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エキスパートレビューアー2020 「BLアワード検定」合格証

女性みざきさん

レビュー数187

ポイント数1362

今年度8位

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演劇を観ているような

1巻から続けて2巻目へ。
謎だらけのまま終わった1巻ですが、2巻で少しずつ謎が明かされていくものの、まだまだ謎が残る。
シンプルな絵柄に、決して多くはないセリフ、1コマ1コマの中の少ない情報量。
ここに沢山の「分からなかったこと」が詰まっているわけなのですが、これがまた難解なのです。
うーん、なんというのかな。
1度口の中にポンと入れてみて、何度も何度も咀嚼してみないと上手く飲み込めない感じ。
正直、読みながら混乱してしまうのだけれど、どうにも引き込まれてしまうのが不思議。
分からないけれど面白いんですよね。

まず、このお話は現実なのか、果たしてそうではないのかが分からなくなって来た。
一風変わったテーマの演劇を観ている時の感覚に近いかもしれない。
かなでが子供になってしまったのは、逃げていた過去にしっかりと向き合わなかったからというのが大きな原因なのでしょうか。
なんだかこれだけでは終わらない気がするのはなんでだろう。
2巻では現在と過去の記憶を行ったり来たりしながら、かなでに焦点が絞られて描かれています。
裕太という才能への嫉妬、雀への恋情、勇紀からの想い、そして「やりなおし」をしていく。
かなでが前へ前へと進んでいく様子が見られます。

でも分からないのが、勇紀にだけ見える男がかなでにも見えるのはなぜなのか。
そして、1巻で印象的だった「紙の上でなら、なんにだってなれるんだ」という言葉については概ね理解が出来たような気がするのですが、そうすると1巻で勇紀のモノローグにあった「オレの物語を手に入れた」が謎です。
勇紀の言う物語とは一体なんなのでしょうか。
時系列を整理すると、別れ話が出た後にかなでが子供になってしまったことになると思うのです。
となると、別れ話が出た時に勇紀が「かなでに愛される世界がほしい」と言っていたのがすごく気になる。
もしかしてこれは勇紀が望んだ世界なのかな。
そもそも2人が付き合うことになった理由が曖昧なようにも思えますし、ちびかなでが拒絶した時の言葉を見ると本当にかなでが理由?と思ってしまいます。
うーん、難しい。けれどこの感じが心地良い。
もうこれはBLという括りではない気がします。

しかし、2度も振られそうになる勇紀があまりにも切ない。
かなでのことを健気に愛し続ける勇紀が、次巻ではどうか報われてほしいと願いつつ、最終巻に進みたいと思います。
最終巻はスカッと謎が解けて終わってほしいなあ。

導入から惹きつけられる

志村貴子先生の過去作品を追っかけ中。
あらすじ通り、付き合ってアパートで同棲をしているカップルのお話なのですが、導入の時点でもう既に展開が気になって仕方がないんですよ。

今作の攻め・かなでは、いくつかのアルバイトを掛け持ちし、小劇団の劇団員として舞台の上でさまざまな役を演じているけれど、肉体そのものは変えられるはずもないのに、ある日突然なぜか子供になってしまった。
受けではなく攻めが子供になるというのが面白いですし、ちびかなでの子供らしい丸みのあるラインがすごく可愛くて。
しかしながら、中身は性欲旺盛な成人男性なので発言は全く子供ではないのですけれど。

