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表題作スタンダード・レヴュー

高校生・勝部悦司(16)
大学生・江端悟(19)

その他の収録作品

  • ムーン・リバー
  • ラ・ヴィオレテラ
  • メロディ・フェア
  • あとがき

あらすじ

教授の紹介ではじめた家庭教師のアルバイト。そこで江端悟は勝部悦司と出会う。成績はいいのに高校に行こうとしない悦司にはじめは困惑するが、互いの映画の趣味を知ってからは急速に親しくなった。悦司も「行かないとあんたがクビになるから」と高校に行きだす。しかしうまくいっていたはずの二人の関係は「あんたに惚れた」という悦司の言葉で不安定に揺らぎはじめた。

作品情報

作品名
スタンダード・レヴュー
著者
海賀卓子 
イラスト
広崎しの 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラノベルス
発売日
ISBN
9784883023363
4

(7)

(4)

萌々

(1)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
27
評価数
7
平均
4 / 5
神率
57.1%

レビュー投稿数2

何がいちばん大切か。何がいちばん幸せか。

自分に合いそうな海賀作品を探していて見つけた最後の1つ。
1998年発行の作品なのでかなり古いものです。

高校生・勝部悦司(16)×大学生の家庭教師・江端悟(19)

大学の教授の紹介で家庭教師のバイトをすることになった悟。
そのバイト先の生徒・悦司は頭は賢いのに学校に行かない不良で。
悟は勉強を教えるというよりも悦司を学校に行かせるよう頼まれる。
悦司の態度に困惑する悟だが、趣味が2人とも映画ということで急速に打ち解けていくのだが…。

ちょっと「恋愛革命」と似たところのある印象を持ちました。
いや、お話、全然違うんですけどね。
こっちの方がストレートというか気持ちの揺らぎが少ないかな。
打ち解けて好きになって。
「嘘をつかない」と決めた悦司は素直に好きだと何度も伝えてるから。
けれど、いくら打ち解けたからといってそう易々と受け入れられるものでもなく。
悟は最後まで拒否し続けるんですよね。
それを単純に「男同士だから」かと思っていたのですが。
要所要所でその気持ち自体は悦司にまでわかるほどに現れていたので。
ちょっと自分を見る世間の目とか気にして臆病になっているのかなと思っていたのですが。
もう少し深かった。
最後にそれを口にした時には悦司とシンクロする想いでした。
自分のことよりも悦司を。
自分の想いよりも悦司を彩る世界を。
やさしく守ろうとする悟にキュンキュンしました。
その最後に至る経緯のいざこざ(?)でいろいろと吐露している部分もあるんですが。
もう、どれだけ悦司を大切に想っているのかが感じられて。

このお話に関しては一度目よりも二度目に読み返した時の方がより物語が沁みるというか…。
悟がどういう想いで悦司と接してきたかがわかった上で読むと感じ方がまた違うというか、より一層悟のせつなさが深くて。
本来なら両想いのはずなのに、そこへの一歩を踏み止まろうと、好きなのに踏み込まないようにする悟が本当にせつなかったです。

それだけ本心を告げることはできないのに、風邪の看病であたふた必死になったり。
家出したと必死で探してみたり。
そういうところでは手を抜くことをしない。
というか、きっと理性よりも体が先に動いてしまうんだろうけども。

悦司にもらったハンドクリームをとても大切にしている悟にキュンキュンきましたww

3

時代を感じる良作

少しずつ読んでいる作家さまです。現在は創作されていないのかな。新作を読んでみたいな。

作家さまが初めて挑戦した三人称作品だそうですが、なるほど本作には『恋愛革命』では気づかなかった木原作品っぽさを少し感じました。でも比較してもあまり意味がないので、突っ込まないでおこう。

真面目で潔癖症の大学生・悟が、問題児のボンボンDK・悦司の家庭教師に派遣されるところから始まるお話。二人の感情の描き分けが自然で巧みだと思いました。若干、受け寄りではあるけれど、受け攻めの気持ち両方が一つの作品の中で描出されている作品って、あまり読んだことがなかったので新鮮ではありましたが、内容的には少々重めだったので地味にダメージを受けました。。

終盤まで劇的な展開には至りませんが、その間に描かれる悟の葛藤がなかなか凄惨です。潔癖症の気がある彼が、悦司との関係に悩んで少しずつ症状が顕著になっていく過程がリアルに描かれていて痛々しい。その「手当て」として登場するハンドクリームのエピソードが泣けるんですよね…。複雑な家庭環境の下、父親の愛情を求めて反発してきた高校生の悦司がそんな悟を「抱きたい」と思うのですから、年下攻め萌え炸裂です。

人物の背景がきちんと描かれていて、かつ恋愛要素を押さえているので、個人的には十分に読み応えのある作品でした。その時代に描かれたからこそ得られる萌えの貴重さを考えると、「神」評価しかないのかな…。こういう、ちゃんと萌えて泣ける古い良作に出会う喜びにハマっています。もちろん、電子化希望の申請も忘れずに。一体いつになったらトレンドの新刊小説にキャッチアップできるのだろうか…。

3

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