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女性カラフルさん

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WEB発痛い系エゴイズム愛の頂点

 タイトルの重みがスゴかった…!
よくありがちなタイトルだし、甘く見てました。
運命に抗う事は壮絶だった…。
究極の痛い病み系BLです。

オメガバースが食傷気味だったり、恋愛ものにマンネリを感じている人には楔を
ぶち込んでくれるような作品だと思います。
描かれる愛はエゴイズム色が濃いので、合わない人も当然いると思いますが、
そういう系統がツボな人はハマると思います。


使い古された「運命」だの「番」だのという言葉のこの作品でのキラキラ感よ。ただし読者が未だ知らない事が多い前半部分限定ですが。
男らしさが悲劇を招く残酷なゲームでした。
中盤までであらかたの世界観を学習した読者にとって当然気になるのは「レオはどうなの???」です。
最後までハラハラドキドキでサスペンス仕様でした。
設定勝ちですね。
最後のページで明かされた件も思いっきりひきました。
主人公の千尋は確信犯でクモ系男子だったので、想定内ではありますが。
他のレビューで指摘されている通り「人としてどうなの??」的なシーンは多いので、あくまでお話として捉えられる人向けです。

この作品を読んで感じたのは、過度に運命に背く事はかえって不自由になるんだなという事でした。物事をあまりこだわりすぎるとしんどいし、行き当たりばったりでもいいのかなーと思ったりしました。最近映画館で見かけたガンダムSEED FREEDOMのポスターのキャッチフレーズとこの作品のテーマが一緒だったので、ふいてしまった…。同じテーマでも産み出す人が違うと、こんなに変わるんだ。

商業では絶対出せない賛否両論を起こす作品ですが、個人的には上手くまとまっていて、良くできた作品だと思いました。
いよいよ作家の個性が強いWEB小説の方が自分には合うのかなーと確信しました。
万人向けのTVドラマより、表現規制がされていない演劇の方が好きだったりするので…。

気をてらう設定もありましたが、物語に引き込まれる力があったので、置いてけぼりにならず最後まで夢中で読み進めました。
全体的に読みやすい文章でしたが、英語の名前の人物が多かったので、サブの人物達の名前が一致しない苦労はありました。

最後に一言。また一人作家さんの推しが増えて幸せです。出会うきっかけを作ってくれたちるちるレビューに感謝です。

さすが初期の頃の傑作!

人気シリーズの実の兄弟愛ものの「二重螺旋」の土台になった吉原先生の初期の頃の代表作品で、こちらもドロドロしたメロドラマ展開で予想外の方向にストーリーが進むので、続きが気になって仕方がなかったです。
1998年に発表された作品の上・下巻の復刻版ですが、現代版にアレンジされているので、今読んでも古くないし、違和感がなく溶け込めました。「二重螺旋」や「間の楔」、「幻惑の鼓動」等の吉原ワールドが好きな人は文句無く楽しめる内容だと思います。

 ただバブル期の匂いはプンプンします(笑)これはさすがに取り除けないですね。なんてったってレイジ達が闊歩する世界ですから…。
ゴージャスで煌びやかない世界を堪能できるのが楽しいです。
Z世代の人達は「体験」にお金を使うそうですが、こういう小説を通して日常味わえない擬似体験をするのも乙なものですね!

レイジは清々しいほどの悪役っぷりでした。あとがきにその後新作の打ち合わせで編集者に「渇愛」レベルにはしないで…とダメ出しをくらうような武勇伝(?)が書かれていました。
色々なストーリーに触れすぎ、マヒしているのか普通に抵抗なく読めました、、、。もっとハードな作品もあるよね??

レイジの人でなし度も筋が通っていて、ブレないなぁ。法律や倫理観も破る人の前では何の抑止力にもならないんだ…と実感します。和也の出生の秘密も今ならDNA鑑定でケリがつきますね。科学が発展していない時代の方が、白黒ハッキリしない事が多くて、物語が生まれやすいという皮肉。
レイジの「血」に対する執着が怖いくらいでした。
和也とレイジのだんだん変容していく姿も実物でした。
欲を言えば、この二人の関係は長編シリーズでじっくり読みたかったな。

下巻の最後もレイジが驚くべき行動に出たり、凡人には理解出来ない奇行の数々に和也ならず読者も振り回されます。一番気になる謎は読者の想像におまかせします…で終わりました。
どっちともとれるので、色々考えてしまいます。
世の中分からないままの方がいい事もあるのかな。

ドラマCDの下になったストーリーの書き下ろし版の続編の発売が予定されているようで今から楽しみです。
オリジナルの「渇愛」の表紙と復刻版の表紙のレイジ達があまりに違いすぎて笑ってしまいました。時代を感じますね…。

