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こんなにきゅんとなったのは久しぶりです!

血の繋がらない家族ものはよく読むのですが、こんなにきゅんきゅんして、泣いたり笑ったりして、素直に萌えることのは久しぶりかもしれません。それぐらい素敵なお話でした。

一番初めに言いたいのは、この表紙に写っているのはお兄様の忍さんと主人公の篤史くんです。お父様ではありませんのでご注意を!

このお話は、母を幼い頃に亡くし、画家の父に育てられていたのですが父が脳出血により死んでしまい(主人公は当時7歳)、それが「自分のせいだ」と思い深く深く傷ついてしまった篤史くん(受)と、その篤史くんの意地悪だけど優しくて、自分は大人だからと我慢して大人ぶっている義兄さまの忍さん(攻)のお話です。

義家族ものなので、どっかしら血が繋がっているのかと思うと思いますが、まったくもって、他人です。ですが他人じゃありません。それが今回の見所だと思います。

物語は両親を亡くし、親戚も遠い親戚しかおらず困っていた篤史くんは実父の後輩の久代さんに引き取られたところから始まります。その頃から意地悪だった忍さんに篤史くんは「自分のことが嫌いなんだ」という印象を受けてしまいます。


このおはなしのいいところは、そういった「細かい過去が人格を作り上げているところ」だとおもいます。

簡単にいえば設定が細かい、ということなのですが、そうではなく、人格形成の形がしっかりとしていて、キャラクターそれぞれの考え方や行動パターンなどが「こういうことがあったから、こういう動きをして言葉を発するんだ」と、とても分かりやすいというか理にかなった動きをするので、まるで生きている人間を見ているかの様な印象を受けました。

途中で当て馬の様な福山という男の人も出てきますが、どのキャラもとても素敵に描かれていて、特にいいなと思った脇役さんは、篤史くんのお友達でした。みんな個々に感情を持っていて、読み進めていくうちにどんどん気持ちがもっていかれました。

挿絵の穂波さんの絵も素敵で、イメージにぴったりで、買ってよかったなあと思いました。

トラウマや、すれ違いなどが好きな方には、是非オススメしたい作品です!


それにしても忍って、忍さんにぴったりの名前だと思います。名前のまますぎて、思わず笑ってしまいました。素敵な作品をありがとうございました!

かわいくって仕方がない!

私は俺様ものが苦手なのですが、これを読んだら・・・もう、世界が180度変わってしまいました。そんな素敵な作品です!

このお話は、家族に虐げられ周りにも虐げられ、そのせいでだいぶ自分に自信がなくなって引っ込み思案になってしまった小川(受)と、一見傲慢で俺様だけれど真面目で正直者の志木さん(攻)のお話です。

家電量販店に務める小川はとてもPCについて詳しいのですが、引っ込み思案でコミニケーション能力が乏しいため、いつもクレームばかり言われていました。そんなある日、その家電量販店に本部から社長息子の末っ子の志木さんがやっています。
実は志木さんは自分で新しいPCを作るプロジェクトをやっていて、その視察に来ていたのです。そしてそのアドバイザーに小川が大抜擢されたのですが・・・。
ある日男とイチャイチャしているのを志木に見られてしまい、(志木さんが暴力的にも静的にも虐げてくる兄ににているせいもあって)復讐しようと志木さんのあれを口に入れちゃうわけですね。
しかし、志木さんには「幼い頃に女の人からカラダをいじくり回された」というトラウマを持っていて、泣き出しちゃうのです。それを見た小川は「この人も自分と同じなんだ」と共感し、また、かわいいと思うようになるのです。
そこから二人の間に信頼関係が生まれて・・・・


この小川、なぜかわかりませんが、男の人の嗜虐的な欲求を生み出してしまう性質で、とにかく男の人にいいようにされてばかりなんです。そのせいで、恋愛というものにあまり実感がなく、好きという感情にとても疎くて・・・。
志木さんも恋愛にはとても疎く、性的なこともトラウマのことがあったため疎く、二人がくっついたところは初々しくてかわいくってしょうがありませんでした。

後半では兄と小川が対峙する場面があったのですが、これもまた、とても素敵な話でした。どんどん信頼関係が深まって、愛も深まってゆく二人の姿は、本当にもう、かわいいです。

あの可愛さをどう表現していいかわかりませんが、トラウマ好きの方は絶対に買って損はありません。マイナス思考と書いてありますが、さほどマイナス思考でもありませんし、トラウマ要素のほうが勝っていると思うので、そこを気にしている方がいましたら、大丈夫だと思います。

ページ数は213Pとやや少なめですが、二宮さんのイラストも可愛いですし、何より本当に可愛らしいキャラクターたちなので、ぜひ、読んでみてください!

