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エキスパートレビューアー2021

女性fandesuさん

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よくぞ書いてくださった

大好きなトンチキBL、ウサギの王国シリーズがまたしても読めるとは!
嬉しかったんですけれど、同時にかなり吃驚しちゃったんですね。だって、2012年から14年までの間に3冊が出版されたシリーズなんですよ。
8年後の4冊目ですよ。

松雪さんは2011年からものすごい勢いでトンチキ系のシュールなBLを次々出されて、そのパワーに平伏していた記憶がありますが、私はこのシリーズが一番好きなんです。なんたって『ウサギの性質を持った人類』ですからね。繁殖力が半端ないですよね、ウサギって。そこを笑いのタネにしちゃってるんです。
そして、我々人間界でのことわざや風習・言い伝え等がなんか変に曲解されて伝わっている……それに何度爆笑させられたことか。

以前のパワフルな馬鹿々々しさに比べればおとなしめだと思いました。
ただやっぱり可笑しい。
ギャグテイストのBL小説はめっきり減ってしまった感じの今、お好きな方はご覧になった方が良いと……あ、設定をご理解いただくためにはシリーズ第一作の『ウサギの王国』を読んでからの方が楽しめると思います。

諸行無常

『神』を付けたのは『卒業生諸君!』の中の、あるシーンに心を奪われたから。
全体の7割くらいの所に出て来るそのシーンは高松と鶴見の3年間の成長を語るものなんですけれど、過ぎ去った時がもたらした成長を誇っているのに、どこか悲しい切なさがあるんです。
たぶん、時というものは過ぎ去って、なくなってしまうからなんだと思ったんですね。
美しい時も、愛おしい時も、全部過ぎ去ってしまう。
そういうのが、すごく心に沁みました。

『寮生諸君!』のスピンオフ、というか、続編って言っても差し支えないお話だと思いますが、そちらを読んでいなくとも楽しく読めます。
でも、読んでいた方がニヤニヤできます。
あ、読む順序はどっちが先でもニヤニヤ出来そう。

満足です

まずは宮緒さん、このシリーズの完結に心から御礼を申し上げたいです。
このシリーズ、『男の御台所』それも『実は闇組織の首領』おまけに『将軍様が受け』という「ねぇ、すっごいシリアスな文章で綴っているし、江戸ならぬ恵渡世界の構築はとっても凝っているけれど……これ、トンチキ入ってますよね?(クスクスクス)」という始まり方でした。
こういうのって宮緒さんの独壇場ですよね。
いやーん、だぁい好き。

シリーズ化して、巻数を重ねるごとにどんどん大河時代劇になって行って、最終的には神までもが参入した大反逆事件になっちゃって。
この、どんどん風呂敷が大きく広がって行く感じが実に楽しかったです。
で、私がとっても満足したのは、このとんでもなく大きく広がった風呂敷が、この巻でパタパタと綺麗に畳まれたことなんです。

いやホント、読者をのせるのが上手い、上手い。
おまけに人情話でジーンとさせてくれるんだなぁ。
時代劇だからこそ、この人情話が活きるんだと思うんですよ。
捻っていても(なんたって『恵渡』だし)ちゃーんとポピュラーな泣かせどころでは泣かせてくれるの……宮緒さん、すっごくエンターテイナーだなぁ(感嘆)!

私が一番「うぉーっ!」ってなったのは、お話の締めが『登場人物のその後』の記述であったこと。
だってこれ『アメリカン・グラフィティ』じゃん!
なんて粋なこと。
同時に、シリーズが終了する、そこはかとない寂しさも漂っていて、本当に素敵な大団円の書き方でした。
うん、とっても満足したんですよ。

事件と恋愛がミスマッチ

真式さん、好きなんだけどなぁ……亜樹良画伯のイラストも美しいし。
でも私にはダメだったんです。このお話。
酷評で申し訳ないのですけれど感想を書いておきたい。
ミステリと言ってもハードボイルド系で、謎解き要素は少ないと思うんで、犯人とか動機とかの派手なネタバレをしちゃいますがお許しください。


まず、どうもちぐはぐな感じがしたのは2人の恋愛と、操作する事件のトーンが合わないこと。
お話は都築視点の所為もあり、切々と想いを寄せるのは都築の方なんですね。
彼は友人を亡くした経験から刑事になったという、正義と(それほど暑苦しいわけではないけど)熱血の人なんですね。だから鏡に寄せる思いも真直ぐ。

