お互いのこともよく知らない状態で番ってしまったというのだから、やはり一体ここからどう展開していくのかが見どころでしょう。

家同士の損得だけを考えて、親に勝手に仕組まれた最悪の出逢いと最悪の番契約。
オメガの地位が決して高くはない世界の中で、何年もかけて自分の足で立ってモデルという仕事に誇りを持って向き合っていた紗和のことを考えると、番ってしまったからには責任を取るからと何度も家に通って来る司を鬱陶しいことこの上なく感じるのも仕方がないかなと思えるんですね。
ツンデレというより常識人だと思う。
なので、とにかく拒否!拒否!拒否!の状態が続きます。
世話を焼きたがる司があれやこれやと近付こうとしても、誠意を持って話をしようとしても、紗和の断固拒否の姿勢が石造りの城壁のようにカッチカチです。
ツンデレでもデレは早めにほしいよという方だと、もしかしたらここは好みが分かれるところかもしれません。

紗和視点でのみ進むお話だとこれはゴールまでが長そうだぞ…と思っていると、良いタイミングで司視点が入ってくるではないですか。
その場での勢いでうなじを噛む選択をしてしまったのは浅慮としか言いようがありませんが…
司視点を追っていけばいくほど、せめて誠実であろうとする彼の健気さと、恋も知らなさそうな男の言葉選びの下手さにもどかしくなり、発情期の紗和から発せられる暴力的なフェロモンと甘い誘惑だらけの言動にどうにか耐える姿に、お主も難儀な男よの…と溜飲が下がっていく不思議。
拒否されても何度も何度も向かい合おうとする粘り強さに、次第に紗和も読み手も折れてしまいます。
相手のことを少しずつ知った上で、本当に一歩ずつ近付くようなデレが紗和らしくて良かったです。

前半はもう少し司からの好意が分かりやすいともっと良かったかもと思います。断然後半の方が好みでした。
そして、気になった点はあまりにも家族が最悪すぎること。
そもそもの原因となった紗和の家族に最後までもやつきが残り、ここはすっきりとはしない読み心地だったかなと今回はこちらの評価になりました。
設定は面白かったので、オメガバース以外のお話も読んでみたいです。

目線だけで抱いていそうな甘やかし攻めたまらん

う、うーーっ!く、くるしい…これは萌えた〜…!!
攻めの天授のキャラクターがどえらいツボにハマってしまいました。
読み終えた今、萌えに萌えて大の字です。
一度その魅力に触れてしまったらもうどっぷり。
まるで底なし沼のような男です。はー、こんなの大好き。

いわゆるヤクザ・裏組織に属する攻めが登場する作品って、もっと攻めと受けのやり取りもピリッとしたものが多い印象があったのですけれど、良い意味で想像とは異なるトーンのお話でした。
もちろんピリッとする部分もあるにはあるのです。
でも、不思議なことにそれ以上に優しくて甘い雰囲気が漂っているんですよね。
精神的負債を抱えたまま地方病院へやって来たお医者さんを、雄くさい魅力溢れるヤクザのでかい色男が九州地方の方言を操り、よしよし良い子良い子とあやしてはどろっどろに溶かしていくのですが…これが最高なんだなあ…!
甘やかし攻めがお好きな方はもしかしたらピンとくるものがあるかもしれません。
デカマラ受けにアンテナが反応した方はアニメイトさんの小冊子付きをぜひ。きっと幸せになれます。

天授の外見も職業も、それこそ聖高との出逢いもその後の行動も、正直言って「やばそう」です。
近付いたら危ないと分かっていても離れられないと言いますか、花の蜜かフェロモンでも出ているのかななんて思ってしまうほど、一度会ったら忘れられなくなる甘い沼地のような男なのです。
広い背中全体に背負ったモンモンは大作を超えてど迫力。
ヤクザなことを含めて危険極まりないはずなのに、その実態はちょっぴり強引でいてとびきり甘い包容力攻め。
さらに複雑な生い立ちありと来ました。

いやいや、なんだこれ…たまらなくないですか?
傷付いた受けを優しく癒し甘やかしながら、その一方で自分は幸せから一歩引いたところに居て、いつでも愛しい相手が逃げられるようにしているんですよ…クーッ…!
なんだか、暴力や死が身近にあるヤクザ像とは真逆の印象を持ってしまいます。
そんな彼が慈しんでいるのが、多くの人の命を助けられる手を持っている医者の聖高というのがこれまた良くて。
吾瀬先生、真逆のものを持ってくるのが上手いなあ。
初めは聖高が天授に癒されていたはずが、ただそれだけではない関係性になっていくんですね。
天授のヤクザとして生きるには優しすぎるところも、聖高の心の傷の乗り越え方も、結びの部分も余韻があって非常に好み。
2人の未来がどうなるのかはまだ分かりませんが、悪い未来にはならないだろうなと思える関係性に萌えに萌えた1冊でした。

