電子限定かきおろし漫画付
俺がΩだったなら、お前を幸せにできたのに―――
麻生先生の描くミステリアスオメガバースとくれば読むしかない。
しっとりと大人の雰囲気を纏ったオメガバースに、ミステリアスでサスペンスフルな展開が絡み…これは読まされました!
同じ施設で育った刑事の幸村と小説家の円。
αとΩ(?)の番の2人ですが、円は番になったにもかかわらず、番以外の人間にもフェロモンを感知させ、さらには抑制剤も効かない体で!?
一方幸村は、全身をラップで巻かれ拘束されるという、不可解な連続Ωレイプ事件を追う─。
幸村と円の奇妙な関係は?
レイプ事件の犯人とその動機は?
定期的にヒートを起こし、後ろを濡らし、強いフェロモンを放って幸村に抱かれる円。
でも何かがおかしい。
彼のバース性の謎にも惹かれます。
そしてその答えには、思いもよらぬ優しい嘘と深い愛が。すごいよ…せつないよ…円…(あー泣ける)
とにかく麻生先生のうまさが光っていました。
例えば施設で育った2人のエピソード。
ほんの数ページなのに、2人の生い立ちが、関係が、すべて浮かび上がってきて、しかも胸が苦しくなるほどに揺さぶってくる。そんな描写の連続です。
でもあくまで低温。じっくりと読ませる。
BLとしても、オメガバースとしても、ミステリーとしても面白く、完成度の高い作品でした。
ここのところ続けざまに好きな作家様の素晴らしいオメガバースに出会えて、食わず嫌いを克服したかも知れない。
エロのイメージが強い素材だったんだけど、いやはや、料理しがいのある素材なんだなぁと、認識を新たにしました。
腐女子の好きな要素がふんだんにあしらわれた「オメガバース」という設定。運命の番、子育て、発情期…。設定だけで多くのロマンが詰まっていて、今や1つのジャンルとして多くの腐女子に広く愛されるようになってきていますね。ある程度設定が固定されているからこそ、安心して読める。手に取りやすい。裏切られることが少ないジャンルだと個人的には感じています。
その手軽さが私はお菓子の手作りキットに似ているな、なんて思っていました。料理人によって多少の味の違いはあれど、完成系はある程度決まっているような感じ。美味しいけれどどれも似てる。ハッと驚くような意外性はあまり無い。
でも、本作でその考えを見事に覆されました。オメガバースの世界観を麻生先生がじっくりと咀嚼し、ストーリーを練っていったのが物語の端々からすごく伝わってきます。
オメガバースの美味しい部分だけを掻い摘まむのでは無く、普段スポットの当たらないその世界ならでは苦悩や葛藤、暗い部分にも果敢に切り込んでいき、それが物語全体に深みと奥行きを持たせています。オメガバースが苦手な人や、運命の番設定に疑問を感じる人にこそ読んでもらいたい作品です。
主人公二人の、相手を思うが故に雁字搦めになってしまう関係が辛く切なく愛おしいです。受けの円がずっと抱えてきた、孤独な優しい嘘を知った時、そのあまりの一途さと健気さに、読者は彼を愛さずには居られなくなります。健気受けが好きな腐女子の方はぜひ!
語りたいことは沢山あるけれど、ネタバレは一切無しで読んで欲しい作品。ミステリ要素もあり、各話の引きが凄くて「次は?次はどうなってしまうの?」とページを捲る手が止まりません。厚いですがあっという間に読んじゃいます。
極上のオメガバース。麻生先生にしか描けない作品です。今年始まったばかりですが今年の自分のマイアワードはこの作品と決めています。自信を持って勧めたいです!ぜひ読んでください!
あまりの高評価に興味が湧き購入。
結果、好評価の多さに納得の凄い作品だった。
個人的に、今年度オメガバース作品の中で1番の作品かもしれない。
今までに読んだどのオメガバースとも異なる、唯一無二の練り上げられた設定と骨太で重厚なストーリー。
そして、この分厚い1冊を一気に読ませてしまう麻生先生の筆力の高さ。
着眼点は勿論、登場人物達の心理描写、根底にある深いテーマの描き方がとにかく丁寧で素晴らしい。
麻生先生のどこか儚げな雰囲気のある絵柄と、シリアスな設定も相まって、物語全体に流れる空気は物静かかつ陰鬱さのようなものさえ流れている。
現在と過去の描写も交え、大小様々な展開がある中、メイン2人の両視点で静かに淡々と進んでいく。
けれど、ページを捲る手を止めさせない何かとても熱いものがある。
赤い炎よりも青い炎の方が熱いとはよく言ったもので、この作品を例えるなら後者のじわじわと静かに燃える青い炎のよう。
この1冊の中に、人間の脆さ・性別・愛情・喪失・愛憎・執着・救い、etc…全てが詰まっている。
ここまでしっかりと描き切り、読ませる力が本当に凄い。
モノローグの少なさも想像力が掻き立てられとても良かった。
1度目はストーリーに心動かされ、2度、3度と何度も読み返す度に細かな描写にハッとする。
本当に素晴らしい作品だった。
ぜひ、ネタバレは無しで読んで欲しい1冊。
読後はとにかく、すごいものを読んでしまった、という感覚で放心しました。
物語を読み進めたあと、円の”お前のΩになりたかった”という言葉は、痛烈に刺さります。
ずっと頑張っていた円に、今度は吐木からも与えられるものがあるんだと考えると、良かったねえという安堵の気持ちが湧きました。
Ωになりたかった円が、βでもよかったと思えるようになったことに感動を覚えます。
あと行為中のΩを装っていたときの喘ぎ声と、ありのままの円の喘ぎ声。
この対比が良いなあと思いました。きっと円もその違いを、噛みしめているんじゃないかと考えてしまいました。
今まで沢山のオメガバースものを読んできましたが、私の中で間違いなく一番面白かった神作品。
どの作品もシリアスで心理描写が深くストーリーも逸脱な先生がオメガバースを書くと、こんなに凄い展開になるんですね。
オメガバースの設定が使われてはいるけれど、描かれているのはバース性特有の話ではなく、2人の人間の優しい嘘と後悔と愛のはなし。
なのでオメガバースが苦手な人でも大丈夫だと思います。
相手の為に嘘をつき続けないといけない主人公円の心理描写が苦しくてせつなくて。
終盤、全ての真実が明らかになった時凄くほっとしました。
吐木のオメガではなかったけど、最初から2人は運命の番だったよ。
極上の愛の話にオメガバース、刑事物としてのスリリングも詰め込んだ読み応えたっぷりの作品でした。