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読了直後、思わずタイトルの様な言葉をつぶやいていた私。
最新作が2018年の『ひよこ、ロマンチック始めました!』じゃないかと思うのですけれども、あれからもう2年。
ああ、吉田ナツさんの書いた新しいお話が読みたい!
もう9つもレビューがありますので、感想のみを。
分類したらコメディなんだと思うのです、このお話も。
造形作品を造ることだけに夢中な香西と、その香西にベタぼれだけれど嫌われたくないばかりに親友ポジションを取り続ける道本の噛み合わないやりとりは、とても可笑しいだけでなく可愛らしい。
そしてね、香西の芸術家ぶりが凄いのです。
勿論、色々なタイプの芸術家がいるとは思いますよ。ただ『芸術バカ』って、才能のあるなしは置いといて、香西みたいな人が多い様に思うのですよ。
その芸術性は一切解らなくとも、そんな香西が創作しやすい環境を必死に作り上げてくれる道本って、もう、最高のパトロンだと思うの。
アートの周辺にいる方々は、香西が羨ましくてたまらないだろうなー……
でもね、そんなホンワカだけではないのですよ。
私、何度も泣きたくなった。
「なんでここで泣きたくなるかね?」という様な、思わぬところで泣かされるんです。
大げさかもしれないのですが、その涙は『生きている寂しさ』から来る涙の様な気がしました。だからこそ、この2人は離れられないのだろうとも。
『あまあま』で『ほのぼの』の王道でありながら、こんなに『ラブラブ』していながら、その根底に寂しさが揺蕩っているという、極上のお話だと感じました。
読んでいる最中は、辛い浮世を忘れたよ。
この作者様の描かれる攻めいいんですよね。
道本が報われて本当に良かった。
二人とも本当に可愛くてマンギョウも可愛くて幸せな気持ちになりました。
香西は一緒にいられるのが当たり前過ぎて意識してなかっただけなのか。
特別過ぎてだったのか?ちょーっと鈍すぎやしませんか?
と思いながら読んできて最後にマンギョウの命名秘話でなるほどとは思った。
二人の関係性やお互いの心情がとても丁寧に描かれているから、おいてけぼりにならずに二人の言動や気持ちに納得しながら読めました。
道本所蔵の香西作品たちは今後公の場に出てくるのでしょうか?
個展ひらいちゃえ。
中編2編
表題作+「世界は君で満ちている」
表題作はやり手社長の道本(攻め)と立体造形作家の香西(受け)の二人の幼馴染が長い両片想いの末くっつくお話。
道本は早くから香西に恋していましたが、芸術的センス以外ポンコツの香西は道本に恋していたのに、恋心がわからずスルーしてしまいます。失恋したと思った道本は親友ポジションだけは死守しようと親友に徹しています。
ある時、香西の作る作品の理解者が現れ、今まで全く認められなかった香西の作った作品が大きい賞を貰い、平穏だった二人の関係が動きます。
表題作は両方の視点があるのでどちらの心情もわかって面白かったです。
特に道本の香西に対する想いが面白かったです。
普段の香西がすごく綺麗に見えて困るので、嫌いになるためにおたふく風邪の時や顔中蚊に刺されてるときなど不細工な時を狙って顔を見に行ったのに今度はそれが可愛く見えるなんて末期ですね。そんな状態でよくも別の人と結婚しようとしたものです。道本の心に別の人がいることに気が付いた婚約者が身を引いてくれなかったら、実は両想いだったのに悲恋になってしまうところでした。
香西は道本のことを親友としか思ってないのかと思っていたんですが、飼い犬のマンギョウと道本さえいれば幸せで、道本が来てくれたら創作意欲が湧くって状態なのに恋してるってわからないなんてびっくりです。
定期的に訪ねてきていた道本が、長期間会いにこなくなって初めて気がつくなんてどこまで鈍感なんだ。どんなに忙しくても道本が会いに来てくれるから気が付かなかったという、香西中毒の道本にとって皮肉な結果でした。
「世界は君で満ちている」は
香西視点で、初めての恋にスランプに陥ってしまった香西がスランプを脱出するまでが描かれていました。
金儲けには長けている道本ですが、お金を使うのはとても下手で、「香西を贅沢させるために金儲けに勤しんでいるのにおまえが使わないでどうするんだ」と開き直ったところも笑えました。