ところが事件の方は自死がらみって言うか、自殺幇助事件で。
お話に出て来る自死を願う人たちが『なぜそう思うのか』について書き込まれていないんです。だからなんか『世相として自死に向かっている人たち』っていう感じの集団になっていて、とにかく暗い。
真直ぐな恋愛部分と理由不明で暗い事件部分が同居しているので、場面が切り替わる度にムードが変わっちゃって、ついて行けなかったんです。

更に決定的だったのは下記の2点です。

ひとつは、自殺した人たちの部屋に同じ種類の珍しい花が置かれていたことを『自殺者は全員がこの花に関わる同一人物と接触した』と推理しちゃうこと。
『自殺した人の処に花を置いて行った』という可能性もあると思うんですね……って言うか、ミステリではこっちのパターンの方が多い様な気がします。

そしてもうひとつは、いわゆる犯人の犯行の動機が都築の説得、と言うか都築の話をたった一度聞いただけで揺らいでしまうこと。
「いや、そんな簡単にくつがえる動機なら、ここまでのことはやらんでしょ」と思ったら気持ちが一気に冷めちゃったんです。
これは悲しかったなぁ……

キャラクターは素敵。
あと、私が予想していた攻め受けが逆だったりした驚きとか(私は予測が外れた方が好きだったりするんです)好きになれる要素が満載だったのに、なんだか悔しいなぁ。
真式さんの『共鳴』とか『身元引受人』とかすごく好きなんで、また次作を期待して待ちます。次は私に合うお話だと良いなぁ……

愛ってことを

今作は『難解』方面の西田さん作品です。
実はかなり前に読み終わっておりまして、私の心の本棚では『大切にして何度も読み返すお話』に分類しました。読み返し3度目で、本日レビューを書いています。

正直な話、ヒジョーにレビューが書きづらいお話です。
おまけに大層、人に薦めづらい(だから『中立』評価です)。

でも、ここには私の大好きな『西田さんテイスト』が満載なんだよな。
例えば、中年に入りかけた男性に恋について語る(恋を語るんじゃないのよ。概念としての恋について語るの)初老の女性が出ているのとかすごく好みだし、木田の片目が『若い頃、チンピラの女に手を出して潰された。でもそのかわり詫びとして組から建築系の仕事を斡旋してもらった』なんていうエピソードなんか、もう震える位好き。

そして何と言っても木田と藤井にしか見えない翼の存在です。
見えたり見えなかったり、時折移動したり。
恩返しの証の様にも見えますが、とんでもない呪いの刻印みたいな仄めかしもある。
何の比喩なのか解らない、って言うか、その存在が確定していないんですよ。
常に揺らいでいるの。

藤井の独白の中で「一番好きな人」という科白が何度がありました。
『好き』って何なんでしょうね?
彼は、事故で意識が戻らないで入院中の、幼い娘を愛しています。
でも、小学生の頃は、木田と「ずっと一緒にいたい」と思う位、彼のことが好きでした。
大人になった後はゲイとして遊んでもいたようなので、好きな人もいたでしょう。
愛という存在も、前述の翼の様に確定せず、常に揺らいでいます。
お話のラストを読むと、飄々としていて何ものにも固執していない様に見える木田ですら、実は藤井と同じ様な揺らぎを隠し持っている様に私には感じられました。

実際、愛ってこんな感じですよね。
私たちはいつもチラチラと移り変わる感情の揺らぎと共に生きています。
安定したものなど何もない。
ないけれど、でも確かに、そこに『愛』というものがあった。
あるいは、ある時がある。

難解なお話を読みながら、そんな事を考えました。

歳をとったので

2015年版を読んだ時はそれほど「泣ける」とは思わなかったのですが、あれから7年。歳月が涙腺を緩くしただけじゃなくて、当時の私が気づかなかった部分で心を揺さぶられたんだと思います。

榎田さんのお話の多くに『死』が出て来ます。それもかなり印象的な形で。
たぶん、私の『死のバリエーション』が豊富になったんだと思うのですよ。自分自身もどんどん近くなるし、それに接する機会も増えますしね。いきなりやってくるものも、期限を決められて嫌でもそれに向けて歩いて行かなければならないものも、つらいとか悲しいとかだけじゃなく、仕方がないこととして受け止めちゃうこと自身の冴えた寂しさみたいなものを感じさせてくれるお話だと、今回は思いました。

このお話が3Pでエロエロだったりするのは、そんな寂しさを抱えて辻は生きていかなければならないから。
財津と菊池は辻の守護天使なんだと思うんですよ……こんなこと書くと神様に怒られそうだけど、でも徹底的に甘やかしてくれるでしょう?

