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エキスパートレビューアー2025

女性renachiさん

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今年度30位

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終盤から面白くなっていった

途中まではルビー文庫でよく見る複雑化を許さない書き方で正直ガッカリしたが、終盤にかけて盛り返してくれたので、満足度は高い。問題解決までの過程が詳細に描かれており、読み応えがあった。ユンの仕事への姿勢が好きかな。

物語はユンとザイの二視点で進む。まずユン視点でザイへの悪印象を語り、ザイ視点でそれについて釈明してる感じ。誤解やすれ違いが透けた状態は分かりやすいが、早々の種明かしに冷める。できればユンの一視点で読みたかった。

過去の暗殺事件の真相究明と、現王ザイの廃位を目論む勢力との対決が主なお話で、間にBL描写が入ったり入らなかったり。シリアスな場面で一瞬恋愛脳になる不自然描写が挿入されるのはもはやお約束。と、いまいちノリ切れずに読んでいた。

面白くなってきたと感じたのは終盤。謎を一つ一つ調べ上げていく描写が丁寧で良い。ザイとユンの協力体制ができていて読みやすい。特にザイ側の味方を増やしていく戦い方が、地に足がついていて良い。ユンもてきぱき動くタイプで、心理描写にウジウジ感がなく、好感度は高い。

少々あっさりしすぎてご都合感はあるものの、地道に堅実に物事を進めてくれたおかげか、解決シーンでとてもすっきりできた。BL的には、実はずっと前から両想いだったというオチで、エピソードは事件に必要なものに絞っていたのかな。ストーリーに集中できて楽しく読めた。

電子おまけSSは嫉妬するザイ(通常運転)と抜けてるユン。ザイへの態度に何か含みがありそうなウェイが気になる。
タイトルは語呂重視なのか売れ線単語を並べたかったのか。やっぱりこのレーベルは苦手だけど、佐竹さんの作品は好き。今後も作家買いしようと思う。

将棋描写にこだわりを感じる

将棋棋士と何でも屋のお話。基本は敦也視点で、人生の迷子状態だったのが、雪と再会して好転していく様子が良かった。雪の方はトラウマと向き合い、乗り越えられたようで安心した。ラストが遠恋状態なのは気がかりかな。

有田焼の修行から逃げ、何でも屋で働く敦也。24歳で将来に迷いつつ、ゆるゆる生きてる印象。雪にとって大切な子供時代の敦也との思い出は、敦也にとっては何気ない一コマで、敦也視点だと純粋に大人になった今の雪に惹かれていく感じ。

雪は、棋士設定にありがちな極端なキャラ付け。積極的に告白して、すぐ一方的にお断りは意味が分からない。隠してる理由があるにしても、これでは敦也が気の毒。狭い世界で生きてるそういうキャラって設定だから、こうなるのかな。

物語はくっついて終わりでなく、それぞれの人生が上向くところまで描かれていてとても良かった。対局シーンはなんか熱い、いや熱すぎて、キラキラしたファンタジーな何かを見ている気分になった。

気になったのは、取材ゼロの観る将(作中では“見る将”表記)が書くとこうなる、の見本のようなとこ。観る将特有の偏見をアマ段持ち設定の敦也が言ってて違和感だし、知識の偏りが見受けられる。また、有田焼の説明と将棋の説明で、熱量の違いを感じて微妙。

でも良い部分もあって、外から見える綺麗で華やかなところだけを煮詰めて崇高なものに昇華しているようで、書き手の将棋愛に圧倒される。リスペクトと同量の将棋に夢見すぎてる感もある気がして、置いてけぼりにされるところもあったが。

どちらかというと、BLより将棋描写に細かなこだわりを感じる作品。雪の自己完結と内向的な面は、特殊な環境が説得力を出していたのかな。敦也の鷹揚さとバランスが良く、しっくりくるカップルだと思った。

各章タイトルがネタバレ……

設定は面白かった。が、主人公は何か起こればつっ立ってるだけになり、読んでて楽しくない。各章タイトルがネタバレになっており、読む前に大事な出来事が分かってしまうのもなんだかなあ。攻めに守られる受けの話だった。

