• 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作あの夏から戻れない

四辻柊
小田牧村に住む青年、8→23歳
櫛原夏生
大学生、8→18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

お前と俺はずっと一緒だ、死んでも離れない

十年前の夏休み、夏生の大切な幼馴染みの柊は目の前で謎の霧に攫われ、消えてしまった。
大学生になり、柊が生きていると信じて彼が行方不明になった山へ向かうが、あの日と同じ霧に包まれ、気が付けば不思議な村へと迷い込んでしまった。「おだまき様」という神を信仰し、昭和時代のような生活様式の村には、雄々しく成長した柊がなぜか暮らしており「ずっと会いたかった」と激しく抱きしめられて――。
あの夏の続きが、はじまる。

作品情報

作品名
あの夏から戻れない
著者
宮緒葵 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
電子発売日
ISBN
9784773063431
4.2

(95)

(50)

萌々

(27)

(12)

中立

(1)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
18
得点
395
評価数
95
平均
4.2 / 5
神率
52.6%

レビュー投稿数18

めちゃめちゃ面白い。

作家買い。
作家買いですが、宮緒先生×笠井さんというゴールデンコンビ、ということであらすじも確認せずに早々に予約していました。

時に非常に肌色率の高い絵柄で表紙を飾る笠井画伯。
が、今作品はなんとも可愛らしい。あれ?あれれ?もしかしたら優しくって温かな、そんなお話かな?なんて思いつつ読み進めました。

いやー。
やられました。
めっちゃ面白い…!
こんなにもネタバレしたらアカンと思う作品はそうそうない。
そこかしこに撒かれた伏線を、最後に一本の線として繋げるその手腕に脱帽。さすが宮緒先生です。

ということでなるべくネタバレしないようにレビューを書こうと思います。





18歳の大学生の夏生が主人公。
彼にはずっと心に引っかかって離れない友人がいる。柊だ。
幼なじみの柊とはいつも一緒にいた。その日も柊に誘われ、山に一緒に入ることに。

その山は子どもだけで入ってはいけない。
帰ってこれなくなるよ。

そう言われていたのにもかかわらず。
下山しようと言う夏生だったが、柊は首を縦に振らず、そして夏生の目の前で霧にのまれて―、そのまま行方不明になってしまった。
両親、警察、多くの人を巻き込んでの捜索が行われたが柊は見つからず、そのまま捜査も打ち切り。けれど柊は絶対に生きている。そう信じる夏生は、柊がいなくなって10年後の今日、山へと柊を探しに出かけることにするが―。

というお話。

そしてそこで、夏生は柊と再会を果たすのだけれど…、とストーリーは続いていきます。二人が再会したのは10年後、けれど柊は夏生と離ればなれになったあの日から過ごした村で、15年という月日を過ごしてきたのだという。

柊がいなくなって、それから彼が過ごしていた場所。
二人が過ごした時間軸が異なるという点。
あらすじにも書いてあるのでここでも書いてしまいますが、ある種の異世界トリップ、の様相を持つストーリーです。

夏生にとっては10年。
柊にとっては15年。
8歳という子どもだった彼らが会えなかった期間はあまりに長いですが、それでもなお柊は夏生への想いを枯らすことなく持ち続けていた。宮緒作品においてテッパンと言えるワンコ攻め、執着攻め、が描かれています。

今作品はBL作品なのでもちろん柊×夏生の恋の成就が描かれています。描かれていますが、今作品の軸はそこではない。二転三転するストーリー、夏生が時々フラッシュバックのように思い出す光景、そして、柊が住んでいた「小田牧村」と「おだまき様」と呼ばれる神の存在。ファンタジーものという言葉では一括りにできない、オカルトのような、ホラーのような、そんなバックボーンをも持つ作品で、そこがきちんと描かれているのでめちゃめちゃ面白い。

が、最後の最後まで読むと分かります。
やっぱり、今作品は「宮緒作品」なのだと。過ぎた深い愛情を受けさんに向ける、そんな狂犬を描いた作品なのだと。誰が、誰に向けた執着なのか…。

