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表題作僕の、なれない君

崎谷直,高校2年生
笹田優希,サッカー部員の高校2年生

同時収録作品慣れない、君との距離

崎谷直,医学部2年生
笹田優希,ドイツ2部リーグのサッカー選手,20歳

あらすじ

両親の離婚により、崎谷直の転校した高校にはスターがいた。サッカーの才能に恵まれた笹田優希の活躍は、東京の進学校で望む成績を残せなかった直のコンプレックスを刺激した。直は笹田と関わりを避けて過ごしていたが、ある日、担任に彼の勉強を見て欲しいと強引に頼まれてしまう。自身とは真逆の笹田に最初こそ苦手意識を感じていた直だったが、素直で裏表のない彼と過ごすうちに、なぜか胸が騒ぐようになり――。

作品情報

作品名
僕の、なれない君
著者
手嶋サカリ 
媒体
小説
出版社
心交社
レーベル
ショコラ文庫
発売日
ISBN
9784778117948
3.3

(14)

(0)

萌々

(8)

(3)

中立

(3)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
7
得点
44
評価数
14
平均
3.3 / 5
神率
0%

レビュー投稿数7

丁寧に描かれたデビュー作

ショコラ新人賞奨励賞受賞作だとのこと。
かなり厚い本だが、終始読みやすい。

両親の離婚に伴い、東京の進学校から田舎の私立高校に転校した直。
その学校はサッカーの強豪校で、同じクラスには
天才サッカー少年にして皆の人気者・優希がいた……

サッカー三昧で勉強はからっきしの優希が追試を乗り切るべく
担任でサッカー部の顧問である教師から、
彼に勉強を教えることを仰せつかった直。
最初は不承不承だったのだが、いっしょに過ごすうちに……


長身でメガネ、成績優秀だが鬱屈したコンプレックスを持つ直、
小柄ながらパワーを秘めた明るいサッカーバカ優希が抱える思い。

接点も少なく全くタイプの違う二人が、
違うからこそお互いによって癒され惹かれあっていく様が
丁寧に描かれている。

家族との葛藤と和解、進路への迷いと決断、
心情や生活の描写も高校生らしくて、好感が持てる。

後半は時が2年流れ、遠距離恋愛となった二人。
ドイツでプロサッカー選手として過ごす優希の元へ
医学生となった直が訪ねていく話。


全体としてはデビュー作とは思えないほどまとまっており
気持ちのよく読める一冊だったが、
エピソードの出し方や回収の仕方が中途半端な面や、
折角なのにサッカーの描写がほとんどないこと、など
細かいところではもう少しという点もある。

気持ちのすれ違いが描かれている後半の話では、
直の後ろ向きさにイラっとさせられたが、
カレンダーのエピソードの健気なかわいさにグッと……。

最近の新人さん達は、全体にレベルが高いな〜。
手嶋さんも、今後に注目したい作家さんでした。

10

凄い新人、発見しましたぜ。

【手嶋サカリ】さん。
ペンネームは、力士をイメージしてつけたのだそうです☆
なんだかほのぼのする作家が現れ、早くも次の作品に期待です。

【第6回小説ショコラ新人賞 受賞作品】
高校生×高校生。
爽やかで青春がキラキラしていました。
サッカー部からプロの道へ。
真面目根暗少年が医学部へ。
それぞれの道へ進む迷いや希望がいかにも高校生で、お母さん世代は自分の息子のこととだぶるんじゃないかなあ。

思春期の繊細な悩みをすごく丁寧に書かれています。
親の離婚、転校があり孤独を感じていた少年。
ふわりと笑いそっと寄り添い助けてくれた同じ年齢の少年。
ゆっくりとふたりの気持ちが寄り添うところ、涙しました。

ピュアな話を読みたい方へ、おすすめします。

3

一気に読めました

新人賞・・という帯に惹かれて購入。
デビュー作ということ、初読みの作家さんに期待して読みました。

もともと学生物が好きなのでわりとすんなり読み始めました。
まったく環境の違う二人、優希と直。
違うものを持っているから惹かれあう。
優希は天性の才能でサッカーに打ち込むも、
アスリートにはアスリートの悩みがある。
また、親の離婚で優希のいる高校に転校してきた直。
父親のこと祖母のこと母親のこと、すべてから逃げていた自分のこと
将来のことを正面から考えるきっかけを優希にもらう。
勉強ばかりしていて、恋とか愛とかSEXとかに何の興味もないような直が
自分から本能のように優希に迫るのは意外でした。
最初はなかなか受け入れられなかった優希との距離がだんだんと縮まり
お互いにぜんぜん違う畑の人間だということが二人を引き合わせたところに
とても興味深さを感じました。