結晶栽培にまつわるノアのさまざまな設定が良い。親とのあれこれや正体不明の箱など、謎が散りばめられていると興味を惹かれる。ノア視点で、内面が見えないレンが記憶喪失というのも面白い。

レンは最初から武力でノアを守る存在になり、地位と権力も持っていそうなのは分かるので、記憶が戻ればノアが抱える諸々の問題は即解決しそうで、ある意味安心。実際には危機が訪れる前に救助され、レンの回復を待つまでも無かったが。

ラスボスと思われる敵の正体が分かると、伏線が微妙だったと思った。他にも文章表現のバリエーションが少なく、語彙不足に感じる場面が多々あり、これを商業小説と言われると不満。とはいえ他の人気BL小説もこんなものかも。特にWeb系。

最後のお片付けはサクサクあっさり。あんなに気持ち悪さを与えて来たキースは、名前さえ出ない状態で退場していた。で、大事なのは、レンはもうノアの知っているレンじゃないという悲観的な葛藤。共感できれば切なさを味わえそうな。

ラストは何とも言い難い。情緒があるとも言えるし、中途半端な印象もある。レンが迫ってノアが保留でBLらしい、受けに都合よく進むお話。実害あるキースよりレンにばかり噛みつくエランといったストレス要素もあり、たぶん読み返さない作品。

なんてドラマティックな。

「ひつじの鍵」のスピンオフ、といってもスピン元から十年以上経っている。羊の友人和楽のお話。元から和楽は好きなキャラだったが、相手役の群も一生懸命で可愛くて、ストーリーもとても良かった。大好きな一冊。

大人になった和楽は、ドライさが増したような、でも恋に臆病なとこは変わっていないような、そんな印象。ただ群の描いた絵に対してだけは熱くなっていて、描いた本人に会う前から恋に落ちていたのでは、と言いたくなった。

二人の出会い方はものすごい偶然だったけど、その先の道を作ったのは和楽。群にとっては信じられないサクセスストーリーの始まりで、これまでの苦労が見えてくるたびに応援したくなり、ワクワクしながら読んだ。

群は家庭環境から多くのことを諦め、家計を支えることを第一に考えて生きてきた若者。和楽を疑うのも納得と思っていたら、急激に懐いてほっこりした。尻尾ブンブンが見えそうな素直な感情表現をしてくれるキャラで、和楽も育て甲斐がありそう。

家出からの流れは、とてもドラマティック。地球上のどこにいるかも分からなかった群を、一枚の絵から探し当てるなんて。心理描写も情景描写も心に刺さる文章で、何度でも読みたいと思った。

あとがきのおまけSSは、早速年下彼氏群のワガママ(?)を聞いてあげる和楽。伊織は当て馬要員だったのか、掴めないキャラな気がしたけど、スピンオフの匂いは醸し出してたと思う。新刊出ないのかな。

いろいろ強すぎコンシェルジュ

さらっと軽く読めるお話だと思う。最初は羊のワガママ坊ちゃんぶりに驚くが、根が良い子なのはすぐ分かるので読みやすい。さらに何より相手役の一色が強すぎて、羊が何をしたところで、という感じなので微笑ましく見ていられた。

羊は一色限定でトンデモ発言を繰り出しており、後からあれは甘えだったのかな、と思った。お金持ち学校に通いながらも庶民感覚を失っておらず、それなりにふらふらしてそれなりに考えてる高校生。たまに直情的になるのは若さゆえかな。

一色は仕事モードとプライベートでの態度が違いすぎる。BL的にオイシイ設定っぽいが全然萌えないギャップ。ただキャラとしてとても面白く、コンシェルジュとして・大人として・恋人としての言葉をしっかり分けてる感じが良かった。

山場は誘拐現場に攻めがバーン!を一穂さんも書くんだ、と笑った。そこからあっさりくっついたけど、一色の羊への躊躇の無さは意外。あんなに性急に制服着た子供に手を出すとは思わなかった。ページ数の都合かな。

後半は一色の嫉妬に萌えられたら良かったが、和楽がとても魅力的に見え、嫁子の最期のメッセージに泣き、主役カプよりそちらの印象が強く残っている。一色と羊は放っておいても勝手に幸せになってる、と確信が持てるからかも。

