【電子限定おまけ付き】【イラスト付き】
ファンタジー感満載の表紙ですが、等身大の恋愛を丁寧に綴った、ごくごく日常のお話。
とても繊細で心に沁みる優しい作品でした。
こちら、コンプレックスがテーマになるんですよね。
主人公である攻めは先天性獣化症であり、受けもまた、人とは違う個性を持っている。
そんな、それぞれ劣等感を抱えた二人が偶然出逢い、ゆっくりと心を通わせ、やがて互いが大切なギフトだと気付く。
これは完全に私事ですが、事故による怪我で、手に障害があるんですよね。
私にとってはこれが一番のコンプレックスで、長らく新しい自分の手を受け入れる事が出来なかった。
怪我が治ったあとも、ずっと包帯を巻いてましたもん。
そうすれば、変形しちゃった自分の手を見なくてすむから。
その上プライドだけは無駄に高いから、周囲には「自分は全然気にしてない」と平気なふりをして。
今作はまさにそんな難しく繊細な部分。
人のコンプレックスを扱いますが、上から説教臭く高説をたれるでは無く、馴れ馴れしく分かったふりをするでも無く、ごくごく自然に優しく寄り添ってお話を書いてくれています。
終盤でタイトルの意味が分かりますが、思わず泣いちゃいましたもん。
誰でもコンプレックスの一つや二つ抱えてると思うんですけど、読み終えたあとは少し前向きになれる、とても素敵なお話だと思います。
あと、素直にこれがデビュー作ってすごいと思う。
ベテラン並みの完成度と、なにより読ませて心を動かす力がありますよ。本当にすごい。
ザックリした内容です。
先天性獣化症と珍しい症例を患い、狼のような姿で生まれてきた大学生・祭。
偏見の目にさらされつつも、それなりに折り合いをつけ真っ直ぐに生きているんですね。
そんなある日、高校を中退してひきこもりになってしまった少年・哲平の家庭教師をする事になってー・・・と言うものです。
まずこちら、繰り返しになりますが、ごくごく等身大の恋愛を丁寧に綴った現代ものになるんですよ。
攻めはいわゆる獣人になるんですけど、それも「先天性獣化症」と言う症例扱いで。
家庭教師とその教え子。
二人の出逢いから、どこにでもありそうな日常のエピソードを繰り返し、少しずつ少しずつ二人の距離が縮んで行く様が丁寧に綴られます。
これね、見た目が明らかに人とは違う祭。
彼から見た世間と言うのは、時に残酷で時に酷く冷たいのです。
また、一見「普通」の哲平。
彼もまた、人とは違う個性を持ったが故に、心に深い傷を負って高校を中退、引きこもるに至った。
祭ですが、決してスパダリでは無いのですよ。
弱さも抱えているし、鬱屈もある。
それを隠すのが上手い分、哲平より根が深い気さえしちゃう。
ただそんな彼だからこそ、哲平のささいな表情等の変化に気付き、優しく寄り添えるんですよね。
踏み込みすぎないように。
少し距離が近づけば、今度は辛さを吐き出して重荷を下ろせるように。
そして哲平ですが、どこか庇護欲を誘うのです。
生真面目で、不器用で、また甘えるのが下手で。
最初こそ、そんな何か心に傷を抱えているであろう哲平を、まるで弟のように守ってあげたいという意識でいた祭。
それが、少しずつ少しずつ恋心に変化してゆくのもとても自然で。
互いに異質な存在であるが故に、世間から弾き出された二人。
だからこそ、分かりあえる部分があると言うか。
ちなみに、理解者だと自身では思いながら、気付かないうちに実は誰より酷い差別をしちゃってる事って普通にあるのかもと怖くもなって。
哲平の母親ですが、祭に対してとてもフレンドリーです。
でもそれは彼をキャラクターのように見て喜んでるだけで、実は同じ人間扱いをしてないんですよね。
だからこそ、祭を繊細な「個性」を持つ哲平の家庭教師にした。
なんとも皮肉だし酷い話で、この事実が分かった時にはとても心が痛みましたよ。
彼女が息子である哲平を愛してるのは確かだからこそ、余計に。
あとですね、このお話。
特別派手な出来事は無く、そんな感じでとても静かに、穏やかに二人の恋は進むんですよね。
ちょっとした誤解やスレ違いはあるんですけど。
で、それがとても素敵だと思うのです。
こう、激的な出来事なんて無くても、ささいな日常を繰り返して、人は分かりあえるし、恋にも落ちる。
