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以前から読みたかったのですが手が出せなかった一冊。Charaさん、有難うございました。来月以降も続くシリーズ、全部必ず読みます。
戦争を知っている方が身近にいない方が、この本を手に取って読まれて、戦争ってこういうものかも、と考えるきっかけになると私は嬉しいんだけど、皆さまはどう感じられたのかなあ。本編320Pほど+番外編3編(うち1編書き下ろし)+牧先生のあとがき(すっっっっごく良い、泣く)+尾上先生のあとがき。忘れない1冊になると思うので神にしました。
最前線ラバウルへ向かう飛行機の中で敵襲に遭ったところ、一機の零戦に助けられた三上。ただその零戦からは妙な音が響いていて・・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物は
城戸(受けを気にかけてくれる通信長、めちゃ好き)、受け家族(父は大蔵大臣)、虻川(受け父の秘書)、秋山(整備上手い人)、松田(ラバウル島にいる陸軍兵)など。
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傷ついた人間不信の猫(すぐ、しゃーしゃー言う)が、包容力たっぷり系の大きいわんこに懐いていくって感じのお話です。心の交流って感じでは好きです。二人の恋心はセツナイです。せつなくてせつなくて、泣いちゃう。(個人的には体をつなげるシーンは、もっとさらっとでも良かった気がしますけど、これは好みの問題ですね)
空飛んでいるところの記載も、スリリングでドキドキ。誰も死なないんだよ、って言ってくれるなら、きゃあきゃあ楽しんで観ていたい。
ただ、戦争。80年ぐらい前に沢山の人が死んだ戦争が、どうしても思い起こされて、空中戦を楽しんで読むことはできませんでした。
エンタメとしてはおススメしにくい気持ちです。飛んで行って戦う人を見送る立場にはなりたくないし、自分が飛んで行ったとしても心配する誰かを残すのは嫌だと思うのです。久しぶりにこういう実際の戦争を思い起こされるものを読んで、最近「どこかの国が攻めてきたら、戦ってもいいかも」という気持ちに傾いていたのを、再び非戦論方向に見直すべきでは。と思った1冊でした。
(少し重いレビューになってしまって申し訳ありません)
時間をかけてゆっくりと読み終えた今。
心のどこかを持っていかれたような、そんな気持ちになっています。
以前から気になっていたシリーズではあったのだけれど、絶版ということもあり読める機会がなく…というところで復刊されたこちらの作品。
作中の時代背景的にも、題材的にも、どうだったかと上手く言葉に出せないというのが正直なところです。
萌えた。萌えない。面白かった。
そういうお話ではないと個人的には思うのです。
ただ、彼らに出逢えて、そして読めて良かったと心から思える作品でした。
物語は、戦争が終わり十数年が経過した平和な時代から始まります。
とある人物から託された1枚の粗悪な紙を見たその瞬間。
言葉にならない想いが溢れ、遥か遠いラバウルの空で鳴くローレライの声が聞こえ、一気にあの時あの場所で起きた記憶が鮮明によみがえる。
整備士と零戦搭乗員の組み合わせですから、やはり一筋縄ではいかないお話です。
目に見える部分にも、見えない部分にも深い傷を負った浅群と、浅群の専属整備を担当することとなった三上が出逢い、心を通わせていく。
戦争を題材にしたお話といえば、どうしても戦争の悲惨さややり切れなさに目がいってしまいがちですが、私は2人が時にぶつかり合いながらも次第に寄り添おうとしていく姿が丁寧に描かれている点に惹かれました。
心理描写がとても繊細で丁寧なんですね。
両視点で綴られる三上の想いも、浅群の想いもどちらも理解が出来るだけに非常に苦しい気持ちにさせられます。
けれど、時は戦時中。
日本から遥か遠いラバウルで暮らす彼らの日常の中に、少しずつ薄膜を張ったような不穏さが確かに漂ってくる。
彼らが未来を語れば語るほど、この戦いの結末を知っている読み手の心境は複雑にならざるを得ません。
過酷な状況下で彼らが何を考え、誰を愛し、どう生きたのか。
