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表題作サミア

高校生・友則
美青年エイリアン・サミア 

同時収録作品暗珠

川瀬 豊 デザイン事務所一人社長 28才
和樹 高1

同時収録作品影法師が泣いている

渡辺 明 高2
日野 稔 高1

あらすじ

受験を目の前にした高校生友則の家に、ある日突然謎の美青年エイリアンが現れた。性と人種を越えた純愛「サミア」。すれ違い傷つけ合う男達の愛を描く「暗珠」等、せつない恋愛小説三編。

作品情報

作品名
サミア
著者
須和雪里 
イラスト
西炯子 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川ルビー文庫
発売日
ISBN
9784044341046
3.8

(15)

(6)

萌々

(2)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
8
得点
55
評価数
15
平均
3.8 / 5
神率
40%

レビュー投稿数8

初期タイトルは『無限夢願』

旧版にも名作が収録されていますよ。


『影法師が泣いている』
個人的にいちおしです。
再録がなさそうなのであらすじを書きます。

主人公である「おじさん」は善良な霊魂。
生きていた頃の名前も記憶も忘れ、いつか成仏することを願いながら守護霊をしています。
そんなある日、洋くん(享年17歳)という名の守護霊と出会ったことで過去を思い出すことに・・・。
生前「おじさん」は独身と偽って洋くんと深い仲になり、妻子があることがバレて修羅場を演じた挙句、なんと彼を殺してしまったのです。
いや~、このネタで1本読みたいですね。
「おじさん」は洋くんから「悔しい、許さない。」と恨まれ、そのため二人がそれぞれ守護する少年達も互いに影響を受けます。
(この少年達の恋愛は私的にはどうだっていいです。)

「おじさん」と再会したことで、怨霊の成れの果ての顔だけの姿となり、一生成仏できずにさまようこととなる洋くん。
そこで彼の本心が「悔しい」のではなく「悲しい」、
「愛する人に殺された」
そのことがただただ悲しかったのだということを知った「おじさん」は、何も分からなくなってしまった洋くんを抱きしめ、自分が犯した罪の深さを思い知るのです。

これ切ないですよ。
「おじさん」も洋くんが好きだったから既婚であることが言えなかった。
互いに相手に裏切られたと思って傷付き苦しんだ。
殺人という罪を犯した「おじさん」の方はいずれ成仏できるというのに、被害者である洋くんはもうそれが叶わない。
「悲しい、愛してたのに。」と「おじさん」の名前を呼びながら、涙を流し続ける洋くん。
いったい彼の何がいけなかったというのか。
「おじさん」のことが好きだっただけなのに。


『暗珠』
これまた暗い話です。
強引に手に入れた相手から自殺されるほど恨まれ・・・。
そして大どんでん返し。
JUNE的な結末を迎えます。

5

名作中の名作

ワンパターンな王道小説ばかり読んでるなかで、たまにこういう名作に出会うと、読み終えるのがもったいない気分になって困りますねーw
いろんなブログで、過去のオススメの名作として紹介されていて、読みたかった一品です。読めて良かった。
SFチックな短編が3+1つ入ってます。どれも変わった設定のお話です。
描写は意外と淡々としてて、お涙ちょうだいみたいな書き方はしてないんですが、内容はかなり切なくて、泣きました。

『サミア』
殺して欲しいと望む宇宙人との恋です。
切なさ度100%。
これは絶対に予備知識なしに読むべきと思います。

『いつか地球が海になる日』
切なさ度90%。
表題作よりこっちのほうが好きかも。
トラウマものは食傷ぎみですが、自分を守るために主人公が無意識に作りあげてきた奇妙な殻に、その奇妙さに、泣きました。

『ミルク』
切なさ度20%、可愛い度80%。
萌え的には、この作品が一番キマシタ。
漫画で読みたいな。小椋ムクさんあたりが描いたら、超萌えるんじゃないかと。ハムスターが可愛い。

3

号泣必至。

当時購読してたJUNEに掲載されていました。
その号は今でも保存してあります。
永遠の命を終わらせたい死にたがりの宇宙人との交流と、別れ。
突飛な設定ではありますが切なさは最強です。

2

すごい。

三つの短編からなるこの本。書かれたのは90年代です。
読んだ感想は、いや〜…すごい。重い。暗い。でも面白い。
BL(あるいはそれに準ずるもの)とは言えないような、ちょっと特殊な純文学として出版できそうな感じの本です。
どの作品も、恋愛がテーマにはなっていないんですよ。テーマは読んだ人それぞれで違うものを感じると思いますが、私が感じたこの短編集のテーマは〈罰〉でした。
(※以下はネバレが含まれますので、未読の人は気をつけてください。)

まず表題作の『サミア』。
このお話が一番、後味の良い作品でした。ソフトなSFです。
物語は主人公の友則が中学三年生の時、道ばたでイケメン外国人?と遭遇することから始まります。
出版社のあらすじにもあるとおりイケメン外国人はエイリアンです。友則はエイリアンに「サミア」と名付け、一つ屋根の下での暮らしがスタート。
これだけだと「宇宙人と少年の心温まるお話」のようですが、そうではありません。サミアはとある事情のために、遠い宇宙の果てから途方もない時間をかけて、友則ただ一人を探し求めて来たのです。
その事情の背景にあるのが、サミアの犯した罪とそれに対する〈罰〉です。
このお話を読んでいるとき、手塚治虫先生の『火の鳥』を思い出しました。
重過ぎる罪は贖うことすら許されず、罰として永遠に苦しみ続ける。サミアはそんな存在だったのです。
何だか不思議でした。生と死や、罪と罰なんていうものを考えさせられる物語なのに、ちゃんとBLとしても進んでいくんです。
友則のサミアへの愛情が恋愛感情かと聞かれるとう〜ん…なのですが(サミアの孤独や愛に共鳴してしまった感があります)、それでも二人は身も心も繋がります。
でも一番BLらしかったのは友則の幼なじみで親友で、友則に片想いしている貴志の存在です。ぽっと出のエイリアンに好きな人の心を搔っ攫われてしまう貴志くんが切なかったですね。
そういった諸々のBL的な楽しみもありつつ、最後にはちゃんとサミアが〈罰〉から解放されるので、爽やかな読後感でした。少年たちの一夏の成長物語、とも受け取れそうです。