で、寂しいのは辻だけじゃない。
全ての人が「サヨナラ」に向かって歩いて行く訳ですから。
このお話がBLとして書かれたのは、榎田さんからのギフトだからだと思うのですね。守護天使のドリームを見させてくれる、って感じ。

旧版を引っ張り出して比べてみましたが、時代遅れのアイテムを現代のものに置き換えたり、都合の良い『偶然』を整合性のあるものに変えたりしていました。
あと、沢山の『行替えの変更』。
旧版はB6サイズ。これは文庫サイズ。
直したので開いた時の見た目が綺麗なんですよ。字が刷られている所と空白スペースの対比が。
このお話、血やその他液体の飛散が鮮やかなんですよね。だから、本を開いた時の見た目も大切なんじゃないかと、行替え変更に頷けました。

ストーリー運びに大きな変更はありませんが、言い回し等を変えて今回の方がシャープな印象になっていると思います。

榎田さん、やっぱ好きだわ。

相変わらず色々考えさせてくださるなぁ

いやー、みなさんのレビューが大層面白いですね。
こんな風に感想が多様にばらけるのも木原さんのお話だからなんだろうな。

『痛くない』と思っていたんですよ、本当に最後の方まで。
で、書下ろしの『Birthday』のラストで途方もなく胸が痛んじゃってね。
種類としては、鈍器で殴られたような痛みでも、鋭利な刃物で切られた痛みでもないんだけど。強いて言えば慢性病みたいな痛さかな。大騒ぎするほどではないけどヤバそうな感じのする痛さ。

お話の中で、ガレもジャックも「愛とはなんだろう?」と考えます。
ガレは自分が考えていた『愛』が、ジャックと出会うことで「思っていたんとちゃう」ってなってしまったから考えちゃったと思うんです。
ジャックは『愛』についてなんて考えたこともないし、考える必要もないと思っていたんだけど、ガレがあんまり「愛してる愛してる」言うものだから考えちゃったと思うんです。

考えた結果を2人とも言及していないのですが。
でもたぶん、2人の結論は全然違うと思うのね。
そして互いに相手が出した結論を理解できないだろうとも思う。
最終的には一緒にいることが心地良いと思って、今後も一緒に暮らし続けるだろう未来が示唆されて、甘っぽい空気が漂う終わり方なんだけれど……でも、すっげえ不穏。
だって2人は全く別のことを考えているんだもの。
相手のことを全く理解していないんだもの。

私の大好きな歌に『自由とは何も持っていないこと』という歌詞があるんですが、これ、ジャックにピッタリだな、と。
ある種の拷問でヴァギナを作られちゃっても悲観したりせず、生きるためにすべきことをしているのが実にクール。執着をしないところがカッコいい。
でもでも、何故か萌えが訪れず。
たぶん木原さんが、すごい勢いで愛をぶっ壊した所為だと思う。
『理解があって愛がある』なんてお綺麗なことを考えている私は、かなりメンタルをやられました……でも「面白い」って思っちゃう。
木原さんって(絶句)!

今後の悲劇の匂いしかしない

個人的感想ですが前作『秘蜜』は調教ものの金字塔だと思っておるんですよ。
まさか12年も経ってから続編が読めるとは思っていませんでした。
いとうさんありがとう。

なおかつ、イラストを描こうと英断してくださった石田惠美画伯にも大感謝です。
前作は朝南かつみ画伯なんだもん。
おまけに物語世界とのマッチ度が半端なかったものですから、引き受けるのは勇気のいることだっただろうと思うのですよ。
朝南画伯のインパクトが強すぎて(特に英一の目つき。あれに代わるものを描くのはなかなか困難だと思う)脳内再生はどうしても前作系の見た目になっちゃってしまいましたが、石田画伯も大健闘されていると思います。

さて内容です。
ひとことで言えば、エリートと御曹司のふたりから、羞恥奴隷に堕とされる『普通のリーマン』のお話です。
いや、ホントにそれだけなのね。
この本の中に書かれている事件eyc.は、全てその目的のために、意図的に、英一と季之がやっている事。
やられる側の佳樹ですが、合意がないだけじゃなく嫌がっている。
普通の生活からはみ出さない様に精一杯頑張って、抗っているんです。
で、その『普通さから抜け出せずに快感に抗う所為で羞恥心がなくならない部分が攻め2人の被虐心を満足させる』という構造になっているんですよ。
なので、エロい嬲りが満載です。

