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読み始めてテンションが上がる話でも楽しくなる話でも無い作品なのですが、
読み終わると心に温かいものが溢れてくるようなストーリーで静かに感動します。
事故で8年も眠り続けてしまったら、そしてある日突然目覚めたら、
自分ならどうなってしまうのだろうと思わずにはいられない。
攻めである英俊と受けの裕真の出会いはかなり不躾な程いい出会いではないのです。
父親の浮気相手の家から花を盗むところを偶然見かけ思わず後を追いかけ諭す。
でもそこに複雑な大人の事情を垣間見て意に反して深入りしてしまう。
でもそれで終わりだと思っていた裕真は小学5年生の英俊の家庭教師になることで
付き合いが始まってしまう。
単なる子供の癇癪的な行動で事故に合い8年眠り続ける事になるのですが、
12歳から20歳までの8年を眠る裕真の側に居続けた英俊の執着は切ないです。
どんな思春期を過ごして何を思い傍に居続けるのか考えると思いの深さを感じます。
それでも事故は別にしても英俊が裕真と出会わない人生を送っていたら
きっとすんなり大人にはなれなかった気がするのです。
愛も優しさも労りも誰かの為に涙する感情も持たないままの歪な人間になったかも、
そのまま大人になったらヤンデレだけの怖い存在になったのかもと思う所です。
裕真が8年眠り、英俊が裕真が眠りについた年齢になって目覚める。
どこか運命だったのかもの思わせるし、精神的には同じ年齢にもしかしたらなったのか
なんて思う事もあったりと、なかなか奥深い作品でした。
受け視点と攻め視点で描かれているのでどちらの心情もうかがい知ることが出来るので
余計に8年の時が切なかったです。
もう1度読み返してみようかと思わせる味わい深い作品でした。
献身愛?とても無垢なお話で、今まで佐々木作品に感じていたイメージとはガラっと違ったこの本は、自分もふわふわした存在になって彼等をそのまま受け止めてしまえるような、そんな一冊でありました。
事故により8年間の眠りから目覚めた裕真の目の前には見た事のない青年が。
彼は事故の時一緒にいた家庭教師先の教え子・英俊でした。
店先の売り物の花の鉢を盗んだ小学生・英俊との出会い。
それを押しつけられて困った大学生・裕真が彼の家へ出向いたことで英俊の家庭教師になったのでした。
8年間ずっと献身的に付き添った英俊は、裕真が退院してリハビリしても健気に通い彼の世話をやくのです。
そんな中で英俊の裕真への想いが打ち明けられるのが【月の欠片】
【雲の狭間】において、英俊の生い立ちと家庭事情、そして裕真への気持ちが育って行く過程と、裕真が眠っているいる8年間の英俊の姿と心を。
【天使の梯子】で、英俊の気持ちはわかっていても、それを受け入れているようでいて何か確かな「核」がまだ不安定な裕真が、はっきりと英俊を受け入れるまでの話を。
この3部構成で成立しています。
英俊の気持ちについては充分すぎるほどに本編の中において綴られています。
彼の中の歪んだ家庭環境が生んだ心のひずみが裕真によって緩和され、まるで依存に近い形で一方的に想いを寄せる英俊ですが、8年もの健気な献身はその年月だけでも気持ちの強さがわかります。
いや、むしろ眠ったままであるからこその独占欲が異常に働いたのかもしれません。
一方、裕真の存在というものがとても透明な存在です。
英俊との出会いの時からもわかるように、彼は優しい。
常にニュートラルで、作中「クラゲみたいだ」と言われておりますが、フワフワして掴みどころがなくて、でも何もかも受け入れてあいまいにぼかしてしまう。
その中に、彼なりの葛藤もあるにはあるのだけれど、英俊の愛情は最初から受け入れてしまっているのです。
恋愛?と聞かれれば、とても微妙なものがあり、
しかしながら「愛情」であることは間違いなく、彼の存在自体が掴みどころがないものもあります。
或る意味天然なんでしょうか?
しかし、とても優しいお話でした。
健気、献身、懸命、執着、依存、包容、主人公達の温度差も全て裕真が吸収してしまうような、そんな柔らかなものを感じました。
これほどに心を満たしてくれる小説はジャンルを問わず本当にわずかです。
そんな一冊に出会いました。心が震えました。
実際に子供の頃からのお気に入りの『星の王子さま』これを二人の間で重要な使われ方をしたのも大きいです。
自損事故で病室で眠り続ける裕真と大学生の英俊の物語り。
自動車事故で意識がないまま眠り続ける裕真は英俊の元家庭教師だった。英俊は病室に毎日のように看病に訪れる。すでに8年が経過していて英俊は大学生になっていた。
英俊がそこまで裕真の面倒を見る理由は?
ともすれば8年もの間家族ではない英俊がまったく意識のない裕真を見続けるのはすごい執着とも言え、怖くも感じますが…
英俊の生い立ち、裕真との出会い、そして事故。その出来事を丁寧に描くことで、英俊の気持ちの変化や想いがひとつひとつ腑に落ちます。
男同士の恋愛と言うことを超えて人が人を想うその愛がどう育っていくのかを巧みに表していると思う。
裕真が「王子を待つ気持ち」について考え、英俊にたくさんの時間を費やしてもらったことにこれからは人生の「ひまつぶし」の時間を彼で埋めていけたらと思うところが感動的です。
この8年の歳月は二人にとってもちろん重大な要素ですが、これから先はたくさんの時間を共有していくであろう“希望”それを感じることが出来て読後たいへん満ち足りました。
佐々木先生の新作、良かったです!
