「グレイ・ゾーン」の久能千明が贈る、至高のボーイズラブ・ドラマ

  • 紙書籍【PR】

表題作ボーダー・ライン

由利潤一郎、美形だが常人離れしたセンスの弁護士
真行寺佳也、正義感が強く真面目な警部補

あらすじ

愛してる―。繰り返される甘い囁きに、頑なな心も身体も、溶かされていく……。
頑なに人との深い関係を拒む刑事・真行寺佳也は、雑踏の中、ひとり浮き上がって見えた男・由利潤一郎に目を奪われた。やがて、刑事と弁護士として法廷で再会したふたり。最悪な出会いから始まったふたりの関係だったが、まるで猫のようにするりと心に入り込む由利に、佳也は心を許しはじめ……。佳也の、由利の運命を変える事件が、恋が、始まろうとしていた―。

作品情報

作品名
ボーダー・ライン
著者
久能千明 
イラスト
蓮川愛 
媒体
小説
出版社
角川書店
シリーズ
グレイ・ゾーン
発売日
ISBN
9784048734912
4

(13)

(7)

萌々

(1)

(4)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
5
得点
51
評価数
13
平均
4 / 5
神率
53.8%

レビュー投稿数5

全てはここから始まった。

「グレイ・ゾーン」シリーズ2作目となるこの「ボーダー・ライン」
時系列的にはこちらの方が先で。
グレイ・ゾーンで謎の相棒だった由利とその想い人・真行寺との始まりの物語。

空を見上げていた真行寺は視線を下ろしたその先に一際目立つ男を見つける。
奇抜な衣装に身を包んだ綺麗な男・由利潤一郎。
彼はひと目で真行寺を気に入って、何かと追い回すことに。
一方、真行寺は元同僚で唯一の友人とも呼べる男の死に疑問を抱き、以前から調べていた事件との関連性も考え始め…。

先にCDを聞いているのでお話は知ってるんですが。
やっぱりすごく好きなお話ですね。

真行寺は真面目で正義感が強いが故に妥協が許せず、自分の信念を曲げられずにどんどん深みへと嵌っていく。
そんな深みへと嵌っていく真行寺の崩壊を辛うじて止めていたとも言えるのが由利。
最初に真行寺がグラついた時に傍にいて彼を解放することができたことで、真行寺は由利になんとか縋ることは覚えることができた。
そこに罪悪感のようなものは潜んでいたが、どうしても真行寺には必要で。
由利は由利の持てるあらゆる全てをもって真行寺をその苦悩から一時的に解放することができる存在で。
けれど、そんな存在であるからこそ大切で傷つけたくなくて守りたくて。
真行寺は真実を由利に離せないまま、暴かれることになる。
そこには真行寺が抱えていた自分の出生から来る己の性への不安のようなものもあって。
自分の気持ちさえも信じることができずにいた真行寺がいて。
由利の言葉でそれもようやく解放されることとなるのだが。
幸せは長く続かないというか、嵐の前の静けさとでも言おうか。
この後の展開は実に大きく動いてエピローグへと繋がる。
エピローグは2年後の彼らの世界。
この章はもうどこを読んでも切ない感じが漂うというか。
とにかく、由利がスゴイな、と。
そして、そんな彼がとても切なくも思えるのですが。
最後の邂逅が真行寺の想いもその先にあるものも未来があるようなものでよかったです。
いつか由利が報われますように。

それにしても…。
あとがきを読んである意味驚愕ですよ。
前作を書いた時点では続編の予定もなく。
過去の出来事など適当にちりばめられたということ。
つまりは。
由利のキャラや由利と片岡が関わることになる過去なんかについてはいわば適当に作られたもの。
その適当に散りばめられたピースを拾い集めて、なんとかうまい具合につじつまを合わせていき、できたのが本作。
それでこんなステキな物語ができあがるんだから本当に久能さんはスゴイ!

これを読んだらまたCDが聞きたくなりました。
小説もいいけど、音になるとそれぞれのキャラの特異性みたいなのが際立つような気がして。
この作品でいえば特に由利。
彼の不思議な空気感は音の方が不思議度(?何ソレ)を感じやすいというか。
CD自体も1冊の本から3枚へと丁寧に作られているので聞きごたえもあるし。
小説しか読んでないという方も是非!

