家族全員がインフルエンザで倒れ、心身ともに疲れきっていたあの頃。横になったままでも楽しめて、心をそっと癒してくれる物語を求めて、何気なく電子書籍を購入したのがこの作品でした。まさか自分の人生を揺さぶるほどの出会いになるとは、その時は思ってもいませんでした。
読者から見れば、2人が両想いであることは比較的早い段階で明らかです。しかし、その想いがきちんと通じ合うまでには、もどかしい時間が流れます。清居はあれほどまでに分かりやすく、全身で好意を示しているのに、ネガティブ俺様帝国の住人・平良は自分の価値を極端に低く見積もりすぎていて、その真意にどうしても辿り着けない。自己否定と憧れが複雑に絡み合った平良の視点は時に苦しく、それでもリアルで、目が離せませんでした。
だからこそ、2人の想いが確かに結ばれたあの日。私は布団の中で静かに、しかし確かに涙を流していました。安堵と喜びと、「よかったね」という気持ちが溢れて止まらなかったのです。
気づけばそのまま一気に最新刊まで読破し、現在は迷いなく2周目に突入しています。家族のインフルエンザはすっかり治り、日常は戻りましたが、私は完全にひらきよ沼の底です。現実への帰還は未定です。勢いのままドラマCDもすべて購入してしまいました。人生初のドラマCDです。それほどまでに、この物語は私の心を掴んで離しません。
2人の不器用で、歪で、それでも真っ直ぐな関係性。傷つきながらも互いを選び続ける姿。その尊さは、きっと私の人生最期の瞬間、走馬灯の中に紛れ込んでいると思います。それほどまでに、深く胸を打たれました。
読み始めたら最後、その手を止めることはできません。そして読み終えた後も、簡単には現実に戻してくれません。
それでも構わないと思わせてくれる物語です。
上下巻と3巻まで読了しました。
1〜2巻は、ゆっくりとした展開です。二人の関係はなかなか前に進まず、感情は何度もすれ違い、停滞します。「もう少し進展がほしい」と感じる場面も少なくありませんでした。いわゆる“キュンキュン系”の即効性のある甘さを期待すると、物足りなさを覚える方もいるかもしれません。
ただ、読み進めるうちに、この作品はときめきを提供する物語というよりも「感情の積み重ね」を描く物語なのだと感じました。登場人物たちはとても不器用で、自分の気持ちをうまく扱えません。その遠回りや揺らぎを丁寧に描いているからこそ、下巻後半でようやく訪れる変化には確かな重みがあります。
正直甘さは控えめですが、その分「この人がこの人を選んだ」という確かな決意が伝わってきます。読み終えたあとには、じんわりとした余韻が残りました。その前段階を経ての3巻はニヤニヤと楽しめる場面が多かったです。
また、時代背景には少し懐かしさも感じました。それも含めてこの作品の空気を作っているのだと思います。
即効性のあるときめきを求める方には向かないかもしれませんが、不器用な大人の感情の揺れや、自己肯定の難しさをじっくり味わいたい方には心に残る一作だと感じました。