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この道を歩いて、君のもとへ帰ろう――。
けして痛い話ではないし涙も出ないんですが、
読後、どうしてかズーンと暗くなってしまいました。
親の再婚で兄弟になった二人、
タイプは違えど、二人とも良い子で、自然体で、なんだか胸がキューンとする。
ボーイズラブ以外の普通の日常のシーンでもキューンとする。
そして、二人の親である真一(木工職人)と弓子(シングルマザー)も、
良い人達なんだけど、疲れ方とかがリアルで、
生活の澱のようなものが滲み出ていて、何か来るものがある。
初めて読んだ一穂ミチさん、
わたしにしては久しぶりに読んだ本格的(文学的な?)なタイプの話だったので、
ボーイズラブでは今まであまり感じたことのないような感覚を味わいました。
これを機に、もっと真面目なBLにも挑戦しようかな・・・
とりあえず、一穂ミチさんの他の作品も読んでみようと思いました。
あ、松本ミーコハウスさんの挿絵がとても合っていて、そこもポイントでした!
特に大きな事件があるわけではないのですが、
ぐっと胸に迫ってくるものがあり……
何だか上手く文章に出来ません。
というか、一穂さんの作品は大好きなのですが。
何故かいつも感想が書きにくくて、困ります。
親の再婚で兄弟になった、同い年のふたりの男の子。
芸術家肌な自由人・葵と、繊細で真面目なかずさ。
個性も育った環境も全く違う二人がゆっくりと
時間をかけて、寄り添っていく姿が描かれています。
私は真面目で融通が利かなくて。
そんな自分をちょっと嫌だなと思っているかずさがとても好きで。
彼に肩入れしながら読みました。
そのせいか前半では、臆病なかずさの気持ちをもう少し、
葵も汲み取ってやってくれと思ったりしたのですが。
後半で自分のわがままを何でも受け入れてくれるかずさを、
「受け容れられるほどに相手を不安にさせるタイプ」
と称し、彼にどうしようもなくハマっている葵の心情を知ると、
一気に彼に対しても情が湧きました。
二人とも一生懸命で不器用で、可愛すぎます。
そしてかずさの母・弓子と、葵の父・慎一の恋が素敵でした。
実は私はメインカップルよりも、
弓子と慎一にときめいてしまって。
BL本なのに、これってどうなのでしょう(苦笑)
子供の目線で二人が愛を育んで行く姿が語られますが。
朝の早くから、弓子が熱心にごまをする「恋のはじまり」を
匂わせる場面がとても胸キュン。ツボです。
そんな母の姿を思い返し、人を愛するとはこういうことかと
神妙な気持ちなったかずさの描写が美しくて。
胸を打たれました。
「花咲く~」ラストの、この葵のせりふがいいなぁ
この本、ざっくりまとめると、
連れ子同士が、お互い愛し合っているのに、一方が臆病で前に進めず、ぐるぐるするお話。
現在と過去を行ったり来たりしながら、お話は、中国地方の山の中の、のんびりとした景色そのままに進む。
閉ざされているのに希薄な空気感が、中国山地っぽい。
「花咲く~」でようやく思いを通じ合わせた二人。
と言っても、ようやくキスだけ。
「花降る~」では、東京で暮らしている葵と就職活動するかずさの話。
就職活動のため上京するたび、かずさは葵のアパートに行くのだけれど、、、
さすがに、もうセックスするようになっている二人。
一穂さんの良さは、エロよりも、所々に挟まれる、
ハナさんとビスコの話とか、
小学生のかずさがいたずらで鍵を隠した同級生と絶交する話とか、
再婚と引っ越しを決めた弓子さんが荷物を処分する話とか、
そういった、描写だと、改めて感心した。
両親の再婚によって義兄弟となった2人のお話。
同い年で、でも、性格とか全く違っていて、お互い気になってるけど行動にはなかなか出られなくて。
なんだけど、お互いを思い遣る気持ちがすごく優しくて、ホッとさせられるというか、なんというか。2人の関係がすごくいいんです。
やっぱり、再婚した両親の中がすごく良好だっていうのも関係があるのかなぁ?
葵とかずさ、出逢いのときからお互い惹かれ合っているんです。
自分にないものを持っている相手に、好意を持つというか。
家の中で2人の部屋は隣同士。
隔ててているのは襖(『たすたす』というノック音が妙にツボ /笑)なんです。
だから、ちょっと押したり触ったりすると、何となく察せられるんです。
その微妙なやり取りが、焦れったいんだけど、この2人らしくてめっちゃ好きなんです。
かずさは、襖を触っている葵に「そこを開けて入ってきて欲しい」と思いながらも、言葉に出していうことはないし、葵も強引な行動は起こさない。
ヘタレ? とも思えるけど、高校生らしくていいじゃない! みたいな。
一穂さんの文章、どう表現していいのか、私の語彙力では書き尽くせないんですが、文章の中からもっと違うものが感じられるとでもいうのでしょうか。
設定とか展開から“切なさ”を感じるんじゃなく、文章の合間から“切なさ”が感じられるというか。直接“切なさ”を表現しているわけじゃないのに。
そういうところが好きです。
親の再婚で兄弟になった同い年の二人のお話。
父親を知らずに母子家庭で育ったかずさは、何事にも慎重で真面目で争いごとを好まない、いわゆるいい子でした。反対に母親を病気で亡くし父子家庭でワイルドに育った葵は、ゴーイングマイウエイな才能溢れる芸術家タイプ。
高校生の時に出会い、家族として一緒に暮らし、お互い惹かれあい、それなのにはっきりした言葉では伝えられず・・・
読者からしたらもどかしくてもどかしくて仕方が無いくらいゆっくりと進む恋のお話ですが、大切だからこそ優しく温かく、こわさないように少しずつ進めるのがいいよねっと思いました。
【はな降る家路】では将来の展望が語られます。
就活で四苦八苦しているかずさと、才能を認められ前途洋々に見える葵。
それぞれが抱える悩みと二人の関係とその後。
こうなってくると、恋愛小説というより進路指導的要素が濃かった気がしますが、まさに彼らくらいの息子を持っている私としましては、けっこう考えさせられました。
時に流されるのではなく、自分からやりたいことが見つかった時、一つ大人になれるんでしょうね。私も見守ることにしましょう。