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氷雪の王子と神の心臓

hyousetsu no ouji to kami no sinzou

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表題作氷雪の王子と神の心臓

イスハン・アダト・シン・サーサーン,帝国アイデースの第五皇子,14歳→23歳
ロシェレディア,魔法国エウェストルムの第一王子で大魔法使い,10歳→19歳

あらすじ

大魔法使いとして生まれ、政治の道具として隣国に嫁ぐ重い定め──強大な魔力のため塔に幽閉されていた王子ロシェレディア。そこにある夜、現れたのは帝国アイデースの第五皇子イスハン。野心もないのに兄皇帝から命を狙われる身だ。「俺が皇太子ならそなたを攫えるのに」互いに運命に抗えず、あり得ない夢を語り逢瀬を重ねていたが!? 選んだ未来は茨の道──比類なき苦難と愛の奇跡!!

作品情報

作品名
氷雪の王子と神の心臓
著者
尾上与一 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
電子発売日
ISBN
9784199010705
4.1

(106)

(72)

萌々

(9)

(6)

中立

(9)

趣味じゃない

(10)

レビュー数
18
得点
423
評価数
106
平均
4.1 / 5
神率
67.9%

レビュー投稿数18

今シリーズで一番好きかも。

作家買い。
尾上作品の『花降る王子の婚礼』のスピンオフ。『花降る~』の受けちゃん・リディルのお兄ちゃん編。『花降る~』の続編の『雪降る王妃と春のめざめ 花降る王子の婚礼2』に登場していてめっちゃドツボだった魔法国エウェストルムの第一王子・ロシェレディアが主人公のお話で、発売日を心待ちにしていました。

もちろんスピンオフものなので前作を読まれていた方がより面白く感じられると思いますが、前作未読でも問題なく読める造りになっているので、未読の方にもぜひとも手に取っていただきたい。今作もめっちゃ良かった…!

ということでレビューを。ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





魔法国エウェストルム。
王の子は魔力を受け継ぎこの世に生を受ける。武力を持たないこの国は、王女たちを他の国に嫁がせ、魔力を供給、その見返りとして他国からの侵略を防いでいる。つまり、王女の存在は、国交の道具もであり唯一の切り札でもある。

が、まれに強すぎる魔力を盛る大魔法使いが生まれてくることがある。それが、第一王子として生まれてきたロシェレディアだ。力が強すぎる王は魔力のコントロールが効かず、それ故にロシェレディアはその存在を「王女」というベールで隠してきた。が、王女ゆえに、ロシェレディアは国交の切り札としてすでに嫁ぎ先が決まっていた。

王子であることを隠すために塔に幽閉され自由がないロシェレディアは退屈な日々を過ごしていたが、ある日一人の少年が塔の外をよじ登ってくる。その少年は自身を帝国アイデースの第五皇子・イスハンだと名乗るが、それをきっかけに二人は心を交わすようになっていくー。

というお話。

ロシェレディアという男の子は王子であることを隠すために幽閉されていたり、自分の意にそわないところへ嫁がされる、という薄幸さを持ち合わせた少年です。さらに美しすぎるビジュアルを持ち合わせているためにすごく儚い男の子、に一見見える。見えるのですが、その入れ物を裏切る豪胆な中身の男の子です。一言でいうと、強くてカッコいい。

自分の意志とは無関係に嫁がされる、というのは王族ならでは。そのことを彼はきちんと受け入れている。

そんな彼に一石を投じるのが、アイデース国の第五皇子のイスハンです。
第五皇子、という中途半端な立場な彼の、それゆえの自由奔放さに惹かれていく。彼と想いを交わすことはできないことは理解しつつ。そしてそれはイスハンも同じ。彼もロシェレディアを想いつつ、お互いの身分に抗うことはできずに運命に翻弄されていく。

が、このお話の面白いところは、この二人が非常にガッツのある青年だという部分。自分の王子という宿命を理解しつつ、そして国を想う気持ちはだれにも負けないけれど、その波に翻弄されるだけの人物ではない。

そして、その二人の内面に華を添えるのが、「魔法国」「武強国」という国があること、魔力を持つ魔法使いがいること、という世界観。ロシェしかり、イスハンしかり、彼らは自分ではどうしようもないうねりに巻き込まれてしまう。それがこの作品の持つ世界観にぴったり合っていて、読んでいてあっという間に引き込まれてしまうし非常に面白い。

