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表題作教えてよ

利仁 大学生
永野 大学の講師

その他の収録作品

  • 言わせてよ
  • みつめてよ

あらすじ

歯学部五年後期の口腔外科学の再試に学年でただ一人落ちた利仁は焦っていた。
エグイ再々試に受からなければ、留年決定だ。
そんな時友人から「講師の永野はゲイで、男子学生は一晩一緒に過ごせば単位をもらえるらしい」と聞き、悲壮な覚悟で講師室に向かった利仁だったが…?綺麗なのにオニのように厳しくて、そして生き方の不器用な先生だからこそ教えてほしいことがある―。
サクラギ式『感情教育』恋愛篇。

作品情報

作品名
教えてよ
著者
桜木知沙子 
イラスト
金ひかる 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
発売日
ISBN
9784403521003
2.5

(4)

(0)

萌々

(0)

(2)

中立

(2)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
8
評価数
4
平均
2.5 / 5
神率
0%

レビュー投稿数3

これも素敵な生徒×先生もの!

歯学部五年の主人公というあたりで
なんとなく歯が痛くなってきそうな感じですがw
今迄何もかも適当にこなして女の子とも軽いノリで遊んで
本気の恋などしたこともないだらしない男・利仁は
再試に一人だけ落ちて再々試験を受けなければならなくなります。
講師の永野は雪女を想わせるような白い肌と切れ長の目に眼鏡で
冷たく素っ気なく利仁を馬鹿呼ばわりして、利仁はついかっとなります。
永野はゲイで、一晩一緒に過ごすと単位を貰えると言う噂を聞き
単位の為なら一晩くらい我慢してもいいと覚悟するのですが
そういうわけではなくw
ただ、永野がゲイだというのを偶然知ってしまうのでした。

妻と離婚したものの、再婚にこぎつけたという
温厚で人当たりの良い40過ぎの師を想い続けていた永野。
本人に告げる事も無く、渡瀬の幸せだけを願って
自らの気持ちを押し殺して平然としている様子に
利仁は胸を痛めるのです。

永野は厳しいけれど、目先の単位を取る事だけが大事なんじゃなくて
将来、患者さんに頼ってもらえる、信頼のおける歯科医になって欲しい為で
口は悪いし愛想もないけれど利仁の為を思ってくれている事も知って
永野への見方が一気に変わってしまうのです。
一人にしたくない、自分が側にいて寂しくなんかさせないとまで思う利仁は
もうこれが恋だと自覚するのでした。

あからさまに永野に告白は出来ないけれど
授業の関係であまり会えなくなった永野に会いたくて
勉強の事なら邪険にされないだろうと、少しずつ質問を用意して健気…。
永野に少しでも近づきたい、永野の純粋で綺麗な心に釣り合う自分になりたい。
それなのに、永野の部屋で知らない男と抱き合いキス寸前の場に出くわし
利仁は混乱してしまうのです。
“渡瀬を想っていたんじゃないのか?
体を慰めてもらうなら誰でも良かったのか?
だったら自分でもいいじゃないか…。”
衝動のまま押し倒してキスしても、応えてくれない永瀬。
冷ややかな表情に打ちのめされ、いかに愚かな行動だったか突きつけられます。

以前のように合コンへ行って一晩だけの相手を見つけても
永野の顔がちらついて結局何もしないまま。
落ち込んでいる時に、永野の部屋の隣に昔住んでいた田川という
女性の助教授に飲みの場で話を聞きます。

永野が昔付き合っていた男に、中身がイメージと違うと言われ
それが原因で別れた事があるというのです。
利仁が心を込めて想いを告げたはずの
「先生みたいにいろんな面できれいなひと、俺見た事ないです」が
永野にとってはツライ言葉だったなんて…。

