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表題作硝子の街にて(1) 窓 WINDOW

シドニー・ホプキンス/NY市警刑事/28歳
広瀬 伸行/旅行会社勤務/24歳

あらすじ

喧噪(けんそう)のタイムズ・スクエアで、疾走する車列へ彷徨い出た、ひとりの日本人女性……。彼女を助けたのは、NY市警刑事シドニー。彼女の心を救ったのは、ノブこと伸行(のぶゆき)!?記憶喪失の彼女の過去に、なにが起きたのか。次々と浮かぶ事実に翻弄されるふたり。孤独な愛と封印された愛憎が引き起こした哀しい結末!!──欲望と甘い罠に満ちた虚飾の街マンハッタンでの、どこまでも純(ピュア)な伸行とシドニーの“友情”と“純愛”のNY物語。
出版社より

作品情報

作品名
硝子の街にて(1) 窓 WINDOW
著者
柏枝真郷 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
硝子の街にて
発売日
ISBN
9784062552363
4.6

(14)

(10)

萌々

(3)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
6
得点
65
評価数
14
平均
4.6 / 5
神率
71.4%

レビュー投稿数6

苦しさの余韻が堪らなく良い

一巻は'96年発行の、ながーいながーいシリーズ物です。
わたしは柏枝さんの他の作品が好きで読んだのですが、エロほぼ無し(Whiteheart文庫だしね)のまま進むというこちらのシリーズにとうとう手を出してしまいました…
わたしがエロ無しなんて!読み切れるのか?という心配もございましたよ、最初は。
もう昨今のエロ当たり前という作品(好きです)に慣れていましたので。
でも柏枝さんの作品のカラーなのか、それともJUNE時代はこういう作品も多くあったのかわかりませんが(JUNEの頃はほぼ読んでいないので)、あまり露骨描写はなさらない方だというのは知っておりましたし覚悟を決めました!(苦笑

**********************
受けの伸行は、NYの旅行代理店でバイトをする24歳。
童顔で長めの黒髪を結わえるティーンエイジャーにも見える容姿ながら、ヘビースモーカーで口が悪い部分も。

攻めは長身で金髪碧眼、整った容姿を持つゲイのシドニー。
元軍人で、27歳の若さでNY市警殺人課の警部補をつとめ、伸行が9歳まで住んでいたNYでの幼馴染み。

伸行が受けでシドニーが攻めだろうと当たりをつけておりますので、その表記で書かせて頂きます。
**********************

ラブよりも事件の方にページを割いてらっしゃる作品ではありますが、互いの部屋のバスルームがドアで繋がったアパルトマンに住んでいたり、子供の頃のシドニーが日本へ帰ってしまった伸行へと宛てた手紙だとかが二人の繋がりを示し、そしてシドニーだけを頼りに二十歳で再び渡米してきた伸行に対して、再会時に男とのキスを見せつけたシドニーの心の奥底にあるものなど鷲掴みされる方はされるはず!
わたしもすっかり鷲掴み…続きも購入いたしました(汗

サブタイトルが『窓』というように、いたるところに窓というワードが出てきます。
伸行にとっての、シドニーにとっての、そして今回の事件の中心人物である万里子にとっての窓。
それはひとつの名詞でありますが、個々の背景にある記憶や受け取り方ひとつでこんなにも変わるのですね。
柏枝さんうまいなあと素直に感嘆いたしました。
万里子にとっての窓は病床の姉を否応なく思い出す負の記憶で、シドニーにとってはお隣に住んでいた頃の伸行がいつも合図を送ってくれていた暖かい思い出、そして伸行には亡くなった母親の。

攻めがいつも大好きなわたしの好みは、断然シドニーなのです。
ただ伸行の、自分を捻じ曲げて暮らした日本、そして誰かの子供であるという足枷については本当にぐっときました。
彼のアイデンティティーは日本の体質によって頭を抑え込まれ、自我同一性はシドニーとの文通にのみ保たれていたのですから。
両親が全部が全部悪いとは言いません。
彼らもただの人間で、聖人君子ではないのですから。
ただ、置かれた立場でこれほど変わるのか、変わらなければ受け入れてもらえないのかと、窓という小道具とともに考えさせられた作品でした。
こういう現実を考えさせられるような作品は往々にして、言葉は悪いのですが筆者さんの独り善がり、オ○○ーに感じられることもあります。
これって悲しいでしょ、可哀想でしょ!という、作品に酔っているような。
でも酔うのは読者だけで良いと、個人的には考えています。
筆者さんにはもう一つ別の段から見て書いて欲しいなと。
この作品で素直に感動できたのは柏枝さんの立ち位置が空気のような、読者に意識させないいわゆる小説でいう神視点として(文体自体は三人称)立たれているからなのかなと思いました。
その分、最後の万里子の父親の大団円的な良い人ぶりは余計だったようにも感じましたが。
徹底的に現実感を出して頂いても、読者は納得出来たのではないかしら。

