面白かった!あと良い意味でびっくりした。こういうお話だったとは!あらすじとタイトルからは想像もしていなかった方向に進む。散りばめられた伏線とその回収が綺麗で巧い。メイン二人も魅力的でとても良かった。
始まりは駆け引きとも言えない春人の色仕掛け(?)で、読んでいると恥ずかしさでソワソワしてしまう。そして三國視点に移ると、やっぱり春人のおかしさはバレバレで、頭を抱えたくなってしまう。途中まではこれの繰り返し。
三國と春人は社長と秘書の関係で、春人は仕事中とプライベートでのギャップが激しい。入社してすぐ第一秘書に抜擢されたり、仕事は完璧だったり、ひったくりを簡単にノしたりと、恋愛以外は超有能。だが徐々に一体何者?と疑いたくなる要素が出てきて引き込まれる。
三國は昔遊びまくってたけど今は落ち着き、ちょっと気力が落ち気味な社長。久々に興味を惹かれる春人に出会い、どんどんハマっていく様子が良い。こっそり笑いながら春人を振り回しているようで、実は振り回されていたことに気付くという。去った春人を追う三國の心理描写はめちゃくちゃ熱くて感動的だった。
最後の種明かしは、ネタバレなしで読んで良かった!と思う内容。あれもこれも全部なるほど、となり、あのエピソードがここで……とはっとなる。そして春人は内側から爆発するトマト。何度も出て来たこの表現にも納得の答えがあって、いやはやさすが。
羞恥心に身悶えたり耐え切れずに笑ったりしていたら、うっかり感動させられて泣きそうになり、かと思えばめちゃくちゃ驚かされて、最後は幸せ気分になっている作品。精神的に大満足の読み応えだった。
ケモミミの使い方(活かし方)が面白い作品だった。考えさせられる系な側面もありつつ、主人公の変化やBLもしっかり描かれており、読み応えアリ。悪意の匂わせはあっても、悪い人は出てこないので読みやすい。読後感も良かった。
理人は雨の音にトラウマがあったり、両親に言えないわだかまりがあったりと、苦しい事情を抱えている。加えて隠しているがΩなこともあり、情緒不安定になりやすく、事あるごとによく泣いていた印象。
思い込みで勝手に悲観することも多く、そのわりにはフェロモンで誘惑しようとしたりして、前向きか後ろ向きかどちらに暴走するか分からない。仕事とプライベートでのギャップが激しく、ある意味素直だけど、口は素直じゃない。
汐見はふらふらしているようで仕事デキそうな雰囲気が伝わってくる。理人への対応を、他の人に相談して慎重に進めていたのはちょっと意外だったかな。改まって謝罪するシーンが何度もあり、中身は誠実な人っぽいと感じた。
ストーリーは、いろいろと勘違いしたままの理人視点で語られるので、片思いの切なさと確認しないもどかしさを適度に味わえる。汐見の反応はわりと一貫して理人に構ってもらえると嬉しいって感じで良かった。
告白シーンは前後の理人のギャップがすごい。あんなに怒鳴り告白みたいなことしてたのに、両想いになったら可愛くなりすぎ。ここぞとばかりに調子に乗る汐見にも笑った。
苦手だったのは、若干説教臭く感じるところがあった点。現実問題にリンクする表現もあったが、時々刻々と主流となる意見が変わる現代で、今この主張を見ると時代を感じる。社会への責任転嫁が見えた時点で冷めた。
汐見と理人のBLも良かったが、汐見の仕事への思いや来栖の生き方など、理人に影響を与える事象の描写もすごく良い。それらを素直に受け止める理人も素敵。応援したくなる主人公だと思う。
ホラー苦手だけど楽しく読めた。序盤から怪現象が次から次へと起こりまくってコメディか?と思いきやガチ怪異。とはいえ、BがLしてるおかげか、そこまで怖さはない。後半は冒険ものっぽい雰囲気で盛り上がっていて良かった。
友春は騙されやすいお人好し。貯金を失った今でも、懲りずにまだ騙されそうで心配になるくらい、警戒心が育っていないような。怪現象をきっかけに、隣人の御影の事情にも触れることになり、ころころっと巻き込まれていく感じ。