ただ、うーん、これは完全に好みの問題ですし、あとイスハンの立場を鑑みると仕方がないと思える部分も大きいのでなかなか難しいのですが、イスハンが他の女性との間に子を成すという描写があります。これがねえ、ちょっと地雷ででしてね。ちょっぴり萎え萎えな気分になったことは否めない。こういう展開(ほかの女性と子を成す)が苦手な方にはちょっと注意が必要かもです。

ただイスハンがロシェに負けず劣らずのカッコいい男なんですよ。
文句なしのスパダリ!という感じではなく、「能ある鷹は爪を隠す」っていう感じ。悔しいくらいに、カッコいい。何をおいてもロシェファーストなイスハンが他の女性を抱き子を成さなければならなかった、ということを鑑みると、イスハンもまた葛藤を抱いていたのだとわかるので、まあ許してやっか!(という非常に上から目線な感想でごめんね)と思いつつ。何より、ロシェがイスハンの立場を重んじ理解しているので、外野が口をはさむことではないなあ、と。

ベースとしてはドシリアスな因子を持つ今作品ですが、ドシリアスに振り切った作品ではありません。かなり血なまぐさい描写もありますし、子を成すとか魔法使いに対する非道な扱いとか、胸糞な描写もあります。さらに最後のどんでん返しにちょっぴり切ない気持ちになる。が、そこにロシェとイスハンのコミカルなやり取りとか豪胆な性格がプラスされることでシリアス過ぎない。そのバランスが絶妙でした。

とにかく奥行きが深い1冊。
アレがこう来て、それがそこに繋がってるのか―!と思わず唸らされる。
前作『雪降る王妃と春のめざめ 花降る王子の婚礼2』の裏側(ロシェ視点)のお話も読んでみたいし、まだまだ続いていって欲しいなと思います。今シリーズ、とっても好きな作品なのですが、今作品が一番好きかも。yocoさんの挿絵も文句なしの美しさで、めちゃめちゃ面白く、萌え、最後の最後まで息つかせぬ、そんな神作品でした。

24

方向性の違う天然CP

前作で登場したアイデース組の馴れ初め話です。
ロシェの魔法使いとしての資質や本人の度量、イスハンの鷹揚さがとても魅力的で気になっていたので、続編でメインのお話が出てとても嬉しかったです。

二人共にキャラクターがとても魅力的で、二人のやり取りを見ているだけでとても楽しい。ここに魔法や呪いというファンタジー要素が絡むことでストーリーの流れもわくわくが止まりませんでした。

賛否両論の後宮の件だけちょっと吐き出させて頂きたい……!

政治的に難しく、更に男であるロシェを無理矢理力ずくで妃に迎えることの条件が、後宮を構え、数十人にも及ぶ子どもをつくることで、それを受け入れてでもロシェを欲したイスハンだとわかるので、それそのものについてはモヤついても受け入れたタイプです。
ただ、ロシェに相談も報告もなく結婚直後早々に後宮を構えた上に、ほぼ二年、ほったらかし(ロシェ以外を抱くイスハンの罪悪感諸々でしょうけども)、夫が何をしているかすべて承知して飲み込んで不快感に耐えるロシェの二年間を思えばかなりしんどかったです。
後宮にいる間のイスハン側の描写はありませんが、想像力たくましいタイプの私なので、
優しいイスハンだから後宮の女を抱く時に雑にするなんてないだろうから丁寧に抱いただろうな、などと考えてしまい、そんなイスハンにお役目以上の感情持たない女が100人いて1人もいないなんてことある???とか、
後宮に残った女はイスハンより我が子、っていうけど、イスハンと関係持った女と接し続けるロシェの心境とは????とか、
なんか色々考えてしまったので、後宮を持ったエピソードを入れた意味、子どもが数十人出来たことの意味を持った良い感じのエピソードが続編とかであれば嬉しいなぁと思います。続編!ありますよね!!?

気持ちの面では、お互いがお互いにただひたすら一途なので、それがすごく良かったです。

あーーーー、イスハンの初めてはロシェに捧げて欲しかったなぁぁぁぁぁぁ。

19

なんでも食べる

いきものがかりさん

いえいえ、お心遣いがめちゃくちゃ沁みました!ありがとうございます……!
続編出たら王太子含めお子らのあれこれそれが書かれるのか、個人的に気になるポイントです本当に。
展開的にロシェが扉を開いてしまうのは確定ですし、そっちメインのお話になりそうだなぁとは思いつつ、今回抱いたウグゥッ!!を良い感じに昇華したいです。
次巻も切なそうな雰囲気が今からむんむんですが、両手を上げた幸せ全開な二人が読みたい……!