この作品、主役二人の話と事件側の話とが章で切り替わっているので、こういうスタイルに慣れない方には『?』となりかねない部分があるのですが、個人的にはまったく問題なしでした。
Whiteheart文庫は字も大きいし(笑)柏枝さんの作品の中では読みやすいですね。
作中紹介されている歌、『THE ROSE』は多分タイトルは知らずとも一度は耳にしたことがある楽曲だと思います。
ネットで探し、読みながら流しておりました。
希望を感じる歌詞で、この作品にぴったりでした。

5

BLだけじゃない、BL

最初のレビューは大好きな作品で、と決めていました。
それがこの柏枝先生の作品『硝子の街シリーズ』です^^

全22巻にも及ぶ大作。シリーズの方はもう終わっているのですが。
……実は、私の中ではまだ終わっていません。
「ノブとシドニーから別れたくない!」という思いから、まだ最終2、3巻に手をつけられないのです。今まで、これほどまでに愛着が沸いたBL作品はありませんでした。



舞台はアメリカ。NY。
いろいろな人種が入り乱れるこの中で、ノブとシドニーの物語りは始まります。

幼少期を共に過ごし、とある事情で離ればなれにになった二人は、ノブが20歳を迎える少し前にまた出会いました。

思えばこれが、シドニー苦悩の日々の始まりだったんですね^^;
シドニーの忍耐強さには、ほんと尊敬してしまいます。

再会してからというもの、シドニーはノブに振り回されっぱなし。
ノブも自覚がないから、誰もなにも言えないんです。でもだからこそのノブなんですよね。


詳しいお話は私よりも上手くご説明されている方がいらっしゃるので、省きますが。
このシリーズ、この作品を読んで、ノブやシドニーを嫌いになる人はいないんじゃないでしょうか?
ノブやシドニーだけではなく、硝子の街シリーズに出てくる全てのキャラクターを、きっと好きだと感じるはずです。

恋愛だけのBLでは感じられない人の、温かさ、辛さ、過去や悩み、強さを感じられます。

ノブと共に成長していけます。
シドニーと共に強さを持てます。
二人と共に喜びを感じていけます。


そんな、BLです。

3

シドニーとノブの純情ラブストーリー in ニューヨーク

 今はとにかく、柏枝先生の作品にハマッていて新しいものからさかのぼって読んでいる状態。最初、ホーリー・アップルシリーズ、ライバルシリーズと読んで、どうしても硝子の街にてシリーズが読んでみたくなったので、即、着手!
 しかし、この一巻が出たのが1996年と古めなので、書店では売っていないものも多く、インターネットを利用してお取り寄せしたりしました。まぁ、私が小学生になったばかりのころに発売したので、しょうがないか。
 中身を読んでもいないのに一気に買ってしまったんですが、柏枝先生の作品にはわたし的にハズレがないというか、今のところ何を読んでもツボなので失敗はありません^^
 最近気づいたんですが、サスペンス系かなり好きみたいです。

 黄金の髪と空色の瞳を持つ刑事・シドニーと長髪を遊ばせた日本人・伸行のお話。
アメリカ、ニューヨーク。そこは、髪の色、肌、さまざま人種が入り乱れる移民の国。
多くの人の感情、思惑のもとで、治安が回復を見せてきたとはいっても窃盗や殺人を含めた事件も後をたたない―
 広瀬伸行ことノブは、両親が離婚して母と日本に帰る9歳までニューヨークで育つ。ちょうど隣家にはノブよりも3歳年上のシドニーの家族が住んでいて、ノブとシドニーは本当の兄弟のようにして過ごしていた。ノブの父は母と結婚してすぐに大手商社の駐在員としてニューヨークに派遣され、ノブはアメリカの地で生まれたのだ。しかし、不慣れな土地で苦手な英語と対人恐怖で家に引きこもってばかりの母に愛想をつかした父は、アメリカ人の愛人をつくり、めったに家にいつかなくなる。家族がバラバラである中、ノブが寂しい思いをしないですんだのは、母の代わりに家事やその他の世話をしてくれた家政婦のようこさんと隣家のシドニーの存在だった。シドニーは、近所の子どもたちの中でもガキ大将で、ノブが孤立しないように支えてくれる頼れる兄のようであった。
 そんな二人が日本とアメリカという壁に隔てられてもなお、しばらくの間は文通で近況を語り合っていたが、ノブが高校進学するとともに、その連絡も途絶える。
 そして、ノブが20歳になる直前に知ったのは、自分が日本とアメリカの二重国籍であること、20歳までにどちらかの国籍を選択しなければいけないことだった。同時期に体の弱かった母が死に、親権を盾に迫ってきた父から逃げるため、またシドニーに会いたいという想いを募らせたノブは、母の実家、日本での育て親とも言える祖父母に手紙を残しニューヨークに飛び立つ。日本国籍を捨てたノブは、シドニーと再開するが、シドニーは男の恋人と住んでいて・・・
 幼馴染の再開もの。いいです!!しかし、久しぶりに会ったシドニーがゲイであったと知ったノブはほんとに驚いたろうな、でもすぐに受け入れてしまうとこがノブの柔軟な思考の賜物。そして、今回の事件は、一言でいえば姉と妹と姉の旦那さんの三角関係が生んだこと。実際、姉が病気になり看病していた妹と旦那が、姉の死後に結ばれるという昼ドラのような関係がもとで起こったのですが。あー説明するのも難しいよ。そして、殺人課の刑事シドニーと、旅行会社でバイトしているノブは事件の真相を探るため奔走する!毎回こういった展開で、事件が起き、ノブが巻き込まれる形、その間にノブとシドニーの関係も徐々に変化が起きていくわけですが、面白い!BL要素だけでなく、サスペンスもしっかり読めるのがいい。てかシドニーがほんとに男前で。アングロサクソン系のハンサムって描写だけど、どんなハンサムなんだろ。まあそれは茶屋町先生の挿絵をみて補うことにします。
 全22巻という大作なので、まだまだこの二人のお話が読めると思うとワク②♪♪

