ラスとともに見事に王を救ったガエルたち。
今度はエルフの森へ帰るラスを護って、ともに森へ。
「帰り道」っていう副題がいいですね。
王とラスの関係がわかり、別れのときのラスの言葉に胸が締めつけられます。
森の中のエルフのお家は可愛いな~、と思っていたところ、王都で一緒に戦った騎士のヴェルナーが森へやってくる。
前の巻で丁々発止とやりあっていたイルフェオリアとくっつくのかなと思ったら、何ということでしょう!!! 思いもかけない展開でした。
ヴェルナーの名前からして、あとから思いつきのスピンオフでなく、最初からこういう切ない物語を紡ぐおつもりだったのですね。
せいか先生、素晴らしい。
ちるちるの作家インタビューによると、色んな書店別の特典があったようで、みんな読みたーい!
本の発売から数年経っていますので、書店ペーパーをまとめた小冊子の発行をぜひお願いします!
グランツライゼ、グランド・ツアーというと、17世紀~19世紀初頭にイギリスの富裕な貴族の子弟が学業の締めくくりにイタリアやフランスに行った大規模な外国旅行。
せいか先生のこのお話では、聖騎士になりそこねたガエルが、瀕死の王を救うために王の元へ向かうエルフのエラシエスを護って王都への旅をします。
いやぁ、エルシエラスはすごい美貌なのにメガネをかけると「しょん」と地味になるとか、「私の素顔を見て元気をだしますか?」とか色々ツボりました。
「歌を交わしてから、する」って嬥歌 ですかw
読むと、楽しいだけでなくちょっと胸が切な苦しくなるのがわかっているのに、また読み返してしまう作品です。
二人の関係も安定し、環にカミングアウトも。それぞれの仕事もいい方向に向かいつつあるのは喜ばしくもあり、お話の終わりが近づいていそうで寂しくもあり。
このスモブルのほかに、個人的に連載を楽しみにしている中年カップルのマンガに未散ソノオ先生の「温泉で秘密のお泊り」があります。
こちらの二人は別々の会社にサラリーマンとしてきっちり勤めつつ、二人の関係は家族にも会社にも誰にも知らせず、ときどき週末に泊りがけで温泉に行くのが無情の楽しみというお話。おっさんの悲哀みたいなものも混じり、いぶし銀のイメージ。
「秘密のお泊り」と比べると、スモブルの二人はふたまわりくらい若いし会社やめてプランBで自由度高いし、家やマンションもおしゃれだけど、やはり年をとっていくことや親のことなど色々あるなぁ、と。
11巻前半の切ないエピソードとバランスを取るかのように、後半は光陽とジェイドのもとに赤ちゃん二人が来てからの幸せな日々が描かれています。
レビからお土産に蟹をもらったジェイドと光陽。今食べたら1匹だけど養殖すれば増えてたくさん食べられる! ということで蟹をモールスカに託すことにしました。
増えるのを待っている間も光陽はマラサダドーナツ全種類制覇のあとの甘く激しくジェイドを翻弄でビッチモード全開。
そして晴れて六万匹に増えて、みんなを呼んでの蟹パーティー。揚げたてソフトシェルクラブに焼き蟹、お刺身の蟹づくしメニューを堪能した光陽はその上、赤ちゃんを連れての狩りに行きたい! と。
食欲、性欲、仕事に子育てと、すべてにフルスロットルで、人(獣人)として生まれたからには、かうぞあらまほしという感じですね。
がたいのいいジェイドが、ちみっこい赤ちゃんたちをおぶっている絵姿も、いとめでたし。
続きのあるコミックスの場合、どの作家さんも並べたときを想定して表紙を考えるわけで。
上巻でカップルの片方を、下巻でもう片方を表紙にするのはよく見かけますが、この作品は2巻とも晴人が表紙。
電子で読んだのですが、「これは......」と思って上下巻ともページを最後までスライドしてみると、どちらも裏表紙に蒼生。しかも下巻の蒼生は♥
バックにぼやけるペンダントライトがおしゃれ。
これは、紙で買ってカバーをはずして広げて2巻並べて見るべきでした。
cover design は 伊南美はち さんとなっていて、X(ツイッター)で、おまゆ先生から伊南美さんへデザインのお礼のポストをみつけました。
お二人で相談してできた表紙なのでしょう。
蒼生と晴人の関係の深化を象徴する素敵なデザインですね。
お話の方、藤河るり先生の『ベッドイン・ルール』と同じく、ラストシーンはカーテンのない寝室でしたw