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愛しいと思える存在

個人的にはBLというよりひとつの物語として間違いなく神作品だと思いました。

裏表紙のあらすじや帯をろくに見ずに読み始めたので、タイトルと絵から感じた物とはかなり違う方向性の物語で衝撃を受けました。
後々読んだら、ちゃんとあらすじや帯に凝縮されていましたね。

この手のお話はとても好きなので私としては嬉しい誤算でしたが、おそらく好みは分かれそうです。
じんわりとあたたかくて切なくてさびしくてなんとも言えない読後感がたまらない。
そんなお話が好きという人にはおすすめです。


さてここからはネタバレで。


疲れた役人矢澤とねこレンタルとして働く人間タマが朽ちる町で出会って愛を育む物語。…というと合ってるんだけど全然違う気もしてくる、深い重い物語。
これ、読み返したり深く考えていくと、メリバかと言うとなんとも言えないなと思えてきて。

小暮のじーさんのセリフが、この作品の芯の部分なのかと思います。
愛しいと思える存在、一緒に幸せになりたいと思えた存在、最期に愛しいと伝えてくれる存在。そんな存在に出会えた。
タマにとってはハッピーエンドなんですよね。

矢澤にとってはどうなのか。
本編最後で、見つけたこねこにタマと名付けず、タマは自分の中にいるからと違う名前をつける選択をした矢澤が、結果的に知らずにタマの本名をつけた流れがなんとも切ないけどあたたかくて、胸がいっぱいになります。
読者的には救いなんですが、矢澤にとってはタマの代わりではなく、もちろんどこかで重ねる部分はあると思いますが、あくまで新たに出会った「青」と一緒に進むということで。

描き下ろし部分も印象的で、「さびしさだけが残る」「ちゃんと残ってくれる」という表現がもうなんとも言えない気持ちでいっぱいになります。
さびしさを抱えたまま生きていくのは悪いことや不幸なことではなく、矢澤にとってその思いと一緒に生きていくのは、隣にいられなくてもタマと一緒にいられるということで。
そんな存在に出会えた、それはきっと幸福なのかもしれない。

…と、哲学のようにぐるぐる考え始めてしまいだんだん分からなくなります(笑)。

何度も読み返したい!と言うよりは、少し日を開けてじっくり読み返して浸って、を繰り返したいですね。

がんばれスティック!

前作「いつか友達じゃなくなるとしても」からのファンですが、前作のようなゆっくりもどかしく進む切ないシリアス感は全く無く、性に奔放でどうしようもないおっさん百鬼と、スティック扱いされてもめげないある種変態な四ツ森の、エロラブコメディ。

・・・だと思いました。読み始めた時は。
しかし読み進むにつれあれあれ?実はけっこう切ないんです。

百鬼が映画を撮れなくなった理由。
フラれると分かっていて告白出来ずにずっと前に進めないままでいる百鬼。
四ツ森が言った「寂しいから誰とでも寝る」というのはきっと当たっていたんでしょう。
見た目もおっさん、やることも全然かわいくない。
けれどその心の裏側を考えて百鬼を見てみると、たまらなくかわいくなってきます。

設定としてはとても切ないんですが、テンポのいいセリフのやりとりや、ヒフミやロクといった周りの良い味出しているキャラのおかげで、とてもスーっと読めます。

神評価にしようかとても迷ったのですが、もう少し素直になった百鬼のその後が読んでみたかった、というのがあるので。

それぞれの桃源郷

BLというよりもセクシャルマイノリティな人達の生き方を描いた作品、という印象が強いです。
思春期に自分の歩く道を選択するその姿は本当に切ない。
舞台が田舎というのもきっと大きいのですが、今でこそ理解あるような風潮になってきているものの、それでも本当に生きにくいよなぁと考えさせられました。
普通のBLでは上手くいくところがそう上手くいかなかったり、一応ハッピーエンドではあるものの、読後とても切ない気持になりました。

中でも一番辛かったのが、桐野の選択。
女性への大きな憧れと母親の笑顔を天秤にかけ桐野が選択した道が、彼にとって幸せだったのか。三島と別れる時の「がんばれ!」はどんな表情で言ったのか。答えはきっと読者に委ねられているんだと思います。

三島は最後に「これが自分だ」という答えをしっかり出していて、夢野とも上手くいっていて、もちろん苦労は沢山あると思いますが、分かりやすい幸せの形を手に出来たんだと思います。

それぞれの選択は、母親や周りの人々との関係性に左右されるところも大きく、思春期の少年たちにとっては辛いなぁと思いました。
柳田も、きっとその頃に理解ある人と出会えていたら何かが変わっていたのかもしれません。

余談ですが、SIDE:Aを知らず先にこちらを買い、一番最初の柳田の場面でホラーかと思い、急いでSIDE:Aを買いに走りました。
主要人物はもちろん、おばちゃん達や先生の描き方も個性的で、色んな方向から魅せてくれる凄い作家さん・凄い作品に出会えて良かったです。

とにかく痛い。重い。

ネタバレはしません。
謎が多くて物語の核心的な部分は読んでもまだ分からない、と言った方が正しいかもしれません。

他の方も書かれていますが、ララ子さんのこれまでの作品に見え隠れしていたダークな部分を前面に出したような作品。
なので、好き嫌いはハッキリ分かれると思います。
切なくもふんわり甘いララ子さんの作品が好きな方には正直受け入れられないことが多いかもしれません。
ですが、実はとてもララ子さんらしい作品なんじゃないのかなぁと思いました。
好き嫌いを抜きにして作品として評価しても、人物とその過去の描き方、お話の雰囲気、言葉選びなど、神だと思うのは私だけでしょうか。

過去の記憶を無くしたゆずる、ゆずるを大切に想う義理の弟良介、ゆずるの過去に関わるたくみ、明るさの裏に心の傷を隠したひなた。
ゆずるとたくみが再会した時に、4人それぞれの思い、ゆずるとたくみの過去の謎、ゆずるの秘密・・・様々なものが絡み合って物語が動き出す――
ホラーというか何というか不思議で痛い重い雰囲気のお話になっています。

タイトルに1とは表記されていませんが、2巻に続きます。
続きが物凄く気になるところで終わっているので、欲を言えば、1,2ヶ月後に続きが出るタイミングで1巻を出してほしかったかな?せめて1巻と表記してくれたら心の準備が出来たかな?と思ったり。

巻末収録の短編「羊の楽園」もかなり切なく痛いお話になっています。
健気すぎる売春少年のお話。
設定というかお話自体もかなり切なく痛いんですが、可愛らしい絵とモノローグのギャップでさらに痛い。痛い。

1冊通してかなり暗いというかとにかく痛い作品になっていますが、個人的には物凄く好きです。
とにかく2巻が早く読みたい!