あり得ない出来事に、お互いに戸惑いながらもなんとか現状を受け入れ始めるかなでと勇紀。
そんなバタバタとした様子の序盤の段階で、さらに勇紀の弟・裕太がアパートに転がり込んでしまう。
かなでが小さくなってしまったこと、裕太の存在によって、穏やかなまま止まっていた時計の針が少しずつ進んでいくのですが、もう既に出来上がっている2人に訪れる怒涛の展開、そして徐々に過去が明らかになっていくにつれて、序盤とは打って変わって不穏な空気が流れて来るのがなんとも…
うーん、志村先生マジック。
かなでが裕太に対してコンプレックスを抱いていそうなことも、少年時代の勇紀が援助交際のようなことをしていたことも今後お話に関わって来るのでしょうか?
あのお金で演劇を観たというあたりに闇深さを感じてしまうな。
甘い雰囲気に見えた2人ですが、後半部分をよく読んでみると物凄く複雑なものがありそうで、今後どうなってしまうの?と、非常に展開が気になります。
「紙の上でなら、なんにだってなれるんだ」
「オレもそうしたいと思って、オレはオレの物語を手に入れたんだ」
という言葉がすごく意味深で、もしかしてこの世界は2人のどちらかが描いている物語なのか…?なんて思ったりして。

1巻の時点では、伏線や謎があちこちに散りばめられていて、本当にまだ分からない事だらけなのです。
どうしてかなでは小さくなってしまったのか?
かなでが元に戻る条件はなんなのか?
この「分からない」楽しみながら続きも読んでみたいと思います。

恋人が好きなのは

本編終了後、社内報をうっとりと眺める志月のお話。
志月の塚森常務へ対する感情は、ある意味アイドルを見ている時のような感覚なのではないでしょうか?
というよりも、どちらかと言うとこちらの短編では志月のスーツへの執着やスーツフェチっぷりがこれでもかと描かれています。
「いつもより少々派手なイタリア製を持ってきたところがいい」etc…と、縫製国別に分析をする見方が非常にマニアックです(笑)

そんな、塚森常務が大きく掲載された社内報を幸せそうに眺める恋人の姿を見て、分かりやすく嫉妬を口にする稲葉が可愛らしい。
と、さり気なく「彼氏」を強調する稲葉にクスッとしつつ。
普段は無精髭にぼさぼさ髪、ノータイにくしゃくしゃのシャツ、トイレサンダルとだらしのない服装の稲葉が、今日は所用があったからとこれまた素敵なスーツ姿なのですよ。
これには志月もグッときてしまいます。
上背のある男前がきっちりとしたスーツを着ているとなんとも言えない魅力がありますよね。分かる。
本編での、みずかね先生の描かれる稲葉はめちゃめちゃかっこよかったですし。
スーツ姿の稲葉も素敵だけれど「どんな服装の教明さんでも全部大好き」と語る志月に今度は稲葉の方がグッときてしまう…
もう、超がつく相性の良さなのでは…?
その後に余計な失言をうっかりしてしまうあたりが志月だなあ。
志月が稲葉を服装をきちんと戻そうとするシーンがこちらでも少しだけ見られます。
攻めの身嗜みを自分好みに整える受けの描写がなんだか好き。

志月視点で語られる、べたべたに甘いカップルの可愛らしいお話でした。
志月はこの後本当にベッドで沢山泣かされるんだと思う。

萌えとときめきが詰まったオフィスもの

栗城先生買い。
なぜ私は購入後にしばらく寝かせておいたのだろうか…と思うほど、ものすごーーく面白かった!
いやあ、こちらの作品好きですね…!
面白かったし、何より萌え転がってしまった。

少々耳慣れないタイトルで、読む前にちょっと難しいお話なのかな?なんて思ってしまったのですけれど、決して難しいお話ではありません。
会社を中心とした、いわゆるオフィスラブものです。
2人の出会いから始まり、まさかの再会からのじれじれもだもだあり、社内事件の謎の裏あり…と、盛り沢山なのですが、どれもが無理なく繋がっていて読みやすい。
犯人や事件の裏が想像とは違ったもので、こちらも読んでいて面白かった。
しっかりとお仕事描写もありつつ小難しすぎないですし、何より主人公である志月が仕事を楽しんでやっているので、お仕事描写も読まされている感がないのです。
何もかもがちょうど良いというか、個人的に痒いところ全てに手が届いて無性に萌えたと言いますか、こういうのが読みたかった!と思える作品でした。

