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小説
オメガバースもので、主従もので、身分差ものでもあり、獣人ものでもある設定てんこ盛りな作品。方々に目を配らなきゃならない忙しいストーリーだけど、話がとっちらかってるわけでもなく、ドラマチックなエンディングへと導かれていく展開や見せ場の多さはワクワク感でいっぱいでした。
故郷を襲った相手への敵対感情も物語を盛り上げるための重要なエッセンスとなっていて、皇位継承を巡るお家騒動も、発情期の訪れよるΩ発現も、予期せず憎い相手と番ってしまったことも目が離せない見どころです。フィオの想いが、第一皇子であり、故郷の仇であり、自身が仕える主人であるシンに向かっていくBL展開は、シンへの反発感情があるぶんゆっくりと進みます。
ギスギスとしていた感情がやがて甘さを帯びていくフィオの心変わりは一番の注目ポイントでしょう。シンに完全に絆されてしまったと言われてしまえばそうなんだけど、いやもうこれは仕方がない^ ^
虎視眈々と報復の瞬間を狙うフィオの恨み感情に反して、シンがフィオにめちゃくちゃ優しく接してくるから、調子を狂わされていくんですよね。優しいし、気遣い屋だし、勤勉家だし、動物への愛情も深い……シンの皇子像は、フィオの嫌悪感を解くには十分。こうなってくると、無理やりシンを憎もうと頑張るフィオの感情は、半分意地みたいに映ります。
シンと事故的に番になってしまったことをキッカケとして、シンに惹かれていく感情と故郷の仇感情の間で揺れ動くフィオの心境は、シンの皇位継承騒動に影響を受けてより複雑めいていきます。
色んなことが巻き起こって騒々しくはあるけど、フィオ自身自分の心の中にあるシンへの想いに向き合えたことが一番大きい収穫だったかな。次期王に選定されるべくアクティブに動き回るフィオの行動力は頼もしく、フィオがシンの一番の理解者で一番の味方になっていくのがすんごく楽しいです( ´∀`)
身分の高い皇族にも物怖じしないフィオの負けん気の強さは、Ωっぽくなくてそんなところもまたこの作品の魅力にハマる理由の1つ。ヒトと獣人の間にある格差社会に怯まず、勝気な性格と頭の回転の良さでこの世界で生きるフィオがカッコよかったです^ ^
シンはαで、能力も体格も獣人らしく素晴らしいスペックだけど、性格が落ち着いていて穏やかなんですよね。不吉な身の上であり、また幼き頃から命を狙われているせいもあってか、どこか諦めがちな感じでもあります。
そんなシンと対照的なフィオの気の強さがすごく良い相性で、お似合いのカップル感。弱気な発言にビシッと喝を入れたり、シンが次期王となるべくサポートしたりと素晴らしい内助の功です。
命を狙う犯人を追い詰める一幕や、フィオにちょっかいをかけるαの男との対峙も見逃せないシーンがたっぷり。また、実はフィオに寄り添っていた白銀の狼の存在が実は……というサプライズ展開もあり、楽しさの塊のようなストーリーでした。
フィオとの過去の繋がりは、シンの一途な想いが際立っていてすごく良かったです。
不思議な縁からツガイとなりゆく2人の恋愛模様を最後までお楽しみ下さい♪