また、世間の冷たさに苦労したり傷付いたりした二人ですが、同時に世間には理解者も存在すると言うのがとても素敵で。
彼等との出逢いにより、二人の意識が変化して行くんですよね。
みんな、ありのままの自分を受け入れて欲しい。
そして、自分に自信を持ちたい。
これまでの殻を破り捨て、前に一歩踏み出した二人に、なんかもう心が晴れ渡るようですよ。
これね、読み終えたあと、自分も肩肘張らずにもっと自然にしていい気がしちゃって。
私事で恐縮ですが。
えーと、コンプレックスを克服とまではやっぱりいかないんですけど、少し気持ちが軽くなったと言うか。
まぁ、手が変形してても恥ずかしくはないよねと。
そう、過剰に反応してるのは私だけで、別に世間の人は私の手なんかいちいち気にしちゃいないんじゃないかと。
むしろ、無理してやってた事も、人に頼るようにしようと。
要は何を言いたいかなんですけど、同じようにコンプレックスを抱える方が、今作を読んで元気になって貰えると嬉しいなぁと。
最後になっちゃいましたが、こちらBL的萌えもしっかりありますので!
なんかなぁ、全然上手く伝えられてない気がするけど。
えーと、エロ時の意外と男らしい哲平とか。
うん。確かに彼は「漢!」ですわ。
てっきりモロなファンタジー小説かと思ったんですよね。
だけど、読んでみたら違った。
「先天性獣化症」のため狼のような姿で生まれてきた攻めという点ではファンタジーです。
だけど特異な見た目のせいで「普通」から外れてしまっている攻めの祭が抱えているコンプレックスや劣等感。
それが決して特異な悩みというわけではなく、予想以上に等身大なんですよね。
大なり小なり、私たちが抱えているものと同じなんだなと思える。
特異なファンタジー設定と、等身大で瑞々しいキャラによるリアルな日常との融合というんでしょうかね、そこが凄いです。
そして私自身、末妹が「普通」ではない見た目(生まれついての難病のため常に鼻にチューブを挿して酸素ボンベを携帯してる)だったので、攻めの弟にやたら共感しちゃいました。
一緒になって注目されてしまう恥ずかしさや葛藤。
そして恥ずかしさを覚えてしまう自分自身に対する嫌悪。
あの頃の、幼かった頃の自分の気持ちが蘇ってきました。
物心つく前から無遠慮で無神経な洗礼を浴び続けた末に、「(兄が獣人で)だったら悪いか」と友達に言えるまでになった弟の姿は、かつての私が通ってきた道でもありました。
そういうところも実に等身大というのかな。
けっしてお涙頂戴的な大仰さもないし、リアルな感じがとても良かった。
あとがきで幼い頃から獣人好きで、獣人がいる世界線についてたびたび妄想を繰り広げてきたとありました。
大人になってからは、よりリアルに「私たちの住んでいるこの世界に獣人がいたら、彼らはどういう扱いを受け、どんな問題を抱えることになるのだろう」と考えるようになった末にこの小説ができたとあって、ものすごく納得したんですよね。
だからか!!と。
獣人が流行ってるから書いてみよう〜!みたいなノリもないし、獣人の売りでもある安易なモフモフ萌えアピも無いし、詰めの甘さとか破綻してるところもない。
お見事としか言えない完成度というんでしょうかね。
「ギフテッド」の意味も良かったです。
最初の頃の祭がそう言われたら、絶対に受け入れられなかったと思うんですよね。
だけど受けの哲平と出会って、少しずつ変わっていき、その与えられたものに感謝する。
ここの着地点もお見事で、とても良かったです。
こちらが作家様のデビュー作とのことで驚いています。
すごい作家様がデビューされましたね。
あのですね、まずお話がすごく面白いんです。
読み始めから一気にあとがきまで読んでしまったというか。
本当に読みやすい文で、なおかつ登場人物の1人1人に自然と心を持っていかれる。
何気ない発言のひとつひとつにサクッと刺さるものがあったりして、印象に残らなかった人がいないのです。
なんだろうな、上手く言葉に出来ないのが悔やまれる。
一言で言うのならば、良かった。とても良いお話でした。
ちゃんとBLなのですけれど、恋愛以外の部分も読み応えがあって非常に惹き込まれました。
私はこのお話、すごく好きですね。
個人的に、人を「個性」という言葉で括るのが少々苦手で。
「個性」って、本人よりも周囲が使うことの方が多くないですか?