一色に絶対的な信頼を寄せる羊と、羊といると楽しいと笑う一色は、これからどんどん良いカップルになっていくんだと思う。歳の差を感じないくらい大人になった二人も見てみたい。

丁寧なのにしっくりこなくて

身も蓋もない言い方をすれば、女から男に乗り換えるノンケ男のお話。何も簡単には進まないし心理描写も丁寧なのに、暁行が遥を“恋人”として選ぶ流れに納得感がない。リアルとファンタジーのバランスがいまいちに感じた。

合間合間に暁行の独白ブログを挟む、懐かしさあふれる雰囲気。彼女の真希と友人の遥とはもうそれなりの長さの付き合いで、どちらとも関係は深い。物語の始まりは、遥が暁行に告白したところから。

BLだから仕方ないが、描写もその丁寧さも最初から遥にだけ寄りすぎで、違和感がある。自然に結婚を思い描くような彼女という設定なのに、暁行の心理描写の中で真希は全く存在感がない。さらに遥が性欲の対象外である点への踏み込みもない。

丁寧に書けば書くほど作者のBLに持って行きたい圧が見えてくるようで、キャラを捻じ曲げていないか不安になる。読みたいのは無理矢理男同士をくっつける話でなく、キャラ本人の感情で相手を選んだと思える恋物語。

描写不足に不満を抱く場面は何度もあり、でもここをきちんと描くとBL読者のウケが悪くなると分かってしまうところばかりで、BLというジャンルの縛りの多さを実感した。そもそも暁行のノンデリ程度で賛否分かれそうなとこあるし。

一夜の過ちを犯す心境が分かると言っていた暁行は、その伏線を回収するかのように、いつか自身の言葉通り“うっかり子どもをつくって”しまいそう。遥との十年後より、そちらの未来の方が容易に想像できると思った。

表題作の終わり方と、そこから遥視点に切り替わる構成がとても好き。

後半の怒涛の心理描写に圧倒された

知らずに読んだが「オールトの雲」のスピンオフでちょっと得した気分。とはいえあの大地がこっち方向にやんちゃに育つとは。BLの相手が昴なのも驚き。後半の昴の怒涛の心理描写に圧倒された。このキャラめちゃくちゃ考えるやん……。

インパクト大な登場をかました大地は、思ったよりあっさり昴に落ちていた。口調はチャラく振舞いも軽いけど、一人に決めたら一直線。さすがあの高梨家の次男な感じで、思慮深く察し力も高い。たぶん将来有望なスパダリ候補。

前半の大地視点はさらっと読める雰囲気で、一応くっつきそうなとこで終わる。昴視点に移ると、ここからが本番だったのか?ってくらい軽さがなくなった気がした。昴が大地だけを見るようになるまでが、とても丁寧に描かれていた。

後半から始まる昴の心理描写は、まるで相手を実験体のように観察している雰囲気で、興味深く読んだ。それにしても初恋相手への感情がそこまで尾を引いていたなんて。個人的に恒に好感が持てず、相対的に大地の好感度が上がっていった。

初恋を終わらせ、全部を大地に向ける昴の描写がとても良い。この二人は末永く幸せに暮らしていく未来が想像できる読後感でほっこりした。
心配だった「オールトの雲」の流星と太陽も仲良く過ごしているようで、ほっと安心した。もっとこの二人の様子も見てみたかったな。

切なさを煽ってくるような文章

そこはかとなく切なさの残る読後感が好きだった。学生で遠恋状態のまま終わるので、その後の二人はハピエンでもお別れでも納得してしまいそう。切なさを煽ってくるような文章も良かった。

家が隣同士の幼なじみ二人のお話。太陽視点だが、太陽の内面だけでなく、流星の中で太陽の存在が大きくなっていくのがよく分かる。流星が辛いときにそばにいたのはいつも太陽で、その背景には太陽の家族の存在が大きく、高梨家の雰囲気がすごく良い。