ぜひ最後まで見届けてほしいです。
始まりから結びまでの構成が見事で、読み終えた後は放心してしまいました。
戦争が良いとも悪いとも書かれてはいません。
ですが、なにか感じるものがきっとひとつはあるはず。
平和な国で生きているからこそ読めて良かったと感じた1冊でした。
復刊おめでとうございます。
そして、ありがとうございます。
絶版になっている間に旧版の方を何とか入手していたのですが、あらすじを読んでなかなか決心がつかないまま今回の新装版発売となりました。
そしてようやく拝読したのですが、今は全くまともな感想が書けそうにありません。
今は、というか、時間が経っても。
自分と切り離したところで客観的に捉えるしか、何かしら文字にする方法がないように思います。
それはともかく、ぜひローレライの声に耳を傾けてみてほしいです。
p.299
"響き渡る歌声は"から始まる一節が心に残っています。
再販作品なのにマンスリーレビューランキング第1位になっていることに興味を引かれて、うっかり手を伸ばしてしまいました。戦争もの、あんまり得意じゃないのに。しかし、読み始めると物語の世界にたちまち引き込まれてしまいました。
電子書籍で読んだので文庫の物理的厚みはわかりませんが、個人的体感では、休憩なしで読んだとしたら二時間かからず読めるほどの分量だと思います。
でも、そんなに長くはない作品だけれど、あえて小刻みに休憩を入れなければ読めなかったです。物語の吸引力が凄すぎて、どっぷりハマると当分脱け出せず、読後虚無の日々を過ごしてしまいそうな気がしたのです。
それはラバウル島の風景描写が眩しくて、零戦の構造や飛行の様子がまるで本物を見ているかのように詳細に描かれていて、三上と浅群の切実な心情が自分のことのように伝わってくるからです。
戦闘描写や空爆の場面の真に迫る描写には鳥肌が立ちました。残された時間の無いことに追い立てられながら切実に相手を求めて愛を交わす三上と浅群には心臓をギュッと鷲掴みにされたように苦しくなりました。
なんて凄い小説としか言いようがないです。これを、商業BL小説というターゲット層がごく限られた範囲に絞られたジャンルで読めるという贅沢……。
出来たら普段はBLは読まないという方にも読んで欲しい名作です。
初読みです。読み終えて10日ほど経ちましたがいまだにこの世界から抜け出せず、次読もうと買っておいた本にまだ手を付けられていません……。BL小説の枠を超えた物語だと感じました。単純な萌えとかときめく恋模様とかでは片付けられなくて、なんて言うんでしょう、恋と呼ぶのでは生ぬるい。2人が恋に落ちた、という表現では陳腐で言い表せない。もっと深く、本能的に相手を求めているというか、心の奥深くに相手を想う気持ちがあるというか、無償の献身というか……なんとも私の文章力では言い表せません。時代や状況的にも、「好きだ」とか「恋人になってくれ」とかの告白の文言も一切ないのですが、でも、身も心も相手に捧げ、身を引き裂かれるような心地になりながらもまっすぐ相手を想い焦がれる男二人の切実な感情を浴びることが出来ます。そういうの大好きです……!
戦闘シーンや機体の整備、整備士や搭乗員の暮らしやちょっとしたエピソードまで戦時中のリアルが溢れています。風景の描写や心理描写も巧みで、文章もストレスなくするすると読むことが出来ました。
ざっくり言うと、戦果を挙げるため諸刃の剣のような戦い方をする零戦搭乗員の塁と、そんな塁の戦い方を辞めさせようと何度も阻む整備士の三上のお話です。だいぶ悲惨な過去があり、警戒心が強く他人との交流が乏しい塁が、反発を繰り返しながらも次第に三上に心を開いていくさまにじんわりと胸が熱くなります。家の汚名を雪ぐため、戦果を挙げ栄誉の死を望み向こう見ずな戦いをする塁ですが、次第にその無茶な戦いをする理由が変わっていくのが……なんともせつなくやるせなく、胸が締め付けられます。
太平洋戦争中の前線地ラバウルが舞台となっており少し重めのお話となっておりますが、是非とも読んでいただきたいです。尾上先生の書き下ろし短編と牧先生の描き下ろしイラストが収録されているので、絶版本を持っていらっしゃる方にもおすすめです。どちらも素晴らしく、あたたかいのにせつなくて情緒が乱されます。