都合が良い言葉だなというか、使うことによって、逆に差別や区別をしている感覚になるというのかな…これは私だけかもしれません。
なので、出版社によるあらすじにはうーん?となってしまったりして。
主人公である祭が獣人なわけですが、彼がこの世界では難病に指定されている先天性の獣人であるということを除くと、描いているものは普通の高校生や大学生という、まだアイデンティティが確率されていない若者達の日常なんですよ。
祭も哲平も、別に個性的でもなく、その周囲の人々もごく普通だと私は思うのです。
何も特別なことはないですし、特別な脳力だってない。
正直、2人だけではなく誰も彼もがどこにでも居そうな人ばかり。ここがすごく良かった。
マイノリティに対する反応や言動を含めて、ああ、こういう人って居るよねと思えるリアルさでした。
それは、人によっては目に見える形かもしれないし、人によっては目に見えないことかもしれない。
誰だって何かしらのコンプレックスを抱えていたり、どうにもならない生きづらさや、「なんだかなあ」なんてやるせなさというものを内に秘めながら日々生きていると思うのです。
上にも書いた通り、読みながら、分かるなあこのやり取り…なんて思うこともしばしばありました。自分の日常にも置き換えられる部分があるんです。
人の心の繊細な部分をテーマに描かれた作品なのですが、攻め視点で綴られる物語の空気は決して重たくはなく、リアルでいて、それでいてとても前向きなもの。
優しさだったり、人のあたたかさも感じられる。
私は祭の家族が好きでした。特に弟の楽くん。
難しいテーマやマイノリティ描く中で、メッセージ性がありつつも、作中で誰かを優遇することも、"こうあるべき"なんて言葉もないのがお見事です。
あくまでも自然に、流れるようにメイン2人の成長を見守りながら、ふと気がつくと読んでいる自分も少し救われる部分もあるというか。
「人生そんなに悪くないかもな」なんて気持ちになれる優しいギフトを貰えたような、とても素敵な1冊でした。
作家様の次回作も楽しみにしております。
初めてお見掛けする作家さまだな、と思いつつ、笠井さんの描かれた美麗表紙につられて手に取りました。
んー。
これがデビュー作?ホントに?
というのが読後の感想。
めっちゃ良かった…!
設定、ストーリー展開、キャラ。
どれもが素晴らしく練られていて、一気にこの作品の持つ世界観に引きずり込まれてページを捲る手が止められませんでした。
ネタバレ含んでいます。ご注意ください。
主人公は祭。
彼は先天性獣化症という病を抱えて生まれてきた。見た目が狼のようなのだ。
その見た目ゆえに少なからず苦労をしてきた彼ではあったが、家族や信頼できる友人にも恵まれ、そのハンデに負けないよう奮闘するナイスガイである。
ある日、祭は母親からとアルバイトを持ちかけられる。母親の上司の息子さんの家庭教師をしてくれないか、というものだった。時給やバイトの内容はかなりの好待遇、けれどなぜ自分に?
