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表題作硝子の街にて(20) 悼 SORROW 9・11その夜 

シドニー・ホプキンズ/刑事/33歳
広瀬伸行/ツアーガイド/30歳

あらすじ

あなたは私のヒーローなのよ…
瓦礫(がれき)の山となったグラウンド・ゼロ。懸命の救助活動が、粛々と続けられた――。

9.11の夜。宵闇のなかで、崩落したツイン・タワーはどす黒い煙を吐き続けている。ロウァ・マンハッタン一帯が停電する中、スティーブは同僚とともに懸命の救助活動を続けた。災害発生から72時間、いわゆる“黄金の72時間”にどれだけの人間を救えるのか? ノブもシドニーも、互いの安否を気遣いながら、それぞれの仕事に立ち向かう。どこまでもピュアなNYラブストーリー。
出版社より

作品情報

作品名
硝子の街にて(20) 悼 SORROW 9・11その夜 
著者
柏枝真郷 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
シリーズ
硝子の街にて
発売日
ISBN
9784062558136
4.2

(4)

(1)

萌々

(3)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
17
評価数
4
平均
4.2 / 5
神率
25%

レビュー投稿数2

第20巻

この巻では2001年9月11日のニューヨークのテロが起きた日から2週間後までを描いています。BLというよりあの事件を市民目線で描いた小説という事でただただ続きを追ってしまいます。

登場人物は架空のキャラクターでも、実際に起こった出来事については事実に対して忠実に描かれているのだと思われます。ツインタワーの上にあったアンテナが地上に落ちてきて星条旗が掲げられていた、とかそういうのよく調べられるなあと思いました。

ノブとシドニーとスティーブはやっと3人で感動の再会を果たせますがそれはほんの一瞬だけで、すれ違いばかりのノブとシドニーが家で2人で過ごせる日はまだ遠いようです。ノブも仕事を頑張っていてテロ後の混乱の中ツアー客を全員日本に無事に帰す段取りがすごく大変なのです。しかも帰った後はしばらくキャンセルばかりでノブ達の仕事も成り立たなくなってしまうので今後はその事も心配です。

この大作も残すところ2巻だけとなってしまいました。ついつい続きが気になり急ぎ足で読んでしまいますが、最後は丁寧に味わって読みたいと思います。

0

それぞれに出来る精一杯

2001年9月11日のNY同時多発テロ事件からその後の2週間を描いた硝子の街シリーズの19冊目。
停電で街が真っ暗になり、パニックも落ち着いて、灰と塵の舞う人のいない街はほんとに大都市NYなのかとゴーストタウン感の漂うほの暗い回です。

シドニーと伸行は一時帰宅しますがすれ違ったまま、再び慌ただしく出ていきます。
一夜明けて電話は通じやすくなったけど、声を聞くと気が緩みそうだとシドニーに連絡することを自制する伸行。

マンハッタンの地理があんまりわからないので想像できないのですが、
(地図は載ってるのですが)伸行は地下鉄に乗って帰ってるので、立ち入り禁止ってどのくらい広いのだろうな…と思ったり。

前回があまりに怖くて怖くて心臓に悪かったので、少しずつ冷静さを取り戻し知人の安否確認なども進んで前よりは読んでいて恐怖感は感じませんでした。
飛行機が飛ばず帰れない旅行客をホテルに閉じ込めないで、行ける所でツアーをしよう!と急遽オプションツアーを考える伸行たちにも救われます。皆、少し前向きさを取り戻しています。

伸行とシドニーは中盤でやっと再会するのですが、お互い無事だと分かっていても、なんだかもう言葉にならない再会シーンです。

少しずつライフラインが戻りつつあり、市民主催の追悼式典に伸行らが出席するところで今回は終わりです。
事件が起こった瞬間や直後でなく、あまり報道されなかったその後2週間の救助活動が書きたくて資料をたくさん集めたということですが、本当にBLを読んでるんじゃないな・・・というリアルで苦しくてでも力強い文章が素晴らしいと思いました。
今回も甘いシーンとは一切無縁ですが、読んでよかったと思います。

でも何よりせつなかったのが前回からやはりスティーブの存在。
伸行とシドニーが主役なのに、今回も一番の主役は消防士のスティーブだと思う。もう見ていて苦しくてやりきれない。

消防士が沢山亡くなり、自分も怪我を負い、親友を亡くしながらも「ただ自分の仕事をしただけだ、ヒーローなんて・・・」という最後の追悼式のシーンは忘れられないシーンです。

伸行もシドニーもそうですが、それぞれ自分の仕事に向き合って、今自分にできることをします。
伸行はツアー客の無事を確かめ全員を無事日本に帰すことに尽力し、シドニーは私服警官は制服警官ほど役に立たないとわかっていて、強奪や詐欺の抑圧や避難誘導の補助や安否確認など何でも屋として走り回ります。
そして消防士は瓦礫を全て取り除くまでは何週間かかろうと「救助活動」という名目でで瓦礫の撤去に臨みます。
この、「今できることをする」という積み重ねでやっと日常に戻れる入り口まで戻ってきたのかなぁと思います。

お客さんも日本に無事に帰り、この先の旅行客が激減してしまうという新たな問題はあるのですが、やっと長い非日常から抜けつつあるというラスト。
でも元通りにはならないんですよね。シドニーも伸行も好きだったNYは。そう思うとせつないのですが、苦しい展開が続いたので、明るい兆しの見えるラストであってよかったと思いました。

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