表紙は全てを物語っている

現時点でなんと神率94.7%…という尋常でない数値を叩き出した2巻。
それでも読む人を選ぶ作品ではありますね。活字のオンパレードですが、格式高い文章で、世界観にも引き込まれるので、夢中になって読み進めました。
BLという事は忘れてしまいますが、作品に魅力があるので気になりませんでした。むしろこういうBL以外の部分に力を込められた小説を読みたいです。WEB小説だからなし得たというのが…。出版社の存在意義について考えてしまいます。

二章の過去編が面白かったです。豪華絢爛で夢のよう、、、。
アニメの二期への期待が高まります。
天界では神として対等の立場であった風信や慕情は、遥か昔人界では謝憐と主従の関係にあったという設定が面白かったです。主人も従者も飛翔する事があるというオチも乙です。

花城とのあの出会いがまた…あのアニメの1話に繋がる所がもう…。クソデカ感情にやられた…。時空を超えた壮大な愛に揺さぶられて。
まさしく普通の恋愛に刺さらない人向けの作品です。
全ての者に畏れられる花城がなぜ無垢に謝憐を慕うのか合点がいきました。表紙が物語っていました。色彩が淡く優しい印象的な表紙だなーと思っていたけれど、実は深い意味が込められていたんだな。ジーンと胸が熱くなります。

後半はこれでもか…という程の地獄絵図でした。ファンタジーというより、現実問題が一気に押し寄せてきます。
国を治める事は綺麗事では済まされないなーと実感しました。
今まで順風満帆な人生を歩んできた謝憐の初めての挫折。「魔道祖師」に負けず、こちらもしんどかった、です。
まさしくノアの方舟状態。創世記から続く命題ですね。
さすがの神様もお手上げという…

健気な少年兵の存在に萌えつつ癒されました。
花城が○にまで堕ちたのは、謝憐のためかも…と甘い幻想を持ってしまいます。
1巻で疑問に思っていた事が色々解消され、まさかの展開で3巻へ期待が高まります。来年から放映されるアニメの二期も楽しみです。

中国の小説は複雑な設定や骨太な文章でとっつきにくい印象もありますが、こういうアニメやドラマのメディア展開も含めて作品の理解を深める過程が楽しいです!映像化が難しい題材ですが、製作陣の想像力の賜物でアニメの出来が素晴らしかったです。つくづく表現規制の流れが残念です。
中国の贅を尽くしたブロマンスドラマをもっと見たかった…。
ネットサーフィンしながら実現しなかった作品の名残りを惜しんでいます。
これからますますブームになるという花が咲き誇る直前に摘み取られてしまって残念で仕方がないです。
動画配信が主流の今、世界的な需要があるだろうに勿体ないな…。

パブリック・スクールの内情が良くわかる怖〜い本

 ちるちるの海外ブロマンス小説のおススメで挙がる事が多い作品だったので、気になって手にとりました。ボリュームたっぷりで、英国のパブリック・スクールを舞台にした群像劇を楽しめました。人間の罪や苦悩など色々考えさせられる作品でした。

 西洋の上流階級層は、早くから親元を離れて寄宿舎生活を過ごすことにより、一人前の紳士になれるといった根強いパブリック・スクール信仰があります。
このような完全男社会では、自分の弱い部分を他の生徒に絶対見せられません。カーストの下層にならないようにマウントを取り合います。まるで男らしさの牢獄です。

全寮制なので、イジメにあったら、学校生活のみならずプライベートの寝る時間まで至るので、まさしく地獄絵図です。
子供から少年、少年から青年への多感な移行時期である思春期をこういう特殊な環境で過ごす事はどうなんだろう??まるで軍隊のような生活です。
組織を前提とした集団生活では、個々の個性が消されるし。こういった環境で育った人たちが社会をリードするエリート層になるという現実。
社交性は培われるだろうけれど、プライベートがゼロなのはゾッとします。
良家の子女はこれに耐えられないとダメなのか。

家族と会えるのは長期休暇ぐらい。こういう環境では自然と友との結びつきが深くなり、友愛が培われます。これが主人公のジョナサンにとって悲劇に繋がるのですが…。
親や先生の評判が悪い生徒ほど学生にとって危険な魅力があるという。
ジョナサンとリチャードの共依存は萌よりも怖さが勝りました。
「出会ってはいけない二人」というのがこの作品のキャッチフレーズのようですね。
私は「朱に交われば赤くなる」という諺(ことわざ)を思い出しました。

また少年だけの特殊な環境の中だけに同性愛行為への抑圧は常軌を逸していました。特に同性愛への世間の目が厳しい時代だっただけに余計に、、。
この小説は健全な青少年の育成に理想的とされているパブリック・スクール制度への問題提起もあるようです。

結末は狭いパブリック・スクールの世界でのアルマゲドン・エンドでした。闇堕ちですね…。
最後まで読み終えて何とも言えない気分になりました。
作家が男の人でビックリしました。心理描写もきめ細かいし、少女漫画のような世界観だったので、てっきり女性の作者かと思っていました。翻訳者の影響かな?

