電子限定おまけ付き
電子版は挿絵なし。
表紙は、黒髪和服の是清と(甚平と書いていたけど、)作務衣の清二。
地味な表紙のイメージに反して読み応えあった。H少な目です。
是清と清二相互の視点で進展する心理描写重視。
お題は表紙の絵そのまんま、「猫」「大正」「子育て」
読後、雨月夜道先生の人外以外の著書を、全部読んでみたいと思った。
この先生、構成上手というか、読みやすく書くのがうまい。 私は好き。
▶口減らしで売られた清二。
事故に遭い、重症で助からないと人買いが見捨てた後、作家の是清が拾って快方する。
是清宅に住み込みで働くことになった清二の視点で綴られる、清二と是清と伊織の三人暮らし。
栄養失調が改善されたら成長して、3年で是清の背を越し逞しくなる清二。
▶「絆」と「想いを伝える」が物語の肝。
黙ったままだと真意は伝わらない。誤解はすれ違いを産む。
一番上手に伝えるのは幼児の伊織。
一番下手なのは、作家の是清。感情を押し殺して育った幼少期の癖が抜けない是清。
そんな是清の不器用さを「可愛い」と想い、寄り添うように支える清二。
進捗にちぐはぐな部分があるのは、頁不足が原因の無理入れだと思います。
出版業界の不景気を感じました。
ほんわか雰囲気の作風かと思わせられ、序盤で両想い成立。
なのにそこから、主人公カプがどうしてお互いが唯一無二なのか語られ、その中で、それぞれがこれまでにどれだけの課題と死闘して来たか!、その経緯故にお互いでなくてはならない相手であるのか!これはもう納得せざるを得ない。
この基本的な要素を丁寧に丁寧に解いていくねちっこさと、そして主人公の明るさとタフさにいつの間にか入り込んで、読み終わると元気をもらえてしまう。
派手な設定があっても、結局は日々の積み重ね、努力と朗らかな心が幸せに満たされていく過程を見守ることができる、じっくり推せる。
私にとって雨道先生作品は漢方薬的なビタミンBLです。
以前から気になっていた作家さんで、前作シリーズ2冊を購入していながら未読のままだったので、初読み作家さんでした。
私自身、現代以外のお話を読んだことがなかったので、どういうものなのか気になっていながら時代小説に手を出せないでいたので、今正直に思うことは「もっと早くに勇気を出せばよかった…!」です。
それくらい、最初の数ページで世界観に魅入られ、現代じゃないからこその葛藤や言葉回しが新鮮で、現代ものとはまた違った萌えというものを初体験させていただきました(^^)
この作品は大きく3つの話で構成されているのですが、最初の1つ目の話の冒頭で攻めさん(清二)が死にかけているシーンから始まるのは衝撃的で、是清や伊織、夜叉丸を通して本当の笑顔を取り戻していく清二の成長ぶりが涙を誘いました。
というか、清二がいい子すぎて素直で可愛くて…自分の好きな受けさんだなあと思いながら読み進めたら。
2つ目のお話(こちらが本題)で、随分男らしく逞しく成長していて実は格好良い攻めさんだったと知った時は、驚きました。
本題では、受け攻め両方の視点が交互に読めるので、その時その時の2人の考えている事、感じている事が真っ直ぐ伝わってきて、もどかしくて仕方ありませんでした。
受けさん(是清)にとって、3年前に保護した清二と3年後の逞しくも賢く成長した清二に対する気持ちの変化の戸惑いや、是清自身が3年前よりも表情や態度に感情が表れやすくなっている事など、2人のそれぞれの成長の仕方も魅力的。
また、伊織の存在が2人に与える影響としてその都度その都度大きく、この作品でも1番のキーパーソンだとかってに思っているのですが、そんな身体は小さくとも大きい存在の伊織と離れ離れになってしまうシーンは、本当に切なかったです。
3つ目は、紆余曲折あって伊織と離れて暮らすことになったその後の蜜月期で、いちゃいちゃがそれまでに少なかった分、お互いがお互いにデレデレで甘い甘い2人を最後に堪能出来たので、満足に読み終わりました。
これからが事実上の新婚夫婦になる2人には、もっともっとらぶらぶに過ごして欲しいです。
私としては、結局清二はあれだけの能力と可能性がありながら、「是清を守る」ために学校には行かないのか、使用人という身分のままなのかが気になるところではありますが、伊織の成長した姿と共にまたいつかこの3人のお話が読めたらいいな…と思うくらいには満足できた1冊でした( *´︶`*)
大正時代を舞台とした子育てもの+猫。初読みの作家さんですが、子育てに猫、そしてワンコ年下攻めとなれば、もう読むしかない!!と。写真機や馬車、そして着物というアイテムがレトロ感を満喫させてくれます。そして、着物の色っぽさが最高でした( ´艸`)
ほのぼの&甘々な日常の中に、主役二人の気持ちをしっかり掘り下げてある切ない部分やシリアス展開もあり、とても読み応えがありました!