今作の魅力はなんと言っても、真っ直ぐで明るくポジティブな性格のちょっと鈍感な受けに翻弄される、出来る男前で口は悪くもなんだかんだで甘い攻め、でしょうか。
一見すると志月が稲葉に翻弄されているようで、実は志月が無自覚に稲葉を翻弄しているんですね。
自身が年下のお日様のようなカラッとした子に翻弄されている自覚がありながら「しょうがねえなあ」「可愛いなあ」なんて受け入れてしまっている稲葉の様子が見て取れて物凄く良い。
年上攻め×年下受けの良いところときゅんとする部分が沢山詰まっている…
大人の恋愛なのにすごくじれったくて可愛いんですよ。

あの、なんかもう、最初のベッドシーンからめちゃめちゃ良くてですね。
決してシーン的には多くはないのですけれど、稲葉の年下の志月に対してのベッドでの甘やかし方が絶妙で、アーーこういうの好きだな〜!となりました。
口調的には少し荒っぽく粗野さも感じるのですが、その中に溢れ出る優しい抱き方と「受けが可愛くてたまんねえ感」というのですかね。
そういうものがにじみ出ていて、なんだかこちらまでたまらなく悶えました。

お話はもちろん、メイン2人のキャラクターがとても良くて、受けも攻めも好感度が高かったのです。
志月が社内で理不尽な目に遭っていても逆境に負けず、めげずにポジティブに頑張る子なので、お話全体の雰囲気が明るいものだったのが良かったのかな。
ストレスが溜まったりスッキリしたい時にはすぐに走りに行く…
「ここで?!」というところで、稲葉を何度か放っぽり出して走りに行く姿には笑ってしまいました。
爽やかで脳筋の受けって良いですね。
系統的には体育会系でありながら、暑苦しすぎないので読んでいてスカッとする。
しかし、あんな出来事があっても元部署に戻ろうと決断するメンタルが強くて驚きます。
今後何かあったとしても、稲葉がそっと頭を撫でてくれるだけでこの子は頑張れるんだろうな。

攻めの稲葉はとにかくギャップがずるい人。
年上の大人の魅力もたっぷりと醸し出しつつ、普段はだらしなかったり、かと思えばいざという時には頼りになったり。
初めての出会いは偶然ではないもので、素性を明かせないもどかしさと志月に惹かれる気持ちでもだもだとしながら、社内でこっそりちょっかいを出したりして。
繰り返しになりますが、志月をリードしたいのに出来ていないところが好きです。
稲葉視点の短編がまた良くて、可愛らしさもあるとても良い溺愛過保護攻めでした。
年下の可愛い恋人にどんどん翻弄されながらいちゃいちゃして欲しい。
この2人の後日談がもっと読みたいなあ。
きっとすごく可愛いカップルになっていくんじゃないかななんて。

あとがきで、稲葉の友人で志月の憧れの人・塚森常務のスピンオフも執筆されたとの事で、一癖も二癖もありそうな彼のお話も1冊にまとまって読めるのかなと楽しみ。
今作2人と塚森常務のやり取りも読んでみたい。

色気の塊

源氏名・ダンディこと奥田がとってもセクシー。
設定上では42歳との事ですが、色気があるからか、年齢はもう少し上に見えてしまうかも。
松基羊先生の描かれるおじさまが本当に色っぽいのです。
きっと、おじさま受けがお好きな方には大ヒットするのではないでしょうか?
注意点があるとすれば、同時収録かつ元となったお話の「泡の夢」では奥田が男娼として攻める側だということ。
本編の攻めではなく、逆である別の人物とではありますが、ポジション違いが気になる方はご注意ください。
どちらも出来るだなんて最高じゃないか!という方にはとてもおすすめ出来る作品です。