甘酸っぱくてほろ苦い

渡海さんの初文庫本サイズということなので楽しみにして読んだのですが、渡海さんの青春しつつもどこか大人びている登場人物や世界観と三池さんの素敵なイラストがとってもマッチしていて、買ってよかった!と思える一冊になりました。

このお話は、とある中途半端な進学校の男子校が舞台となっています。
顔が整ってて、優しくて、気に入った子にすぐナンパする1年先輩の来生(受)から、硬派でなかなか感情を表にしない武士のような小林(攻)がちょっかいを受けていたのですが、はじめはめんどくさいと思っていた小林でしたが、いつしかそれが恋に変わっていくんです。
で、それを来生に伝えたら、「実は来生はずっと前から小林が真面目に好きだった」と、恥ずかしくなって逃げちゃうのです。

そんなひっついたりひっつかなかったりする、いじらしい高校生カップルのお話になっています。

とはいえ、この流れで行くととてもコミカルな印象を受けますが、(全体的にはコミカルでかわいくて笑ってしまうような一面ばかりです)この来生と小林には、とてもハードな家庭事情があって、正直、読んでいる最中はどうなることかとハラハラしました。

小林は、幼い頃に両親共に交通事故で亡くし、以来厳しい厳格な祖父母の元で育ちました。体罰、と言ったら語弊が生まれそうですが、厳しくしつけられ、それは体に傷が残るほど。
一方来生は、読んでいる最中でさえこんがらがってしまうほどの家庭事情で、平たく言えば、自分の母親が浮気してできた愛人の子供なので・・・。その浮気した男の人がとてもフラフラしている人で、とにかく女の人にだらしがなく、子供がいっぱいいるんですね。(そのせいでまたひと悶着あるのですが・・・w)

そんな家庭事情があったからか、二人の性格は一癖も二癖もあります。
来生はとてつもなくネガティブですし。小林には高校一年生とは思えないほど貫禄があります。

しかしだからこそ、この二人が幸せになったところを見ると、ああ、読んでよかったなあと思える一冊になったんだとおもいます。

ちなみに、ページ数は248ページと、薄そうで薄くない量となっています。是非、甘酸っぱくてほろ苦い、高校生の恋を読みたい方におすすめしたいです!

差し障りのない

ずっと前から読んでみたかったのを、先日発見して、すぐに読み始めました。
縦長の、少し厚めの本となっていますが、ページ数は250ぐらいで、文字も大きかったので見た目ほど長くなく、さくさくと読み進めることができました。

このお話は、幼いころから優しくて頼りになる信一くん(攻)にずっと片思いをしている真面目で奥手な俊くん(受)のお話です。

女の子が大好きで扱い慣れている信一くんに恋をしている俊くんは、絶対にこの気持ちを言うつもりも、実らせるつもりもなかったのですが、そんな時、ある出来事が起きたのです。
それが、この本の題名になっている「幻の恋人」につながっているのだと思うのですが、とある事情で信一に「女の子を連れてきてほしい」と頼まれた俊くんは、自ら女装し、自分といとこの「のぞみ」という女の子のふりをして会いに行きました。しかし、これだけで終わるはずが、あろうことか女装した俊くんに信一くんが恋をしてしまうのです。

正直、どこにでもあるような話の流れになっていますし、実際じゃありえないようなことばかりなので(フィクションなので仕方がないのですが;;)、現実的なものが好きな方にはオススメできないかもしれません。

しかし、流れる様な文章と、わかり易い描写、テンポの良さに、自分の気持ちが吸い込まれていくようで、どうなるか簡単に予想できてもラストシーンでは俊くんの気持ちが胸に突き刺さって、読みながら「よかったねえ・・・!」とつぶやいてしまうほどでした。

お話としてはよくある話の様なテイストですが、胸を突き刺す痛みや「きゅん」とした気持ちを味わいたいという方に、是非オススメしたいです!

