電子限定書き下ろしSS付き
初読み作家さんになります。
ずっと気になってる作家さんだったのですが、個人的な地雷要素のある作品ばかりだったので、これまで避けて来たんですよね。
が、今回はガッツリどストライクの設定!!
で、初読みの感想ですが、めちゃくちゃ面白い!
とにかく、めちゃくちゃ面白い!!
読み始めたら止まらなくて、もう一気に読了です。
あのですね、とても切ないし痛い作品なんですよ。
どうしようもない大きな流れによって、引き裂かれる恋人達ー。
切ない。
めちゃくちゃ切ないのです。
が、そんな中でも、ただただ相手を信じ、ひたすら一途に想い続ける二人。
また、セリフが泣かせてくれて「生きろ。いつか必ずまた会える」みたいな。
途中で何回もボロボロ泣いてしまいましたが、ラストではもう号泣。
良かった!
二人が幸せになって、本当に良かった・・・!!みたいな。
と、とても感動的で、壮大な愛の物語だと思います。
痛い系が苦手でなければ、ぜひ!!
内容ですが、王家筋の騎士・イグナーツ×協会生まれの修道騎士・ヨシュカによる、奇跡の泉「ルドヴィカの泉」をテーマとした戦争もので純愛ものです。
共に騎士となる為の修行に励み、永遠の絆を誓いあったイグナーツとヨシュカ。
王家の分裂により敵と味方に分かれた彼等は、いつか必ずまた会える日を信じ、それぞれ戦いの中、生き続けます。
そして5年後ー。
ついに和平の兆しが見えはじめ、密かに逢瀬を続けていた彼等は、この戦が終わったら二人で旅に出る約束を交わします。
しかし、和平は失敗しー・・・と言うものです。
まずこちら、序盤が密かに忍び会う二人。
その後、過去に戻って二人の出会いから丁寧に語られます。
「聖ルドヴィカの泉の奇跡」を起こすハイメロート家に生まれたヨシュカ。
そして、王家の血を継ぎ、騎士となる事が決まっているイグナーツ。
騎士となる為の修行をしながら、共に切磋琢磨して育つんですね。
で、二人は自然と恋仲となり、「盾兄弟」の契りを交わした・・・。
甘酸っぱく、楽しい日々が語られ、読者も一時の安らぎを感じられるのではないでしょうか。
が、そこから急転直下。
王家が分裂し、それぞれの立場から二人は敵味方に分かれて戦う事に。
更に、和平が失敗し、捕まったヨシュカは首を落とされ・・・と続きます。
えーと、これ、切な過ぎるんですよ。
敵味方となりつつも、戦場で感じられる互いのかすかな気配に心を寄せ、息をひそめるようにして想いあう二人ー。
そして、怪我をして逃げ延びた小さな塔での、思いがけない再会。
互いに抱き合い、「一緒に旅をする」と言う、ささやか過ぎる夢を語りあう二人が切なくて切なくて(TдT)
そして、そんなささやか過ぎる夢さえ叶えられず、イグナーツの前で首を落とされるヨシュカ。
もう、ダーっと号泣しちゃって。
こんなのって無いよ!
酷すぎるよ!!と。
で、ここで登場するのが奇跡の泉。
本シリーズのテーマになります。
元々、この泉ですが、ヨシュカの一族が維持管理して、癒しの泉として尊ばれてきたんですね。
しかし、この戦争により泉は荒れ果て、そこに魔女が棲みついた。
ヨシュカの遺体を泉に運び込んだイグナーツは、彼を生き返らせる為に、魔女とある取り引きをし・・・と続きます。
生き返ったヨシュカに起こる、とある出来事。
そして、ますます激しくなる、王家の戦争。
二人は果たして、約束の地に共に旅立てるのかー?
って、所でしょうか。
あのですね、ここからのスレ違いがこれまた切ない上に、更に二人を襲う、過酷な運命に泣かされます。
ヨシュカの為に、全てを犠牲にしようとするイグナーツ。
そして、迷い、真実が分からなくなるヨシュカ。
しつこいですが、切ないのです。
切ないのですが、だからこそ、ラストで涙腺崩壊と言うか。
迷った末に、ヨシュカの出す結論にも、最後の最後まで、自分の全てでヨシュカの幸せを願うイグナーツにも、もう涙が止まらなくて・・・(TдT)
良かったよ~。
二人が幸せになって、本当に良かったよ~!(TдT)
と、完全にお話に入り込んで、泣き笑いしちゃう感じでしょうか。
いやもう、壮大ですよ。
そして、愛ですよ。
めちゃくちゃ感動ですよ!!
