電子限定かきおろし4P漫画付
孤高のバイオリニスト×難聴のデイトレーダー、正反対の世界で生きる二人の、心震わす至高のラブストーリー
お話自体はとてもステキだと思いますし、だからこそ大人気なのすごくわかります。
でも学校教育以外で ある程度の音楽活動をされた経験がある方、特に音大出身者や弦楽器経験者には、本作はいろいろと以下のような粗が目立ってしまって厳しいと思います。
①冒頭いきなり1ページ目で 弓を当てる位置が盛大に間違っています。
お陰で後ろで見ていた夫(クラシック音楽家)に大笑いされましたよ…
「弾いてる最中に弾みがついて たまたまそこに手が来た」としても、さすがにあの位置はナイです。
冒頭だけでなく、作中でも何度も同様の間違いがあり、しかも顎のすぐ下バージョンもありました…(震える
「バイオリン 弾く位置」で画像検索すれば簡単に出てくるので、事前に調べていただきたかった~
②楽譜が読めないのに音大に入れること自体うぅ~む なんですが、作中のようにいろいろ特待制度があったとして、100歩譲って入れたとします。
それでも、マンツーマン以外の理論に関する授業やアンサンブルやオケのグループレッスンもたくさんあるので授業についていけないはずです。
③楽譜が読めるようになるのって、そこまで大変で難しいことではないです。
それこそ巷に溢れかえっている解説動画を見たりしながら、1日2日ほど勉強すればすぐ読めるようになります。
要は記号の意味を覚えて、算数で習う分数の知識があれば読めるので。
「楽譜が読めないのにこんなに弾ける」というインパクトを持たせたかったのは分かるんですが、話としてかなり…無理があると思う。
④「まだ他の楽器と合わせらんないし」
「合わせたことがない」なら全然okです。これから合わせていってコツを掴んでいけばいいので。
でも合わせたことがない状態で(試みる前から)「合わせられない」と発言するのはアマチュアの音楽家としてどうなの、と…
そうか、アンサンブルやオケのグループレッスンに出席していないからこの発言が出たんですね(でも単位大丈夫なのか?)
そんな野暮なことを…と思われるかもしれませんが、この観点で書かれたレビューがほとんどなかったのでレビューを残すことにいたしました。
ただ単に余計な知識が邪魔をして私には合わなかった、というだけなので、上記が全く気にならない方は本レビューは完全に無視して本作をお楽しみください。
楽譜は読めず、弾き方は動画で、音はCDで、独学でバイオリンを弾く音大生の十嘉と、重度難聴でディトレーターをしている五十鈴のお話。
十嘉は周りの音が聴こえないくらい音楽に没頭する程バイオリンが好きなのだけど、独学故に楽譜はわからないしちゃんと指導されてこなかったから自分の世界に入り込みがちで、自分の中の音を観客にうまく表現できないこと、音で気持ちを伝えること伝えあうことが欠けていて、独りよがりになりがち。
どうしたらいいのか分からなくなっていたときに出会ったのが五十鈴。
一緒に過ごしている間に、五十鈴と出会えたことで伝えること、伝えようとしてくれていること、それを読み取る心を育んでいく十嘉。
そのお陰で、奏でる音色にも変化があって。
五十鈴といると視界が変わる、今まで気づかなかった大事なものがそこにあると知る。
一方の五十鈴も、聴こえないハンディがあるからこそ気を張り気を配り弱音も吐かず踏ん張っていて、でもそれを誰にも言わずに強く生きようとしていて。
本当はつらいとか、本当は寂しい気持ちを十嘉には少しづつだけど言えるようになりそうというか。
まだ解れきってはいないんだけど、自分のことをよく見て知ろうとしてくれている十嘉に嬉しさと安心感を感じ始めていて。
友達に頼まれて無理して行ったパーティーで無理が祟って倒れてしまうのだけど、十嘉が助けに来てくれたことで、より心が解れるんです。
スマホの画面に、
「1人で寂し」
まで打って、
「1人で」まで消して、
「1人で心細い」に書き換えて、
最終的に「1人で退屈してたから」「来てくれて嬉しかった」としたその葛藤を、本心は伝えられていないけど全て受け止めるかのように「今度はもっと早く呼んで」と微笑んでくれた十嘉に、心がほっと解れて。
私は耳も聴こえるし五十鈴のような苦労はしていないけど、メールやライン、人に伝える文章を何度も読み返して言い回しを直して、自分の本心はもっと直球だったりオブラートに包まなかったりするのに、相手への伝わり方を気にして整えてしまう癖はあるので、なんだか気持ちがわかってしまって。
整えてるんだけど、同時に本当の気持ちを塗りつぶしているというか。
それがいいことなのか悪いことなのか分からないけど、面倒くさいなとか直さず言えたらとか思いながらも訂正を繰り返してしまう訳は、きっとありのままを伝えることに怖さがあるんだと思うんです。
五十鈴はしっかりしなきゃとか、そんなことを言ったら相手を心配させてしまうとか、もっと人のことを考えて強くいようとしているということが伝わってくるんですが、やっぱり弱さもあるんじゃないかなって。