現実的なお話

少しパラパラと見てから、集中して読もうと思って深夜1時くらいに本を読み始めたのですが、いつの間にか深夜ということも忘れて、悶えながら最後まで読んでしまいました。

このおはなしは、10年間物分りのいい恋人をやってきた超絶寂しがり屋の三木くん(受)と、朴念仁と罵られ奥さんに逃げられてしまった真面目で柔和な有元さん(攻)のお話です。

簡単に内容を説明しますと、浮気症で一箇所にいられない浮ついた恋人を持った三木くんが、寂しさのあまり真面目で柔和な有元さん(43)を利用して寂しさを埋めようとしていたけれど、いつの間にか本当に好きになってしまった。というような内容です。

これだけ読むと、三木くんが誰でも彼でも襲ってしまう、見境のない人のように思われますが、実際本編中で「寂しい寂しい」と言っていても、不思議と嫌悪感は湧きませんでした。きっと「寂しい寂しい」という言葉の中に、自己嫌悪や後悔の気持ちがはいっていたからだと思います。


『ずるくて、切ない、大人の恋。』というのが、この本の表題のようですが、はじめはわからず「どのへんだろう?」と思ってしまいました。しかし、読み進めていくうちに「ああ、これはずるいな」とわかったのと同時に「わからなくもないな」と共感しました。
登場するキャラクターたちの考えていることや行動が、とてもリアリティーがあって、まるで生きているかのようでした。

正直、さみしいからといってズルズルと10年も引き伸ばした三木くんには、もう少しなんとかならなかったのかな、とツッコミたくなりますが、有元さんと出会って、少しづつ強くなっていく三木くんを見て、とても応援したい気持ちになりました。

200ページ前後とページ数は少なめですが、とても暖かい気持ちになれる作品です!
有元さんのノンケとしての葛藤も丁寧に描かれていたので、ノンケ×ゲイを読みたい人は是非、読んでみてください!

いろんな愛のカタチ

店頭で並んでいるこの本を見て、レビューを読み返した時に、「選り好みする作品」とあって、購入するかどうか悩んだのですが、ノンケ×ゲイが読みたかったので思わず購入しました。とても切なくて、痛い話だと聞いていたので、あんまり気が乗っていなかったのですが、序章を経て、一章に入る頃には、もう吸い込まれるようにしてページをめくっていました。
それぐらい、こういうお話が好きな人にとっては、引力のある作品だったと思います。

このお話は、ずっと幼馴染の俊一に片思いするゲイの望くんが、「さみしい」「愛されたい」「かなしい」「僕を見て」というような気持ちをなかなか他人に向けられず、一人で苦しみもがきながら、成長していくお話です。

作品上は、俊一×望くんになっていますが、正直、この二人のイチャイチャや、和解のようなものは一切ありませんし、悶々とした終わり方ですので、買って失敗したなあと思う方もいるかもしれません。
ですが、精神的成長や、束縛、愛というものに対しての脆さや強さをとても綺麗に、そして美しく表現されているので、読み終わったあとのしばらくの間「愛ってなんだろう」と考えさせられてしまう、そんな小説をお探しの方は買って損は無いと思います。

愛されているかどうか、自分は愛しているかどうか、
これは愛なのか? これは愛じゃないのか?
作中の、望くんが、たくさんの人とカラダを重ねて、寂しさを埋めて、それでもやっぱり満たされなくて、悲しくて、そんな自分が気持ち悪くて、自己嫌悪して。そんな望くんを読み始めたときは周りの人から「強くて、いい子」と言われてることに対して、違和感がありました。
でも、「生きる」とか「愛」とか難しいようで簡単で、見ようと思わなければ流れずぎていってしまうものを、しっかりと見つめて受け止めようと考えを巡らせる望くんを見て、ああ、これが「強い」ってことなのか、と思いました。

どんなときも、同情して、許してしまうのは、決して強さではないと思います。けれど、何度も、何度も、裏切られても「愛したい」と頑張る姿は、本当に健気で、それに、登場するキャラクターたちが人間臭くて、読んでいくうちに感情がリンクしてしまいそうでした。

確かに「選り好みする作品」ですが、BLとしても、本としても、素敵な作品ですので、「愛」について考えてみたくなった方には是非オススメしたいな、と思いました。

ふとした時に

「あ、死にたいな」と思う感覚や、突然空虚な気持ちに襲われて足がすくんでしまうこと、私はあると思います。それがどういった理由とか、こうだからって確定したわけがあるわけではないのですが、飲み込まれるように、ふとした時。
このお話は、そう言った感覚を持ち合わせた、千野(受)と、明るくて頼りがいがあったけれど、とある事情で荒んでしまった棚沢(攻)のお話です。