タイトルからオカルト要素が強いように思いましたが、意外に現実的でどうしようもなく重めの話でした。他人の心に巣食っている闇の深さに身震いしました。
そういった側面は深く付き合わないと分からないし、分かる頃には簡単に離れられない関係になってしまう事が多く。組織に属していると余計に難しいし、このような悲劇が生まれる事もあるんだな。
肝心のオカルトシーンははっきり描かれていなかったので、ちょっと残念でした。消化不良気味です。
想像を補わないといけない部分もあります。
設定的に美少年も多く、杓子もあるし群像劇なので海外実写ドラマでたっぷり堪能したい…と思いました。

サブタイトルの「還流」の意味が衝撃…

めちゃくちゃ面白かった…!!
ラッキーとボーの掛け合いが最後の頁まで続いてツボに刺さりました。

芸能人や若い世代の麻薬や覚醒剤の問題は良く上がりますが、この小説では麻薬に限らない薬物のグレーマーケットの世界を知れて興味深かったです。
冒頭で迫力があったので、ラッキーの仕事はギャングか…と思ってしまった。
世の中色々な仕事があるんだな。。

近年ニュースや情報番組では、お金儲けが一番でモラルがない組織悪の会社の報道が多いので、関心が持てる内容でした。特に気にも止めていなかったサブタイトルの「還流」の意味を知った時、衝撃でした。

 私達は日常生活で商品を購入する時やサービスを受ける時は、業者の内情を調べず相手を信用して利用します。いわゆる信頼関係で成り立っています。そこが問題のある業者だった場合、特に命に関わるような場合は…??日常にも怖さが潜んでいるなーと実感しました。

ラッキーとボーがお笑い芸人のような良いコンビでまるでコントでした。
ヴィーガンの意識高い系の話も面白かった。
ギャグ、ヴィーガン、陽気な下ネタが飛び交う二人の日常。
とても笑わせてもらいましたが、笑顔の裏でだんだん明るみになる二人の壮絶な過去。今も葛藤を抱えている二人。
とても切なかった。。

シリアスとギャグのバランスが絶妙でした。重くも軽くもなりすぎず。
業界サスペンスものにしては、LOVE度が高かったです。期間限定というのはお互いの気持ちを昂ぶらせるマスト・アイテムだな。
最近続編が出たので、二人の「その後」が知れるのが楽しみです。

イラストは何と「あまつき」の高山しのぶさんでした。全く気づかなかった…。
本編に負けないパンチのある楽しい絵でした。特に登場人物画のページが良かった。

二人のコントの空気感や物語に流れるスピード感など、翻訳家の冬斗亜紀さんの翻訳が絶妙でした。モノクローム・ロマンス文庫の翻訳は、安心して読めます。AIではなし得ないでしょう。

ふつくしさとホラー要素が合体して出来上がった世界観…

一般文芸のオカルトホラー小説として出版されていますが、帯にも書いてある通りBL系ホラーとして楽しめます。
表紙もふつくしい…です。

帯が全てを語っているので言及は控えめにします。この世にも稀な耽美な美少年が登場したりとJUNE的な世界観に加えて本格的ホラー要素が存分に楽しめます。

閉鎖的な田舎での伝奇伝承ものに惹かれる方なので、自分にはもってこいの作品でした。人外要素もあり、奇妙であったりグロテスクだけれど、底無し沼のように美しい世界観に引き込まれました。読んでいて脳内が侵食されていく、麻痺していく不思議な感覚でした。深淵から覗いた世界とは…。

ストーリーも謎が謎を呼び予想外の方向に進むので、続きが気になって仕方がなかったです。人間の集団心理が恐ろしかった。閉鎖的な空間での長い間培ってきた因習は凝り固まっているだけに余計にタチが悪く、、。
全体的にストーリーやプロットが複雑だったので、一回で理解できたとは言えないので読み返したいと思います。また2回目以降は違った世界が見れそうです。

作家さんはTwitterで話題になった後、幻冬社や角川書店等で出版されているホラー、オカルト系に強い作家さんのようです。文体等や進行は枠に捉われない自由なスタイルですが、表現力があるので引き込まれました。一度ハマってしまうと抜け出せない、怖い作家さんだと思いました。