続いては『影法師が泣いている』。
いや〜…。辛い。救いのないお話です。
主人公は「おじさん」。守護霊です。高校一年生の稔くんに憑いています。生前のことは一切覚えていません。それでも周りの守護霊たちと平和に楽しく過ごしていました。
そんなある日「生前の自分に殺された」という別の守護霊と校内で鉢合わせし、平穏な日常は崩れていきます。
生前のおじさんに殺されたというのは、享年17歳の洋くん。稔の先輩に当たる高校二年生の明くんに憑いています。洋とおじさんは生前は恋人同士でしたが、おじさんに妻子のあることがわかり関係が縺れ、その結果おじさんに殺されたとのこと。
どうしても生前にされた仕打ちが許せない洋は、おじさんへの恨みからだんだんと悪霊のようになっていってしまいます。それなのに、おじさんが憑いている稔は洋が憑いている明に恋してしまうのです…。
稔と明に関しては、守護霊目線でなければ結構王道のBLをしています。傲慢攻め×健気受けです。この二人の最後ほうのやり取りは萌えました。
しかし、この物語の主人公は「おじさん」です。
そしてそのおじさんには贖うことの出来ない罪があります。生前殺してしまった人をどう頑張っても救うことは出来ないし、謝って済むことでもありません。はたしてどうなるのか。
物語は意外な結末に向かいます。一番大きな罪を犯したはずのおじさんと、被害者であるはずの洋くん。それなのに…。
ラスト3ページは本当にゾッとし、もの悲しい気持ちになりました。愛していた人に裏切られて悲しくて、ただそれだけのはずだったのになぜこれだけの罰を受けることになったのか。
本当に浮かばれない、救いのないラストでした。
誰の罪のための罰なのか、悩んでしまいます。

最後は『暗珠』。
なるほど。読み終えるとタイトルの意味がわかります。
上の二つがファンタジー込みなのに対して、こちらは普通に現実のお話。
あらすじの説明は省きます。
ラスト2ページ、戦慄しました。恐ろしいです。鳥肌立ちました。
『影法師〜』も衝撃的なラストでしたが、こちらはもっと衝撃的。どんでん返しと言えば良いのか…。
テレビ番組の『世にも奇妙な物語』で、胸くその悪いストーリーを視聴した後の気分と似ています。一難さってホッとしたとこで、背後からいきなりグサッと刺されるみたいな。そんな衝撃です。
ここにもやっぱり〈罰〉が関わっているように思います。誰が何をしてどんな罰を受けることになってしまうのか。読んでどっぷり浸かって下さい。
それにしても、このラストの衝撃は多分一生忘れないだろうな…。

なんだか感想を書いているうちに、この小説のテーマは罪とか罰を超えた〈業〉なのかな?なんて思えてきました。う〜ん。本当に簡単じゃない作品たちです。
あまり理屈っぽく考えずに楽しむのが良いのかもしれないですね。理屈抜きでも面白い小説なのは間違いないですから。
辛いし暗いし、救いもないけど、でも面白かったです。文章も読みやすいですし、極端な行動をしがちな登場人物たちにも不思議と感情移入できてしまうような、説得力のある心理描写も良かったです。
短編という形だったのも良かったと思います。それぞれしようと思えば長編に出来るお話だけど、長編でこのラストをやられるとダメージが倍増しそうですからね。短編であるお陰で、いい具合のショックを楽しめました。
何度もしつこいですけど、本当に面白い小説なので(といってもBL的な面白さとはちょっと違いますが)、ぜひ興味のある人は読んでみて下さい。

ちなみに、門地かおり先生がイラストを描いている、新しいほうの『サミア』は表題作以外違う作品が収録されているようですね。次はそっちも読んでみようと思います。楽しみです。

2

悲しいエイリアンファンタジー

須和先生の書かれる作品は、滑稽さと切なさと内包した独特の作品です。
なかでも、「サミア」は、異星人とのLOVEですから、他の作家さんの追従を許さないでしょう。(笑)異形の狼やヴァンパイアなんてのは結構、BL界にもありますが・・エイリアンとはあまりないと思います。
サミアは、罰である永遠の命を終わらせるために、ひたすら友則を探していたので、友則を見つけたい、手に入れたいと思い続けるその気持ちは、まるで恋心のようで。
友則のことを特別だと言っていたのに、学校に行っている間、父親たちとにこやかに農作業をしている様子を見て、自分だけが特別じゃないんだと、すねる友則。
そんな友則を見てサミアはきらわれたくないからと、学校に行っている間も何も食べず丘の上でじっと友則の帰りを、待っている。
穏やかな死を望むサミアに、いつしか愛情を抱き殺したくないと思う友則。
二人の穏やかな時間があるから、余計に別れがつらいですねええ・・あまりにもあっけない別れなんです。
主人公共々戸惑い、これで良かったんだと自分を納得させるしかない作品です。
名作「サミア」、こんなBLもあったんだと一読ください。

4

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