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おすすめいただいて読んだ作品です。エイリアンものだという事は知っていたので興味津々でした。
読んでみると、表題作「サミア」は全くキワモノではなく、ど田舎の山の中に住んでる普通の中学生が夏休みに経験する出会いと別れの物語。
よくある青春物語の型をなぞりながら、その相手がエイリアンであり、同性(というより男性型?)だった。その上、永劫の時を生きる残酷さ、生と死の哲学。それらが長くもない話の中にギッシリと詰め込まれております。
「いつか地球が海になる日」
この作品には心底驚いた…
二枚目なのに変態と自覚している七宮。そのオブセッションは『男が泣き喚いている姿を見たい』。
そして、七宮のいる美術部に入部してきた同じクラスの仁科にロックオン!それに気付いたクラスの女子武藤がまた輪をかけたぶっ飛び女子で…面白すぎる!
ネタバレ無しで書くのは難しいですが、ここからの展開はまるで絶叫ポイントもりもりのジェットコースターみたいで、え?攻め受けこっち?から七宮何考えてるの?から、七宮の子供時代の強烈エピソードから、と畳み掛ける。
ついていくのがやっとです。怪作!(この作品は「神」)
「ミルク」「ミルクの後で」
カフカの「変身」をBLで。と言っても虫より断然可愛いペットのハムスターになるので、気持ち悪さはありません。その上こちらのザムザはポジティブ野郎で、人間に戻った後は両想いを満喫する幸せな奴です。
タイトルと門地かおりさんのカバーや口絵イラストから、甘くてロマンティックなお話をイメージさせます。でもクスリと笑えるんですよ。小説道場ご出身の作家さまで初出も古い作品ですが、古臭さを全く感じません。JUNE作品ですから、作風に色んなロマンを求めたとしてもあながちズレた要求でもないのかもしれないけれど、どんなテイストであれ、BLのルーツ的JUNE作品にはハズレがなさそうな予感がいたしまして…。
短編が三作収録されており、主人公は全て男子高校生。とにかく全員、メンタルがオトコマエです。たとえ不条理な状況に陥っても怯まない。作家さまが笑いに変えて読者もろとも流れに乗っからせてくれます。表題作「サミア」は、ど田舎の山奥に住む友則が、幼馴染の貴志と一緒に学校からの帰宅途中で謎の美しい男と遭遇。その男は宇宙人だった、というストーリー。B級コメディ映画のような設定ゆえか、笑っていいのか戸惑いつつも切ない異(人)種間の心の交流(エッチ付き)にキュンとします。
「いつか地球が海になる日」が個人的に最も心打たれた物語。自称「変態」の主人公、七宮の視点で語られる形式で、ストーリーが進むにつれ彼の生い立ちが明らかになります。男の性癖に理解を示す女の存在感はBLではなかなか難しいけれど(そこはJUNE作品ということで)、このお話では女子クラスメイトの武藤がキーパーソンです。七宮が己の変態的な欲求を仁科という彼の苦手な男子生徒で果たそうとするのですが、事態はあらぬ方向へ。自分はゲイではないと釈明するシーンで、「ストレート」というワードを使っているところに時代を感じます。ま、いくら耳年増とはいえ、今日日ノンケという言葉もノンケ本人は使わないのでしょうけども…。さらっと読めるのに笑いと涙の両方を誘う、実は色々なテーマを取り込んだとても深い作品といった印象を受けました。
「ミルク」&「ミルクの後で」がこれまた、男子高校生が可愛ハムスターに…。というお話で、笑わせてくれつつ、やっぱりホロリとさせられちゃう。飼い主の瀧又を励ますハムスターのミルク。健気というより、父性すら感じます。どの主人公も男に寄せられた思いに受けて立つ!恋情とも微妙に違う、相手を心に懸ける姿が男っぽくて、とってもカッコよかったです。
初出が1993年という話の新装版。
『サミア』『いつか地球が海になる日』『ミルク』『ミルクの後で』の
四篇が収められた短編集。
エイリアン、変態、ハムスターと、ぶっとんだ設定の古きよきBL。
軽妙な筆致で書かれながら、ふっと心の深いところに嵌るような物語達。
個人的にはSFというには抵抗があるが、
淡々とコミカルでありながら、とても優しく誠実な物語は
BLジャンルを外したファンタジー短編集としても悪くないと思う。
逆にBL的な萌えを感じるか?……と言われると、
『ミルク』意外は個人的にはNo。
『ミルク』は、設定を猫でも犬でもなくハムスターにしたところが出色だが
切ない自慰を日々(って3日に1回らしいけれど)を見ているあたりでキュン。
濃いエロを求める向きには合わないかもしれないが、
夏の夜のおとぎ話にお勧めの一冊。
こんなに泣かされたBL小説はありません。
15年以上前に書かれた作品ですが、古さを感じさせないどころか、人物の心の動きは今でも十分に読み手の胸に迫ってきます。
最初は、突飛なサミアの言動に 読みながらも頭がふわふわしていたのが、次第に描写の美しさに引き込まれ、友則の気持ちでサミアを愛しいと感じ始め、そして近づくタイムリミットに、痛いほど胸がしめつけられていきます。
何度も何度も読んでいて、救いのないふたりだとはわかっていても、結局同じところで涙が止まらない。セリフの一つひとつに嗚咽がこぼれる。感動の色褪せない作品とは、本当に「サミア」のようなお話をいうのだと思います。
本のデザインも印象的です。
表紙で 眠るサミアを包む白い花が、扉絵では途端に鮮やかな色に。読了後もう一度扉絵を見ると、まぶたに口づける友則の姿にハッとさせられ、どうしてもまた涙してしまいました。
同時収録の「いつか地球が海になる日」(タイトルが素晴らしいです…)「ミルク」も、文章は読みやすくあっさりしているのに、登場人物の可愛さやエロさがしっかりと伝わってきて、とても好きな作品です。「ミルク」は特に門地先生の絵柄がぴったりなお話。
一冊のうちに泣いて、爆笑して、ときめいて、読み終えた後の充実感がとにかくすごい。
夏が来るたび読み返す名作です。
もう恋とか愛とかでいう言葉では追いつけないほどに―
思わず作中の言葉を借りてしまいましたが、表題作「サミア」を
読んでは、ふつふつと湧きいでる気持ちが上手く言葉になりません。
肉体という殻を取り払って、互いの存在、魂そのものを慈しみ合う
限られたひと時が、夏の日々に書かれています。
想い人がエイリアンという、ややもするとキワモノ設定が、
こうでなければ表現し得なかっただろう物語の核となっています。
気の遠くなる程永い時を、その存在が在る前からただ想ってきた
という果てのなさと深さに、ただ陶然とします。
直接的な描写もない言葉での交歓は神聖さすら感じました。
また、主人公の心を地に留めた、幼馴染みの存在と彼の言葉が
とても良かったです。真実の一面を突きつけても、命が巡る希望を
伝えてくれた彼の想いもいつか届くといい。
僅か100pの短編に深い読後感がありました。
同時収録の「いつか地球が海になる日」で、男性の苦しむ姿に執着する主人公の偏愛の底にあった真実。
それがタイトルと結びつく構成が素晴らしいのです。
また、主人公と変態という秘密を共有する少女なくして
このお話の魅力はありません。
彼らが感じてきた孤独、疎外感は大人達のエゴによるものなのに、
実にあっけらかんとした姿がたくましく愛おしいのです。
「叶えて」という大好きな曲が、この作品のイメージに合うなあと
個人的に思いました。叶えて、砕いて下さいその指で、という
空気に溶けるような曲です。