そして、ご立派なものを持っているのにまだ新品未使用なのも、攻めに言われるがままにアダルトグッズにはめる以外にはこれからも使う予定がなさそうな受けのモノって、冷静になって考えてみてもものすごくえっちだな…とわくわくしてしまった。
男の子扱いといい、見事に癖を刺激されました。

素朴な幸せ

うわー、すごく良かった…!
春を迎える前の少し肌寒い今の時期にぴったりな、じわじわ〜っと沁みるあたたかさが広がるお話でした。
この柔らかな雰囲気はきっとお好きな方も少なくないはず。
もっと多くの方に読んでほしいなあ。

昔はあれをしたいこれもやりたいと思うこともあったけれど、ふと大人になって社会に出てみると、どうしても日々生活する中で心と体が疲れてしまうことって誰しも1度はあることなんじゃないかなと思うんですよね。
疲れた状態が続くと、娯楽だったり、趣味だったり…日常の中にある何気ないものへの興味が後回しになったりしませんか?

大きな変化がなく、ぼやりとうっすら灰色がかったままだった世界が、ちょっとした出逢いをきっかけにして彩りにあふれた素敵な世界に変わっていく。
とびきり優しくて柔らかな日々が描かれている作品です。
永田と来栖の交流はごく普通のものなのだけれど、その普通さが極上の日常に変わっていくのが気持ち良くって。
読み終えた時には、ぽかぽかとした春の陽だまりに包まれながら、ああなんだか良い気分だなと小さくスキップをしたくなる。
肩の力を抜いて自然とあたたかい気持ちにさせてくれる、読み心地の良い1冊かなと思います。

会って食事をして、なんでもない会話を楽しんで、その人から帰り際に楽しかったなんて言われたらうれしいですよね。
自分の好みを覚えていてくれたり、自分に向けて笑顔を見せてくれたのならもっとうれしい。
自分も相手が好きなものを知りたいな、また会いたいなと思ったのなら、それはもうすごく良い関係性だと思うのです。

彼と出逢ってから、金木犀が咲いていることを知った。
一緒に夜空を見上げてみたら星が大きかった。
そんな、素朴な幸せが積み重なって自然に始まる恋が心地良い素敵な作品でした。
やさしい絵柄と作風が魅力的な作家さんですね。
次回作も追いかけたいです。

あまりにもリアル

萌えたか萌えないかで言うと分からない。
好きか嫌いかで言うと間違いなく好きな1冊。
そんなことを思った作品でした。

木原先生作品の中ではかなりマイルドな読み心地かなとは思いますが、どの登場人物も本当に実在していそうなくらい解像度が高いというか、生活や言動のすべてがリアルすぎて時々苦しくなります。
痛くはない。でも苦しい。
飾らない言葉で真っ直ぐにザクザク刺してきます。
眠る前に少し読もうかなと思っていたはずが、苦しさと共に人間くさい愛おしい面が交互にやってきて、この先の彼らを見届けたいとページをめくる手が止まらず…気が付いたら朝になっていました。

読み始めて、邦彦の片想いがメインに描かれている作品なのかと思いきや、いやいやこれはそれだけではないぞとなるのです。
表題作の黄色いダイアモンドでは、邦彦視点で進む勇への長きに渡るずっしりと重みのある感情の行方を。
そして、彼と共に暮らす真田親子を追っていくと、複雑でいてぐちゃぐちゃとした人の営みが見えてきます。
中編・歯が痛いでは、勇の息子で中学生になった俊一の視点で子供社会の残酷さと大人の理不尽さ、多感な思春期のままならない心情と家族の愛情が。
短編・十年愛では、俊一の同級生の秋森視点で繰り広げられる、まるで過去の邦彦と勇をうっすらとなぞっているかのような別ルートの恋模様が新たな世界を魅せてくれています。

どのお話も、自分が今まで生きてきた人生の中で体験したことや見聞きしたことがある物事の断片があまりにもリアルに描かれていて非常に驚きました。
きっと誰しもが「わかる」ことが出来るエピソードが絶対にひとつはあるはず。
共感や想像が出来る悪意や感情、葛藤、そして愛情がこれでもかとストレートにぎゅっと詰められていて、人の良いところと悪いところが同時に見られる1冊です。
けれど、わざとらしさは全くなく、どれもこれもがあくまでも自然な表現なのだからすごい。

人は好き勝手にものを考えます。
好き勝手にものを言いますし、好き勝手に受け取ったり受け取らなかったりします。
良かれと思って言ったことだとしても、それをどう受け取るのかは相手次第。
過去の自分の発言を未来で後悔することだってあります。
案外、世の中は身勝手で一方通行な想いや考えで出来ているのかもしれませんね。

邦彦の粘り強さに拍手し、勇の成長に安堵し、俊一の苦悩に辛くなり、秋森の綺麗な傲慢さと変化を見守りました。
とびきりの惨めさから、とびきりの深い愛情まで。
どしゃ降りの雨から、雨上がりの晴れやかさまでが本当に丁寧に描かれた読み応えのある作品でした。