もともと浮世離れして制作活動以外を放棄していた香西が人並みに恋愛するようになり、恋に浮かれてイマジネーションが湧かなくてスランプに陥り苦しむ中で、「自分が誰の役にも立ってない」と落ち込み悪循環に陥ってしまうのですが、道本は何もできない自分でも側にいないと駄目だ、二人が離れずに側にいることが二人にとって生きる糧なんだとやっと理解できたことによりやっとスランプから脱出できます。
後半のお話は、はっきり言って、周りを巻き込んだ二人の盛大なノロケ話でした。
香西1人では三途の川が渡れないだろうから、先に死んだら待ってるし、香西が先に死んだら直ぐ逝くから待ってろって凄いですよね。
この方のお話は、登場人物の言葉のチョイスが楽しいので好きです。
芸術家の香西が好きなのに芸術は全く理解できなくて、香西が作る作品をすべてゴミクズと言い切り、香西が海外の大きな賞を取った大作には他の人が評価する中、道本とその秘書は「イカやタコが勝負している」「崩れかけた巨大な蚊取り線香」と表現していて笑っちゃいました。でも、陰では香西が作った作品を買い取ってるんですから健気です。
香西がマンギョウをおんぶしてその香西を道本がおんぶした状態を「ブレーメンの音楽隊」と表現したのにも笑えました。暗い中にそんなのに出くわしたら腰抜かしそうです。
香西にとって自分の作るものを理解してくれる人がいるのは嬉しいことですが、道本にそんなことは求めておらず側にいるだけでよくて、お互いの魂の深いところがお互いの形にぴったりあってるなんてなんて素敵なんでしょう。
香西が別の人にかっさらわれた途端仕事をする気がなくなってしまうのも、生きる原動力が香西によってもたらされていたんだと感じられます。お互いの想いを確かめあって、初めてのとき道本にも服を脱ぐように要請する香西に服を脱いだら理性が飛んで危ないからやめておいたほうがいいと真剣にアドバイスする道本にも笑いました。
普段強気な道本が香西にだけは弱いのが面白いかったです。
電子書籍版を購入。
表題作とその後の二人を描いた「世界は君で満ちている」が収録されています。。
またもや、ツボりました。
神評価です。
この作者様の『一途な独占欲』にはまり、自分の中で吉田ナツ祭りを開催中。
最新のものから過去作品まで、いろいろと読みあさってます。
いいですね。
いちいち、ツボります。
木原音瀬さんの作品が大好きで、ぬるい激甘溺愛系は苦手だったはずなのですが、なぜか、この作者様の作品は不思議とピッタリ好みに嵌まります。
どうしてだろう??
共通点って、あったかな?
うーん。
あ、そうか。
心理描写が丁寧で、話の運び方に無理がなく、説得力があると言うところが共通しています。
よくある、ご都合主義とは違います。
醜いドロリとした部分もちゃんと描かれています。
だから、読者にも響くのかもしれません。
さて、この作品の攻め様と受け様。
『溺愛飼い主と可愛くない猫』にも、ちらりと登場します。
攻め様は嫉妬深くて、受け様は才能がある有名アーティスト的な位置付けでちょっと、印象が違うかな。
いや、最後の立ち位置どおりか……
久しぶりの神作品です!!
オススメされていなければ絶対に手に取らないであろう甘々な表紙ですが、予想を裏切る面白さでした。
キャラクターやストーリーにただの執着物とは一味違ったオリジナリティがあります。
まずとにかく攻めの受けへの愛情が凄い!!
攻めはポヤーっとした受けに対して言いたい放題ですが、自分だけのものにしようと強引に奪うのではなく、まるで世話焼きオカンのように、好きで好きで、ただ笑っていてほしいと尽くしてます。
立体造形家の受けの芸術性が全く分からずボロクソ言いながらも、受けが好きなことをして一生暮らせるように、自分が稼ぐとビジネスに燃えてる筋金入りの受けバカです。
学生時代にたこ焼き割り勘したメモまで全部残してるってどんだけ(笑)
ストーカーばりに年季が入ってるし、諦めようとしてもどうにもならない葛藤が可哀想なくらいで、でもそれがイイ!!
大人気ないガキ大将みたいな口ぶりや受けのこと好きすぎるがゆえの発言の数々もツボでした。
受けが常人ではなく、1本ネジが飛んでたのも斬新でした。
マンギョウの由来を忘れてたって、どんな思考回路?!
テンポの良いボケツッコミのような会話に笑えつつも、2人の想いが通じ合うまで、そしてその後、様々な葛藤がありながらも、やっぱり離れられなくて、一生いたいと攻めが切望する姿に思わず涙してしまうほどでした。
攻めの欠けた部分に受けがすっぽり入ってしまってもう攻めの一部になってしまったという表現がまさにそうだったのかも。
笑ったり呆れたりしながら2人を温かく見守りたい作品でした!