御影は適度にミステリアスっぽいところが良い。明確に不思議なところがあるわけじゃないし、事情はちゃんと明かされるのに、なんとなく謎がありそうに感じる。超絶美形のホラー小説家って設定の印象に引っ張られてるのかな。
怪現象への対処には、意外にかっちりしたロジックがあって驚いた。オカルト作品にありがちな、あやふやさにモヤる系じゃないの嬉しい。友春の抱えるいろいろな事情が綺麗に回収されていき、爽快ですらある。
吊り橋効果が含まれる気はしつつ、二人がくっつく流れは自然で納得(あくまでもBL作品として)。特に御影の方は友春じゃないとダメな感じが出ていて良かった。
後半の地下迷宮の探索話は、日常の中にファンタジーな空間が入り込んできたようで、なんとも不思議な感覚。怖いはずのシーンでも、くすっと笑える表現があったりして、怯えることなく面白く読めた。
キツかったのは、変な同僚へのモヤモヤが解消されないこと。本人に分からせることもなく、あの程度の痛手を負わせたところで無意味だし、後から陰で罵って終わらせるのは展開として好きになれない。当事者が黙ってるのもちょっと。
カップルとして見た二人はとても好き。腹の中の夢子の存在も気になるし、続編も読みたい。
こんなタイトルだけど、ごくごく普通の現代もの。強面でゴツい見た目の攻めと、天使のような見た目を持つ受け。二人ともが内面と見た目にギャップを持ち、悩みや生き辛さを抱えている。読後感は爽やかだった。
タイトルで気になった“魔王様”は、峰守のあだ名。といってもバーの店員が裏で勝手に客に付けただけのもの。峰守に関する描写は、どれもこれも同情を禁じ得ない。目が合うだけで子供に泣かれ、その子供の親は走って逃げる。
峰守の顔を見せない工夫や気遣いは涙ぐましく、かわいそかわいい。好きな相手に、今まで誰とも付き合ったことがないと嘘を吐かれながら(バレバレだが)、言動の一つ一つを元彼たちと比較されている。この点、悠真視点で見ると峰守の可哀想度がちょっと上がる。
悠真は心理描写の裏に毒親の影がチラ付く。社会に出て、下に見られたり後ろで笑っているだけで良いと言われたりと、悩みはいかにも女性が共感しやすい内容。これを受けに言わせるところが、BLの性質が見えるなあと萎え萎え。
お互いにコンプレックスからくる自信のなさで隠し事をしたり、励ます言葉が実は芯を突いていたりといろいろありながら、友達から恋人へと清らかなお付き合いを続けていく。悠真に対する峰守の不器用さがとても好き。
拗れそうな気配を漂わせながらも、不安要素は直接ぶつかって解決するし、二人ともが素直に向き合う様子が良い。
恋人に重い峰守と、それを求める悠真。言葉が足りない峰守と、今後はガンガン問い詰めていきそうな悠真。長く続きそうなカップルだと思った。
悠真の親の件も、自己完結な印象はありつつも、呪縛が解かれたのは感じられた。できれば遠恋の先まで見たかったな。
お日様の下を普通に歩く吸血鬼もの(?)。吸血衝動は出るものの、牙もなく実際には血も吸わず、血に代わる光露が不足すれば体が縮むという、とても平和な設定。ほどよいファンタジー感にほのぼのできて楽しかった。
健太は食べることが大好きな主人公。食事シーンは本当に食欲をそそる描写で、香りや食感、味までこちらに伝わってきそう。味覚障害になっても詳細な描写がされるので、健太と同じ気持ちでビクビクしてしまった。
志波は仏頂面ながら独特の色気を醸し出していたと思う。男のあざとさの天然ものを見ているような。健太の吸血鬼話を妄想かもしれないと思いつつ、好きな相手だからその世界観に付き合おうと即決する気概が良い。意外に子供好きで世話焼きなのも良い。
前半ですんなりくっついたので(ディアプラスの性質上仕方ないのかな)、BL部分はわりとあっさりめに感じた。
後半は志波の姉の子が出てきて子育てものの様相。BL云々より、子育ての教訓を見せられている印象が強い。あ、勉強になります……て感じ。お兄ちゃんぶりながら健太に接する大和が可愛かった。
最後にちょこっとBLに戻ってきて怒涛のプロポーズ。照れる志波で締めくくるという、微笑ましい終わり方が好き。