ストーリーは文句なしの面白さ。
そこに華を添えるのが笠井さんの描く挿絵。

柊と夏生はとある出来事から心を通わせる前にセックスをする関係になってしまいますが、これがまあエロいです。けしからんエロさと美しさです。表紙のあの可愛らしさとのギャップが堪りませんでした。はい。

甘々でほのぼのなお話が読みたいときには、正直不向きな作品です。
オカルトとか、ファンタジー、ミステリ。そういうものがお好きな方や読みたい気分の時にはぴったりの1冊。萌え、というよりは単純に一つの物語として読んだときにこれだけ惹きつけられ、飲み込まれてしまう作品はそうそうない気がします。

キャラ良し、ストーリー良し、挿絵良し。
どれも文句なしの面白さ。

最後にこれだけ書きたい。
タイトルが素晴らしい。
読み始めたとき、柊を見失ってしまった夏生の感情を表した言葉だと思ったんです。でも、最後まで読むと、その真意が見えてくる。

鳥肌が立ちました。

21

推薦図書です!

宮緒葵先生がツイートしてた、ほのぼの爽やか青春ストーリーだなんて端から信じてませんでしたが(www)、ある意味この季節にピッタリの作品でした。

読み進めているうちに、あちこちに散らばるヒントによって凄く考えて推理してしまう自分がいるんです。

ある程度想像付く展開と全くといって考えてなかった決着の仕方に、お見事と言う他ないストーリー展開でした。

宮緒先生らしい人間の業があちこちに散りばめられているお話で、特に柊を手に入れたいが為に夏生に憎悪を燃やす少女が恐ろしかったですね。お恵み沼の底より女の情念の方がゾッとしましたよ。

え⁉︎もしかしてバッドエンド‼︎って心配しましたが、そこは宮緒先生推薦の「真夏の課題図書」でしたので、読後感の良い作品になっていました。

予備知識無くまっさらな状態で読んで、宮緒ワールドを楽しんで欲しいと思います。

ただ105ページの10行目「お恵み村」は「お恵み沼」の間違いですので、もしここを編集さんが読んでいらっしゃったら直して頂けたらと思いました。

13

不気味な世界観にページをめくる手が止まりませんでした

作者の宮緒葵先生がSNSで「ほのぼの作品」「純愛と青春」と宣伝されていましたが、私個人はカテゴリ的に「サイコスリラー」かなあと思いました。

10年前に目の前で消えてしまった幼馴染の柊(攻め)を探して、異界の不気味な村に迷い込んだ主人公の夏生(受け)。その村がとにかく不気味で怖い。再会した幼馴染も村民達も何かおかしい…!?

笠井あゆみ先生の描かれた表紙もパッと見は夏らしくて爽やかですが、よく見ると怖い…。不気味な世界観をよく表現していて流石すぎます。特に1番最後の挿絵は素晴らしくて震えました。見た瞬間怖すぎて「うわ!ひえええええ!」と叫んでしまいました。

この攻めの柊は普通のホラー小説ならラストで主人公を襲う邪悪な怪物になってしまいそうなのですが、宮緒先生の作品だとほのぼの攻め?になっちゃうんですね。もしも夏生と結ばれなかったら…。笑えません。

宮緒先生の作品はやり過ぎ感にドン引きしてしまうことも多々あるのですが、この作品はそのやり過ぎなくらいの不気味さが世界観と合っていて良かったです。

12

閉じられた世界の真相

今回は行方不明になっている幼馴染と
幼馴染の生存を信じ続ける大学生のお話です。 

攻様を探して山に入った受様が
異界に閉じ込められた攻様を取り戻すまで。

受様にはいつも一緒にいた幼馴染・攻様がいました。

2人は父親同士が友人で
攻様の母はアメリカ留学中の攻様の父について
来日するも日本に馴染めずに受様の母を頼り
家族ぐるみで付き合っていました。

両家はよく旅行にも行き、
10年前の夏休みは攻様の父の故郷の日無山に
旅行に行くことになります。

今回、受様の母は風邪を引いたと同行せず
攻様は受様が話しかけてもろくに返事もしないのに
手を握り締め続けて受様を戸惑わせます。

日無山は小さい山ながら行方不明になる人が多く
親達は子供達だけでの入山を硬く禁じます。
受様は家族や攻様と会えなくなると想像しただけで
ぞっとしてしまいます。

しかし翌朝、
朝陽がやっと顔を見せた頃に攻様が受様を起こし
「山に行こう」と言い出します。

受様は昨日から様子のおかしい攻様から
なにか話を聞けるかもとついて行きますが

受様の手を引かれて山道を登るうちに
うっすらしていた白い霧が濃さを増していき
受様は本能的な恐怖に打ち勝てず
攻様の手を渾身の力で振りほいてしまいます。

すると攻様は白い霧に包まれていき
受様の前から消えてしまうのです!!

