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表題作38度線

その他の収録作品

  • 長いナイフの夜
  • ノルマンディーで会いましょう
  • サクラ・サクラ
  • 砲声は遠い
  • あとがき

作品情報

作品名
38度線
著者
石原理 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ビブロス
レーベル
ゼロコミックス【非BL】
発売日
ISBN
9784882716945
4.3

(3)

(2)

萌々

(0)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
13
評価数
3
平均
4.3 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数2

ずっと大切に持ち続けていたい作品

全て”戦争”をテーマにした短編集。
石原さんのデビュー作である「38度線」も収録されていて、ファンとしては絶対に手に入れたい1冊でした。

しかし、「38度線」はさることながら、他の収録作が思っていた以上に素晴らしかったのです…!


『長いナイフの夜』
収録作の中では、最もBL色が強いと思います。
ベルリンの軍隊を舞台に、ヴォルフ大尉と、スパイ容疑をかけられ処分を待つ青年・クライスの物語。
どこか昔の少女漫画の様な、美しく潔癖な世界観の中に密かに漂う妖艶。
ラストのヴォルフの告白にはゾクリとしました。もちろん、良い意味で。
そしてクライスはきっと待ち続けるのでしょうね。
清廉潔癖で、微かな狂気を抱えた、少女のように。


『ノルマンディーで会いましょう』
第二次大戦中、敵対しあうフランス軍とドイツ軍。
そんな彼らが、サッカーを通じて心を通わせていきます。
荒地のフィールドで、色々な思いをぶつけ合いながらひたすらにボールを蹴る。
ゲームが白熱するにつれて、いつしかお互い兵士であることを忘れて、単純にサッカーに没頭する。
かつて1度、彼らはサッカーで戦った。あの時の気持ちを思い出す。
サッカーで勝ちたい。

けれどそんな純粋な気持ちは、戦争の中では無情に消されてしまうのかもしれません…
でも、だからこそ、ただ球を蹴ることに夢中になったあの瞬間が、お互いを素直にさせてくれたのでしょうね。

…直接的なBL的絡みはほとんどないですが、それっぽい要素が散りばめられているので、この2人だったら…などという妄想が膨らみますよ…


『サクラ・サクラ』
戦闘機パイロット育成高校に通う片山と桐原。
2人を取り巻く人びと達。
彼らは、戦争の中で様々な葛藤を抱えながらも、己の信念を信じ、真っ直ぐに進んでいきます。
敵と戦い死んでいくことが美学とされていた時代、戦い散っていくことを迷わない。
…けれど本当は、生きることが1番尊いことだって、分かってる…。
宇月教官の言葉。
有賀を突き放した桐原。
桐原のことを、誰よりも理解していた片山。
そして、有賀と可南子の思い。

切ないです。すごく切ないです。
それでも、空に飛び立つ彼らの顔に悲壮感など欠片もないのは、きっと信念を進んだ先だったからなのでしょうね…

どこか、「永遠の0」を彷彿とさせます。


『砲声は遠い』
収録作品の中で、私の1番好きな話です。
切なくて、やるせなくて、悲しくて、あたたかくて、色々なものが込み上げてきて、泣けます。

他レビューでも言われているように、予備知識なしで読んだ方がいいかも…

繰り返し読むたび、全てのシーンが、台詞のひとつひとつが、胸にささります。


『38度線』
石原先生のデビュー作です。
なんだか…こんなことを言うのはとても恐縮なのですが、初々しい…!
デビュー作だなぁ…という感じがします。

けれど、確かに感じる、大好きな石原先生の”感じ”
ああ、石原さんだぁ…
こんな感じ。

壁も囲いもない。たった1本の線で隔てられた、2つの国の2人の兵士。
すぐ隣にいるのに、決して越えられない1本の線。
アイクは線の向こうの彼とコミュニケーションを取ろうと色々試みるものの、彼はアイクと話さない。目線を合わせようとしない。
それでもきっと心は通じたんだと思います。
線の向こうの彼が、コインを拾った時に。



非BL作品に分類されているだけあって、BLの要素は本当に薄いです。お母さんにも読ませたいくらい。(長いナイフの夜を除いて)
それでも石原さんはキャラクターを本当に魅力的に描かれる作家さんで、たとえ作中にBLとして描かれなくても、ほんの少しだけ匂わされただけでも想像力でどうとでもできてしまいます。笑

しかし。この作品は、作品自体が、面白くて深い。
切なくて悲しいけど、あたたかい。
そこにBLという要素をスパイス程度に振りかけてくれるもんだから、もう私からしたらありがとうございますに尽きます。

どれだけ某中古本屋さんをまわっても見つからず、慣れないネットショッピングでやっと手に入れたこの作品。
苦労した甲斐がありました。この先もずっと、手放したくないです。

2

こういう話も好きです

短編集ですが、すべての作品のテーマが戦争になっています。

表題作は、南北朝鮮が舞台です。
南側の国境を守る歩哨として派遣されたアメリカ兵と、北側の朝鮮人の歩哨との心の交流を描いています。
いつも見かける北朝鮮人の歩哨とどうにかして心を通わせようとするアメリカ兵。
交渉を一切禁じられた場所ですが、それでもなんらかの交流がある。
恋愛ではありませんが、確かにある、2人の心の交流にジーンときました。

表題作以外では、「サクラ・サクラ」もよかった。
これは第二次世界大戦の日本が舞台で、この頃の日本人の気質とか、日本男児とかというものがよく表れてるんじゃないかと思います(戦後生まれなので、あくまでイメージですけど)。
余談ですが、詰襟学ランがカッコイイです。
石原さんの絵は、こういう男らしい男がホントかっこいいです。

「砲声は遠い」は・・・これは何も知らずに読んでいただいた方がいいかも。

1

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