読みだしてから、自分も英俊になっていました。
両親の愛情薄く育った英俊は小6ながら妙に冷めて聡い子なんですが、子供ならではの幼稚さや我儘を表せたのが、優しく接してくれた唯一の人・裕真でした。
なのに、英俊がすがり付きたい裕真は、優しいけど常識派で掴み所が無いんですよ。
何で裕真?って思うけど、英俊にとって裕真は、一条の光で、おぼれた時のワラだったと思うんです。
ここらのくだりの、英俊の淡い期待が切なくて、英俊の言動の一文一文を何度も読み返していました。
自分へのジレンマが募っていく英俊の心の叫び
「早く大人になりたい!」
自分もずっとそう思って来たから、思わず心で涙でした。
だけど、裕真を乞う気持ちがあっても、英俊は恋しいだけじゃなくかわい子振るのでもないのです。
複雑なんですよね。
うざい、冷たい、有難い、嫌い、作者が英俊の幼くて過敏な感情を出してきたのも、この作品が好きだ~と思った理由でしょうね。
小6の時に偶然出会ってから8年。
実情、2人が話ができた時間は、ほんの少し。
裕真が世話を焼く英俊の子供の時と、英俊が世話をする裕真が目覚めてからの時間を足しても本当に短い。
殆どが寝顔の裕真としか関われなかったけど、悲しくさせるのも嬉しくさせるのも裕真との時間だけなんです。
自分から裕真を離さないで!裕真、離れていかないで!
何でもする。信じてない神様にも祈る。悪魔でもいい。諦めた親でもいい。
裕真が好きだから。
・・・あぁ、良いですねー!(←橘、何様?^^;)
返事が返って来なくても、想いを伝えられなくても。
子供でも、ストーカーでも、依存症でも、策略家でも、激情家でも、甘えん坊でも。
英俊の弱みが、橘には蜜の味でした。
そして、裕真の寝ている間に、英俊は成長していきます。
子供なりの英俊なりの、マイナスだった部分の角が取れて、その上に「優しくする」「見返りが無くても思い続ける」気持ちが積もっていって、良い男に育っていくんですよ♪
あ、攻めはショタ始まりですが、ショタものではないので地雷の方でも大丈夫です。
好みポイントが沢山ありましたが、バレ過ぎても宜しくないので、本作のお勧めをさせて下さいv
「佐々木禎子先生『月の欠片』、あと1冊何にしよう?って時にはコレでしょう!」
佐々木禎子さんの作品はこれまで横暴なヤクザとかマフィアが出てくる物しか読んだことがなかったので、とても新鮮でした。
あとがきでご自身で書きたいものを書かせてもらった、とおっしゃっているとおり
一風変わった作品です。
目が覚めたら八年経っていたという気持ちは一体どういう気持ちなのでしょうね。
事故か何かで長い間眠りについていた間に…という小説はいろいろありますが、外傷性遷延性意識障害という正式名を始めて知りました。
主人公いわくおとぎ話の眠り姫というより浦島太郎、だそうです。
三部構成になっています。
『月の欠片』
八年もたつと親兄弟はや友人たちは年を取ったらこうなるだろうというのが想定内だったでしょうが、生意気な小学生は、立派な青年でそれもいい男になっているのですから「だれ?」と聞きたくもなるでしょうね。
英俊はその八年の年月を自分を責めたり後悔したりしながらも愛を育んでいたのでしょう。
「いい子になったらきっと神様も願いを聞いてくれる」と信じてもいなかった神様にすら祈りながら、周りの人たちが思うようないい子を演じ優等生の仮面をかぶって毎日裕真を見舞っていたのですから一途です。
『雲の狭間』
過去編。二人の出会い。
虐待する母
見ない振りをする身内
なかったことにして逃げる父
そんな大人たちへの不信感から孤立し誰にも本心を明かさない少年。
けれど、ちゃんと自分を見てくれる大学生とで会い新たな感情を覚え始めます。
そして裕真への独占欲から思わず運転中のハンドルに手を出し大事故に。
英俊の父親が、優真のために涙する我が子に対して「人のために泣くことができるんだな」とつぶやくシーンが印象的です。
放置していても親としての感情が少しばかりはあったんでしょうか。
『天使の梯子』
時系列で第一部の続き。
金環日蝕の日の英俊の告白。
英俊のことが好きらしい女子の余計な言動で、英俊が罪悪感や事故の責任から側にいるのではないかと思い、好きだというのもその延長にあるのではと思い始めます。
でも英俊の前向きな姿勢に自分も前に進まなければと考えられる様になるのですから苦労しているだけに英俊のほうが大人なのかもしれません。
最後の最後でようやく気持ちが伝わり受け入れられるのですが、これからどうなっていくのか気になり余韻が残る終わりでした。
裕真の友人の家入が少ない登場なのに光っています。
英俊の裕真への気持ちを知った後の戸惑いから許容そしてキューピット役への変遷が友人としての真価をあらわしていました。