ボタンを押すと即立ち読みできます!
どうにもならないこと。
愛し合うことも、
憎み合うことも
遠召とエリの、一夏だけの暮らし。
お互いに秘密を抱えているだけに、どこか冷えていて、ことさら暑い。
この二人の距離感が、とても好き。
二人の抱えている物は、重くて、暗くて、
特に遠召を縛り付けている物は、根が深くて。
雁字搦めで虚ろな遠召の中を、夏の庭と、エリとのセックスが少しづつ満たしていく。
このお話、もっと書こうと思えば、遠召の生い立ちとか、いくらでも枚数を費やせる程、根が深い。
そんな濃密な背景を、よくぞこの分量に落とし込んだと。
この割り切る分量が、とっても私の生理に合っていて、内容は重いのに、読んでいて爽快で気持ちよかった。
ちゃんと、変わっていく遠召の甘さも、心地よかった。
夏の夜中に読み始めたら、止まらなくなってしまい朝が開けるまで読みました。
さすがの凪良さんです。受け攻めの交互のモノローグで少しずつ謎を明かしていくのと、先の展開が全く読めず気になって、どんどん読んでしまいました。
暗かった部屋がどんどん明るくなってくる様子と話の内容や情景が一致していって、より味わい深くなったような気がします。 不健康ですが、この作品の読み方としてはオススメです。笑
いつものことながら、読み終わった時には枕はびしょびしょで、でもとても満ち足りた気分でした。
ダークシリアスな方の凪良さんの本領発揮で、暗く重い話と評価されていますが、想像していたより暗くはなかったです。高久さんのイラストと相まって、とても情景の美しい映画のようでした。
ただ、近親相姦や凌辱という重たい設定に好き嫌いが大きく出る話だと思います。
しかし、同じく暗い重いで定評のある木原さんとはまた少し違い、凪良さんは甘さと優しさをたくさん用意してくれています。
話自体は萌えというより、凪良さん特有の、サッパリ簡潔な文章でぎゅっと胸を苦しくさせる泣ける描写がメインですが、攻の高知の優しさには切なくなるほどきゅんきゅんしました。
特に好きだったのは、辛い過去を語る遠召に高知がミントタブレットを口にいれるシーン。高久さんのイラストと相まって、とても好きなシーンです。
よくあるトラウマもの、同作者さんでも『積木の恋』と少し似ていますが、大きく違うのは、受けの心の傷を攻めが埋めるのではなく、お互い埋められないものを抱えながら一緒に生きていくというところ。
互いが互いを必要とする理由が丁寧に描かれていて、唯一無二の存在だと言い切れるBL小説はなかなかないのではないでしょうか。
テーマとして感じられる「どう頑張ってもわかりあえない人に対して、どう折り合いをつけるか」ということへの結論にはとても共感できて、私自身救われた気持ちがしました。
何もかもが綺麗に収まることはない。それがとてもリアル。
なかなかこんなことが描かれている小説には出会えないような気がします。
腹立たしく、でもどうしようもないことがあって、辛くて悩んでいる人、悩んだことのある人にそっと差し出したくなる優しい本です。
作中には二回の埋葬シーンがあります。
埋めたものはなんだったのか、きっと死体だけではなくて……想いを馳せるととても切なく、神聖なシーンです。
幸せな二人が読みたくなって小冊子を買いに走ってしまったのは、おそらく私だけではないはず。
本編、小冊子と読み終わってもこの世界に浸ってしまいなかなか戻れず、何度も読み直してしまいました。
唯一、遠召があれほどまでに過去にとらわれていた理由に納得がいかなかったのですが、ここまで二人の互いの必要性、そしてなかなか描けないテーマを描ききっているこの本はやはりすごいのでは、と思い「神」評価にしました。
これからもおそらく何度も読む、大切な本になりそうです。
roseーlilyさま
コメント、ありがとうございます!
コメント頂けるのは本当に久しぶりで、すっかり見逃しておりました。
遅くなってごめんなさい。
本当に、この本は読んだ後数日引きずって考え込んでしまう程重かったですね。
お兄さんの変貌具合には私も驚きました。なかなか想像以上で、衝撃的でしたよね。
実は、私が天涯行きを購入する前、roseーlilyさまのレビューを読んで、他の本に浮気したくなるほど重いのか…と、かなり身構えておりました。笑
私も最初は3分の1くらい読んで明日に回そうと思っていたのですが、読み始めたら、roseーlilyさまが書かれていたように天涯行きは一度本から離れたら戻るのは辛そうだと判断し、一気に読んだんです。
おそらく途中で休憩を入れていたら、どこかで挫折して、半永久的に本の山に積むところだったかもしれません。roseーlilyさまのレビューに感謝です。
本当に、小冊子を読んで、やっと読み終えた気分でした。でも、小冊子は2つあるはずなんですが、最初に出た方の小冊子が手に入らず、未だに捜しています…。
凪良先生の文章、どんなに暗い作品でもどこかに優しさがあって、私も大好きです。
12月には、新装版かもしれませんが、また新刊が出るようなので楽しみです!
コメント頂けて、語れて、嬉しかったです。
私もまた読み直してみようと思います!小冊子込みで。笑
水上さま
はじめまして、rose-lilyと申します。
小冊子、私も買いに行きました!