残暑や物哀しさを感じる初秋にピッタリの作品です。
最後は馴染み深いBLエンドで締められ、安定感がありました。
読後感の余韻もあります。
今後もBL系や匂い系を是非執筆して欲しい…と願わざるを得ない一冊でした。

評判通り最高に萌えた…

 無印巻から引き続きメイン・キャラの篠口、黒澤が魅力的だけに物語の吸引力に抗えず、一気に読んでしまいました。
やっぱりBLものはキャラにハマった時の威力がすごいなーと実感しました。

「墨と雪」の上巻では、無印巻で事件の被害者になり、心身ともにズタボロになった篠口がセフレ(?)の黒澤により少しずつ心を開いて再起していく過程が描かれていました。

篠口の心の揺れ動きや葛藤が丁寧に描かれ、特に劇的な大きな変化はないものの、淡々と被害者の立ち直るまでの日常の機微が描かれていて、まるでああいった被害者の事件後の再起を描くドキュメンタリー映像を見ているかのような現実感が漂っていました。
こういう題材をじっくり読めるのはBL小説ならではの贅沢さがあります。上巻では、少し光が見えてきた…という所で終わりました。

これからという所で終わってしまい、気力が抜けましたが、同じ巻に収録されている「ストームグレイの行方」は「墨と雪」の陰鬱なムードとは一転、とても面白く萌えまくりました。  

篠口と黒澤の馴れ初め、二人の距離の縮まったきっかけ、篠口ので公安生活が事実上短かった理由等それぞれのエピソードが最高でした。
篠口も黒澤もキャラが立っているだけに二人のカップリングに萌えて萌えて…。

もともと公安物には惹かれる要素が多いですが、この小説では短いながらも公安の実態や警察組織のことなどの説明が分かりやすく説得力があり引き込まれました。
非常に質の高い濃縮した短編で楽しめました。
公安に配属された篠口に対して、もし黒澤のように気にかける人物がいなければ、篠口が公安の中でどうなっていたか…と思うと胸が痛みました。
適性がなくても嘆くことはないんだなーと、自分を活かせる、自分に見合う場所を見つける事が大事だと思いました。

 それにしても篠口が他のメインシリーズでは、当て馬の扱いを受けていたとは信じられないです。主役の王格があるのに…。
時には脇キャラやサブキャラの方が王道な主役キャラ達よりいい味を出している時があります。サブキャラの魅力を最大限に引き出されるスピンオフは大歓迎です。

最近WEB小説や海外小説を読むことが増えましたが、日本の大御所作家さんの貫禄と偉大さを感じる一冊でした。

大正時代のラブコメ楽しめました…

和泉先生の大正時代もの…という事で心を躍らせながら手に取りました。

あの有名な清澗寺シリーズとは異なり、健全なムードが漂います(笑)。
シンガポールでの海外生活を終え、帰国したばかりの一青年千晶の妹の華々しい結婚をめぐる大騒動を描いたドタバタコメデイでした。
豪華客船でのエピローグからクライマックスまでテンポよくストーリーが進むので、とても楽しめました。

この小説に描かれていたように、豪華客船では一等室の人と三等室の人は普通は決して交わらない構造に設計されているんですね…。
映画「タイタニック」さながら、出会ってしまった階層の異なる千晶と真一と伊織達。豪華客船の知らざれる煌びやかな世界も興味深かったです。

 主人公千晶がシンガポールで家の事情により賭博を生業をしていた事もあり、ここぞ…というところで勝負に出る所が面白かったです。
攻めの伊織も何でも卒なくこなすけれど、(完璧そうな人間にありがちな)他人の感情の機微には疎い所が微笑ましかった。
自分の気持ちになかなか素直になれない二人の仲は、まるで中学生同志の恋愛のようになかなか進展せずじれったかったです。ところがいったんくっつくと、和泉先生の官能と甘美な世界一直線で、そのギャップがおかしかった。

伊織の主人の真一やその父親英明と二世代に渡る伊織の息の長い主従関係や親戚等がやたら絡んできたり等のアットホームな家庭事情も大正時代が舞台だとノスタルジックなムードがあり、楽しめました。

先生があとがきでおっしゃったように、ブリッジのルールはやはり分からなかったです。ただ二組対二組で挑む知能タグゲームという事でBLやブロマンスにはなじむということだけは伝わりました(笑)。
表紙に描かれたダンスシーンの描写も良く、萌えも随所散りばめてあり、満足の一冊でした。なんだかんだで二人とも似たもの同志の良いコンビで、最後まで読んでとてもニンマリしてしまいました。