面白かった!危険要素にハラハラしつつ、写真館を立て直す熱い展開、そしてピンチに大どんでん返しと見せかけた大芝居。鷹成のキャラもとても良く、考え方が好き。鷹成視点の番外編SSのふわっと感も良かった。
騙されて詐欺に加担させられていた久生は、犯罪集団から逃げてきたところを鷹成に助けられる。その流れで、元華族と偽ったまま、鷹成が館長を務める活動写真館で働き始める。
大正時代の活動写真館が舞台のお話だが、耳慣れない単語は特になく読みやすい。活動写真に関するあれこれの描写が興味深く、上映側の工夫なんかも描かれていて、読んでいて楽しかった。
写真館のメンバーもそれぞれキャラが立っており、人間模様が面白い。雰囲気的には家族のようで、毎日のようにケンカしていても、いざとなれば息ぴったりで同じ方向を向く感じが微笑ましい。皆で犯罪集団をやり込めるシーンはわくわくした。
鷹成と久生のBLは、ぐいぐい迫る鷹成と、鷹成に片思いしながら迫られていることに気付かない久生という、なかなかくっつけない組み合わせ。気付いてからも天然っぽい受け答えを繰り返す久生に、鷹成は苦労しそうだな、と笑った。
引っかかったのは、皆が久生の嘘に気付きながら追及しなかった理由を、大した嘘じゃないからと言っていたこと。トキの件で詐欺に気付ていたはずなのに?ここはちょっと言い訳が雑に感じた。
萌えとは違う感覚だけど、作品の好き度は神。ストーリーが良かったのはもちろんのこと、活動写真を通して人生を問う鷹成がとても好き。夢と理想を追う久生と現実的な鷹成という印象だったのが、活動写真を通すと逆になる。鷹成の本質が見えた気がしたシーンで、一気に心を掴まれた。好き。
設定盛り盛りのファンタジーだが、しっかりストーリーで魅せてくれる作品だと思う。今世を添い遂げるだけでなく、その先のハピエンまで見えてくるような終わり方。とても良かった。
狼のヨシュアとヒトのウメは双子とはいえ、表紙のように見た目も違い、ただ一緒に生まれただけな感じ。ヨシュアは生まれた瞬間からウメを囲い込み、親がウメを放棄したせいで、育てる役割も担っていた。
獣人社会でヒトの見た目を持つウメは明らかに異質で、幼いころから忌み嫌われて育つ。そんなウメに寄り添うヨシュアは、黄金の毛をウメの髪色と同じ黒に染め、自身に注目が集まるように気遣ったりと、ウメを大事に大事に守ってきた。
二人の生活が大きく変わるのは、ヨシュアが王として中央に呼ばれたところから。過疎や少子化に危機感を持つ国の情勢や、狼族が隠蔽してきた歴史、二人の出生の秘密など、たくさんの事情が絡まり合う。中でもウメに関するあれこれは、衝撃的なものばかりだった。(注意:ウメはモブレ有り)
過去の全てを知り、ウメは初めての発情期を迎え、つがいになる二人。そこに至るまでには前世も含めて1200年の歴史があって、多くの困難を乗り越えて来る様子を見てきた後なので、感動もひとしお。
その後、すでに立派な王の威厳を持つヨシュアの決断が良い。さまざまなピースが綺麗にはまり、丸く収まる展開に納得があり、悪が追放されるすっきり感も味わえる。ウメとの未来予想図も素晴らしく、幸せで泣ける終わり方だった。
全体を通して、変わらないヨシュアの溺愛ぶりがすごかった。爪で傷付けないよう常に手袋をしてるとか、生まれたときからヨシュアはウメを中心に生きている。死んでも黄泉まで追いかけ、魂を連れ戻すなんて、もう最高としか。
今読むと逆に新鮮に感じる、真正面からのファンタジー。悪者を倒す話であり、不憫受けが救われる話でもあり。攻めがチート級の能力持ちなので、安心感が半端なかった。
暗殺者として育てられたカラスは、大衆から差別され、主である司聖からは人間扱いされない。とある男の暗殺に失敗すると、その暗殺対象に攫われる。そして初めて愛を知り――というストーリー。
カラスを攫ったのは、カラスに一目惚れした魅朧。ドラゴンだが(便利なので)人の姿で生活し、他者の心の内を読み、海賊船の船長としてカリスマ性を持つ。ドラゴンは独占欲も執着心も強く、一度伴侶を決めたら一生添い遂げる一途な性質らしい。