2

文庫化を切望!

ドラマCD化されている有名作品であり、『グレイ・ゾーン』のスピンオフ作品です。

個人的に、私は主役カプ(グレイ・ゾーンの亜久利×譲)より、この二人(由利×佳也)がお気に入りです。特に、一癖も二癖もあるクセ者の弁護士・由利が愛しくてたまりません。

クールビューティーを絵に描いたような刑事の真行寺佳也は、堅物な位に生真面目で融通のきかない頑固者。

なので、一見ド派手で、あまりにも奇抜なファッションセンスと、『勝ったもん勝ち』的な、ある意味小器用で狡さがあり、それを隠そうともしない、自分とは正反対のキャラな由利に対して、佳也は当然ながら悪印象しか持たない。

決して関わり合いたくないタイプの由利に、なぜか佳也は迫られ、いつしか、由利のペースに巻き込まれていく。。

そして、由利は佳也との出逢いで、真摯に向き合うことを学び、佳也は由利に『甘える』ことを知る。自分の弱さを認め、ぶつけ、そんな自分を丸ごと受け入れてくれる存在が由利だけれど、由利は佳也に対して、常に前に踏み出す勇気を与えてくれる存在で、逃げ込む場所にはならない。

だから、佳也にとっての由利は手放せない存在になっていく。アンバランスな二人のようでいて、実は互いの欠けている部分を与えながら、恋に育てていく様子が、二人の出逢いは必然だったのだと感じさせられます。

しかし、そんな二人を引き裂く事件が起こり、瀕死の重症を負った佳也は、由利との記憶を全て失ってしまう。

二人が確かに恋人だった事実を覚えているのは由利だけ。。そして、二人は再会するという場面でのエンドマーク。

どんなに由利が佳也を愛していて、焦がれるほど思っているかが、読み返す度に溢れ出てくるようで、再会後の二人に幸せが訪れるようにと願わずにはいられません。

由利はきっと、たとえ佳也から受け入れてもらえなかった時のように、二人の出逢いを始めからやり直しても、何も言わずに、何喰わぬ顔をして、佳也を愛し続けて、記憶が戻るその時を待つのだろうなぁ。。

そして、きっと佳也はそんな由利が気になって仕方ない。。という感じで、それを端から見ている亜久利がやきもきするのかも。。

文庫化されて、二人の再会後のショートストーリーとか、オマケで掲載してほしいです。(ターニング・ポイントの続きで、展開が見られれば嬉しいのですが。。)

1

由利潤一郎の真実

グレイ・ゾーンのスピンオフ。
時間的には、グレイ・ゾーン以前のお話で譲は出てきません。
由利が飼い、亜久利に懐いている猫の飼い主がここで明かされます。

「メタルフレームハンサム」(時代を感じる・笑)警部補・真行寺佳也と弁護士・由利潤一郎の出会いの物語です。

ハンサムポリスチェッカーの南響子も登場。彼女は佳也の元カノ。

片岡亜久利もまだ警察に所属しています。

由利のキャラクターもあって物語は軽いタッチで進んでいきますが、事件は重いです。
元同僚、久保田の死の真相を知った佳也の絶望がとても痛い。

佳也は、由利と触れあうことで精神のバランスをとりつつ、手を差し伸べようとした亜久利の手を取ることなく、ひとりでその真相を暴こうとします。

由利が佳也の目的を知り、身体だけでなく心も触れあったときにはもう取り返しがつかない事態となっていました。
グレイ・ゾーンでは、由利の大切な人について、かなり絶望的な印象を受けましたがこの時点で佳也は生きています。
生きていますが・・・。

由利と亜久利の後悔がグレイ・ゾーンへとつながります。

この続きを書き下ろしていただいて文庫化されることを希望します。
いつか、佳也が由利に「またお会いしましたね」と言ってくれたら・・・と思います。

1

由利の懐の深さ

前作は未読です。
話の前半のテンポのよさと、後半のシリアスさのバランスが非常によい作品だと思います。
キャラも魅力的だし、お互いの存在、そして恋によって彼等が変わっていく様がよく出ていると思います。

ただ、私はもう少し佳也と元同僚の関係や、佳也が一人で追うことになる事件に対する彼の心の内や、彼の行った捜査手順など、描写がないわけではないのですがもう少し見せてくれたら更に面白かったのになぁ、と思ってしまいました。
BLとしたら充分なのかもしれないのですが。

