どんなに愛しても、結ばれることは決してない。

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表題作優しい罠

海堂,26歳,教授の教え子
美乃理,19歳,教授の血の繋がりのない甥

あらすじ

――私以外の男に犯されるくらいなら、君にくれてやろう。
一人気ままに暮らす大学教授・葛城は、ある日血の繋がらない甥の美乃理と同居することになる。己の性癖に悩む青年が送ってくる熱い視線。その意味に気づきながらも、葛城は決して彼を抱こうとはしなかった。そんな生活に入り込んできたのは、かつての教え子・海棠。若い二人を見て、葛城はある罠を思いつく。性的に無垢な美乃理は、男達によって淫らに開花させられて!?
(出版社より)

作品情報

作品名
優しい罠
著者
剛しいら 
イラスト
緒田涼歌 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773099775
3.4

(5)

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萌々

(2)

(3)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
17
評価数
5
平均
3.4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

教授の密やかな楽しみ

男性機能を失った男が、自分の代わりを相手にあてがう。
あれ?谷崎潤一郎(?)小説にもそんな話があったよな・・・と、シチュは似ております。
主人公は若者・美乃理なのでしょうが、彼を手のひらで転がす叔父の葛城が影の主役です。

5年前恋人との修羅場で男性機能を失った大学教授の葛城は、一人優雅に自分の生活を満喫している。
そこへ再婚した妹の連れ相の連れ子(ややこしい!)の美乃理が、いきなり家を出たいので同居したいと申し出る。
実は美乃理は、一つ間違えば近親相姦も考える極度のファザコンであり、その父に雰囲気の似ている葛城を、父の代わりにして愛してもらおうと、密かにたくらんでいたのでした。
もう、何ちゅうブラックな青年なんだ!?っていうことなんですが、葛城も色男だけに、男性機能を失うまでは、相手の絶えない経験豊富な男ですからそんなことはお見通しだったんです。
しかし男のプライドとして男性機能喪失なんて誰にも知られたくないことですから、美乃理の気持ちをうまいことかわしているのです。
そんな時、昔の教え子の海棠が帰国し、昔の気易さで入り浸るようになります。
葛城を取られたようでおもしろくない美乃理。
それを見て、葛城はあるアイデアを思いつくのです。それは美乃理を抱けない代わりに海棠に美乃理を抱かせるということ。
性的興奮はできないものの、その二人の絡みを想像して笑う葛城はいやらしいです。
美乃理は自分の感でゲイだと見抜いていましたから、あとは海棠を男でも平気にさせるだけと葛城は画策します。
そうして、うまいこと海棠に美乃理を抱かせることに成功するのですが・・・
ここで終わっては面白くありません。
美乃理は余りにしたたかで、小悪魔でした。
そして海棠が、一番まともで、ともすればKYな人ですからこの物語の中で"攻め様"という重役を与えられていながら、実は一番間抜けだったかもしれません。
葛城を不能にしたかつての恋人・但馬も登場して、美乃理と海棠をひっつけて、改めて一人暮らしを満喫するはずだった葛城教授の未来は、最後には波乱に満ちたものになるかもしれないという、まるで葛城の為のお話になっております。
自分的には、暫くしたら、若者二人の絡みに葛城も参加するようになるといいなと思いつつ、、

教授の思いつきは面白いものだったです。しかし美乃理の心や行動が海棠を得ても尚葛城に執着するという思いがけない終幕の持って行き方に、多少驚かされました。
それが自然か不自然かは、自分にはわかりませんがまさか美乃理が勝手に動いてしまったということはないと思うのですが。
ただ50歳直前のイイ男の葛城教授は、そのままイイ男のまま歳を重ねていってほしいですね。

2

陰の主役・葛城教授

すごいお話でした。
愛とセックスはイコールで結ばれるのか?
愛しているからこそ傍観者になるという選択もあるのか?
年齢は愛の妨げになるのか?など、問題提起も多いお話だったと思います。

素敵なおじさま・葛城教授(50歳のゲイ)は、過去の事件の後遺症でEDになり、まだ若いくせに第一線を退いてしまっていて、第三者的目線でシナリオを作り、妄想と自分の代理育成で自己満足を得ようとしているのです。

カッコイイお兄さん・海堂(葛城の教え子)は、葛城の代理として選ばれたわけで、ノンケだったはずなのに葛城と美乃理に振り回された挙句、すっかり美乃理のワンコと化すし・・・

きれいでわがままな女王様・美乃理(葛城の妹の夫の連れ子)はそもそもが極度のファザコンで、結婚してしまった父親の代わりを葛城に求めて、積極的に同居話を持ち出すようななかなかしたたかな青年で、葛城を先生先生と慕っている割りに、海堂もキープしちゃうという小悪魔ぶり。

そこに少しだけ、葛城の元カレ・但馬が関わりますが、かといってドロドロの展開になるわけでもなく、不思議な空気感の中でお話は進みます。

三角関係のようでそうでもなく、葛城のてのひらの上で転がされているようで、海堂や美乃理に自分が無いわけでもなく・・・
読み進むほどに美乃理が恐ろしくしたたかで“君臨”しているようにも見えてきて・・・
そのわりには葛城はさらに上から目線の余裕ある態度で、つかみどころがない感じ。

最終的にまだまだ謎の要素を含んだ但馬が飄々と現れたものだから(お話の始まりから、全く関係のない存在ではなかったのですが、実態として現れるのがお終いの方なので、非常に謎が多い気がします)、結局葛城はどうしたいんだろう?というところでお話は終わっております。

あとがきにて剛さんは、葛城を脇役とおっしゃっているので、いわゆる主人公の二人(海堂×美乃理)が上手くいって、今後の美乃理がちょっと怖いかもしれないというところで終わっているのでかまわないんでしょうか。
しかし、もう少しこの先の展開を知りたいのが正直なところです。
君臨しているようで葛城の思うままに操られていく美乃理・・・どんな男に育っていくのか見てみたいのです。

1

おじさまの妄想の結末は

シリアスなのかと思いきや、そこまでではなく
程よくシュールな作品に仕上がっていたように思います。
極度のファザコン青年と5年前のお痛の罰で不能になった教授と
その教え子とで進むお話は、教授の歪んだ愛情物語とでも申しますか、5年前に相手の心理を読み切れず、失敗しているのに懲りない教授です。
                               
でも、教授の面白妄想にはウケちゃいましたね。
不能になると精神的な快楽を求めるようになるとは聞いていますが
まさに、そんな感じでした。
「私以外の男に犯されるくらいなら君にくれてやろう」って
教え子を唆して受け様と関係を持たせるように仕組むのですが、
それも、割と本音で言ってたり、受け様にも不能だと
告白してるし・・・
出来れば、教授なんだから二人が本気で気づかないような
暗躍とした駆け引きで落としても面白いかと。
後半で、教授の不能原因でもある人物が出てきますが
緊迫した絡みもなく、ちょっと拍子抜け感が。
ただ、受け様はきっと小悪魔になるだろう!です。
読み終わって妄想を掻き立てられます。

0

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