いきものがかり

既読でしたか。少しでもお気が晴れればと思ったのですが、蛇足でしたね、失礼しました。
いやあ、平民だしあの人数ですので作法通りだと思いますよ!
あの短期間であの人数は、きっと顔も覚えてないんじゃないでしょうか。
でもそうなると子供たちがかわいそうですね。
ロシェが「子供たちを守らなければ」って言ってますが皇帝変わったら殺し合いになるってイスハン自ら言ってますからね。
私としてはそういうアイデースの後継問題についてもイスハンに一石を投じて欲しかったです。
そういうことも含めて、アイデースのその後が読みたいです。
そしてできればロシェが身体を取り戻してハッピーエンド希望です。

なんでも食べる

いきものがかりさん

こんにちは!コメントありがとうございます!
そちらの作品については、当方も履修しております……!素晴らしい作品ですよね。
そちらで書かれたような、義務です!!!て感じの挿れて出すだけ(言い方よ)のものであって欲しさが凄まじいです。
平民からも募っている後宮ですので、どこまでお作法なのかなぁとか考えてしまう辺りが想像力逞しいポイントです……
義務義務の義務で情の通わない子作りで産まれる子ども達というのも、イスハンの代の悲劇を思えばしんどいラインなので、こう、こう……!良い風に!解釈したい!です!
ポジティブに想像力を働かせたいものです……!
それはそれとして、続編楽しみですね!

いきものがかり

横入り失礼します。
想像力たくましい箇所についてなんですが、「雪原の月影」というファンタジーBL小説に後宮について出てくるんですが、それによると後宮は完全に「子供を授かることに特化した場所」なので、閨にも作法がありまして。
ざっくり書くと、皇帝は単に寝転んでいるだけでOK。
×たせることから何から何まで侍従がやるそうです。
しかも、監視やらお付きの人が周りに十数人・・
ですので、甘い言葉は勿論愛撫やらもないと思うのでどちらも完全に「お役目」と割り切っている、というのはあり得ると思います。
だから私は飲み込めたんですが。
だからある意味ロシェとのことがイスハンにとってはじめて、かも?
・・長々と失礼しました。
これだけザワついているので本当に、続編で何か言及があるといいですね。

なんでも食べる

まりあ111さん

コメントありがとうございます。
ほんの数ページの描写ですけど、ダメージ食らうひとはとことん食らっちゃうポイントですよね。
本の封印がとけたら、好きなシーンの読み返しからでもゆっくり楽しんでくださいね……!

お互いに初恋、少年期の結婚、とくれば、お互いに初体験!!の流れ、見たかったですね……!!
男として完成したイスハンに置いていかれた疎外感と嫉妬心を抱いて怯むロシェに心臓ギュンッてなりました。

イスハンロシェ!!

シリーズで一番好きだ~~!!と鼻息荒く、こちらに立ち寄ったところ、評価が分かれていて「お!?」とびっくりしましたが、なるほど、なるほど、あの問題でしたか…と納得しました。私は、こちらの”末っ子長男CP”が弟夫夫よりも好きすぎるので(氷>花でした)、あの問題はもちろんモヤっとしましたが、全体として素晴らしかったです。続き щ(゚Д゚щ)カモーン!!

そもそも私があんまりファンタジーファンではないので、、こちらのシリーズがめちゃくちゃ好きか?と問われたらそういうわけではなかったのですが(汗)、そんな非ファンタジーファンすら惹きつける尾上先生の端正な美しい一文一文からなる壮大なストーリー、その筆力に圧倒されっぱなしでした。小説読んでイメージを旅するってこんなにも楽しい!と、ウハウハしちゃいました。

今回、攻受の出会い、試練、エロ、日常、全部ツボでした。特に何度も繰り返し反芻される出会いの場面は、ボーイミーツボーイ史上最高(あくまで個人基準)の名場面と言ってもいいかな~と思えるくらい好きでした。
少年同士(つても片方は完璧に勘違いしてたんだけど)の友情(初恋?)から始まった流れが美しくて、だからこそ、やっぱりどこかしらいつまでも濃厚な友情の延長みたいな雰囲気に萌3。

七夕様みたいに年1くらいしか会えなくて、ときどき受に手紙で冒険譚を送る筆まめな攻とそれを繰り返し読んで外の世界への憧れを募らせる受、二人の交流が可愛いかったです。
そんな初心なふたりが、政変に巻き込まれ、否応なく大人になり、政略結婚をぶっ壊す秘密の共犯者になり、同志のような絆で結ばれながら、さらに誰よりも大切に想う愛情が上乗せされてる関係性に萌え転げました(なんなら忠実な家臣より…というのは、お互いがいない人生は意味がないという魂の共通認識なので、他人が影響しないレベルなんですね!)。やんちゃさは拮抗しつつ、体力お化けで前戯が長い攻と食いしん坊で快楽に素直な受っていう性質も好きすぎました。そしてエロの描写が最っ高にエモエモ!!