久能さん作品はBLとしたらハードル高めの題材が多いので、私としたらBLの範疇以上のこともうっかり求めてしまいがちなようです。。


いままで法廷をゲームとしてきた弁護士の由利が警察官である佳也のまっすぐさに触れ、佳也を一途に愛するようになるのですが、このくだりがとても好きです。
そして、その後の由利の佳也への惜しみ無い愛情に、今度は佳也の頑なさを溶かしていく様も。
前半の彼等の会話が愉しくて、かなり笑いころげました!
佳也は男としても格好いいし、そんなクールな彼が由利のペースに乱されるのは、お約束パターンだとしても私のツボであるし、なんといっても会話のノリが秀逸なんですよね。

後半における、佳也の極限状態に黙って付き合う由利の優しさにも、彼の深い愛情を見ました。
そして変わっていく佳也についには黙っていられなくて、でもすでに事件は佳境に入っていてどうすることも出来なかった由利の想いが痛ましかった。
でも哀しいだけのラストでなく、希望の持てるものだったのが救いです。

どうかこの続編を、そして辛い想いばかりであった彼等の幸せを願うばかりです。

ところで、由利のエキセントリックさは某推理小説の榎さんを思い起こされるのは私だけでしょうかw
それでも由利は個性的かつ魅力溢れるキャラであることは間違いないです!
そしてクールビューティな佳也も!

1

あなたが選んでください 「初めまして」と「またお会いしましたね」 どっちがいいですか?

カーマインレッドのシャツにブリリアントグリーンのパンツ ―― 等身大のチューリップ、それが真行寺佳也の由利潤一郎に対する第一印象だった。
そして、ふたりが初対面の時に由利が真行寺に向かって言ったコトバがタイトルの台詞。奇しくも、このコトバは後日もう一度ふたりの間で交わされることとなる。

ある日偶然であったふたりは、その後法廷で弁護士と傍聴人という立場で再会を果たす。
だが、それは正義感の強い真行寺にとって、「法に携わる職責にありながら最悪なヤツ」だと由利を印象付けることとなる。
だが、由利はその日を境に真行寺に対して猛アプローチ!
はじめはそれに迷惑していた真行寺だが、友人の死に落ち込んでいるところを由利なりの優しさで救われ、徐々に心を許すようになっていく。
(この作品は既にCD化されていて、このシーンの由利役の三木眞一郎さんがとにかくスゴイ!!!ヘッドフォンで聞くと酩酊感でクラクラ…)
それまではあまり人を寄せ付けなかった真行寺の心の中に、まるで猫のようにするりと入り込んでくる由利。
けれど、友人の(不可解な)死をきっかけにして、真行寺はひとり、隠された事件の謎を突き止めるべく動き出す。
やがてそれは、引き返すことの出来ない場所へと真行寺を追い詰めていくことになる。

真相が明らかになるにつれて真行寺は緊張と不安に苛まれるようになり、由利とのSEXに溺れることで、どうにか己を奮い立たせていく。それが、由利を利用していることになるのではないかと悩みもするけれど、躰は繋げても心の裡は明かせない。
このジレンマがいい。だからこそ、元々、他人には心を許せない不器用で頑なな真行寺が、由利によって身も心も解きほぐされていくシーンはカタルシスさえ感じさせる。

はじめのうちはコメディかと思うようなノリなのだが、この辺りからどうも雲行きが怪しくなってくる。どんどん、どんどん切なくなって、怒涛の展開になだれ込む。
衝撃のラストは、ただやるせなくて、切ない。
けれど、由利の「あなたが選んでください 『初めまして』と『またお会いしましたね』 どっちがいいですか?」この台詞に、頼りなくも希望の光を見出すことができる。

グレイ・ゾーン三部作の第二弾ではあるが、時系列的にはこの「ボーダー・ライン」が一番最初にくるストーリーとなる。前作では既に相棒だった由利と片岡亜久里の関係もここから始まる。
ちなみに、由利と真行寺のその後については商業誌では発表されておらず、同人誌に少し出てくる程度。読者としては、このふたりの幸せな後日談を切に希望してやまない。

4

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP