amazonの電子書籍版です
今読むと逆に新鮮に感じる、真正面からのファンタジー。悪者を倒す話であり、不憫受けが救われる話でもあり。攻めがチート級の能力持ちなので、安心感が半端なかった。
暗殺者として育てられたカラスは、大衆から差別され、主である司聖からは人間扱いされない。とある男の暗殺に失敗すると、その暗殺対象に攫われる。そして初めて愛を知り――というストーリー。
カラスを攫ったのは、カラスに一目惚れした魅朧。ドラゴンだが(便利なので)人の姿で生活し、他者の心の内を読み、海賊船の船長としてカリスマ性を持つ。ドラゴンは独占欲も執着心も強く、一度伴侶を決めたら一生添い遂げる一途な性質らしい。
警戒心MAXなカラスに対し、ゆっくり慎重に距離を縮めていく魅朧。そして人として尊重されることの意味を知り、優しく尽くされるうちに、徐々に心を開いていくカラス。だがその過程で、カラスが誰かに魂を縛られていることに気付く。
この呪いの内容はかなり胸糞。カラスを縛った犯人は一人だが、他にも魅朧の仲間の裏切りなどもあり、悪者を一気に片づけに行く展開に。解呪法は術者を殺すことで、魅朧がブチ切れ状態なのもあり、犯人は酷いことに。といっても魅朧の圧勝で、描写にグロさはなかったかな。
心が読める魅朧視点では、カラスの壮大な告白ともいえる内容が視える。司聖の事情もねじ曲がったいろいろが視え、その背景を知ったカラスの答えは、前向きでとても良かった。魅朧とその仲間たちに愛され、希望を口にできるようになったカラスに、温かい気持ちになる。
中盤、船内シーンが長く中だるみを感じたのがちょっと残念。全体のストーリーはとても面白かった。カラスが人として生きていくのはこれからなんだな、と応援したくなって読み終えた。良かった。