この話の特徴は、とてもキャラクター設定がこっていて、一人一人が深い事情を持っていて、孤独や悲しみ、痛みや絶望を持っていて、一言では表せないほど複雑であることが特徴的でした。


簡単に内容をまとめると、

千野は大学時代に、明るく優しい棚沢に恋をし、一世一代の思いで想いを告げるのですが、棚沢は同性間で恋愛をしたことがなく、「友達でいよう」と断ってしまいます。
その答えに応じるべく千野は棚沢のことを友達と想うために学校の先輩と付き合い始めるのですが、結局忘れられなくて、別れたいといいます。けれどそれに逆上した先輩は千野をナイフでさしてしまいます。
そのことが原因で千野は家族から縁を切られ、棚沢の前からも姿を消してしまいます。
それから数年経って、ある日千野の家になぜかすさんだ棚沢がやってきます。というのも「結婚した奥さんが実は結婚する前から自分の上司と浮気をしていた」という出来事があったせいでした。
そんな荒んでやさぐれた棚沢にいいように扱われる千野でしたが、やっぱり棚沢のことがまだ好きで、それを受け入れてしまします。

といったお話なのですが、これだけ読むととても重く苦しいお話のように感じますが、決してそんなことはなく、苦しいけれど苦しいなりに素敵な世界観で、人間くささがキャラクターそれぞれにあって、めくる手が止められませんでした。

正直ヤサグレ棚沢は見てて痛々しいですし、そんな八つ当たりしないで!となるほど千野に当り散らすのですが、お話を読み進むにつれてその理由が分かり、胸がときめいてしまいました。このことについては、本編をご覧ください!本当に素敵なワンシーンでした。

読後思ったのは、悲しいことや、辛いこと、苦しいことがあっても、
幸せって絶対やってくるというか、報われる瞬間ってあるんだなっと思いました。

最後に、前にレビューされた方も書かれているのですが、本当に一つ一つの描写や言葉選びや会話が丁寧で、ただ「好き」という感情がこんなにも綺麗で優しいものだと改めて思い直すような作品でした。

お墓というチョイスも素敵でした。

ノンケ×ゲイの、片思いのお話が好きな方には、是非オススメしたい作品です!
素敵な作品ありがとうございました。

可愛らしい世界観

兄弟モノ、といっても血縁関係ではないのですが、そう言った小説を読むのは初めてだったのでドキドキでしたが、すんなりと世界観に入ることができました。
というのも、このお話の世界観がとても可愛らしく描かれているからだと思います。

このお話は、幼い頃からずっと真ん中の兄、和臣に恋している、しっかり者の真面目な紬里ちゃん(受)と、自由奔放で横柄なある意味自分勝手だけれど家族に対してはどこか優しい和臣(攻)のお話です。

正直、強気受けというか、元気っ子受けとか、気弱受けのような類は今まで苦手だったのですが、この本の中に登場する紬里ちゃんは決してそんなことはなく、イライラすることなく可愛いと思うことができました。だぶん、紬里ちゃんの良き相談相手である茜ちゃん(女)の存在があったからだと思います。
うじうじと悩んでばっかりの紬里ちゃんに、本の中の茜ちゃんが言いたいことを言ってくれたり、喝を入れてくれたりするので、ほんわかした気持ちで読み終えることができました。

特にお兄さんの和臣に対して思ったのは、ちょっとあんまりじゃないかな、と思ってしまいました。もう少し協力的でもいいんじゃないかと…。ですがこれは人間性としての感想なので、世界観や小説自体は面白く可愛らしいものでした!何より一生懸命考えたりする高校生の2人(茜ちゃんと紬里ちゃんが可愛かったです)

最後に、このお話は、絆やつながりの大切さというか、ありきたりな言葉ですが、血は繋がっていなくても家族だということ、助け合える友達の大切さ、そんなつながりが描かれていてとても素敵だと思いました。

ただ、購入する際は、2冊(これと続き)を同時に購入するより、1冊づつしたほうがいいかもしれません。選り好みする作品だったので…。
ページ数が200前後ということもあり、展開は少し早めですが、兄弟モノ初体験にどうぞ!