そう思いつつそのバイトを受ける祭だったが、生徒として出会った哲平もまた、秘密を抱えていて―。
というお話。
祭、哲平。
人と違うことで、孤独や悩みを抱えてきた二人が、お互いに出会ったことで唯一無二の存在になっていく。
一言で説明するならばそういうストーリーなのですが、なんて言うのかな、すごく深いんですよ。
祭は見た目からマイノリティ。
それ故に、子どもの時からつらい目に遭ってきたことがきちんと分かる。くどすぎず、あっさりしすぎない、過不足のない文章でそれらが描かれていて、読んでいて祭の過去や切ない現状がきちんと読み取れる。そのために読者もまた、彼の気持ちに少しずつ感情移入してしまう。応援してしまう。
けれどそこで祭の現状に対して憤りしか感じないのではなく、もう少し突っ込んだ気持ちにもなる。
それは、祭や祭の家族の存在。
彼らは現状を憂うのではなく、そこから何ができるのかを常に模索しています。嘆くのではなく、世界に対して恨むのではなく。そんな強く逞しい生き方に感銘を受けました。
そんな祭が恋した哲平。
彼もまた何かを抱えています。
切ないです。
けれど、祭と出会い、傷をなめあうのではなく前進しようと思えるようになっていく。
バックボーンとしてはかなりシリアスというか切ない系のお話なのですが、それだけに終始していない。タイトルの「ギフテッド」。どういう意味なのかなと思っていましたが、その意味が分かった時、寺崎さんの温かさっていうのかな。お人柄が垣間見えて非常に温かな気持ちになりました。
笠井さんの挿絵目当てで購入しましたがめっちゃ良かった…。
ちょっととんでもない作家さまが出てきたなっていう感じ。
で。
笠井さんの挿絵は今回も神だった。
笠井さんらしい濡れ場は控えめ(ストーリー自体エロ度が低いからね)。
イケメンの祭に、そこはかとなく漂う色香をまとう哲平。これぞ純愛!って感じの2人のイラスト。
笠井さんはその麗しすぎる絵柄に目を奪われますが、キャラの内面までその絵柄で描き切る。その画力に完敗です。
何もかもが素晴らしく、悶絶しつつ読破しました。
文句なく、神評価です。
今回がデビュー作の寺崎昴先生
小説家さん、凄いですよね…尊敬です。笠井あゆみ先生のイラスト買いでしたが読み進める手が止まりませんでした。
さて、わたくしそんな評論家のような大それたことは出来ませんが、素直に感じた感想で一人でもこの作品を手に取る方がいてくれたら嬉しいなと思って、初レビューさせて頂きます。
なので、うまく伝えれられないかと思いますがお手柔らかにお願い致します…<(_ _)>
原因不明の難病として扱われる、"先天性獣化症"
子供の頃から獣人が大好きだった寺崎先生はこの世界に獣人がいたら、どんな風な扱いを受け、どんな問題を抱えるのだろう…とそんな風に考え、この話が出来たんだそうです。
攻め視点の話でした。
試し読みをした時は、獣人だけどおおらかな性格の優しい青年だなぁ、って感じたけど実際は、読み進めれば進むほど、ふつふつと常に煮えているものがあって、それが沸騰して吹きこぼれないように常に弱火で煮て、煮すぎて煮詰まってしまいそうなそんな心を抱える獣人で、深いコンプレックスをもつ一人の青年でした。
煮詰まらないように、そっとお湯を注いでくれたのが哲平の存在でした。
彼も同性愛という性的マイノリティを抱えていたけど、祭と出会い、祭りに惹かれ、将来を考えることが出来て祭と一緒に前を向くことが出来るようになります。
自分では変えられない、神様から与えられたギフト。
与えられた者のことを、"ギフテッド"というそうです。獣化症と、同棲愛はそれぞれに与えられたギフトだけどお互いにとっては、それが"パートナー"という代えられないギフトになのだと。
このギフトの話を、祭の就職先の塾長さんが祭にするのですが、その塾長さんの言葉がすごく響きました。
『勝てると思った勝負にしかベットしない、あなたはいい講師になる』
こんな塾長さんが作った塾に通いたかったなぁ。
と、タイトルの由来が最後に分かって
すごくスッキリと読み終えることが出来ました✨
そして笠井あゆみ先生の挿絵は今回もため息が出るほど綺麗で眼福でした。
哲平が大学に入学して、祭の生徒ではなくなるまではキスまで…と清い関係wです。
いつもなら濡れ場のシーンで挿絵をわっくわくしながらページをめくりますが
今回は、ゆっくりと静かに流れる二人の時間に、自然と歩調を合わせていたようでした。合格通知を貰い、祭の生徒を卒業したし、祭は一人暮らしを始めるし、もう阻むものはない若い二人は思う存分イチャコラするのでしょうww