初恋や、後ろ暗い不倫という過去の出来事から奥田が身に付けた、相手に望まれるような自分を演じるかのような処世術が切ない。
出版社を辞めた後に選んだ娼夫という職業。
人に望まれた通り、夢や魔法のような時間を与える…
この奥田という人は、人に対して甘やかしたり与えることは出来ても、逆に甘えたり与えられることには慣れていないのです。
と、この辺りのおじさまのいじらしさと色気、心の危うさはたっぷりと堪能出来たのですが、ただちょっと、今作の2人がくっ付く理由に疑問を持ってしまったというか、あまりしっくり来なかったのが残念。
多分、伊部が奥田に執着をする理由が薄く感じてしまったからだと思うのですよね。
尊敬していた先輩のあられもない姿を見て…と、あれだけでここまで執着をするものなのかなと思ってしまった。
もうちょっとこの辺りの、伊部が奥田に執着を覚えるほどの付き合いがあったような回想シーンがあったらもっと萌えられたのかもしれません。
あとは、よくそんな編集長の居る会社にずっと居られるなあとも…
受けには好感が持てたのですが、攻めにあまり魅力を感じず。
高評価の中、評価を少し下げてしまってごめんなさい。
奥田がとろとろにされていく様子はとても良かったのですけれど。

とにもかくにも、奥田にはこれからたっぷりじっくりと溺愛されて、愛される喜びを知って幸せになってほしい気持ちでいっぱいです。

ファンタジーをあまり読まない方にも

なんて優しくてあたたかいお話なんだろうか。
読み進めながら大好きになってしまったな。

350P超とやや厚みがあるのですが、月東湊先生の細やかでスッと馴染むような文章で丁寧に綴られていて読みやすいのです。
テクノサマタ先生のイラストも作品の雰囲気と良相性でした。
内容を含む詳しいレビューは他レビュアー様が書かれているので、未読の方向けにネタバレ無しのレビューを。

竜と、剣と、青年と、そして復讐と。
あらすじを読むと、手に汗握るような王道ファンタジーものなのかな?と思ってしまいそうですよね。
確かに手に汗握るシーンもあるのですが、それよりも優しさだったり、胸にジンと来るエピソードだったり、物語全体に穏やかで小さな幸せのようなものが沢山散りばめられているんです。
妖精や精霊は出て来ますが、全く難しい内容のお話ではないですし、登場人物の人数も多くありません。
BLもののファンタジーが初めての方でも本当に読みやすい作品だと思います。
そして、何よりもお話が面白い上に読後感がとても良くて。
これはね、ファンタジー好きの方には勿論おすすめなのですが、普段ファンタジーを読まれない方にもおすすめ出来る…というよりも、ぜひ多くの方に読んで頂きたくなるような1作かも。

はるか昔、勇者の手によって「伝説の剣」に串刺しにされ、同じ場所から動けずに長い時を生きながらえていた竜と、かつて祖国を滅ぼしたものに復讐をするために「伝説の剣」を手に入れようと竜の元へ訪れた青年・シルヴィエル。
と、あらすじの通り、500年ぶりに伝説の剣を抜いた青年と伝説の剣に囚われていた竜が出逢い、共に旅をするお話です。
旅をしながら、シルヴィエルが復讐をしたい相手についてや、竜が長年囚われていた理由が判明していきます。

繰り返しになりますが、本当にあたたかくて優しいお話なのです。
王道のファンタジーでありながら、決して単純ではなく、中弛みのない展開で読者を飽きさせず、それでいて行動を共にする2人の心の距離や関係が変化していく様子が丁寧に描かれている。
雰囲気的には大人向けの児童書のBL版といった感じかな。
とにかく、お話もキャラクターもすごく魅力的なんですよ。
細かなエピソードによって、読んでいる内に登場人物達のことがどんどん愛おしくなっていくような感覚というのでしょうか。
竜と人間の組み合わせではありますが、きちんとBL小説らしさもあります。
カバーイラストを見ると、このファンタジー全開のイメージからどうやってBLに持っていくの?という感じもあるかと思います。
けれど、そちらも無理のない自然な流れで描かれていますので、まずは流れるままにお話に身を任せて読んで頂きたいな。
全体的にバランス良く描かれているのがお見事なのです。
なんだか難しいことは言えませんね。
多くの方に読んで欲しいです。