警戒心MAXなカラスに対し、ゆっくり慎重に距離を縮めていく魅朧。そして人として尊重されることの意味を知り、優しく尽くされるうちに、徐々に心を開いていくカラス。だがその過程で、カラスが誰かに魂を縛られていることに気付く。
この呪いの内容はかなり胸糞。カラスを縛った犯人は一人だが、他にも魅朧の仲間の裏切りなどもあり、悪者を一気に片づけに行く展開に。解呪法は術者を殺すことで、魅朧がブチ切れ状態なのもあり、犯人は酷いことに。といっても魅朧の圧勝で、描写にグロさはなかったかな。
心が読める魅朧視点では、カラスの壮大な告白ともいえる内容が視える。司聖の事情もねじ曲がったいろいろが視え、その背景を知ったカラスの答えは、前向きでとても良かった。魅朧とその仲間たちに愛され、希望を口にできるようになったカラスに、温かい気持ちになる。
中盤、船内シーンが長く中だるみを感じたのがちょっと残念。全体のストーリーはとても面白かった。カラスが人として生きていくのはこれからなんだな、と応援したくなって読み終えた。良かった。
姉の彼氏に強姦された過去を持つ主人公が、恋人ができてから自身のトラウマに気付き、克服していくお話。剛毅の彼氏村野の見えない熱さと奮闘も良かったし、友人たちの温かみもとても良かった。
容姿端麗な剛毅は、幼いころから変質者に狙われながら生きてきた。そうした視線には慣れていると言い、かつて強姦された記憶も、自分の中では忘れたものだと思っていた。人見知りで、友人付き合いは狭く深くなタイプ。
村野は厳つい見た目と無口かつ表情もあまり変わらないせいで、見た目は怖い。内面は面倒見がよく料理が得意で、懐が深い。剛毅視点で見る村野は、おそらく顔には出ていないだろうに、感情豊かで可愛かった。
二人が付き合い始めるまでは、初心なムズムズはありながらもスムーズ。だがいざそういうことになった瞬間に、剛毅の中で過去のトラウマが蘇る。
そうして事情を知った村野は、高校生とは思えない忍耐力と冷静さと包容力と精神力を発揮し、自分なりのケジメを付けに行く。まあ瞬間的に沸騰してしまったが、その後の剛毅への接し方は大人すぎる優しさで、すごいとしか言えない。
また、忘れてはいけないのは、剛毅の友人たちの協力。熱い感情のままに行動する高校生たちの姿に、ちょっと泣きそうになってしまった。
少々村野が過保護気味になってしまったところはあるが、剛毅との仲は一生続きそうな安定感。というか村野が絶対剛毅を離さないだろうと思える。
シリアスなテーマだが、剛毅の周りの人たちが皆善良な精神を持っている感じで、安心して読める。村野の溺愛ぶりは感動ものだった。
「Reset」本編直後のお話で、優梧が三崎の両親に交際の許可をもらうあれやこれや。宣言通り、三崎が卒業してすぐの4月1日に三崎家を訪れた優梧は、母親にブチ切れられる。終始ドタバタした雰囲気の中、確かな温かみを感じられて良かった。
交際の報告だけでなく、いきなり同棲まで切り出した優梧にブチ切れるのは、三崎の親としては当然かと思う。卒業後に付き合い始めたはずの17歳上の元担任教師が、激重感情をぶつけてくるのはさぞ怖かっただろう。
そうでなくても三崎は心臓が弱く、何度も手術を重ね、死ぬかもしれない危機を乗り越えて来た子供。親が過保護になるのは仕方なく、先に逝く可能性の高い年上の相手を認めたくない気持ちも理解できる。
そこは優梧も分かっていて、でも自分も諦める気なんてなくて、長期計画で挑んでいる。このときの優梧と三崎の関係性は、優梧と留加の高校時代の関係性に似ていて、なんだか微笑ましかった。
両親の出した答えは、一瞬引いてしまいそうになる提案だったけど、その奥に在る意図を知れば、しっかりと愛情を感じられる。あと弁護士の母親が強くてちょっと笑ってしまった。
無気力で荒れていた優梧が再び将来への希望で満ち溢れ、三崎は弱音や文句やわがままを言えるようになっていく。幸せな余韻に浸れる続編だった。