幸せな二人が読みたくて…。
家族というものに深く焦点を当てたこの作品。
本編を読んだ時は、もの凄く考え込んでしまった作品でした。
一頁めくるたびに様々な事を思ってしまい、先へ進むのが怖かった事を覚えています。
特に、あの兄の最後の変化は相当辛くて震えました。
こんなに暗い話なのに、凪良先生が書くとやさしいから不思議ですね。
つくづく先生の文章は好きだなぁ、と思います。
小冊子の平和な空気に、ホッと胸をなで下ろす事が出来て、何だかやっと読み終えた気分になりました。
長々とすいません。
水上さまの感想を読んで、もう一度読み返したいと思い、コメント致しました。
一つの作品の中でユーモアとペーソスを交えて描ける技術も素晴らしいですけれど、コメディ・シリアス両方を描ける作家さんって、やっぱりスゴいなぁと思うんです。
サスペンスはあんまり好んで読まないので、このお話のようなソレっぽい感じの「風味」だと気負わずに読めて自然と引き込まれました。遠召と高知の視点が交互に配置された章立ても、二人ともあまり自分のことを語りたがらない境遇にある人物ゆえに、自ずとそれぞれの過去に興味をそそられる効果を増幅しています。
遠召の住む町にフラリとやって来た高知には姉がいて、彼女が好きだった"Calling you"という曲が作中に出てくるんですよね。その世代の者にとっては映画「バグダット・カフェ」を思い起こさせたりして、物語を読み進めていく上で主人公がストレンジャーと心を通わせていくイメージがリンクするなど、地味ながらオツな演出が仕込まれていたりするんです。今ではもう古い映画といっていいんだろうけど、トシを感じちゃうなぁ…。
遠召の過去はこのご時世のBLとしては珍しく思えるほど古典的にヘヴィなもので、なかなか意表を突かれました。高知も遠召の前で見せる朗らかな姿からは想像できない一面を持つ人物で、そんなワケありの二人が本当に一時だけ短いハネムーンを過ごすのですが…。二人は再び一緒になれるのか?物語は明確な結論を出さずに終えるのですが、それがまたイイんです。
愛や信頼のある関係って、相手の幸せを考えて自身を犠牲にすることではなく、相手の要求をきちんと聞けること。と同時に自分の要求を相手に言えること。それができていたら、この物語に出てくる誰もがきっと壊れることはなかったかもしれません。遠召と高知は、ずっと囚われていた忌わしい過去に向き合い決着をつけるため、運命的に出会ったラッキーな二人なのかな。
重めの作品ですが、凪良先生ってこういうお話もお描きになるんだと、守備範囲の広さに感服させられた作品でした。…けど、そういえばこれまで読んできた先生の作品って、家族や家庭に恵まれない不憫な受けばかり出てきていたのを思い出しました。。ってことは、実はこういったタイプのお話の方こそ得意とされているのかもしれませんね。
偶然出会った訳ありな感じの高知を、遠召は気まぐれで同居させます。
今まで何人もの男女を同居させてきた様に。
遠召は、古い一軒家で出て行った同居人を一人待っている。
最低限の事をする以外は、ぼんやりと怠惰に。
ある夜悪夢で目覚めた高知は、同じく眠れずに起きていた遠召に、
「しようか?」と誘われ激しく抱き合います。
その後、睡眠剤や鎮静剤みたいにセックスするのが常となります。
お互い人に言えない様な秘密を持っていて、明日の約束は決してせず・・・
でも、お互いの距離感や、まるで鍵穴のようにぴたりとはまる身体が、
二人は似ていて逆効果のように惹かれあっていきます。
なのに、どちらもそれぞれの呪縛から逃れる事は無く、
密に相手を想いやっている様子が、切なくて読んでいて胸が痛くなりました。
特に高知は「恋に、落ちてしまったのだ。」とはっきり自覚します。
遠召が、日ごとにやわらかくなっていくのを見ながら、
帰ってこない恋人との思い出と一緒に残して行きたくないと願いながらも、
姉の無念を晴らす事を諦める事が出来ずに悩む高知。
すいかの種飛ばしや線香花火、「エリ」と名付ける犬・・・
ほんの小さな約束をする様になった二人が本当に切ないです。
――このまま遠召をさらってどこかへ行きたい。
でも、飛び出せる場所なんてどこにもない。
飛び出してきた果てが、ここなのだ。――
・・・泣きました。
お話は、遠召目線と高知目線で交互に語られていて、
それぞれの重い過去が少しずつ見えてきて、読みだしたら止まりません。
高知の傷害事件は、本当に高知にもお姉さんにも同情して、久に腹が立ちましたが、
何より遠召の過去が、あまりにも痛くて可哀想で・・・
幼いころに両親を亡くした子供とは、これ程に哀れなものなのでしょうか。
そもそも遠召は、出生自体がとんでもなく痛いですが・・・
遠召が、義母や充に嫌われたくなくて、幼いながらも必死だった姿があまりに辛い。
充のいいなりにならざる得なかった遠召の気持が、痛々しすぎて泣きそうです。
それぞれが、お互い支え合って過去を乗り越えた後の、別れの前の海辺のシーン。
遠召が一瞬高知を見失ってパニックに陥ります。
この時の遠召が余りに頼りなく哀れで、泣きました・・・
それにしても、高知は本当にイイ男です!理想的な攻め様!!
重い話だったので、最後の爽やかなハッピーエンドがすごく良かったです。
天涯・・・空のはて。また、非常に遠い所。
タイトルを見ただけでせつない内容が伝わってきました。
なにかを待ち続けている遠召結生の生活に入り込んだ旅人、高知英利。
互いに自分のことは語らずただ抱き合うふたり。
遠召の過去と高知の今。
肉親に奪われた遠召と肉親を奪われた高知。
すべてが互いの心の中で解決?したとき二人は本当の意味でひとつになり別れを迎えます。
遠召が預かった「愛情の形」それはきっと・・・キャラバースデーフェアの小冊子に「天涯行き」の後日談が掲載されています。ぜひ、読んでください。