それ以降、賢明な捜索が慣れ―されますが
攻様は2度と見つかりませんでした。

受様が大学生になった年の夏休み、
日無山中の沼に行方不明になった男性の遺体が
浮かんでいるのが発見されるのです。

解剖の結果、
13年前に行方不明になった人物だとわかり
受様は10年ぶりに日無山に向かう事を決意します。

なるべくあの時と近い時間帯に合わせたつもりが
太陽は天高く昇り、霧などでそうにありません。

しかし、
受様が懸命に攻様の名を呼び続けると
白い霧が漂ってきて!?

受様は攻様の手掛りを掴むことができるのか!?

神隠し伝説のある山で行方不明となった攻様と
幼馴染の攻様を探し続ける受様の
異世界トリップファンタジーになります。

タイトルが意味深でカバーイラストがまた
昔と今を合わせ鏡にした印象的な1冊で
ワクワク読み始めたのですが

本作の攻様も宮緒作品の代名詞である
ワンコ系執着攻の本領を遺憾なく発揮しつつ
頭脳派スパダリとして物語をけん引していき
頁を繰る手が止まらず、一気読みでした♪

受様は霧の中で出会った攻様とともに
攻様の暮らす異世界の村に連れていかれます。

そこはおだまき様と呼ばれる神に守られた村で
人々はおだまき様の恵で生活していたのです。

攻様が閉じ込められた世界を支配する神の存在、
神の采配で全てが決まる世界の異様性を
攻様は明瞭な頭脳で読み解いており

攻様はこの閉じられた世界から逃れるために
世界の成り立ちを利用し
受様との未来をつかみ取ろうとするのです。

閉じられた世界から2人が抜け出そうとすることが
全ての始まりと終わりへと繋がっていて
どうなっていくのかとドキドキの連続でした。

2人が脱出できるだろうことは想定内ても
最後の一幕を予想する事は不可能かと思われる
見事な幕引きでした。

真夏にぴったりな1冊だと思います (^-^)v

11

ばにらそると

いつも思うけどこれ読書感想文ヘタな人が書くレビューだよね(作品のストーリーを始めから終わりまで一生懸命書いて自分の感想は1割にも満たないっていう笑)

民話調・異世界転移物語

電子版。
あとがきを先に読まないほうが良いです。全部わかっちゃう。
こういう展開を良く思いつくものだと、感心しながら読みました。
著者さん、天才。

異界とつながる山の沼、
不変を好まないナニカの意思で造られている異世界は、時間の流れが異なる。

行方不明になった幼馴染、柊を探して10年間ずっと山に行く夏生。
ある年その沼に、死んだばかりの行方不明者の遺体が浮かぶ。
でも、柊の両親はもう探さないでくれ、と捜索を希望しない。

夏生は独りで柊が居なくなった同じ日に山に入ると、霧の中で、柊を見つける。
再会した柊は23才になっていた。もう女の子の様な美少年ではない。
夏生は、18才。
表紙の二人が映る沼の水鏡には、10年前に行き別れた当時の姿が映っている。
笠井先生の、素晴らしいデザイン。

再会した柊と異界で暮らして、夏生はどうするのか・・
10年前柊は、両親がお互いに不倫をして、夫婦として終わっていたことを知っていた。
夏生さえ、傍に居てくれたら・・と思っていた柊。
夏生が異界の村に入れたのは、そんな柊の「祈り」があったから。

どんな結末になるのか想像しながら、悶々と読みました。
夏の幻想の様なSF要素と、民話要素が混ざった、因縁の無限ループ。

凪良先生の「累る」と似た雰囲気。こういうお話、好き。

8

この作品が収納されている本棚

ちるちる評価ランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP