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表紙のデザイン、よ〜く見ると女子の瞳に映りこんでいるのです、右目に茶髪君、左目に黒髪眼鏡君。さらに『わたしが感じることができないときめきを見た。』との帯のキャッチコピー。
最高にイカしてますな。中身もイカしてます。
(ただし、万人受けはしないと思います。萌えというよりも、新しい発見のある、とても意欲的に丁寧につくられたアンソロです。)
表紙とキャッチコピーの通り、女子が主人公となって語る、彼らラブストリーが集められています。
その立ち位置というのが、お話によってこんなにもバリエーションが出るものなのね〜と、ひどく感心してしまいました。
ポジショニングの違いがとても面白いです。
そして、その彼女たちは、どれも「わたしである」のです。
秀さんは、クラスメイトの彼の秘密を知ってしまうモブキャラC子を。
糸井さんは、おそらく疑似家族に居場所を見つけるなつみを。
ふみふみこさんは、優等生の恋の共犯者みのりんを。
市川けいさんは、もうひとりの自分(双子の兄)と決別していく花愛を。
西田東さんは、教え子たちを懐かしみつつも、したたかな田中のおばあさんを。
ためこうさんは、カッコいい彼の隠れた顔にドンびく思春期女子の高木さんを。
プルちょめさんは、動物的感を働かせて恋のキューピットになるミレイちゃんを。
めばるさんは、自分よりも可愛い女装子に負けてしまうトモちゃんを。
志村さんは、『起きた最初にすることは』矢野兄弟を鋭く見つめる玉井さんを。
極めつけは、アンカーのはらださん!このアンソロジーのオチを姫海さんという美少女を登場させ、これでもか!?という形で私たちをメタ化してきます。
ときには嫌悪感や嫉妬心を抱きながらも、やはり彼らの恋を応援する彼女たちの姿は、どれも「私」です。
いわゆる「現実社会の恋愛」という戦場からスタコラ逃げ出した私には、
自分と同じ性を持った主人公が恋愛するマンガなんぞ、怖くて読めず、その逃げ場がBLなのかもしれません。自分が戦場に出るという恐怖から遠い楽園、それがBL。BL世界では、壁の目である自分。
でも、この女子BLでは、いつもはいる必要のない自分が登場するという、ちょっぴりのやるせなさと共感が胸に突き刺ってきます。
さらにお互いさえ知らない彼らの秘密と本当を知る第3者視点には、奇妙な快感と萌えがあります。
そんないままでになかった感情を揺さぶられる、エアポケットのようなBL作品です。
どのお話も秀逸で作家さんのカラーがそれぞれ濃厚なので、ちょこっとずつ、それも順番通りに読むのがバランスがよく、オススメの読み方です。
最後ははらださんに、ガツンとやられちゃってください。
女子視点なのでどのお話も新鮮で印象に残りました。
ただ、”王子様×○○+王子様のとりまき”というお話が多かったように思います。
BLの萌えはもちろんあります。
そして女子が主人公になることによって新たな感動がありました。
BLに出てくる女子にとって圧倒的不利な状況だからこそ、彼女達が踏ん張っている姿が格好良く映りました。
↓雑ですが各お話のあらすじです。だいぶネタバレあり&長くなってしまってすみません。
「少女C」秀良子 (表紙の絵との関連性はありません)
高校生 王子様のとりまきのモブ子+(天使系王子様×目つきとガラの悪い男)
下衆BLの続きとのことですが、未読でも大丈夫でした。
どちらが下衆で何が真実なのか。真実を知ったモブ子は何かを失い何かを得る。
「ストックホルム」糸井のぞ
拉致監禁されている被害者+(受けのストーカー×主人公のストーカー)の三角関係。主人公は高校生でストーカー2人は社会人。
タイトルの「ストックホルム」は、”ストックホルム症候群”のことだと思います。
しかし主人公の菜摘が男達に絆されていくという単純なお話ではありませんでした。歪んだハッピーエンドでしたけど凄く面白かったです。
「神の道徳論的証明」ふみふみこ
高校生 地味で目立たない子+(おじさん×学校の王子様(実は女装男子))
主人公が、ちっこいキャラで健気でめちゃくちゃ可愛かったです!