そんな五十鈴が、本音を言うということは多分初めてのことで。
接点がないようで、全く似ていないようで、互いに人に伝えることの難しさと孤独に戦う苦しさを持っていて、カチッとハマりあう2人なんですよね。
五十鈴も十嘉のことを好きになり始めた気配が生まれたところで2巻に続きます。
麻生先生の仰るとおり、ゆっくり、優しく、暖かく進む恋のお話でした。
麻生先生は台詞のないコマで魅せるのがお上手で、無声映画の心地よさのような、それこそ絵から麻生先生やキャラクターの心情を読み取る楽しさや、読み取らせてくれる余白の上手さが光っていらっしゃいます。
十嘉が楽譜からの手紙を汲み取れた時の喜びのようなものを絵から汲み取れたような体験ができるというか。
あと、前作リバースでも小説(PC画面越しの文字)という媒体を使う表現を使われていて、他の作家さんではあまり見ないテンポ感と空気感を演出していてとても好きだったのですが、本作もライン画面やチャット画面、聴障者健常者のコミュニケーションアプリなどを用いた表現、発声していない五十鈴の声の表現がお上手でした。
音以外の方法で感情を伝えること、またその方法の模索に長けた作者さんだと思います。
あと、もう皆さん知ってるというか今更なんですけど、ペンの入れ方が本当に素敵で。
麻生先生の黒髪や眉、影の細かい“黒の表現”の美しさ、毎回ほうっと見惚れてしまいます。
作者様買いです。
作品全体に流れる優しい雰囲気が好きで、2巻まで一気に読みました。
難聴の五十鈴の「音のない世界」がイメージできたのは
麻生先生の繊細な描写と、まるで本を読んでいるような言葉による描写なのでしょうか。
話をしているとき、難聴であるが故に、いつも周囲との間、ずれを感じていた五十鈴が、十嘉の言葉を聞き逃すまいと口から目を離さない様子に、グッときました。
障がいがあるからと気をつかわれたくない五十鈴に、ズカズカ正面から
接してきた十嘉はきっと新鮮で、お互いの距離が縮まっていく様子が好きです。
番外編も読みました。まだ本編も続編があるようなので、
楽しみに待っています。
素敵な作品、大好きです。
新刊がレビューランキングでとても高評価のようなので1巻から読ませていただきました!
麻生先生の作品は私的には久々でとても楽しみにページを捲りました(ღ˘͈︶˘͈ღ)
攻めも受けも生き辛そうな2人のお話し
受けは聴覚に難があり、受けは学習能力なのか教育環境に恵まれなかったのか音楽の才が秀でてはいるけれどその他の教養が後回しなタイプ
それぞれ自分の置かれてる状況にどこか受け入れきれない葛藤を抱えながらも折り合いをどうにか付けて生きている、、、そんな様子に胸がざわめきます
2人の出会いや攻めの壬生くんの才能だけで音大通えるのか?問題とかは創作範疇の素敵なフィクションとしてスルーします
壬生くんも受けの五十鈴さんも形は違えど誰かと共有出来ない苦しさ・葛藤・諦観みたいなものに苛まれていて…そのフラストレーションを誰かにぶつける事も出来ない・しない事でまた殻に閉じこもって、諦めて、、、と生きて来たのに、何故かお互いを前にすると「気にならない」相手に出会えた事で自分の日々に彩りを感じたって事がこのお話しの重要な所なんだと思うのです
なので、すごく言葉も表現も良くはないのは十分自覚した上で言いますが、、、五十鈴さんの身体的な特徴や壬生くんの環境はこの作品のドラマの一要素として捉えた方がいい気がしました
必要以上にその真実味を深追いせずに「そういう設定」という事以上の事は考えない方が私には合っていそう
センシティブな設定に変に身構えないで読ませて貰うスタンスの方が合っていそうです
すごくリアルな事と対比したり、現実的な事へ慮った視点を持って「ヒューマンドラマ」として考えると違和感や引っ掛かりが見えてしまいそうで集中出来なさそうなのかな?と、、、
心に埋まらぬ穴を抱えた年の離れた2人が出会い、その空いた穴のままの心を寄せていき、少しずつその穴を互いが侵食し合っていく、、、という「切なさを伴うLOVE STORY」として捉えて読んだ方が楽しめそうかな?って1巻を読んだ感じでは思いました
この2人がどう心を寄せるのか?主に五十鈴さんだとは思いますが、、、その馴染んでいく様子を見守っていきたい優しい空気感を感じる1巻でした
番外編、2巻と読むのを楽しみにしたいと思います
あと、めっちゃ壬生くんの首の後ろが気になる、、、アレは何だろう?
そこも言及されるのかな?
気になるなぁ~~~ヽ(´ー`)ノ
2巻を待ってレビュー。1巻もよかったけど断然2巻が良かった。1巻ではどうしても、また拾う系の作品か…みたいな気持ちになってしまったんだよな。成人男性を気軽に家に連れ帰る成人男性はそんなにいない気がしてならない。そして一転玄関までしか入れなくなるという。端々が丁寧な麻生先生の作品だからこそより違和感。
あと麻生先生にもってる印象といえば作品から小説のような雰囲気を感じるところ。といっても、小説ではできない、絵で魅せる部分もしっかりあって。
難聴の登場人物が出てくるBL作品はいくつか思い当たりますが、どれも様相が違って面白いなぁ。