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表題作ダブルミンツ

壱河光夫(ミツオ),飼い犬
市川光央(みつお),飼い主

同時収録作品温室の果実

ハスミ,ノリの軽いデリヘルボーイ
村上壱吾,政治家秘書

その他の収録作品

  • 雨(ダブルミンツ後日譚 描き下し)

あらすじ

『女を殺した―』電話の向こうから聞こえてきた高飛車な声は、高校時代の同級生・市川光央だった。同じ名前を持つ男・壱河光夫の胸中に、かつての隠微な記憶が蘇る。忘れていた過去が、再び光夫を情熱の中に引き戻す。共犯者として再会した二人の主従関係は、少しずつ新しい形へと姿を変えてゆく・・・・・・。実力派作家が挑む、DEEP LOVE。
(カバーより転記)

作品情報

作品名
ダブルミンツ
著者
中村明日美子 
媒体
漫画(コミック)
出版社
茜新社
レーベル
EDGE COMIX
シリーズ
ダブルミンツ
発売日
ISBN
9784863490888
3.7

(255)

(115)

萌々

(46)

(46)

中立

(22)

趣味じゃない

(26)

レビュー数
60
得点
919
評価数
255
平均
3.7 / 5
神率
45.1%

レビュー投稿数60

隠微なダーク・パトス・エリクチュール

エロス前開!
エロもありましたが、中村先生のはエロスとお呼びしたくなります^^
小難しいことを言ってみたくなる、漫画でした。


裏社会のわがままな黒猫『市川光央(いちかわみつお)』。
と、みつおに飼われている犬『壱河光夫(イチカワミツオ)』。
同姓同名な2人の切っても切れない縁が、この漫画の底辺にある。

2人が同一であることの上に他の事象が成り立ち、底辺が崩れないのだから上は崩れっこない。
絶妙なバランスで、綱渡りをする道化のように、屋根から屋根へと飛び移る盗っ人のように2人は危険な裏社会へ首を突っ込んで、片道列車は加速する。

戻れない道だからお前は来るな、ミツオ。
いやだ、みつおくんが行くなら僕も一緒だ。


読み始めたら止まらなくて、2人の『イチカワミツオ』がどんなところに辿り着くのか気になって気になって、1回目はバカみたいにドドドッと読んでしまった。
ページをめくるごとに新しい感覚が芽生え、頭が痛くなるくらいに愛おしかった。

2回目はもう少し丁寧に読み進めて、感想を自分の言葉で紡ぐために頑張ってみましたが……あまりうまくいったようには思えません。
拙い感想文ですが、参考になりましたら幸いです^^;;;


ところで作中で、『―――昔 人間には三つの種類があって、男性と女性と球体をした両性がいたんだって。両性は力強く傲慢だったので神々の怒りを買い…その身体を二つに分けられてしまったんだって』という話がされていましたが、これを読んで楠本まき先生の『Kの葬列』を思い出しました。

アレは伏線がたくさんあって、Kを殺した犯人を探していく推理の面と、Kを愛する人々の醜い面が両立していて(いい意味で)不気味な作品でした。
心の底がザワッと騒ぐというか……。
『ダブルミンツ』もそういう意味で不気味な作品かな。

キレイじゃない歪んだ美しさです。
不純だ
そして美しい

12

読み手を選ぶのだろうけど、素晴らしいものは素晴らしい。

新井煮干し子さんの「因果の魚」を読んだ際にこの作品のことが頭をよぎったので、改めて読み返してみました。
2冊を一緒に読んで頭の中を整理出来たせいか、こちらの作品もより解り易くなりました。
“運命の出会い”というのは、出会う前から決まっているのではなく、この出会いは必然だったと感じる人がいて初めて“運命の出会い”になり得るのですね。

