大好きなシリーズですが、今回はBLというより、青依の成長物語の序盤といった感じです。
もちろん高嶺とのラブも描かれてはいますし、青依の心情としてはその成長も「印南さんの役に立ちたい」がずっと根底にある訳なのですが。
でも、うーん…新たな登場人物が二人も出てきて、詰め込み過ぎてる感じは否めない…。
まず高嶺の甥・誉。
誉くん、物語に必要なのだろうか…?
今後誉くんが高嶺の部屋に居候なんて、読者としても全く嬉しくない展開ですけど。
そして高嶺の恩師?ベル。
ベルがたくさん喋る終盤、もう展開が読めてしまって、「あ~…これ自分の成長のために海外に行っちゃうのテンプレだよね…」と思ってしまいました。
まだ青依の決断までは描かれていないので、テンプレ覆してほしいですが。
何か今作は、重点を置いている場所がちょっと違うというか。
BLというより、「若い男の子の成長を描いた青春物語。そこにちょっとBL要素あるよ」みたいな作品になっちゃってる気がする。
もちろん先述したように、青依は高嶺のために成長しようとしているんですけど、読者側にはどうしても青春ストーリー感が強いかなと思います。
高校生の真生と丞は、中学時代からの親友。お調子者キャラな真生を、丞だけはいつも甘々に味方してくれる。最近腹痛が続いていた真生だが、ある朝丞を見た瞬間、ヒートのような症状が起こってしまった。そしてそれを見た丞も様子がおかしい。二人ともβのはずなのにー!
というお話です。真生がΩに変異する前から、真生至上主義で溺愛している様子の丞が良いですね。
溺愛攻大好きなので。
真生も可愛いし、ストーリーも面白かったです。
ただかなり短いお話であっという間に終わってしまうので、もっとじっくり読みたかったかな。
オメガバースものなのでやはり、項を噛んで番になる所まで読みたかった。
丞がまだ項を噛まないのは、お互い学生だし付き合い立てだし、真生を大切に思うがゆえなんでしょうけど。
なのでこれから一緒に過ごして、大人になって番になる二人も読んでみたいです。
心があたたまる、優しい気持ちになれる、泣ける。
そんな単純な作品ではありませんでした。
晴人が抱えている苦しさ、焦燥感、孤独は、とてもじゃないけど私には想像もつきません。
それでも、そんな苦しい状況でも、けして周りに当たらず、不平不満も言わず。
そんな優しい二人だからこそ、読んでいて苦しかった。
読み終わった後は、幸福感よりも苦しさの方が私の場合は大きかったです。
二人が老人になってからも描かれていますが、そこもまた、ただ「晴人頑張って生きたんだね」とか「二人は老人になってからも一緒に生きているんだね」とか、手放しで喜べるものではなく。
正直、晴人が認知症になっている描写まで盛り込む必要はあったのかなと…思わなくもないですが…。
二人はとても幸せそうで、きっとハッピーエンドなんです。
でも読者としては、あくまで私の場合は苦しさの方が強かった。
ちょっとナメてた…。
正直表紙見た時、こんなに独特のテンポと世界観で描く作家さんだとは思わず。
中身を読み進める内にそれがどんどんわかり、ナメてて申し訳ねえ!!となりました。
いやー受の衛星…そりゃ女性とのHは不得手だろうなぁ…。
完全に姫だもの。
姫気質100%。
そりゃ可愛がるより可愛がられる方が向いてるよ。
あらすじとか、序盤だけ試し読みしたりすると、ありがちなBLかな?とも思うんですが、全くそんなことはねえ!
攻の月王くんの想いの深さにキュンキュンしました。
てか衛星は美形で校内中、道ですれ違う人、みんな見惚れてるけど。
月王も美形なんですよね?
マスクしてるだけでそこまで目立たないもの?と思うほど月王は学校で目立ってませんが、本当にかっこいいです。
良かったね、衛星!
ここまで面倒み良くて愛情深い人じゃないと、君の恋人は結構大変な気もするから!←
あまりに姫だから!
成一は、隣の部屋に住む獣人・寺一と親しくなる。しかしある日寺一は「久しぶりに故郷に帰る。家族孝行する」と言って出掛けたきり、帰らなかった。そんな中訪ねて来た獣人達に、「寺一は死んだ」と聞かされー。
というお話です。この作者さんの作品を読むと度々感じることですが、行間(描かれていないシーン)が多い…!
寺一とこれから親しくなりそう!というシーンの後、いきなり寺一は不在で「死んだ」報告…。
「え、ここ結構日数たってる設定なんだ…」ってなります。
寺一は一族みんなから嫌われていたそうですが、なぜそこまで嫌われていたかの説明はありません。
狼として生き返る寺一ですが、完全に狼となった後、寡黙キャラから成一好き好きキャラに。
ゴムの袋を自分で開けたりしているので、それなりに知能はあると思いますが、見た目は完全に狼。
人間の言葉を話したりもしません。
ガッツリ狼の状態で、成一とHします。
二人が惹かれ合い親しくなる過程のシーンが全く描かれていなかったので、そこも読んでみたかったかな。
二人のすれ違いというか、攻・遥の愛情表現の下手さも、受・晃成の意地っ張りさももどかしい。
でもそれがリアルな恋愛かなと思います。
傍から見たら、序盤で記念日に遥が早い時間に帰宅したことも、ケーキが冷蔵庫に入っていたことも、遥はちゃんと記念日を覚えていて祝おうとしているってすぐわかるんですけど、でもそれが当事者の晃成の立場になると、わからないんですよね。
ここから先完全にネタバレですが、幼い頃から好きな人からバラの花束を贈られることに憧れていた晃成のために、遥が用意したもの…自分が独立して構える店の庭に、何とバラが咲き誇る花壇。
ここちょっと泣きそうになりました。
大きなバラの花束を抱えて登場とかでなく、予想のずっと上だった。遥の愛情が。
過去に他のクズ男からその憧れをバカにされたこともある晃成にとって、どれだけ嬉しいことか。どれだけ遥という男が真摯な人間か。
ずっと幸せでいておくれー!と、心があたたかくなる作品でした。