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俐香は「不憫な健気受け」に該当するタイプだと思います。
秋山さんの中華ものは他にも読んでおりますが、この作品は皇族ではなく奴隷出身の受けです。
幼い頃の、珀龍に頼って甘える姿はとても可愛いです。
…なのですが。
私は小動物っぽくて可愛いと思いましたが、割と取柄は見た目だけの出来の悪いタイプの受けなので、苦手な方は避けたほうがいいでしょう。
そして、個人的には冒頭部分の仕掛けが秀逸でした。
おそらく意図的にミスリードを誘うように書かれたのだと思いますが(私は完全に引っ掛かりました)、一度作中で種明かしがされてしまうともう正解の方でしか読み取れません。
さて、俐香は一体誰に抱きしめられたのでしょう?
再読するとまた違う結果が見えてくると思います(初めから正解に辿りつけた方のほうが多かったらすみません)
あらすじ:
舞台は古代中国風の世界。
奴隷から大臣の養子となった俐香(受け)は、反逆罪をかけられた養父を救うため、皇帝の弟・珀龍(攻め)に接触。
彼に取り入ろうとするが、珀龍は俐香を遊郭に閉じ込め……
俐香がとにかく健気。
その一言に尽きる作品かもしれません。
自分を引き取ってくれた養父を幼い頃から慕い、養父が自分を珀龍に売ったなどとは考えもしない健気受け。
しかし、養父を討つ立場にある珀龍にまで簡単にときめいてしまっている点にはモヤっと。
もう少し珀龍を恨むなり何なりしてくれた方が自然だったと思います。
珀龍は、皇帝の相手役をさせるため俐香を遊郭に閉じ込め、張り型で「調教」する鬼畜攻め。
といっても自分以外の人間に手出しはさせないため、何だかんだ甘い印象です。
実は幼い頃から俐香を想っていた一途な人物ですが、その割に俐香への愛が見えにくいのはややマイナス。
俐香の養父と義兄を捕まえるため俐香を利用したことに変わりはないし、
俐香への対応も、演技にしてはやり過ぎな気がしました。
実は溺愛攻めでした、というオチにするのであれば、珀龍の打算ない優しさが見えるエピソードがもう少し欲しかったです。
想いが通じ合ってからのイチャイチャシーンは甘くて良かったですが、そこに至るまでのストーリー展開はやや消化不良。
政治絡みの話と、俐香と珀龍の純愛という二本の軸が、いまいち上手く噛み合っていない印象を受けました。
張型調教プレイや当て馬による木馬プレイなどエロはそれなりに充実していますが、本命の珀龍との甘いシーンが少ないのでやや物足りないかも。
秋山さん作品にしては読後のスッキリ感に欠ける一冊でした。
ちなみに挿絵で、
「黒髪」設定の珀龍が黒髪に描かれていない点もややマイナス。
表紙はわりと良い感じですが、中の絵は人体のバランスや構図など気になる点が多かったです。
中華風で美しい雰囲気と、最後の甘さは良かったです。
が、攻めである珀龍の、俐香に対する愛情が最後の方にちょろっとだけというのは非常に残念です。
珀龍は、最初から俐香のことが好きだったわりに扱いが随分酷くない?調教も結局のところは自分の趣味ってことですよね?やり方が不器用とか、立場上仕方なくとかいうレベルではないなぁ、と感じました。
あと、義父は直接俐香に酷いことを言った描写がなかった為、黒幕という印象がないのですが。根っからの悪ならもっとそれらしい描写を、もしくは、どこかで本当は良心の呵責を感じていたのならそういったエピソードとかがあっても良かったかな。主人公の人生に深く関わった人物だったので。
あと、作中の説明とイラストが一致していない気がしたのも残念。せめてイラストが、笠井あゆみさんかcielさんとかだったら“萌”でした。