「いちかわみつお」という同じ名前の2人が偶然出会ったことで、それが普通の出会いにはない特別感を2人の中に芽生えさせ、本来は偶然でしかなかった出会いがいつの間にか必然の出会いだったんじゃないかという思い込みにすり替わり、相手を自分と同一視していく…という、そんなお話。
ストーリーのベースに使われているのは、映画「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」の中で歌われる「The Origin Of Love〜愛の起源〜」という曲なんですが、ギリシャ神話がモチーフになっていて、元々は一つだったのに神様によって二つに分けられてしまった自分のもう半分(=ベターハーフ)を探す行為が愛の起源だと歌っている曲です。

そもそも“片割れの存在を信じる”という思考がどうして生まれてくるのかと考えると、それってつまり自分には足りてない部分があって不完全だと感じるからだと思うのですよね。
その思いが特に強かったミツオはみつおに出会った瞬間からみつおとの出会いは必然だったと感じ、みつおに心酔していきます。
ミツオの心酔の仕方がかなり狂気じみているので病んでると言えば病んでるんだけど、人のサガに忠実で人間らしいと言えば人間らしい。

そしてこの作品の面白いところは、主従関係とSM関係で2人の立場が逆転する点。
主従の時はみつおの犬であるミツオがSMになるとS。
SMにおいてイニシアティブを握るのはM、SはMに受け入れてもらう側ですから、正しいと言えば正しいのですが、面白い。
ラストシーンでミツオが流す涙の意味は色々考えられるけど、一つはみつおにようやく受け入れてもらえたという実感がもたらした喜びの涙なんだろうな。

ストーリーだけを追ってサラッと読み終えても十分に読み応えのある面白い作品なのですが、一つ一つの要素を分解していくと、その掛け合わせ方の巧みさに唸らされる作品だと思います。
ボーイズラブにベターハーフを掛け合わせるのがそもそも私は大好きですし、主従やSMってのはそれこそ割れ鍋に綴じ蓋ですからベターハーフとの相性はバッチリですよね。
内容的に読み手を選んでしまうのでしょうけど、読み応えのある漫画を探されている方に向けて個人的には全力でオススメしたい明日美子作品です。
とても面白いです。

同時収録の『温室の果実』は、非常にエロティックな短編。
政治家先生(男としては既に枯れているおじいちゃん)に密かに恋心を寄せる青年秘書が、先生に請われて自分の性行為を見せるお話。
先生、秘書、お相手役のデリヘルボーイで倒錯的なトライアングルが出来上がり、官能的なエロスを見せてくれます。
オチも美しい。
明日美子作品を読むたび、様式美ってのはやっぱり大事だな〜と実感させられます。

これ電子書籍だと、表題作の描き下ろしと同時収録作がバッサリ抜かれてるんですよね…
なんでそんなことするんだろう。
茜新社謎過ぎ。
電子派の皆様お気をつけて。

10

二人のみつお

前評判の高い作家さんですが、今回は特に凄かった。
作品にグイグイ引き込まれました。
出会いは高校。同姓同名のみつおとミツオ。
接点のなかった2人の関係はあからさまに変化する。
犬と主人。SとM。
対局に有るような2人は気づかないように重なり合う。
有る意味不思議空間。だが不快ではない。
この空間が好き。
過程として、殺人・ヤクザ・女。もろもろ有りますが、それでいて最後のまとまりは、心すっきりハッピー(?)エンド。
こんな恋愛も悪くないかなと思いました。
ミツオが佐伯に犯されるシーン。
ここの見開き2ページはかなりストップして見てました(´∀`)
エロ沼すぎてww
みつおの方に感情移入して読むと凄くこころに染みる。
泣きそうというよりあらぬ興奮状態。
こぉ、しょっぱな。
犬のみつおがミツオの目にやられる~の下りがあったためにからの設定や場面が良い。
生かせるって素晴らしいことですね。

