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表題作硝子の街にて(10) 烏 CROW

シドニー・ホプキンズ/刑事/29歳
広瀬伸行/ツアーガイド/26歳

あらすじ

一九九八年春―。
シドニーが捜査中に怪我をした。
案ずる伸行は、シドニーの父親テッドに、どうしても会いたいと思った。
建築技師であるテッドの仕事場を訪ねることにした。
その仕事場の近く、日本企業で殺人事件が起こる。
その会社では、日本人経営陣に対する女性従業員からのセクハラ騒動がもちあがっていた。
伸行は殺人現場に立ち合う。
そしてシドニーも―。
どこまでもピュアなNYラブストーリー。

作品情報

作品名
硝子の街にて(10) 烏 CROW
著者
柏枝真郷 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
硝子の街にて
発売日
ISBN
9784062555999
4.5

(6)

(3)

萌々

(3)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
27
評価数
6
平均
4.5 / 5
神率
50%

レビュー投稿数2

第10巻。ノブの大胆さ

ハイ、これはおめでたい巻です。前巻レビューで浮かれた自分を反省してましたが、やはりBがLすると腐女子として喜ばずにはいられない。NY友情ストーリーがNYラブストーリーに変わりました。

なかなか次の段階に進めない2人でしたが、大胆に一歩を踏み出したのはノブの方です。男を見せました。生々しい表現とかはないですが、イラストが!この作品であんな色っぽい感じの挿絵が見られると思わなかった。茶屋町さんの絵、何だか切り絵風で素敵です。

今回シドニーのパパが登場しましたが、ママよりは全然いい関係性を築けているようで良かった。アメリカの幸せホームドラマのファミリーのようだったシドニー家。可愛い1人息子でシドニーママにしてみれば可愛さ余って憎さ100倍みたいになっちゃったんでしょうか。シリーズ終了までには皆和解してほしいものです。

ノブの職場の高田さんも清美さんも魅力的でいいキャラクターばかりなのでカムアウト後も皆受け入れてほしいなと思います。

1

近くなるほど遠くなる

最初は可愛くてピュアなラブストーリーという感じだったのが、巻を重ねて結び付きが強くなるほどせつなくて苦しいラブストーリーになっていってる…感じがします。

この巻数まできていっきにシリアス度を増したような。
片思いだった最初らへんのほうが安心して読めたなあ。両思いになった途端にこんな苦しいカップルってあるんでしょうか。

10年以上の片思いをやっと実らせたのに、ようやく恋人になったのに、恋人になった今の方が相手を遠く感じる、という伸行の感情がぎゅっと詰まっています。
シドニーのことを何も知らないとか、シドニーが何も教えてくれないとか、今まで気にしなくてもシドニーが大事で大好きだと思えていたことが今は違う。知らないことがあっても好きだと思えるのが友達で、知らないことがあれば不安になるというのが恋愛なのでしょうか。

シドニーが仕事で怪我をして帰って来ること、戦争に行った頃の夢を見て苦しんでいること、伸行はそれを何年も知らなかったことに気づきます。
シドニーのことが知りたくて前の恋人やシドニーの父親に会いにいったりするんですが、そこでまたまた殺人事件に巻き込まれます。

この作品は時系列にそった出来事がわりと正確に書かれていて、タイタニックの流行とか、こんなこと、あったなあ~て感じになることもあるけど、それをお話で読むとまた不思議な感じ。
世界情勢があってこそつくられていくお話ですね。
歴史小説ではなく、リアルタイムですすんでいく世界があってその後のお話が変わっていくと作者さんもかかれています。

現時点で10年以上たってるから、ここで騒がれている問題が最後にどうなるかわかっていて辛いです。
でもこれをリアルタイムで読んでたらもっと考えることが色々あって辛かったろうなと思います。

今回は何事にも「無欲」でなく「意欲がない」と自己嫌悪の固まりだった伸行が、仕事にもシドニーとの関係にも決断を出すターニングポイント的な回です。
職場にカミングアウトした伸行に対して「ホモでもレズでも、会社規則には関係ない」と言う上司に感動しました。職場に恵まれていますね。
職場にカミングアウトや周りの人へのカミングアウトでいっきにお話がすすんだ感じです。

そしてようやく同じベッドで寝て、一緒に暮らし始めるのですが…
ここまで10巻もかかるなんて、本当に長かったなぁ。楽しかったですが。でもここまで焦らされたのが不満だとは思えない。
ようやくシドニーが伸行を受け入れたシーンがすごく印象的だったからです。

受け側にベッドを拒まれるっていうのはあっても、攻め側にこんなに拒まれるっていうのはなかなかないんじゃないでしょうか。
シドニーはゲイだけど伸行はそうじゃない。ゲイだという理由で母親から疎まれて職場でバッシングを受けるシドニーは、「伸行をこちらへ完全に引っ張り込む覚悟が出来ていない」とやんわりと同じベッドで寝るのを断り続けていました。

シドニーの気遣いを受け入れて、平気なフリを続ける伸行ですが、伸行の無茶さが発揮されてとうとうシドニーも受け入れざるを得ない状況になります。家族にも友人にもカミングアウトする、と伸行が言ったからなのですが、それで周りに嫌われるなら、それがゲイというものならそれでもいいと言う気持ちって、一番失いたくないのはシドニーだからという事なんですよね。
ここまで読めたことがほんとによかった。長かったけどこれでよかったんだなぁと思いました。

3

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