今までの料理が覆されるお話

まずはじめに、BLという概念を抜いて思った感想が一つだけ。
このお話を読んだあと、今まで作ってきた自分の料理(主にカレー)がどれだけずぼらだったかがわかって、一週間ほど頭の中を悩ませました。もうそれは本当に「オーガニック」やら「ナチュナル」やらにとらわれて感想を書き込めないほどでした(笑
それぐらい、バックグラウンドがしっかりと調べ上げられていて、まさに「専門家」が会話しているような…そんなお話でした。今までレトルトやらに頼ってきた身からすると、なんだかいたたまれない気持ちになったのも本当です^^; これからは健康に気をつけたいと思います。

本編のBLとしての感想は、前にレビューされた方々のように、ほのぼのとした和やかなお話という印象を受けました。

もう紹介されてると思いますが、このお話は、少しだけ頭が固いけれど人一倍傷つきやすく、酔っ払うと人を襲ってしまう(性的な意味で)透さん(受)と楽天家で包み込むような優しさとあどけなさを持ったカレー屋の芹沢くん(攻)のお話です。

展開としては大波乱があるわけでも、かといって平坦なわけでもなく、まるで氷が溶けていくような暖かなスピードで展開を広げていました。
その中でも個人的な見所としては、恋愛に恐怖を抱いて臆病になっている透さんがどんどん芹沢くんの手によって暖かな気持ちになったり、穏やかになっていく姿がとても可愛らしく描写されていたところがとても素敵だったと思います。

イラストの草間さかえさんの絵も素敵で、相変わらず頑ななメガネサラリーマンを素敵に描くなあときゅんきゅんしてしまいました。
本編の中で上質のモノを(無意識に)選んでいる透さんがちゃんと具現化されていて、小物でさえも手が混んでいて思わずニヤニヤしてしまいました。

最後に、このお話を読んだあとに、とても芹沢くんの作ったカレーが食べたくなってしまうので、カレーを用意しておくことをおすすめします(笑


題名に沿って

はじめは「meet,again.」という題名にオシャレだなあという思いしかなかったのですが、紙をめくって、この本の中の世界に引き込まれるにつれて、この題名の意味がわかってくるようで、胸が痛くなると同時にとてもぞっとしました。

このお話は、少しだけ人とちがった、いわゆる「超能力」をもった母親を交通事故で亡くしてしまった嵐くん(受)と、失踪してしまった一卵性双生児の兄を持つ機械のような栫(攻)の話です。

本の中では「meet,again.」「hello,again.」という二つに分かれていますが、前半部分では正直ぞっとする部分が多かったです。(いい意味です)
そう言った部分からいえば、ある意味ホラーのように取れると思います。「実験」と称した栫の行動に、ヤンデレというよりも機械的で、なんとも言えない寂しい気持ちと、恐怖のような感情が浮かびました。
後半部分では、そんな機械的かつ非人道的な栫に恋をして、ちょっとづつ変わっていく嵐の様子が描かれていました。それはいい意味ともとれますし、悪い意味にも取れました。傷つくとわかってて、栫に没頭していく嵐くんの姿は、読んでいるだけでも苦しくて、息が詰まりそうでした。

決して幸せな話ではありません。
目に見える幸せのカタチは一つもありません。
でも、とても暖かくて、優しくて、人を好きになるということの儚さ、
感情や気持ちという心の脆さがとても丁寧に描かれていて、ページをめくる手が止まられませんでした。

とても素敵な作品です。
萌え、といわれたら、うーん、と答えてしましそうですが、イラストや題名に惹かれたのなら、買って損は絶対にないです。
作中の世界観とイラストの竹美家さんの雰囲気がとてもあっていて、鳥肌が立ちそうでしたし、題名については本当にそのままで、「また逢いましょう」というお話だったからです。それから、作中で何度か「超能力」という言葉が出てきますが、これは現実離れした「超能力」ではなく、ごくありきたりな、日常にありそうな「超能力」のようなものなので、違和感やSFチックな描写はあまりなかったです。ちょっとだけ悲しい手品のような感覚でした。

最後に、「雪よ林檎の香のごとく」のスピンオフということでしたが、知らなくて読んでも問題無いと思います。私は知らずに読んでしまったので、今度はそちらを読んでみたいと思います。

ぞっとするほど美しく儚いお話をありがとうございました。