序盤で太陽の母が作ったお弁当を大事にしまう流星を見て、好感度がぐっとアップした。絶対良い子。流星は太陽本人はもちろん、ずっと隣で見て来た高梨家で育った太陽、ってとこも大事なんじゃないかと思った。

二人は好き合って身体もつないだけど、関係性は恋人なのかな。流星の想いはそれ以上な気がするし、太陽の気持ちは流星のそれに追いついていないように見える。でもどちらも同じくらい家族になりたい気持ちはありそう、というかあったら良いな。

高校生にしてハワイと日本の遠距離恋愛になってしまった二人は、八か月後にやっと再会。言動で誤解を招きやすい流星は、絶望的に遠恋に向いてなさそうで、今後の二人の仲は太陽次第になりそうで怖い。流星が卒業して日本に戻るまで、どうにか続いてますように。

好きだったのは、表情を比喩表現で描写する文章。そこから相手の感情が流れ込んでくるようで、何度も切なさを味わった。綺麗な情景描写もとても良かった。

三者の独特の関係性が苦手

とにもかくにも粘り勝ち!って感じかな。あそこまで酷い対応をされ続けて、よく縋り付いていられるな、というのが正直な感想。恋愛でないところの三角関係がどうにも不快で、兄が受け付けず、あまり楽しめなかった。

子供時代に拾われた雪と、なりゆきで雪の名付け親になった藤堂と、二人の支配者ともいえる兄の令輝。この三者の関係性が果てしなく気持ち悪い。雪も藤堂も雁字搦めで鎖に繋がれ、ただの傀儡でしかない。

特定の人間の支配下にある二人が、実は両片思いだった的な流れになっても、結局は令輝の手のひらの上。最後の雪の涙でどうにかこの嫌悪感を拭えて良かったが、紙一重のギリギリのラインだったと思う。他人に従うしかない二人を見ていてもつまらない。

雪と東堂は唐突にくっついてびっくりした。藤堂はずっと押してたけど、雪はツンデレを超える態度の悪さで、執着する藤堂の趣味が悪いとしか思えない。いくら好きでも、藤堂の許容範囲は広すぎる。そして雪は拗らせるにも程がある。

なんだかんだで遠恋を回避したっぽい二人が今後上手く行くかは、藤堂の忍耐力にかかってるのかな。「俺はスカベンジャーだよ」とか回転盤の刺青とか、ちらほら中二病か?とツッコミたいところもあり、ハマれなかった。

ただこういう人間関係は、小説だからというか、フィクションだからこそ興味深く見ていられる感があり、自分の日常とは決して交わらないこの距離感がとても良かった。

兄弟がじゃれてるようなカップル

公営カジノのお話ということで(?)、設定もストーリーも登場するギャンブラーも真面目だった。複雑な背景を持つ二人がくっつくまでがとても好き。後半のマカオ旅行編はおまけのような感じ。一穂さんのSSでないあとがきが新鮮だった。

メインカプは従兄弟から義兄弟になった逸と一哉で、現在はカジノディーラーとカジノ広報担当公務員の関係。一哉の方は素直に恋心を表現しないが、子供っぽく嫉妬したりと分かりやすくて可愛い。逸の方はいろんな感情が混ざってる感じがあり、家族以上の関係になるのは絆されたからかな。

一哉を引き留めるための逸の一大決心は、次第に目的を忘れて楽しむ二人の描写になっていき、とても良かった。人並み以上の動体視力という設定も面白く、ポーカーに勝つための記憶力はゾーンに入ることで得ている点も緊迫感があり、引き込まれるシーンだった。

当て馬も魅力を振りまきながら一哉を刺激してくれ、良い感じに萌えさせてくれた。でも一哉はブチ切れる前に、もう少し分かりやすく好きアピールが欲しかった気もする。

カップルになった二人と両親のマカオ旅行は、正直微妙だった。独特の関係を維持する親夫婦と、その捉え方で対立する一哉と逸。ワケありなポーカー対決は面白かったが、全体的に萌えるところがなく、見どころは親に持って行かれていたような。

とりあえず二人の仕事については、元の場所に戻れるようで一安心。兄弟がじゃれている雰囲気そのままのカップルで良かった。