何とも言い難い心情に…

 昨年に「僕の巡査」として映画化された作品の原作です。
ある一人の英国人巡査トムを巡ってパトリック(男)とマリオン(女)で想い合う(?)共有する(?)三人の男女の青年時代から老年期までの一代記です。複雑な恋愛模様が描かれます。

シリアスになりがちなストーリーでしたが、ユーモアもあり、小説として良く出来ているので夢中になって読み進めました。読み終わった後に何とも言い難い心情になりました…。「僕の巡査」という言葉が哀しい響きに聞こえます。
それでも読んで良かったです。
この小説のスタイルとして現代と過去が交差して描かれるのは、少し分かりづらかったかな。。

ヒロインも個性的な人物なので、読みやすかったです。
他の方も書かれているように、トムを愛する二人の姿が鮮明で、ギリシア彫刻のような美青年トムはあまり印象に残りにくかったです。パトリックとマリオンの関係は「恋敵」という言葉を簡単に当てはめるのは似つかわしくないように思えました。

同性愛は凶悪犯罪と同じように罰せられていた時代の物語です。
どうしても愛の成就が望みにくい状況でも、着実に愛は育まれていきます。誰も止める事はできないです、、。

悲劇の後でも一途にトムを想うパトリック、長年冷え切った夫婦関係の中でトムの洗濯物を洗うという数少ない接触に夫の息吹を感じるマリオン。読んでいてそれぞれのトムへの想いが切なかったです。

三人三様に人生(現実)に打たれた姿が痛ましく、心苦しかったです。
ほつれた糸は縫い直すまでは戻らず、、。
同性婚も一つの選択肢になる時代には、こういった悲劇は避けられるようになるのでしょうか。自分の想う人生を歩めるようになるのでしょうか。多様性がもっと認められる時代になって欲しいです。

ラストエピソードは映画版では感動的なシーンに演出されているようですが、小説版はあっさりと終わっています。それでも「これから」に想いを馳せてしまいます。

 翻訳で読める欧米のメンズラブ系はモノクローム・ロマンス文庫のみでしたが、最近二見文庫も力を入れられているので嬉しい限りです。値段は高めですが、欧米の空気感を存分に味わえるのでお気に入りです。

映画の方も見てみようと思います。

公の場でLGBTQに関する差別発言をすれば世界的に叩かれる現代。同性愛は死刑だ、凶悪犯罪だとされていた時代と比べると驚くべき時代の変化です。何事も日々一歩ずつより良くなる…と思えます。

大満足の一言…!

1巻も2巻もとても面白かったですが、様々な伏線が回収された最終巻は読み応えがたっぷりで圧巻でした。帯に書かれた「もう最高に面白くて泣ける」という言葉のわかりみしかない…。

かなりのボリュームでしたが、ちるちるさんが縁でこの作品に出会えて良かったです。

 婚約から戦争、イオニア達に悲劇を引き起こした19年前の悲劇の真相まで盛り沢山の内容でした。全てが終わり平穏な日常が戻ってくると思った矢先に「これでもか…」というくらいに明かされる王室の闇の真実の数々に身震いしました。戦犯だけでなく、皆深い心の闇を抱えていた…。
泣けました。グラヴィスに流れる呪われた血の因果の深さよ。
言葉も出ません。。一族の中で残された者で背負っていくには重すぎる十字架、、。やはりレオニーノを始めとする愛する人達の支えが必要だなーと実感しました。

暗い話だけでなく、王家との華々しい婚姻話をBLで堪能できたのも良かったです。世界で同性婚が認められる中、遠くない未来には王家からも同性婚者が出てくるのかなーと興味深く読めました.。
麗しい二人の婚礼姿のイラストを見たかったな…!

緻密なプロットと文章力、表現力の裏付けされた大河ファンタジーをBLで読める贅沢さ…!何物にも変え難いです。先生の二作目に否が応でも期待が高まります。
個人的には「大河BLは中国の魔道祖師、日本の背中を預けるには」と唱えたくなるくらいにハマリました。
もう一度一から読み返せば、異なる物語が見えてくる贅沢さが身にしみます。

最終巻では影が薄かったルーカス。番外編での活躍を期待したいです。
イオニア一筋のルーカス、イオニアの魂を受け継いだレオニーノを愛したグラヴィス。二人の不器用だけれど真摯な愛の形がとても印象に残りました。

先生のあとがき通り、どんなに恵まれて見える人も抱えているものがある…という事について色々考えさせられました。言葉や表面上に現れるものでしか判断が出来ないので、人を理解するのは難しいと実感しました。