 

2

大作の第1巻

大好きな柏枝真郷さんの大長編小説。全22巻のうちの一冊目。読むのが何だかもったいなくて積読にしていましたが、とうとう手をつけてしまいました。

90年代ニューヨークを舞台にしたアメリカ人(ゲイ)×日本人(ノンケ)の幼馴染みラブ。1巻では友人のままですが、将来恋人同士になりそうな匂いプンプンです。楽しみしかない。攻めのシドニーの元彼・ロッドも素敵で良い人だったので気の毒。ミステリー部分もよく考えられているけど、事件の加害者も被害者も切なすぎてやりきれないんだよね…柏枝さんの小説って。

ニューヨークを愛する柏枝さんの描く90年代と2000年代のニューヨーク。ワクワクしながら次巻以降も読んでいきます。

1

可愛くて苦しくて愛しい作品

Windowsってタイトルですが、Windows95からきてるんですね。Windows95…懐かしい響き。
舞台が90年代のニューヨーク。20巻以上ある長いシリーズです。

実はほぼ最後の巻数まで既に読み終えた上で、今1巻の感想を書いているのですが、1巻では恋愛部分はほぼなくて、少し物足りなさを感じます。でも手に取られる方には是非、2人が結ばれるまで(巻数がかかるのですが)読んでほしい!
こんなに可愛くて、こんなにつらいカップルがいるのか、と思います。

とても苦しくて辛くてせつなくてでも幸せで純粋で友情も愛情もあって、
「苦しみも喜びもともにする」というゲイカップルとして苦難を乗り越えていく様子がじっくり味わえて、ものすごく感動をくれる愛しいシリーズです。

中身は恋愛がベースというよりは推理小説に近いです。警察ものですが、サスペンスというよりミステリーのノリ。
主人公の伸行はニューヨーク生まれの日本人。マンションの隣にすむシドニーは殺人課の警部補で生まれたときからの幼なじみ。

9歳のときに一度アメリカを離れた伸行は大人になり、19歳になって再びニューヨークに戻ってきて、長らく音信不通になっていたシドニーの隣の部屋に住みはじめ、今はニューヨークの日本の観光会社でツアーガイドとして働いています。
数年のブランクを経ても強い絆で結ばれた友人である二人は、ある日本人の新婚夫婦の殺人事件に巻き込まれていく…という一話完結型のお話です。

1巻は伸行とシドニーの過去に触れながら、今の状況を照らし合わせていく感じで、過去話と現代が交互に出てくるような感じでした。
それが、たまたま巻き込まれた殺人事件の容疑者である女性が、伸行の過去の状況に似ていて、事件と伸行のプライベートがシンクロしていきます。

シドニーはゲイですが、恋人と別れたばかり。
恋愛というよりはまだまだ友情のお話です。これから先に恋人になっていくのかな、という雰囲気はあるのですが、今は一番大事な友達という感じです。

日本人なのに日本になじめず、英語を話すと母親に拒まれ、日本になじむためにネイティブな発音を日本風の発音に無理矢理矯正した伸行は、アメリカで生まれたためにアメリカ国籍を選ぶこともできると知って、たった1人でほとんど荷物も持たずに家族に置き手紙だけ残して日本を捨てます。

NYに行けばシドニーがいるから、という希望だけで会えるかどうかわからない幼なじみを頼ってアメリカまでやってきた伸行と、それを受け入れたシドニーの間にはただの昔なじみ以上の絆を感じます。
ずっと互いに「最高の友達だ」て言っていて、作者さんもあとがきで「男同士の純粋な友情が書きたい」と書いていたので最初はあれ、これホントにBLなのかな?って思ってしまうくらい進展は遅いのですが…

シドニーが恋人と暮らしていたときに、恋人には悪いけど、別れてもっとこっちを見てほしいと思っていたと告白する伸行の思いはこの先恋心になっていくのかな、というところで終わっています。

あったかくなる、というよりは少しだけものがなしいというか寂しいというか、年代のせいでしょうか。懐かしいのが寂しい、という雰囲気のある作品です。

4

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