性格が全く違う2人が惹かれあって、遠恋ながらも支え合う卒業後の話。
大学医学部へ進学した直と、サッカーでドイツに行ってしまった優希。
年に2回しか会えないのに、その貴重な1回に優希が帰国せず
半年ぶりに直のほうからドイツに会いに行くというもの。
たしかに直の勝手な想像で悪い方向へばかり気持ちがいって
最後までハラハラドキドキ、そしてイライラさせられるのですが
私はこういう流れ、嫌いじゃないです。
半年ぶりに恋人に会えると想ったら、もうラブラブなことを思い描きますね。
行ってみて「あれ?」と思う直の気持ちなんだかすごくわかりました。
たった2週間しか一緒にいられないのに・・・
その直の想いは誰にも攻めることはできないと思います。
優希もまたなんの悪気もないのだけど、ちょっと歯車がずれましたね。
誰も悪くないんです。お互いに気をつかってそれがかえってよくなかった。
そしてすべてが悪い方へと連鎖してしまい、直の気持ちがどんどん
落ちていくのが手に取るようにわかり、ちょっと涙しました。
私だったらすぐにでもその場から逃げてしまうかも・・
などと思いながら、どこで新事実が判明するのかワクワクしながら読みました。

大好きな人と離れているからこそ不安になる。
自分の知らないところで、知らない人たちと楽しく過ごしている・・・
それって恋人としてはとても複雑ですね。
直は真面目で勉強はできるけど、恋のこととなるとまだまだ若葉マーク。
不安でしょうがないんですね。
その辺の不安な気持ちからの悪循環はすごく共感できました。

長編の割にはさらっと一気に読めました。
次の作品にも期待します。

3

後半にきゅんっ。

作家さまの、小説ショコラ新人賞受賞作。日常系が好きなので、若い二人にハラハラしながら楽しませてもらいました。

二部構成で、前半の表題作では二人が出会って惹かれ合っていく段階が、後半の「慣れない、君との距離」では高校卒業後の二人の関係が描かれています。

親の離婚で、東京の進学校から母親の故郷にある私立高校に転校してきたガリ勉の直と、サッカー部エースで学内外の人気者、優希の物語。

父親が医者で、家族からの期待を背負い潰れそうだった直。怪我と復帰のプレッシャーから、サッカーを続けるのが苦しくなっていた優希。そんな二人を担任の森本が引き合わせます。この出会いが、それまで接点のなかった世界へお互いを導いていくきっかけになるんですね。

人付き合いの苦手な直がクラスに馴染んでいけたのは、優希のおかげ。直が女子に話しかけられるようになると、優希はちょっと面白くない。将来有望で、明るくて、彼女もいる優希が、どうしてこんなネクラな自分と一緒にいたがるのか直にはちっともわからないけれど、でも嬉しくて切ないのは確かで。

父親とのわだかまり、進路の悩み、優希への思い。グルグルしている直が自分の思いを伝えようと、選手権に向けて練習中の優希のもとへ赴きます。グラウンドのネット越し、二人が手を合わせるシーンに萌えました。

前半は高校生らしくて、青春な感じがとても良かったんですが、大学生になった直がドイツに渡った優希に会いにいく後半のお話がマァ、キュンキュンのすれ違い…!ムッチャ萌えました。離れている間にどんどん相手が変わっていってしまうような不安。それを攻め視点で描かれるもんだから、個人的には萌え倍増でした。

二人は自分にない部分を補い合える関係だったはずなのに、やっぱり住む世界が違いすぎるのだろうか…。ウジウジ悶々型の攻めにはあまり萌えないんですが、このお話の攻めは嫌いじゃなかったです。ちゃんと、自分の欠点を認めているタイプだったから。

高校生ものは好物ですが、高校生編と卒業後が半々のボリュームで読めたのは大満足。なんてことはないんだけれど、二人の組み合わせがいたくお気に入りで、大好きなお話です。

3

BLって一種の青春小説だと思うのです

電子書籍で読了。挿絵はあるのですけれど……小さい。アップならまだましなのですが、ロングの構図だと、私の裸眼では見えません(泣)。

『プライベートバンカー』が好みだったので購入したのですが、この方(手嶋さん)は『若気の至りで生まれる疎外感』を描くのがとてもお上手!真に迫るものがあります。このお話では、崎谷がそうなのですが、周囲の期待に応えようとして頑張って、とことん頑張るのですけれど、それでも認めて欲しい相手には認めてもらえないと思い込んでしまうその心情が、痛いやらいじらしいやら……
行き止まりの袋小路だと思っていたのが、自分では理解不能と感じている他者(このお話では笹田くん)と深く触れあうことで、今までとは違ったものの見方が出来るようになり、それによって周りの人達(このお話では崎谷くんの家族)の行動が理解できるようになり、最終的には自分を許容するという、とても良くできた成長物語だと思いました。
何よりも素晴らしいのは、それがスルスル読めること。「青春小説としてのBLはこうじゃなくっちゃ!」と思いましたです。

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