自動車にはねられ大怪我を負った少年・清二(攻め)が、元華族の売れっ子小説家・是清(受け)に拾われ、是清の甥っ子を一緒に子育てしながら絆を育んでいく「露と答えた、そのあとは」と、青年になった清二と是清の恋愛がメインになる「相合い傘で子育て中」の二話が入っています。プラスおまけのラブラブ短編です。
攻めは一途で健気なワンコです。貧困のため親から人買いに売り渡され、更に猫を助けようとして自動車にひかれてしまう…という不幸な少年。しかし周りの人を恨もうとせず、純粋に人を信じようとするとてもいい子なのです。この助けた猫が受けのペットだった事から、人買いからも見捨てられた攻めを受けが引き取り…という展開です。
そして受けはかなり傍若無人。感情を表すのが苦手で、怪我をしている子どもに向かって「僕に取り入ろうなんて無駄な事は考えず、怪我を治すことだけに専念するように」とか言っちゃうタイプなのですね。不器用なだけで、このセリフも「気を遣わなくていいから、しっかり休んで怪我を直してね」と言いたいんだな…と読み進めるうちに分かってきます。ここに天使のような1才程度の甥っ子が加わって、3人で子育てをしながら、それぞれがかけがえのない存在になっていくんですね。
なんといっても萌えたのが、攻めが青年になってからの恋愛編。攻めにとって受けは、キレイで頭がよく…と憧れの存在です。その受けのために、強くなろうと頑張るのが健気でキュンキュンくるのです。そしてガリガリで小さかった攻めが、逞しく男らしい大人の男になり、自分に対して熱い視線を向ける…という状況に付いていけない受け、というのも非常に萌えます!!
更に呼び方がですね、受けは「きみ」と呼び、攻めは「先生」呼びなのです。これで絡みがあると、なんだろう…このいけない感じ…という事で。ここに着乱れた着物、というアイテムが加わるのです!! 絡み自体が結構濃厚に書かれていて、ちょっと天然の入った受けが、「気持ちいいらしいから」と攻めの前立腺を刺激しようとしたり…と萌えるエピソードも。更に、そこで攻めが大慌てで受けに抱きたいんです!!と訴えるというのが、かなり笑えてキュンキュンします。
最後の短編では甘々な二人のハネムーンが読めます。温泉エッチでの受けのツンデレぶりが最高でした( ´艸`)
攻め受け共にかなり愛情と執着が強いタイプなので、この二人が出会って結ばれた事はとても良かった…とジーンとくるラストです。この作品では雨が深い意味を持ちますが、ラストでは雨が上がり虹が出て…と、とてもさわやか。希望に満ちていて、とても素敵なラストでした。
あらすじ:
大正時代。
人買いに売られた少年・清二(攻め・14歳〜)は、車に跳ねられ死にかけていたところを、売れっ子小説家の是清(受け)に拾われ、彼と暮らすことに。
是清の幼い甥・伊織と三人で暮らすうち、是清に家族以上の想いを抱くように…
清二は、引き取られた当初は14歳。
酷い環境で育ったことから、読み書きもロクに出来ず、7、8歳にしか見えないほど小柄で、自分には何の価値もないと思い込んでいる…
そんなひ弱な存在でした。
しかし、偶然通りかかった是清に引き取られたことから、彼の運命は大きく変わることに。
元華族で作家の是清は、一見酷薄そうな美人ですが、中身はなかなかの世話好き。
清二を医者に診せ、読み書きを教え、本当の家族のように扱ってくれます。
そんな是清、実は愛した女性が兄と結婚してしまったという過去があり、その過去を今でも引きずっています。
幼いなりに是清の痛みを理解し、彼の支えになりたいと願う清二が健気。
清二が自身の恋心を自覚し、是清が彼の想いを受け止めたところで、物語は3年後に飛びます。
3年後の清二は、いつの間にか是清の背を追い越し、精悍で聡明な男前に成長。
「せんせえ、せんせえ」と舌っ足らずだった口調も3年のうちに矯正されたようで、その変貌ぶりに驚きます。
そんな清二から見た是清の姿が、3年前と3年後とでは異なる点もポイント。
昔の清二にとって、是清は頼もしい大人の男性でしたが、
現在の成長した彼にとっては、是清は可愛くて危なっかしくて放っておけない存在に。
同じ人物でも、子ども目線と大人目線では全く異なる人物像に映る点が面白いです(是清、いくらなんでも可愛くなりすぎでは?という気もしますが)。
大人として清二や伊織を育てていた是清ですが、彼らの存在が心の支えにもなっていたことが分かる後半の展開は感動的。
彼らの成長を見守り、そして成長した清二に愛されることで、是清も変わっていったんだなと分かる穏やかなラストに幸せな気持ちになりました。
3年後の是清がちょっと可愛くなりすぎに思え、萌の面ではどうも自分の中で引っかかってしまったのですが、物語としては読み応え充分。
子育てモノ・年下攻めモノとしてだけでなく、大正という時代をそれぞれのやり方で生き抜こうとする人々を描いた人間ドラマとしても内容の詰まった一冊です。