素っ気なくしていたのも、
知らない誰かと抱き合っていたのも、
永野が自分から利仁の好意をわざと壊したかったからだと知り
遠慮なく永野へと向かう利仁でした。

恋人になったと思っても、卒業するまで寝ないとか
部屋に泊まりたくても「帰れ」と言われたり
永野が本当に自分を好きか不安になります。
将来の事も、利仁はただ永野の側にいたいだけなのに
函館の実家の歯医者を継ぐという選択肢もある事を冷たく言われ
ふてくされて帰郷しても、気持ちは晴れず…。
後から知る永野の本意は、
利仁を心から想ってこそのものでした。
自分のせいで将来を縛りたくない、ちゃんと自分の道を自分で決めて欲しい。
夏休みも、函館に帰りたくないという利仁を突き離したけれど…。

若者特有の、感情に走りやすく恋にのめり込んで
永野以外が見えなくなるような熱い気持ちと
永野に相手にされなくて悲しくてそれでも好きな気持ちが消えてくれない葛藤。
きゅきゅーん…。

永野がめっさツンデレで、言葉も少ないしわかりづらいけど
年上ゆえの冷静さと、垣間見せるほんの少しのデレに
夢中になるのはしょうがないなぁ……。
永野も、いくら好きでも自分まで突っ走るわけにいかないし。

残念ながらHシーンが無くて…(泣)
永野がどんなふうに感じて喘ぐか、
どんなふうに利仁が夢中になって抱くのか読みたかった!!!

あとがきでは、雑誌掲載時に「教えてよ」の挿絵を担当なさった
あとり硅子さんへの想いを綴られていて、しんみりしてしまいました。
私もあとりさんの柔らかくて優しい作品好きでした…。
でも、金ひかるさんの挿絵も素敵でした!
利仁の若者らしい気の強さも、永野の冷たそうなところも!

その後のめっちゃ甘い二人も読みたかった!!
(永野のことだからあんまり甘くならないのかな…?w)

3

いやはや、なかなか良かったです

性格が悪い年下攻めの豹変萌えしました。
性格が悪いとはいってもそこは桜木知沙子さん。木原音瀬さんあたりが書かれるような、どぎつさはありません。
遊び人で、単位のために体を差し出そうかと考えるような軽い男です。
そんな男が、反発していた担当のオニ講師に勉強を教えてもらい、しごかれるうちに、彼のことを好きで好きでたまらなくなってしまうのだ。

全身で「先生だいすき!」を表現しながらぶつかっていく健気で一途な主人公と、それに戸惑いながらも少しずつ彼を受け入れていく講師の先生。
受け攻めどちらも可愛げのある男たちでした。

0

青い感情

 どうして、この作者さんはこんなに、青い感情をうまく書けるんだろう……?
 というよりか、この作者さん、大学を卒業してちょっと上くらいの年齢の人の葛藤を書くのが、すっごく上手ですよね。

 今回は、利仁の葛藤。
 今まで、適当に要領よく赤点ギリギリで、試験を乗り越えてきた、利仁だったけれど、ついに口腔外科の試験に躓いてしまう。
「永野はゲイだ」と友人から聞かされて、悲壮な覚悟で講師室に向かった利仁だったが、待っていたのは、鬼の様なしごき、そして暴言……。
 面と向かって、永野に「馬鹿だ」と罵られた利仁は、持ち前の負けん気に火がついて、永野を見返してやろう、という気持ちで、一週間、永野の補習を受けることになる。

 最初は、いやいやだったけれど、永野の教え方の丁寧さと、口腔外科学に対する真摯な姿勢に、次第に考えを改めるようになる。
 そして、永野の秘められた恋心に触れて……

 というような感じでしょうか。

 なんというか、こういう気持ちの流れの書き方がすっごいぐっとくるような話だったように思います。
 ただ、他の作品よりは、ちょっと気持ちの流れがスムーズに行き過ぎてるかな? というような気もしないことも……。

 でも、好きです。
 穏やかな小説が好きな人にはオススメです!

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