ただね、読み終わってものすごい寂寥感を感じちゃったんですよ。
『ふたりは佳樹を2人だけの、更に気に入ったものにするために、結果として仕事を辞めさせるところまで追い込んで行っちゃいました』という所でお話は終わっているんですけれど、これ、読み終わった直後に頭に浮かんだのはミダス王なのね。

佳樹が佳樹としてあったのは、社会と接していたからなんじゃなかろうかと私は思うんですよ。会社に行かせずマンションに閉じ込めたら、ふたりが所有していた『前のやつら』と同じようになっちゃう可能性は高いんじゃないかなぁ……

英一と季之が抱えるストレスや、世間に対する納得のいかなさをそれぞれがまず自覚すべきだよね。
勿論、佳樹もそうすべき。
そうじゃないと結局、互いに一緒にいるのにいつも一人ぽっちという状況は変わらないと思うんですよね。
本来は3人ともそういう人を求めている様にしか思えんのですよ。
……いや、言い方は『恋人』でも『奴隷』でも良いけどね。

「おめーら、わかっとらんなー」という感想も含めて、結構萌えました。

tkbは解るんですが

バーバラさん、
何度も書かれているので、バーバラさんにとって萌えツボなんだろう(推測)というのは解ったんだけど……私には雄っぱいミルクの良さがよくわかんないんだよぉ~っ。
私は『陥没tkb』の方がそそられるのよね。
でも、このお話でちょっとだけ分かった様な気もするんですよ。

天才的パティシエ嶋田は高校時代に可愛がっていた後輩、野崎の雄っぱいミルクを舐めちゃって、その奇跡の味が忘れられなくなっちゃうんですよ。
その味を再現するためにパティシエになり、追い求めた結果、世界的なコンクールでも優勝するとんでもない腕を持つように。
なんて正しい執着なんだ!

なんでそこまで執着するのか?
そう、タイトルどおり苺乳には秘密があるんです。
雄っぱいミルクの旨味はミルクの旨味にあらず。
「じゃあなんなのさ」と言えば……いや、それがこのお話の一番大切なネタだと思うので書きません。
繰り返しますが、私は読んでバーバラさんが『雄っぱいミルク萌え』なのがちょっと解った様な気がする。
そのキーワードに当たりを付けると『純愛』なんじゃなかろうかと。

表紙イラスト(奈良画伯、本当に良いお仕事をなさる)の醸すイメージの通り、可愛らしくて、ちょっと馬鹿々々しい(褒めてます)お話です。
お話で起きる『事件』もあまりにも現実離れしているので「これはないだろう」と言うより、笑えるんだもん。
こういうノリ、大好きです。

諸行無常

出版社あらすじにあるとおり、初っ端から某有名錬金術師漫画では禁忌となっていた人体練成をやってしまうのですよ、このお話。それだけじゃなく、うっかりゴム手袋まで入れられて、出来上がったヴィヴィの体は片手片足がぐにゃぐにゃしているという、なんか「ギャグなのか?」という始まり方。

読み進めたら全然ギャグじゃなかった。
生と死とか魂について考えさせられちゃいました。

「同じ魂を持っているのにヴィヴィが自分とヴィクトールは違う人間だと感じているのは何でだろうな」とか「リュカの魂の持ち主(正体を知りたい方は本編をお読みください)とリュカも性格が違う様な気がするんだけど」とか「練成の際に魂だけでなく記憶が引き継がれれば、それは同一人物なのか」とか……

物語の後半に大きな事件が起きて、リュカはまたひとりになります。
師匠のヴィクトールが死んでしまった時、彼はそれを『なかったこと』にして暮らし続けたのですけれど、今度は逃げずにきっちり向き合います。
それによってリュカは大人になる。
この展開もね、とても納得がいったし、面白かったんですよ。

小難しいわけじゃないんです。だってLOVE部分に禿萌えしたんですもん。
ってか、幸福というものを際立たせるために錬金術を持ち出したのかもしれない、なんて思うのよ。
だって、このお話のラブシーンにギュンとなっちゃうのは『その一瞬一瞬の幸福感、二度とない美しさ』に溢れているから。

この世のすべては変化していくので、幸せはほんの一瞬。
でもだからこそ、強く輝くのだと思っちゃったんですよねぇ。