読後は心穏やかな気持ちでいっぱいになり、この作品を読めた事に嬉しくなる。
良いお話を読んだなあと思える、そんな素敵な作品でした。
日常に癒しが欲しい方や、優しいお話が読みたい方におすすめの1冊です。

噛めば噛むほど

この作品、すごく奥が深いのではないだろうか。
全体的に柔らかい雰囲気もあって、攻め・受け共に表情がころころと変わるのも魅力的で、テンポも良く読みやすいです。
だからなのか、パッと読んだ時にはコミカルでポップで可愛らしい印象を受けるのですよ。
愛してやまない憧れの画家の担当編集となった橅木と、頭のネジがぶっ飛んだような天才画家の蓮が出逢い、作品のためにと始めた身体の関係から徐々に惹かれていく。
この辺りは編集者と一芸に秀でた人間という組み合わせの作品では結構ありがちな設定だと思う。
ですが、ハッピーエンドなのかどうかは正直よく分からないのです。
ここが面白いな、考えさせるなと思いました。
噛めば噛むほど味わい深い作品なのかも。

絵しかない、まっさらだった蓮というキャンバスを橅木という1人の人間が今までに無かった体験や感情という色で染め上げていく。
恋愛面だけで見ればこれはハッピーエンドだと思うんです。
しかしながら、キャンバスが染め上げられていく事で、まっさらだからこそ描けていたものが描けなくなってしまう。
うーん、死の香りだとか、狂気のようなものはちょっと私は読み取れなかったけれど、今まで持ち得ていなかった感情を得た事による才能の死は強く感じた。
橅木は、結果的に自分の灰色だった世界を救ってくれた蓮の絵と画風を殺してしまっているんですよね。
果たしてこれは良い事だったのかどうなのかと。
一方の蓮は、過去の境遇の面が影響してか、橅木と出逢うまで良く知らなかった愛情というものを知って、目の前の世界は鮮やかに色付いていくものの、その代償に自分の全てのようだった絵が死んでいく。
想いが通じ合ったシーンの橅木と蓮の対比がすごい。
これはある意味1人の人間の生まれ変わる様子というか、再生と再起のお話なのかも。

素直に読むか、斜めからじっくりと読んでみるかで感想が変わりそう。
可愛らしい雰囲気の中に、ちょっとの毒が含まれた不思議な魅力のある作品でした。
個人的には、お話としては面白かったけれど、BL的に萌えたかと言われると中間かなあと感じたので、萌寄りの中立評価で。

王道だからこそ良いのです

適度な甘さの幼馴染同士のお話でした。
お話の展開的には、BL小説の王道というか、正直に言ってしまうとありがちなのです。
展開に目新しさや派手さは無いのですが、小難しくなくさらっと読めて、適度に萌えもあり、悪人すぎる人も居ない…と、1日の終わりやのんびりしたい時に読むのにちょうど良い温度の作品かも。
文章もすごく読みやすいんですよね。
月村先生作品ですが、今回は切なさは控えめかな。