というわけで、最後にモヤる問題について、作品世界を構成する要素の一部としてうやむやにしなかった先生の胆力に敬意を表す意味でも”神”です。

13

皇帝としての覚悟

賛否が分かれる作品だとつい『賛』の気持ちをお伝えしたくレビューを書きたくなってしまいます

後宮の件ですが
イスハンがたったひとつ叶えたかった願いはロシェとともにあること
そのためには自らが皇帝になるしか道はなく彼はその過酷すぎる使命をロシェのために受け入れる覚悟を決めたのだと思っています
国と民を守ること、皇室の血を残すことは彼の義務。前々皇帝の兄弟もほかの皇子たちも全て殺され自分以外に血を継ぐものがいない中で、ロシェを心から愛しているのにそれ以外の選択肢がなかった彼の心中は察するにあまりあります
そしてもしも先にロシェを抱いてしまったら多分子どもは作れなかっただろうと想像に難くありません
その辺りの苦悩をイスハン視点で読みたかったというのはありますし、書いてくださっていたら『否』の評価は少し減ったかもと思わなくはありませんがBLとしては蛇足になってしまうかもしれないので難しいですね

私はこのシリーズの世界観、歴史や呪い、魔法などの設定の緻密さや描写の美しさ、魅力的なキャラクターなどBLの枠におさめてしまうのがもったいないと思うくらい大好きで、何度も読み返してます

今作を読んでまたリディルの方を読みたくなりましたし、ロシェが身体を失うに至った過程を知りたいと思っているので続編が出たらいいなと心から願ってます

13

運命を掴み取る

先生買い、シリーズ3作目。どうしてもステラディアースのお話も読みたいので、皆様ぜひぜひこちらを読んでください。売れたらきっといつかステラディアースのお話も読めると信じてます。だから神にしよう。本編350P、あーとーがーきーがなー------い。

生まれつきの大魔法使いで、あふれる魔力を制御するべく塔に幽閉されるように暮らすロシェレディア。10歳の時、大陸で一番大きな帝国アイデースから使節団が来た夜、少年が塔の外壁をよじ登ってきて「匿ってくれ」と言い・・と続きます。

攻め受け以外の登場人物は
マルゴー(受け側仕え)、ジョレス、オリガ、アデリナ、タチアナ、イゴール(攻め側近)、ゲルダ(攻めに懐いている銀狼)。あとエウェストルム(ロシェの故国)、ガルイエト(アイデースと揉めてる国)、イル・ジャーナ(ロシェが本来嫁ぐ予定だった国)が関係してきます。

++好きだったところ

攻め受けともにキャラが好きだし、このシリーズの世界観が大好き。

攻めは陽キャ。国を思うし、人から好かれるタイプで皇帝になるべくしてなった方。受けに一目ぼれで、生まれた時から願い事が1つ叶うと言われてきたらしいですが、願ったのは「ロシェが欲しい」。第五王子だし、国王となった長兄は頭ぶっとんでて、ひたすら弟王子たちを殺しにかかっているのに、国を思い、いつか国王の目が覚めると思うような方。踏ん切りがいいというか決断力があるというか。とにかく良いのです。

ロシェがこれまた良くって。幼い頃から崇められて、でもほぼ幽閉されて育ったからか、恋心というものがわからず、おぼこいところもある。大魔法使いだから頭よくって、多少の呪いなんかへっちゃら、毒呑まされても口の中で水分と毒をより分けちゃう(かっけー----)。かっこいいのですよ。そして一人称が「吾(あ)」。もうかっこいいってば!

そんな二人が運命の翻弄されながら、でも二人の運命をお互いにしっかり掴み取るというお話でした。ほんとうっとりなのです。ファンタジー、国の興亡話が好きな方でしたら絶対面白いと思うはず。ぜひぜひ。

10

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