他短編いくつか
主人であるじいさんのために~な真面目っぽい受は可愛かったです。名前も可愛かったですが。
ツボの多い1冊。
改めて読み返したくなりました

4

絶対服従

見た目も性格も全く違う、同姓同名のミツオとみつお。
小さく綺麗な飼い主と、なんでも言うことを聞く犬。補うように、寄り添う二人は一個体の半カケ同士。
明日美子さんの描く人物は総じて色香を漂わせていますね。
話しているだけなのにエロい。特に目が色っぽい。
黒髪好きのわたしとしては、みつおの高校時代は凶器ですw

ひどいことをされたい飼い犬と、飼い犬は支配していたい飼い主。SとM。死ぬときはひっそりと二人で。
飼い犬は結構突拍子もないことしますが、飼い主が死んでしまうかもと想像しただけで、泣いてしまう可愛さ。
出会ったあの時から、みつおに服従してきたミツオ。無鉄砲だったみつおは、ミツオの顔にキズが残った責任を取るのです。指輪よりももっと強い絆。

みつおミツオみつおミツオ訳が分からんくなりますねw

エロさもグロ(人間味)さも、レベル高なのに、純愛に見えてしまう不思議、明日美子ワールド。

同時収録は枯れた政界の重鎮に焦がれる秘書とデリヘルボーイ。
寝物語に男と男の絡みを見るなんてwさすが重鎮w
あの膝枕は素敵でした。

3

痛い痛い!

なんだか痛いシーンが多かったですねー。基本あまりに痛いのと、アウトローが出てくるのとかは好きではないんですが、これは別物でしたね。
高校の卒業以来音信不通だったのに、ミツオにいきなり連絡してきたみつお。二人は漢字が違うけれど同姓同名で、高校時代ミツオはみつおに何かと目をつけられていじめられていて、その時みつおの犬になると約束させられてた仲でもありました。
みつおは勢いでなんとなく付き合ってた女を殺してしまい、その始末をミツオに頼もうとしていたのです。
そんなきっかけでまたつながりができてしまった二人。
ミツオは高校時代、みつおに寝取られた女とその日のうちにセックスしてみつおを感じようとするほどちょっと変態入ったみつお好きなのです。
その事を知らずにいいようにミツオを犬扱いするみつお。
二人の関係は多少の狂気をはらんでいて、愛と憎がなんだか常に絡み合った状態で進展していきます。その発露はラグビーボールの弾道みたいに予想不能です。展開に毎回びっくりしました。
そして、高校の時はあまり対格差のなかった二人が再会した時犬のミツオの方が大きく、みつおは変わらず少年のような体形だったのにも激しく萌えました!
個人的にデカワンコが萌えなのです!!

この二人の、二人以外では成し得ない関係がたまらなく萌えました!
それは同姓同名だから…なのでしょうか? そうでありながらあまりに違う人生を歩んでしまった二人が交わった時の不都合やその他を、ミツオはその痛みすら心地よいものとしてみつお全てを甘受していきます。ミツオはMですから!
現在の二人にも影響する、過去の二人の関係も色々オカシイです。ほとんどがいじめなのか、二人の秘密の儀式なのかわからないような内容で、関係がいつも主従なんですよね。多分に嫉妬も絡んでいたりする。
その変質的な愛もいい。何年もみつおなしで生きてきたはずなのに、出会って触れ合ってしまった時からミツオはもうみつおなしの人生が考えられなくなるのです。
ところで、みつおが下っ端として所属する組の幹部・佐伯がたまらなく魅力的です。
みつおはもしかして佐伯が好きだったかもしれない。とにかく裏の世界で生きてるヤバさと幹部らしき貫禄、ウザがりながら可愛がってたみつおの幸せの後押しがカッコよすぎる! やる事はなかなかにエゲツナイんですけど。
この人のせいで二人の人生は大きく変わるけど、この人に救われるという何ともおかしな事になります。
私は佐伯にヤられるみつおのDVDを食い入るように見るミツオに非常に萌えました。
二人は二人でいれば幸せなんだろうなと思わさされる書き下ろしもあって、満足できる一冊でした。
短編で入ってた読み切りもほのぼのと良作でした。とにかくリピ決定の一冊です。何度も読み返してます。

3

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