と、すごく心を打たれたお話でした。
尾上さんと言えば『1945シリーズ』があまりにも有名ですが、その尾上さんが描く新シリーズ、という事で発売を楽しみに待っていました。
『アヴァロンの東~奇跡の泉・金~』と『ルドヴィカの騎士~奇跡の泉・銀~』の2冊が同時発売になりましたが、尾上さんのツイッターによると「金」から読むのがお勧めのようです。という事で、こちらから読んでみました。
なんて言えばいいんだろう。
大げさな言い方かもしれないけれど、魂が震えた。
何を犠牲にしても相手を守りたい。
そんな愛情の深さに。
という事でレビューを。
明確な記述はありませんが、中世ヨーロッパのような世界観のお話です。
騎士の家の子どもたちは騎士になるべく、厳しい訓練に耐える。
そして、「神の教え」を忠実に守ることが良しとされる世界。
主人公は王族出身の騎士・イグナーツ。
彼もまた、10歳になると同時に従騎士となり城に上がった。厳しい戒律、そして訓練。
それに耐えつつ、日々優秀な騎士になるべく訓練に励む。
そんな彼に、同期となる騎士見習いがやってくる。
楽しみに待っていた彼の目に飛び込んできたのは、天使のように美しい少年・ヨシュカ。ヨシュカは司祭の次男。
イグナーツは王族だが、現在は教会出身者のほうが身分が高い。ヨシュカは身分が高いうえに美しい。そして知識も、剣術も高度なものを持っている。
この国では奇跡を起こすことが出来る家系がある。それが、ヨシュカの家。「聖ルドヴィカの泉の奇跡」を起こすことが出来る稀有な存在でもある。
そんなヨシュカの最も近しい人物として常に傍にい続けたイグナーツだが、二人は恋仲に。
が、神の教えの戒律が厳しいこの国において、身体の接触は神の教えに背くもの。
それをクリアにし、彼らは身も心も結ばれる。
が、次期国王の座を巡りクーデターが起きたことで、二人は敵対する立場となり―。
というお話。
尾上さんらしい、と言って良いのか、ややシリアスな展開。
二人の間に流れる愛情は本物。けれど、時代のうねりが二人を引き裂き―。
と、若干『1945シリーズ』を彷彿とさせる展開で物語は始まります。
が、この作品は、愛する二人が引き裂かれた、という話ではない。
そこから怒涛の展開を見せるのです。
国を巻き込んだクーデターも、和解する向きに。
が、その和解交渉が決裂してしまう。
そのさなかに起きた混乱の中で、
ネタバレ注意!!
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ヨシュカが惨殺されてしまいます。
遺体となってなお首を切り落とされたヨシュカ。
そして、そんなヨシュカを見つけたイグナーツの悲痛な想い。
ヨシュカを生き返らせるためにイグナーツが取った行動は―。
イグナーツの、自分を犠牲にしてもヨシュカを生き返らせたい。
そんな愛情に、思わず落涙しました。
この作品の素晴らしいところは、ストーリー展開もですが、要所要所で撒かれた伏線がとにかく秀逸です。時系列が前後しつつ進むストーリーなのですが、この時系列の配置の仕方も素晴らしい。
時系列を前後させることで、なお一層、彼らの間に生まれた感情だったり、愛情だったり、そういうものの魅せ方がお上手なんです。
神の教えを守ることを良しとする風習。
ヨシュカが奇跡を起こせる人物であること。
そして、イグナーツを唆す魔女の存在。
複雑に絡み合ったバックボーンの、どれ一つとっても無駄がなく、無理もなく、そして相乗効果でもってストーリーに重みを与えている。
首を切り落とされる、とか、かなり残酷な描写があるので、苦手な方は注意が必要かもです。
かくいう私もそういう描写は苦手なのでちょっと萎え萎えとなりながら読み進めました。
が、二人の深い愛情に、とにかく萌えるんです。
記憶をなくしても。
酷いことをされても。
それでも相手を想う。何度でも、恋をする。
とにかく素晴らしい作品でした。
文句なく、神評価です。
ところで、ヨシュカのお兄ちゃん(司祭となるべく教育を受けているナイスガイ)も素敵です。
そのお兄ちゃんのお話が、同時発売された『ルドヴィカの騎士~奇跡の泉・銀~』で描かれています。
2冊まとめて購入されることをお勧めします。
金銀併せての評価です。
待望の尾上与一先生の新作です。
初のファンタジー、舞台も中世ヨーロッパ風でそのあたりが好きな人にも刺さるかと。
1945シリーズで、藤十郎&伊魚の彗星ペア好きなら読んで正解です!