受けの明日真視点で進みますが、明日真の片思いを強調しつつも、2人が想い合っているのは序盤ですぐに分かってしまう。
ど定番ですよ。でもこれが良いのです。

私は、明日真は健気受けじゃなくて乙女受けじゃないかなーなんて感じました。
中学時代からの腐れ縁の蒼士に想いを悟られないよう、彼の重荷にはならないように"ドライな友人"を演じている。
本当は大好きで仕方がないのを我慢をして、もう一緒に居られるだけで幸せを感じている恋する乙女みたいな。
ただ、このわざと素っ気なくしている意地っ張り描写がいきすぎると鬱陶しくなってしまったり、もしくは過去の境遇的に、もっと悲壮感があふれるキャラクターにもなれると思うのです。
ですが、明日真はそうではないのが良かった。
自分は母親譲りの顔だけが取り柄なんて言いつつも、なんだかんだでちゃんと自分を持っているし、はっきりとした物言いも出来るし、自分の非もきちんと認められる良い子だと思う。
それと、素っ気ない態度とは裏腹に蒼士にベッドまで運んで貰えるのが嬉しいからと寝たふりをしたり、ホットプレートを使いたがる理由がね、可愛かったんですよね。

そして、今回はお相手の蒼士が面白いキャラクターでした。
タイトルを見ると「受けの片思いね、わかるわかる」と思ってしまいがちなのですが、序盤から漂う両思いな空気に嗅ぎ慣れつつも、本当の意味がわかった時に「そっちか!」となってしまう。悔しい。
面倒見の良さそうな幼馴染の皮をベリっとひっぺがして、本音を解禁した後の姿が結構な溺愛執着攻めで好きでした。
優しいタイプの囲い攻めですね。
明日真が作る食事や淹れたコーヒーが好きだと言いながら、その後にだらしないところをあえて並べて好きだと言うシーンが良かった。

想いを伝え合ってからは甘さがパワーアップしていきますし、自分の将来や2人の関係も自分達自身で支え合いながら切り開いて歩いて行こうとする2人の姿は、なんだか読んでいてとても気持ちの良いものでした。
当て馬的に登場する女の子が引っ掻き回そうとしたり、蒼士の母親が出張ったりもしますが、芯の強い明日真がしっかりと解決してしまうのでハラハラ感はあまりありません。
スタンダードな良さを味わいたい方におすすめの作品です。
蒼士の腹違いの兄・カズマが魅力的な人物だったので、彼のお話も読みたいなあなんて。

難点があるとすれば、人名間違い。
明日真と蒼士が逆になってしまっている箇所があります。
盛り上がりそうなシーンで校正ミスがあると、一瞬ふと我にかえってなんとも言えない気分になりますね。

攻めのキャラクターが強烈

受けの部屋に盗聴器を仕掛けたり、カメラを仕掛けるのはお手の物。
誕生日プレゼントはアナニー用のアダルトグッズ。
自慰行為も監視すれば、GPSで行動範囲も把握している…という、側から見るとすごくやばい攻め。
学校の教室でも常にべったりとしていて、受けが飲み終えた飲み物のゴミですら欲しがる。
いやもう、どこからどう見てもやばいやつじゃないですか。
なのに、何故か受けにも周囲にも自然と受け入れられてしまっている事もあって、読んでいる内に違和感が無くなって来るのが摩訶不思議。
明らかに両想いな幼馴染の男子高校生2人の背中を後ろからえいっと押したくなってしまうような、もどかしくもえっちなラブコメディでした。
ベッドシーンの汁気が10代らしからぬ濃厚さです。

ちょっとね、訳が分からないんですよ。
そもそも隼人はゲイなのか?それとも自慰行為を追及してアナニーをするようになったのか?
もしかしたらここは深く考えてはいけないのかもしれない。
頭を空っぽにしたまっさらな状態で、攻めであるみのりの超ド級の妄愛溺愛執着愛っぷりを楽しむ作品かなと思います。
ほぼストーカーに近い行動の数々をしているのに、それでも拒否されず、気味悪がられていないのは隼人に対する信仰心が強いのが分かるからなのかなんなのか。
でもよくよく考えると、隼人もなかなかの変わった子なんですよね。
尻への興味は人一倍ですし、幼馴染に部屋を監視されていても平気なのかと。
どっちもどっちというか、伊達に長年幼馴染をやっていないな…というか、非常に相性ぴったりな2人でした。
もう、最初っからお互いの事が大好きじゃないか?と思うのに、当て馬にもならなかったモブくんがきっかけでようやくくっ付きます。

