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表題作エデンの都市(まち)

諏訪忠之/37歳/会社社長
諏訪千幸/16歳/高校生

あらすじ

最愛の妹・幸菜の死を契機に、忠之は甥・千幸を引き取る。しかし、冷めた視線の千幸に、忠之は戸惑うばかりだった。そんな時、忠之の経営する会社が何者かに乗っとられる。途方に暮れる忠之を励ます千幸―お互いに強く魅かれはじめた二人の行き着く先は、楽園なのか、それとも…。

作品情報

作品名
エデンの都市(まち)
著者
小林蒼 
イラスト
極楽院櫻子 
媒体
小説
出版社
ビブロス
レーベル
ビーボーイノベルズ
発売日
ISBN
9784882713401
5

(1)

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萌々

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中立

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趣味じゃない

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レビュー数
1
得点
5
評価数
1
平均
5 / 5
神率
100%

レビュー投稿数1

実の親子なのに、というより、実の親子だから、という関係

かなりまとまってない部分もあって、やりたいことがバラバラしていて、ちゃんとプロット立てをしないでガーっと勢いでだけで書いたんじゃないか?と思えるくらい、腑に落ちないところや説明の足りてない部分も多く、荒削りな作品だと思いました。
でも神をつけたのは実親子ものというものに初めて心のそこから萌えた気がしたからです。

実の親子の恋愛は得意ではないなーと思っていたのですが、これはあらすじを読んだ時に親子ものだとはわからず…。けど読み始めたら早い段階で二人は実の親子で、禁断の愛をテーマにしているものだとわかります。
実の親子もの、しかも妹との間に出来た禁断の子供です。
え~実の親子なのかぁ、しかもなかなかシビアな設定だ・・・とちょっと引け越しになったんですが、これがすごく意外でライトなお話でした。

ずっと会っていなかった妹が亡くなり、その息子、千幸を引き取ることになったどこかぼーっとした会社社長の忠之。
これだけ見ると歳の差ものです。私は身寄りのない子供を引き取るというお話が大好きで、これは好みだーと喜んだのですが、読んで驚き、千幸は忠之と忠之の妹の間に出来た子供だったという事実に、忠之と妹が長年離れていたのも、妹が近親者しか愛せないという性癖をかかえていたからという…。

私はこれを読んで親子ものが苦手だったという概念が変わった気がします。そのくらいこの2人が好きでした。
普通、兄弟など近親者での恋愛ものだと、弟、兄、父である前に「あなたという人間が好き」だとなると思うのです。血のつながりは関係ない!とか。

でもこの作品は父親であるから、息子であるから「愛している」ということも大きな要素です。
千幸は忠之のことを「おとーさん」と呼んでいて、そればベッドシーンでもずっとそうです。
甘えるときも、勉強を教えてもらうときも。「おとーさん」って甘えた感じで言うのが、それがなんかずっとせつないような、きゅんとするような。
いけないことであるのに、それを考えないように過ごすのでなく、必要以上におとーさん、おとーさんと呼ぶのが逆に背徳感なんて飛び越えて愛しい感じでした。

忠之もまた、妹と同じく近親者を愛する性癖を持っています。
だからすごく重い話かというとそうでなくて、けっこうなコメディーなんです。
近親相姦というシリアスとこのコメディー感が不思議な感じでした。
これでもし親子の恋愛という背徳感を嘆くような作風だったら苦手だったかも、しれないんですが、この不思議な面白さがよかった。

ただ、説明不足なところが多くて構成が良くないと感じる部分もあります。
登場人物は千幸と忠之と敵(?)である中条。彼は会社を乗っとるという悪役として登場するのに、千幸の育ての親という・・・その辺り非常に説明不足でした。
どうして中条と千幸の母親が出会ったのかとか、千幸が中条に虐待されていたこととか、さらっと流され過ぎていてわかりにくい。
かなり重たいことだと思うのですが…。さらには中条に性的な虐待も受けていたようなのに軽く流され過ぎています。

そして忠之に引き取られたあとも中条に犯されているのがちょっと不思議でした。忠之に引き取れた今、対抗できないものなのかしら?
このあと中条の息子が出てくるんですが、その子も重要なキャラなのに軽く流され過ぎ。
でもそこを突き詰めていくと親子ものが書ききれなくなるのかも…?
何にせよ、面白いのに設定が詰めすぎです。

親子ものと言っても邪魔が入り過ぎで二人でまったりするシーンは少なめ。
肝心のストーリーですが、忠之はいい歳をして騙されやすく、何度も会社を乗っ取られては千幸と二人で取り戻すというコメディー展開です。それが短編で何話かに別れています。忠之が人に騙される→二人で解決、の繰り返しです。
もうこのお父さんは、息子がいないとどうにもならない…と感じさせます。

しかし忠之のこのまったりとしたキャラが非常によく、千幸が子供なりにおとーさんを守らないとというのがしっくり来ました。
この二人のラブストーリーをもう少しメインにおいて欲しい気がしましたが、親子ものというのを堪能でき、新境地を開かれた気分になりました。
だだ、内容は先にも書いたようにわちゃわちゃしていますので、親子ものという禁忌とも相成って、読み手を選ぶ作品かもしれません。

2

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