奇跡の泉シリーズで2冊同時発売ですが、執筆順の金→銀で読むのが良いそうです。
言わずもがなですが、とにかく世界観がしっかりしてるので一気に惹きこまれました。
個人的には銀のお話とキャラ(マティアス様推し!)の方がより好みです。
銀を読んでまた金を読むと、「あ~この時のこれはこういうことか・・・」と更に楽しめます。
そして、「盾兄弟」というパワーワード!!!
たまりません。
ぜひ金だけでなく銀も読んで下さい!
また、尾上先生のHPにSSが掲載されています。
ドキドキすること請け合いですので、読後にぜひ!
(「アヴァロンの東」だけで読めます!)
■「アヴァロンの東」SS「月が満ちるとき」
http://ogami41.net/?p=1827
尾上さんの作品もファンタジー作品も初めてでした。
シェーンハイト王国の美しい風景、手に汗握る合戦シーン、引き裂かれた恋人たちの束の間の甘い交わり。ファンタジーならではのエピソードにドキドキしました。
中でも私の心に一番響き、これが物語の主題ではと感じたのが、魔女と対峙したときのヨシュカの「愛を信じる」という言葉でした。
イグナーツの愛を信じ、自分のイグナーツへの愛を信じる。例え全てを忘れても何度でも愛し直すと、魔女の揺さぶりを退けるヨシュカの強い決意に心を打たれます。魔女の呪いとは、愛を疑う心だったのかもしれません。
ストラス王に弟・アゴルトを“信じる心”があったなら、二人は兄弟愛で結ばれ、イグナーツとヨシュカが引き裂かれることも多くの兵士の命が失われることもなかったでしょう。ストラス王の病んだ心をルドヴィカの泉が癒すことはできなかったのでしょうか。毎日泉の水を飲ませてみればよかったのに。でも恨みに囚われ泉の奇跡を信じなかった王には、きっとその恵は届かなかったでしょうね。
恋人も兄弟も、そして隣人も。愛は信じることだと、物語が語りかけている気がします。
イグナーツがヨシュカを陵辱する場面は、ヨシュカを愛するイグナーツらしくなく冷たく見えるのですが、ヨシュカを守るためには心を折るしかなかったのだろうと思います。ヨシュカのためなら自分の名誉も命も惜しまないイグナーツ。魔女との約束で真実を告げられない苦しさとヨシュカの愛を失いそうな絶望が滲んでいるようにも感じられて、切なかったです。挿絵のイグナーツの表情がもっと悲しげならよかったのにと思いました。(ちょっと悪人面に見えてしまうのです。)
後日談「されどそれも佳き日」がユーモアにあふれていて、良かったです。
イグナーツとヨシュカが憧れた“アヴァロンの東”が、故郷の騎士道が通じないのんびりしたところだったというのが、なんとも可笑しく、シリアスな表題作の後にこの話を持ってきた作者様のお茶目さを感じました。
名誉や立派な甲冑がなくても、愛する人がいるところに幸せがあるのだと、温かな気持ちにさせてくれました。
デビュー作の「二月病」以来、お互いを唯一無二として求め合うBLの根本的な関係性を書き続けて下さる作家さんだと思います。
「アヴァロンの東」もまた、生死を賭けたギリギリの設定が、しかしこじつけではなく豊かで美しく、「凄いものを読んだー!」という骨太な満足感を与えてくれる稀有な物語でした。
本当に多くの方に読んで頂きたいです!