地味子→王子様で切ないのですが、地味子は一生懸命王子様を応援していて親友同士のようでした。
「ナチュラチュラリィ」市川けい
高校生 双子妹+(双子兄+先輩)
クールで冷めた双子と優しげな先輩。三角関係風味
好き嫌いも一緒、何をするにもどこへ行くにも一緒だった双子に告白してきた一つ上の先輩がいた。
先輩は兄の方へ告白したのですが、いつも一緒にいる妹も受け入れています。
話のミソは”好き嫌いも何をするにも一緒だった双子”だと思います。
これも切なかったですけど、前に力強く進んでいる感じがあり良いお話でした。
「貪欲な花」西田東
おばあさん+浄水器セールス(訪問販売)の同僚同士
このお話はおばあさんが脇役っぽかったです。
おばあさんは元教師なので、仕事やお互いに四苦八苦している2人を大らかかつ厳しい目で見てるといった感じでした。
「種田君と付き合いたい」ためこう
高校生 王子様のとりまき(可愛い)+(王子様×地味)
主人公の高木さん→王子様→? 地味→高木さんという三角関係風味
高木さんは、具合の悪そうだった有馬(地味)を保健室に連れていきます。
(王子様種田と仲の良い有馬に近づくことによって、種田に取り入るためです。)
そこに種田が表れ対峙する3人。なんだかますます有馬の様子がおかしい…
「おりぼんちゃんと男の子」プルちょめ
高校生 頭の緩いビ○チ(というか性欲旺盛)ミレイ+ミレイのことが好きな男2人(2人は幼馴染同士) 3P風味でBL度は薄め。
男の子に好かれるけど女の子に好かれないミレイは、女の子とも仲良くしたい。
なので、男の子はしばらく絶つことにした。そこにミレイに告白してきた男2人が現れる。
男の子と関係するわけにはいかないミレイは、3人で付き合おうと提案する…
「はいはい、可愛いね」小鳩めばる
モテない女の子+(ゲイバーのバーテンと女装美人)
バーテンの妹である主人公は、モテないことをゲイバーで愚痴っていた。
自分磨きをしろ、と女装美人に説教をくらう妹。そんな女装美人の自分磨きの目的とは…
自分磨きと素顔の魅力の大切さがバランス良く描かれていたと思います。
「玉井さん、恋と友情」志村貴子
バイトの玉井さん+バイトの同僚同士(2人は義理の兄弟)
「起きて最初にすることは」に出てきた玉井さんのお話でした。
玉井さん→兄→弟という体ですが、この兄弟は付き合ってます。
なかな複雑のようだけど、手つないでるしカマトトぶってるんじゃねーという玉井さんの怒りみたいなものが伝わってきました(笑)
「わたしたちはバイプレーヤー」はらだ
高校生 才色兼備の姫海+(地味な脇川×王子様の皇子山)分かりやすいw
このタイトルが全てを物語っていると思います。
最後の最後で「女子BL」に対するメタ発言がありますが、私の感想と少しズレていました。
「BLに出てくる女子って可哀想かも」という終わり方なのですが、私は彼女達が耐えたり踏ん張る姿に感動したので可哀想で片付けないでほしいなと思いました。
以前から、BL作品に登場する女性、という存在にとても興味があったので即買いしました。。
期待通り、とても興味深い。萌えとはちょっと違うんだけど…。
何が興味深いかといえば、やはり作家さんごとに、女子のからめかたが全然違うんですよね。
読者や作者が女性であれば、やはり作中の女、という存在には自我が投影されて当然かと思います。作中の女子たちは、作者自身であり、読者自身にも置き換え可能。
ほとんど傍観者のような立ち位置であったり(たとえば秀さんの作品)、時に相談役であったり(名前忘れちゃったけど、女装男子のやつ)、がっつり二人の間に入っていたり(ぷるちょめさん)、作家さんの欲望の具現化のようでもあり、読者にとってのBLとは何なのか?を気づかせてくれるものでもある。
かくいう私は、西田さんの初老女子(むしろ女史?)に、やられた!と衝撃と共に親指を立てたくなる気分を味わいました。
だって、まさかのおばあちゃん!西田先生っておいくつなんでしょうか?
酸いも甘いも噛み分けたおばあちゃんの人生においては、男二人の色恋沙汰など些事ということなのか…。BL作品ではもちろん、世界の中心は主人公たちなわけですが、この作品ではいい感じに突き放された脇役感があります。けれどもその突き放しが冷たくはない。人生の何歩も先から慈しむような、暖かさも感じる。腐女子から貴腐人へ、さらにそのまた先へ、徳を積んだ私たちはいったいどこまで進化するのやら、と腐女子の未來について想いを馳せずにいられない壮大な作品でした(笑)
はらださんのメタ視点や、秀さんの女の子キャラが記号的なモブ子ちゃんから、一人の女の子として作中で変化していくところがとても興味深かったです。
逆にあまり好きでなかったのは、ぷるちょめさんの作品。女子ががっちり男二人の間に入りすぎていて。しかもすごくムカつくタイプの女子が。あまりに女子中心に物語が進んでいくので、あまりBLっぽく感じませんでした。まぁ、これくらいの近距離で二人を観察するのも悪くはないと思いますが。
blで今すぐ萌えたい!っていう人にはこの本じゃなく別の本をすすたいですが、
純粋にすごくすごく面白かったです。
起きて最初にすることは
の続編があると聞いて、それ目当てに購入しましたが、他作品も素晴らしかったです。
余韻が残りますね。。。
私が好きだなぁと思ったのは
ストーカーの話ですかね、、
あと、玉井さんの話。
双子の話や最後のお話なんかはうーん、せつない。。。
ネタバレなしレビューです。敬愛するはらだ先生の作品が収録されている事から本書に興味を持ち手に取りました。結果、今まで導入部だけサラッと読んで絵柄が好みじゃないとか、なんか話がボンヤリしてると読まなかった(本当にすみません)作者さん達が物凄く面白い作品を描かれてることを知る手がかりになり…一言で言うと感謝してます。