あとがきで作者様が書かれていた「同担拒否」がぴったりな、崇拝型の溺愛攻めです。
一風変わった執着攻めがお好きな方はぜひ。

攻めの病んでいない受け専門セコムタイプの執着っぷりはすごかったですし、えっちもたっぷりだったのですが…
うーん、何か他にもうひと萌え欲しかったのでこちらの評価に。
紙本修正は白短冊でした。

繊細な心理描写が光る作品

紙本購入の際はBL棚ではなくフラワーコミックス棚に置かれているかと思います。
少女漫画レーベルからのBLものという事で、一体どこまで攻めているのかとワクワクしながら読んだのですが…
結果、がっつりと攻めていました。

確かに出版元的に珍しくはあるのですけれど、少女漫画誌から出ているというのはあまり関係ないかと思います。
なぜかと言うと、作者様の描かれる心理描写がとても丁寧で、主人公である新見のマイノリティに悩む姿や、澤根との関係性の変化がBL誌に載っていてもおかしくないものだったから。
途中から少女漫画レーベルから出ている事を忘れて読んでしまっていました。
良い作品はジャンル分けなんてものは必要ないのです。
男子校という特殊な空間で繰り広げられる男子高校生同士の繊細で危うい空気が漂います。
2人だけの秘密のような、ちょっぴり背徳感のようなものもある。
そして、マイノリティに悩む青少年を描きながら、誰も傷付ける事のない優しい作品でした。
絵柄もとっても美しいですよね。

"女の子がいない男子校だから"という魔法。
自身がゲイである事に悩む新見と、ノンケの澤根。
学校の中だけのセックスフレンドという関係。
マイノリティを意識するあまり、男同士という事や男同士のちょっとした触れ合いにすら過敏になってしまっている新見に対して、何にも囚われずおおらかで自然体な澤根という正反対の2人が良いです。

どんどん澤根の事が好きになっていってしまうけれど、ゲイではない彼をマイノリティ側に引き込んで良いものなのかと思い悩む新見。
健気さや臆病さがリアルで愛おしいキャラクターでした。
自分の気持ちを正直に認める事って、とても勇気がいることだと思うのです。
その辺りがじっくりと丁寧に描かれていたのが良かった。
まるまる1冊新見視点で進むので、自分の気持ちや言葉を飲み込まず、我慢をせずに正直にと、澤根とのやり取りを機に良い方向へ変わっていく姿や心境の変化と成長が見られます。

澤根が、イルミネーションを見るカップルだらけの中で尻込みする新見に「楽しいよ。男2人でも。きれいだよ」と言うシーンがとても好き。
これには新見が惹かれていくのも納得というか、終始無表情でクールに見える澤根の言葉ひとつひとつがずるいんですよ。
有り体に言ってしまえば、優しくて甘くてきゅんとするワードが多い。
この辺りは少女漫画を読んだ時のような気持ちが味わえるかな?と思います。
好きを自覚するのが遅かっただけで、新見から誘われた事を受け入れた時にはもう悪からず思っていたのではないかと感じます。
個人的に好きなキャラクターでした。

セックスフレンド関係からという事で、序盤から性的な描写は多いというのに、決して下品にはならないのです。
むしろ、新見の健気さや必死さが伝わって来る必要な描写だったかなと思います。
中盤から終盤はまた空気感に微妙な変化があらわれていく。
自分の気持ちに正直になっていく心理描写も併せて、沢山語るわけではないけれど、お互いを大切にしながらの「好きが溢れるセックス」という感じが強い。
終盤の「少しでも長く入れていて欲しいから、前はさわらなくていい」と言う新見は凶悪ですね。

青さや繊細さが光る、決して温度は高くないけれど、静かに淡々と進む心理描写が素敵な作品でした。
カバー裏の男性担当さんとの裏話も面白かったです。
続編も今後発売予定との事なので、そちらも楽しみですね。