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表題作恋人たちの夏

柊達之
リーマン
鹿原宥
インテリアコーディネーター

作品情報

作品名
恋人たちの夏
著者
榊花月 
イラスト
荻山知弘 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
ISBN
9784592870258
4.3

(3)

(2)

萌々

(0)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
13
評価数
3
平均
4.3 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数2

タイトルはよくわかんないけど

好きなお話だと思っていたのですが、時間が経つと印象が変わりますね。でも、やっぱり胸を打たれたシーンは同じです、多分。

インテリアコーディネーターの宥は顧客受けがよく、同僚からやっかみの対象となっていました。長髪にピアスだし、水商売のやり口だと軽蔑されていたけれど、宥のセンスや能力が買われていたのは事実。

とはいえ、宥にとって仕事が好きかどうかは微妙なところ。仕事柄、リフォームや建て替えなど家族の相談にのることが多い宥は、夫婦や子供連れでやってくる客を腹の中で嘲笑していました。

宥に惚れ込んでいるインテリアデザイナーの安藤とは寝る間柄だけれども、彼のことも弄んでいるだけ。宥は自分が異性からも同性からも魅力的に思われていることを鼻にかけつつ、そのことに倦み疲れていました。

顧客の一人、柊の担当になった宥は、柊とのアポイントの日を楽しみにしている自分に気付きます。柊に妻と中学生の息子がいるのを知っても彼を落とそうと駆け引きを仕掛けますが、全く手応えはなし。スルリとはぐらかされます。

宥のキャラって、こんなにシニカルでやさぐれていたっけ?と読んでいて少々顔がひきつりましたが、彼の家族関係が明るみになるにつれて納得。そうだった。彼がなにもかもに無感動、無頓着にならざるをえなかった理由。さらに追い討ちをかけるように、自分なんて消えてしまえばいいと死にたくなった理由…。

柊と出会い、執着する気持ちを知った宥は、これまでに自分に同じ思いを持ったであろう人たちを顧みて、初めて痛みを覚えます。好きな人と体を重ねる悦びを知り、諦めたその後には意外な展開が待ち受けているとはつゆ知らず…。

やはり、宥の兄・蒼司の言葉に涙がこぼれました。冒してしまった過ちに対してこんなふうに言葉をかけてもらえたら、どんなに救われることだろう。もちろん、宥のこれまでのストーリーを辿ってきたからこそ響く言葉です。あんなセリフをいわせてしまう作者様はすごい。さらに、先のレビューを書かれた方もすごいです。端的で深い。作者作品への愛を感じます。

ちなみに、フランス文学風のあとがきは作者様の洒落だと思うのですが、不思議と作品に漂う雰囲気とマッチしているような気がするんですよね。古いフランス映画を観た後のような読後感が。

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私好み!

ああやっぱ、榊花月さんの小説は好きだ。
オトナの微妙な感情が、めいっぱい詰め込まれたお話でした。

モテモテで、そこそこ仕事もできて、実際に年上のいい男たちを冷めた感情のおもむくままに振り回してきた主人公の受け。
このスレた受けが、妙に可愛かったです。可愛くて、可哀想でした。
内部に抱える彼の孤独、すごい分かるよーと思いました。

万人向けのお話ではないと思います。
悪ぶった(悪ぶってるだけじゃなく、実際ひどいことをしてる) この受けを不快に思う人もたくさんいるだろうなと思う。
何を考えてるのかなかなか分からない、掴みどころのない鰻のような攻めに、魅力を感じない人もたくさんいるだろうなと思いました。
で、そういう部分こそが私好みでした。

初エッチのときに感じた、受けの歓喜と不安。
さらにエッチが終わった後の、受けの態度の痛さときたら。痛くて痛々しかったです。
こういう微妙さを書ける榊さんはすごいなと思う。

脇役も素晴らしいです。
安藤はかなり好きです。可哀想だったけどね。
最後のほうにしか登場しない蒼司の告白内容には、思わずニヤリとさせられました。いいよいいよ、愛だの恋だのというものが、ちっぽけで姑息な感情ごときに負けてしまうことの悲しさ。だからといってその愛や恋が偽物ではないというのも、揺るぎなき事実で。いいよいいよー、人間らしくていい。

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